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海底パイプライン(四百九十四)

 黒木は生粋の軍人である。いや、生まれたときは違うだろ。と、言いたいかもしれないが、そうとも言い切れない。何故なら生まれが北海道の函館だからだ。住所までは言えない。

 当時の函館は今の函館とは様相が全く異なる。酒場で『雨が降ったら溶ける』なんて話をしたら、全員から笑われただろう。

 何せ函館には『弾の雨』が降っていたのだから。その弾の種類には事欠かない。銃弾から砲弾まで多種多様。『弾の見本市』と言って良い。照明弾の下に飛び出せば全身で感じられた。

 そんな時代でも、人間は子を成して生み育てる。

 黒木もその一人だった。父親の名前は知らない。それでいて母親の名前は、良く変わったものだ。物心付いたとき『下水道が通学路』で、鉛筆の代りに『銃』を渡される。消しゴムの代りに『銃弾』とは、何かの皮肉か? 勿論幼い黒木にそんな皮肉は通じない。

 知識は自分の順位を上げるため、ではなく、相手を蹴落とすために使われた。まぁそれはあくまでも『比喩』で、本当に蹴落としたこともある。崖の上からは当然として、あらゆる乗り物の上からも。


『ピピッ』「単管じゃないな」『ピッピッ』「うん。やっぱり違う」

 腕時計が音波探査機になっている。パイプラインを流れる油種を特定するためだ。黒田がさり気なく聞き出した『航空燃料』も確かにあるが、それ以外の油種にも反応があるではないか。


「直径何ミリだ? 余り細いと重油は無理だし……」『ピッピッ』

 函館作戦で黒田に拾われて今に至る。今ではすっかり父親代わりだ。そろそろ反抗期を迎えてもおかしくはないが、そんな気はない。

 だが、黒木は思った。『首絞めて吐かしちまいましょう』と。『俺がやりましょうか?』を付け加えても良い。お任せくださいだ。

 しかし肝心の黒田がそれを笑って拒否。黒木はもう、何も言えなかった。言う必要もない。

 黒田の笑みに『含まれる意味』を黒木は知っていたから。


「これ、ギリ重油な気がする……?」『ピッピッ』

 余り一か所に長居すると怪しまれるので、黒木は移動を開始した。

 多分黒田なら、こんな中途半端な情報でも『何か』を補足することで有用なのだろう。あちらこちらに情報網を張っているから。

 黒木も函館方面になら、今でも『パイプ』を保持している。

 それは『海底パイプライン』とは、また違う種類のものだが。油種も含めて。黒木はモノレールに追い付いた。


「どうだった?」「綺麗になってます」「そうか。判った」

 黒田と挨拶を交わす。目しか見えないが笑顔だ。ならば『判った』にも重みがあると言うもの。間違いない。


 ここで唐突に時代背景について説明しなければならない。

 現在の世界線。広島と長崎に原爆が落ちて、日本国が憲法記念日を五月三日とした世界線では、船舶の燃料として重油が使われていない。これは『船舶による汚染の防止のための国際条約附属書VIの改正』(IMO2020)によるもので、世界百七十カ国が調印した条約である。この小説の世界線では、全世界が今だブロック経済下にあり、軍拡はすれでも世界大戦は無しの状態が続いている前提なので、全世界的な環境への考慮は望むべくもない。

 故に商船軍艦の類を問わず燃料は重油で黒煙をまき散らし、環境破壊上等であるとお考え頂きたい。いやぁ『最近空が青いなぁ』と思っていたのだが、世界はこんな風に一致団結していたんだなぁ。

 やれば出来るんじゃないか! と、思いました。以上、執筆開始時点(2009年)では知らなかった情報の補足でした。

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