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辺境伯家三男、アプリで魔法を再定義する。 ~「賢者」認定されたけど、これ「スマートウオッチ」ですから!  作者: のびろう。
第四章 王都学園(二年生編)、あるいは未知の転生者と波乱の武闘会
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第21話 廃人となった転生者と地下水路の影。最強の乙女たちへ贈るチート武装と、採寸フィッティングの修羅場

王都選抜武闘会での激闘から、数日が経過した。

王都はアレン・ログレーという辺境の学生が成し遂げた圧倒的な優勝の話題で持ちきりだった。


しかし、当の僕はそんな喧騒から離れ、王城の地下深くに作られた特別牢獄へと足を運んでいた。

冷たい石造りの廊下に、僕の足音だけが虚しく響く。


分厚い鉄格子の向こう側には、ボロボロの囚人服を着て、虚ろな目で壁を見つめる黒髪の少年の姿があった。


「……ジン」


僕が声をかけると、ジンはビクッと肩を震わせ、怯えたようにこちらを振り返った。

武闘会の決勝戦で見せた、あの傲慢で自信に満ちた転生者の面影は、今の彼には微塵も残っていない。


僕の【天界の端末】が実行した管理者権限と、魔族に見捨てられたことによって、彼の異常なステータスは完全に初期化されていた。

今の彼は、魔力すらまともに練れない、レベル1のただの無力な村人Aでしかない。


「ヒッ……!く、来るな……!俺は、俺は悪くない!」


ジンが鉄格子の奥へ後ずさりしながら、泣き叫ぶように言った。


「システムが……チートが俺を特別だと言ったんだ!だから俺は、この世界の主人公として振る舞っただけで……!」


「主人公なら、自分の力で立ち上がってみろ。システムに依存したお前の末路がこれだ」

僕は冷徹な声で彼の悲鳴を切り捨てた。


「お前の処遇は国王陛下が決める。だが、その前に一つだけ聞きたいことがある。お前に力を与えた、あの『黒い靄』……魔族とは、どこで接触した?」


僕の問いに、ジンの顔がさらに蒼白になった。


「あ、あれは……俺が王都の裏路地で不良に絡まれてた時に、下水道のマンホールから声が聞こえたんだ」


ジンはガタガタと震えながら、途切れ途切れに話し始めた。


「『力が欲しいか』って。俺が頷いたら、黒い靄が俺の影に入り込んできた。それからだ、俺のステータスがバグみたいに跳ね上がったのは……!」


「下水道……王都の地下水路か」


僕は顎に手を当てて思考を巡らせた。

王都の地下には、建国以前から存在する広大で複雑な水路網が張り巡らされている。

迷宮のように入り組んだその場所は、太陽の光が届かず、魔族が潜伏するには絶好の環境だった。


「分かった。もういい」


僕が踵を返そうとすると、ジンが鉄格子にしがみついて叫んだ。


「た、助けてくれ!俺も元はあんたと同じ日本人だろ!こんなゲームオーバー、納得いかねえよ!」


「ここはゲームじゃない。君が傷つけた人たちには、ちゃんと心も、痛みもあるんだ」


僕はそれだけを言い残し、薄暗い地下牢を後にした。

彼への同情はない。


僕が今なすべきことは、王都の地下で蠢く魔族を完全に消し去り、愛する人たちの平穏を守り抜くことだけだ。



その日の放課後。

僕はヴァンルージュ公爵邸の秘密の図書室に、リズ、シャルロット、ベアトリスの三人を集めていた。


「王都の地下水路、ですか」


ベアトリスが王都の地図を広げながら、険しい顔で呟いた。


「ええ。バルバトス伯爵の件といい、武闘会のジンといい、魔族は明らかに王都の地下を拠点にして暗躍していますわね」


シャルロットも腕を組み、真剣な表情で頷く。


「決まりだね。私たちがそこへ乗り込んで、その黒い靄とかいうのを全部斬り捨てればいいんでしょ?」


リズがいつものように快活に笑い、愛用の長剣の柄を叩いた。


「ああ。だが、相手は物理法則を無視する魔族だ。ジンの時のような『呪いの魔盾』や『時間遅延』といった理不尽な反則技を使ってくる可能性が高い」


僕は三人の顔を真剣に見つめ返した。


「だから、地下水路に潜入する前に、君たちの装備を僕の科学魔法で一新する。どんなチート攻撃が来ても、絶対に君たちを守り抜ける『最強の専用武装』を開発するんだ」


僕が宣言すると、三人の瞳が期待と喜びでパッと輝いた。


「アレン様のお手製装備……!最高のプレゼントですわ!」


「ええ。アレン様の頭脳が私たちのために使われるなど、これ以上の喜びはありませんわ」


「よーし、じゃあ早速作ってもらおうかな!」


三人が嬉しそうに僕の周りに集まってくる。


「ああ。素材はすでに【物質合成アプリ】で精製済みだ。ただ、最高のパフォーマンスを発揮するためには、君たちの体の正確な寸法……ミリ単位でのスリーサイズの採寸が必要になる」


