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海底パイプライン(四百四十)

「ホントだじゃネェ」『バシッ!』「イテッ。出しますよっ」

 字数の関係で表現出来なかったが、実際には一言づつ頭を引っ叩かれながらのエンジン始動。そして出発である。出発? である?


「ギアってどれですかね?」『バシッ!』「ハンドルの横に付いてんだろうがっ!」「これですか?」『カッチンカッチン』「あぁ」「反対のっ!」「これ?」『ワッシュワッシュ』「やると思った。ワイパーを止めろっ!」『カッカッカッカッ』「あっ」「速くしてどうするっ!」「イテッ」「わたしゃ止めろって言ったんだよっ! 免許持ってんだろうねぇ?」「有りますって!」「じゃぁ何でコラムシフトも知らねぇんだっ!」「これギアなんですかぁ?」「そうだよ。横っちょにちゃんと1、2、3、4って書いてあんだろっ!」「あっ、ホントだ。上奥が一速で手前が二速。一速に入れてぇ、行きまーす。あっ動いたっ! 動きましたよっ!」「前見ろ前っ!」

 まるで教習所の教官と生徒か。教官が荷台から指示を出すなんて、本来の位置とは大分違う。それに危険が迫っても、ブレーキを踏むことが出来ないのが良くないと思う。


「おい良いか」「はい。何でしょ」「外に出たらアクセル全開な」

 何だ。今日の教官はブレーキの存在を全否定してくるタイプか。

 了解と頷き、扉の開門に必要な『顔認証』を終えたタイミングで『えっ? 今何て言った?』と思っても既に遅い。


「ヨシッ行けぇえぇっ! アクセル全開だっ!」「イエーイ!」

 まだ完全に上がりきっていない防水シャッターを前にして、荷台は既に歓喜の渦である。これから真暗なアンダーグラウンドを、生温い風を頬に受けながらのアクセル全開走行を期待して。

 振り返る余裕なんて四平には無い。下手すっと、屋根を擦りながら『出せ出せ出せ』とか言い兼ねない。いや良く見て。

 防水シャッターを出たら九十度右に曲がって坂を降りるのよ。で、スピードを出すならその後よ。その後。判る?


「出せ出せ出せぇ!」「まだ天井擦りますって。防水シャッター壊したら、超怒られますよ?」「知ったこっちゃねぇ。運転手はテメェだろうが」「……」「ほらぁ。カウントダウンしてやろうかw」

 断じてお断りである。動き出すのはちゃんとシャッターが上がり切ってからだし、スピードを出すのは、出入口の狭いスロープを降りてからです。しかし『四平の頬をペチペチ叩く』のが、もしかして『カウントダウン』なのだろうか。段々痛くなっているのだが。


「よし出せっ! おせぇ! セカンドに入れろっ! 来るぞっ!」

 多分『荷台に居る』から口だけなのだろう。もし助手席に座っていたら、腕を伸ばして勝手に操作し兼ねない勢いである。


『ガチャ』「おせーって言ってんだろっ! 死にてえのかっ!」

 突然ドアが開いて黒沢が隣に来ていた。驚く間もなく四平の右足に激痛が走る。するとトラックは軽快に走り始めたではないか。

 四平が想定した二十倍の速度でスロープを下って行く。


「うおぉおