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海底パイプライン(四百四十五)

 四平の奴、ニコニコして何言ってくれてやがるんだ。

 虎雄は怪訝な表情で何か言おうとしたが、止めた。確かにココはアンダーグラウンド。統治が及ばない無法地帯である。麻薬製造に始まり、闇取引、それに伴う殺人なんかが日常茶飯事。ならば今更『無免許運転』が何だ。全く驚くに値しない。


「お前、オートマ限定じゃねぇの『持ってる』って言ってただろ!」

 聞き間違えじゃなければ確かに言ってた。過去形じゃなくて、現在進行形の『持ってる』って。珍しいのよ。東京都民。二十三区内に居住している奴で『車の免許』なんて持っている奴が。歴史的な流れで言えば『馬車の運転免許』と同じ運命にあるのだから。


「えぇ持ってますよ。ホラ『ゴールド』だし」「スゲェな。見せろ」「嫌ですよ」「何でだ」「ぜってぇ『ポイッ』って、やりそうだし」

 ポケットから出した免許をチラ見せし、虎雄が手を伸ばした所で再びポケットへ。冷静に言う辺り、過去にやられたことがあるのか。

 そりゃぁ『有る』んだろうなぁ。例えば『ゲーム機』とか『ゲーム機』とか『ゲーム機』とか。あと考えられるのは『ゲーム機』位。

 そんだけ捨てられりゃ、ヒョイヒョイ貸さないのも頷ける。


「でもあんた、今の『普通』だったのよね?」「そうなんですよー」

 黒沢は目が良いのか。チラっとしか見ていないのに、良くぞ言い当てた。四平の言い方はそんな感じだ。

 虎雄は『あっそういうこと?』と思い始めた。つまり『普通免許』なのに『じゃないの』を運転してるってことかと。しかし何を運転するのは良くて、何は運転しちゃダメとか、そういう概念は無い。

 そもそも赤信号を『気合が有れば進んでヨシッ!』と理解している位だから、『再試験』は即『資格喪失』を意味する。


「これ四トンだもんなぁ」「えぇ」「何? 四トンって普通ダメなの?」「普通はね」「普通だからな」「ねー」「あぁ」

 四平と黒沢の二人は判っていて、虎雄だけが判っていない。


「いやいやいや。ちょっと待てよ」「何がですか?」「つまりお前今『無免許』ってこと?」「大丈夫ですよ」「大丈夫じゃネェだろ」「それが大丈夫なんですって。このトラック、車検切れてるんですから」「そうなの?」「そうなんですって。ねー」「えっ? あぁ」

 待て待て待て待て。黒沢、今一瞬『躊躇』したよね? それに車検切れてる車で公道走っちゃ……。ここ公道じゃねぇや。


「ホラ。これで賛成多数」「いや待てよ」「後ろの人数合わせると、十六対一だしな」「ほら。勝ち確定じゃねぇか」「いやいやいやいや。ちょっと待てよ。随分乗ってんなぁ? そんなに乗ってて良いんだっけか?」「あんた自分で『乗れっ』て言って於いて、それはネェんじゃねーの? 私達ぁ『荷物』じゃネェんだからよぉっ!」

 普通免許で運転出来る乗員の上限は十名である。トラックの荷台は座布団を敷いただけでは座席とみなされず、例え乗れたとしてもそれで走るのはダメ。ロープで荷台に固定されていても、生きていたらダメ。死んでいたなら、道路交通法で罰せられることは無い。


「あっ換気扇が見えて来た。着いたな」「ちっ。誤魔化しやがって」

 舌打ちをした黒沢だが、ずっと『変な所』に居た自覚からか、これ以上ことを荒立てるつもりは無い模様。すると虎雄が指示する。


「道理で『手前で降りろよ』って言われた訳だ。四平、その辺にトラックを止めろ」「柱の陰?」「高台が良い。後は歩いて行くぞ」

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