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海底パイプライン(四百四十一)

 凄い勢いで全開に開いたドアが、同じ勢いで戻って来た。

 残念ながら黒沢も一緒だが、今の四平にそう思う余裕は無い。言われた通り、床を踏み抜く勢いでアクセルを踏む。視界の横で黒沢が振り返り、『ヒュゥ』と口笛を鳴らしたのが判ってバックミラーをチラリ。誰のケツだよ。何も見えやしない。

 ならばドアのサイドミラーは……。角度が合って無いのか、物理的に無いのか。生きて帰ったら始末書モンだなこりゃ。


「今のは何だ!」「あぁ?」「今のだよ今のっ! 何か居たよな!」

 運転席の四平に比べ、助手席の虎雄の方がジタバタしているようにしか見えない。助手席側の窓を開け、乗り出すも見えず。運転席中央の窓を覗き込んだって、黒田と黒井のケツが並んでいるだけ。


「ホラホラ。いつまで二速で走ってんだよっ!」「あぁはい」

 やはり『ぶっ叩く』のは効果的なのか、若干落ち着いてギアチェンジ。お陰でエンジンの音がやや静かになった。

 アンダーグラウンドは相変わらず真っ暗だが、今の所障害物が無い道路を真っ直ぐに進む。ずっと後ろを見ていた黒沢だがやっと前を向いた。まるで運転席の右側にも座席があるような落ち着いた顔。


「今のは何ですか?」「今の?」「そそ。派手に蹴っ飛ばした奴」

 趣を変えて今度は丁寧に聞いてみる。すると黒沢も親指で後ろを指したではないか。きっと本人は可愛く言っているつもり。虎雄は情報が欲しいので兎に角頷くと、黒沢は『フッ』と意味深に笑った。


「教えて欲しい?」「はい」「とか何とか言っちゃって、本当はそっちだって情報握ってんじゃねぇの?」「いや、知らねぇっす」「本当ぉ?」「ホントホント。ホントっす」「ホントかなぁ」「教えて下さいよ」「しょうがねぇなぁ。今のが『イチゴちゃん』よぉ」「あれがですか?」「ホラホラァ。知ってんじゃん! 情報料取って良い?」「いや待って下さいよ! 話でしか聞いたこと無いし。見たの初めてなんですからっ!」「ホントなんだろうねぇ?」「ホントっすよ! 信じて下さいってば!」「まぁ信じるよ。あんたらみたいな奴がイチゴちゃんに出逢ったら、速攻で殺されてるからね!」

 黒沢は虎雄と四平を交互に指しながら豪快に笑い、警戒に戻った。

 虎雄は正直気に入らない。『戦闘力』に於いて、四平とは雲泥の差があると自負する虎雄であるからにして。それを『同類』とひとっ括りにされてしまっては『地元じゃ負け知らず』の名が廃る。

 しかし派手にひっくり返ったイチゴちゃんを見れば、『どちらも殺される』の意見には納得せざるを得ない。チラっと見えただけで、腕みたいな所に機銃っぽいのが。それにキャタピラだったよね。

 どこまでも追い掛けて来そうだし、来たら嫌過ぎる。


「あんた達、何者なんすか?」「んん? 何者って。黒田爺さん、私達『何者ですか』だって!」「何って。日雇いの清掃員ですよー」「だとさ」「ホントに換気扇の掃除をしに来たんすか?」「おおよ」

 何だ。黒沢がリーダーじゃないのか? 単に年功序列?

 それにしても怪しい連中じゃないか。おおよそ『達が集めた』とは思えない。達は危険人物を嗅ぎ分ける特異能力と、驚異的な逃げ足を併せ持った男だ。こんなに危ない奴をホイホイ連れて来る訳がない。これは後で達に確認せねば。いや待て。出来る、のか?


「……。もしかしてあんた達、ブラッk」「おおっと。手が滑った」「うわぁあぁっ!」「いやぁ危なかったねぇ」「何すんすか!」

 黒沢のハンドル操作で、虎雄の目の前に柱が急接近していた。

 虎雄は確信する。コイツら征剣会より『ヤヴァイ奴ら』だと。

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