僕が淡々と事実を告げた瞬間、図書室の空気がピタリと固まった。


「……す、スリーサイズ、ですか?」


シャルロットの顔が、瞬く間に林檎のように真っ赤に染まった。


「そ、それは……アレン様ご自身の手で、私たちの体を直接測る、ということでしょうか……?」


ベアトリスも、普段の冷静さを失って扇子で口元を隠しているが、その耳まで真っ赤になっているのが分かる。


「できれば魔力スキャンで済ませたいんだけど、対魔族用の特殊素材を完璧に体に密着させるためには、物理的な採寸データとのすり合わせがどうしても必要なんだ。嫌なら……」


「い、嫌ではありませんわ!」


シャルロットが食い気味に叫び、僕の目の前に進み出た。


「アレン様のため、そして王国の平和のためですもの!さあ、どこからでも測ってくださいませ!」


彼女は制服のリボンを震える手で解き、目を固く瞑って両腕を広げた。


「ちょっとシャルロット様!抜け駆けはずるいですわ!私も採寸していただきます!」


「二人ともダメ!こういうのは幼馴染の私からって決まってるの!」


図書室は一瞬にして、魔族の脅威などどこ吹く風のドタバタなラブコメ修羅場へと変貌した。

結局、三人の熱烈なアピールに押し切られる形で、僕は一人ずつ順番に採寸を行うことになってしまった。


「……ひゃんっ!」


僕がメジャーを持ってシャルロットの背中に腕を回し、胸囲を測ろうとすると、彼女の口から可愛らしい悲鳴が漏れた。


「ご、ごめん。くすぐったかったか?」


「い、いえ……アレン様の腕が、こんなに近いなんて……私、心臓が破裂してしまいそうですわ……」


シャルロットの顔は限界まで赤く、その体からはポンッと湯気が出そうなほどの熱が発せられていた。


「次は私ですわね。アレン様、遠慮はいりませんわよ。ミリ単位と言わず、私の体の隅々まで、どうぞ念入りにお調べになって」


ベアトリスは理詰めの色仕掛けモードに入り、僕の手に自分の豊かな胸をわざと押し当てるようにして採寸させてくる。


「ベアトリス、動くと数字が狂うからじっとしててくれ……」


僕は必死に理性を総動員し、煩悩を振り払いながらメジャーの数値を端末に入力していった。


「アレン。私、最近また少し背が伸びたんだよ。ほら、胸のあたりもキツくなってきたし」


リズは無邪気な笑顔で僕の前に立ち、剣の鍛錬で引き締まったウエストと、女性らしい丸みを帯びた胸のラインを見せつけてくる。


前世から知っている彼女の成長を間近で見せつけられ、僕の心拍数も限界を迎えそうだった。

過酷すぎるフィッティングの時間をなんとか乗り越え、僕の【天界の端末】と【物質合成アプリ】はフル稼働で三人の新装備を具現化した。


「完成だ」


僕が声をかけると、更衣室から着替えを終えた三人が現れた。

リズの手には、僕がミスリルと超硬質カーボンを合成して作り上げた『高周波振動ブレード』が握られている。


刃の表面が魔力によって毎秒数万回の超振動を起こし、魔族の呪いの盾すらも分子レベルで切断するチート魔剣だ。


シャルロットとベアトリスが身に纏っているのは、一見すると少し露出の多い、スリットの入ったスタイリッシュなドレスアーマーだった。


しかしその繊維には、僕の『空間反射』と『光学迷彩』のコードが編み込まれており、物理攻撃も魔法攻撃も完全に無効化する絶対防壁の機能を持っている。


「すごい……!剣が羽のように軽いですわ!それに、刃の周りの空気が震えています!」


「このドレス、どんなに動いても全く窮屈ではありませんのね。それに、魔力が内側からとめどなく溢れてくるのを感じますわ!」


三人は自分の新しい力を確かめるように、興奮した様子で図書室の中を跳ね回っている。

彼女たちの無邪気な笑顔を見ていると、先ほどの採寸での苦労も報われた気がした。


「よし。装備のフィッティングも動作チェックも完璧だ。これでどんなチートが来ても、僕たちは負けない」


僕は左腕の端末を操作し、地下水路の詳細なマップを空間にホログラム投影した。


「今夜、王都の地下に潜る。魔族の残党を完全に殲滅し、今度こそ僕たちの平穏なスローライフを取り戻すんだ」


「はいっ!アレン様と共に行きますわ!」


シャルロットが杖を掲げ、決意に満ちた声を上げる。


「私共の絆と、アレン様の頭脳があれば、恐れるものなど何もありませんわ」


ベアトリスが優雅に微笑み、ドレスアーマーの裾を翻した。


「私たちが絶対にアレンを守るからね。さあ、魔族狩りに出発だよ!」


リズが高周波ブレードを構え、力強く頷いた。

最強のチート装備を身に纏った三人の乙女たちと、物理法則をハッキングする賢者。


僕たち四人は、王都の平和を脅かす黒い影を断ち切るため、決意と共に夜の地下水路へと足を踏み入れるのだった。

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