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海底パイプライン(四百九十六)

 最近の若いモンは。これを言うようになったら、年取った証拠なんだとか。しかし黒山はニコニコしている。流石は『人格者』と言った所か。黒山に言わせれば、所詮人間なんてゴミ以下の屑。ならば目的達成のために協力してさえくれれば良い。グダグダ言う位何だ。


「自分が楽したかったら、人に教えられるようにならないとなっ!」

 だからニッコリ笑って肩を叩くのだって、それっぽく見える。

 実際問題、仕事を進める上で一人や二人欠けた所で何とかなるものだ。『俺が居ないと』てのは、大抵の場合杞憂に終わる。

 四平は兎も角、虎雄の方はまだ『俺が』の想いはあるらしい。


「教えるのが面倒な場合は?」「そりゃぁあんちゃん。決まってらぁ」

 気にはなるが、漫然と聞く。すると黒山は笑いながら、今度は黒田の肩を叩いたではないか。今度は黒田がキョトンとしている。


「力で支配されちまうのよぉ。ねぇ? 大将!」「おぉそうだぞぉ」

 黒田が大きく頷いて見せた。しかし虎雄と四平はキョトンとしている。『どういう意味?』てなモンで。

 実際『支配されている身』でありながら、まだ判らないとは。これだから支配され慣れてる奴は困る。既に人が人として在らんとする意思、思考、信念、そして欲望が無くなっているのか。

 それでも顔を見合わせて『意味判らん』で済ますとは。扱い易い。

 一連のやり取りを他人事だと思って笑っていた勅使河原が合図。


「止まれ。ココが入り口だ」『キキィ』「んん? 何も無いぞ?」

 指示通り止まってはみたものの、黒田は図面を見て首を傾げる。

 時々ボケ老人を演じる黒田だが、実は既に手中の図面が全て頭の中に入っていた。物理的な意味ではなく論理的な意味で。

 だから逆に『図面を見ている方が演技』である。ニヤニヤしながら見ている勅使河原の前で、壁面の番号と図面の番号を照合するのだって演技ならば、『おかしいなぁ』の顔も演技。


「実はココにな、隠し扉があって」『ガチャッ。ブオォオォオォッ』

 ずっと『丸い管』の中を来ていた。時々現れる『四角いスペース』は、海底に固定するためと、丸い管を接続するためのもの。図面からはそう読み取れる。いや、そうとしか読み取れないではないか。


「去年結構死んで、それで追加されたんよ」「物騒だなオイッ!」

 勅使河原の説明。声の調子からして『笑いながら』だ。それも演技なら、黒田の怒りも演技。肩を竦める黒山の演技も加わって場はカオスに。演技が下手な虎雄は『死んだ理由』が判っていないし、四平に限っては『ゲームが出来るかも』と思い、既に何をプレイするかのルーレットが回り始めていた。海上なら電波が入るかも。

 スイッチを切ったモノレールを土台にして、一人づつ梯子取り付いて上って行く。大丈夫。時間はまだある。酸素もまだ。


『ザッパーン』「おぉおぉっ。久し振りの外だぁ」「外して良い?」

 聞くまでも無い。一番先に脱出した勅使河原の素顔が見える。

 海上に突き出た鉄塔で眼下に波が。しかしココが『テッペン』ではなくて、頭上にもまだ施設があるようだ。風が涼しい。問題はその強さで吹き込む『雨』であろうか。皆塔の中心に集まっている。


「溶けちまうだろうがっ!」「まぁまぁ」「結局死ぬトコじゃねぇかっ!」「今の所セーフだから」「完全に設計ミスだよな!」「来年の予算で何とかしてって、上に報告してあるから」「遅せぇよ!」

 演技しているのは勅使河原だけか。ステージみたいなのにね。

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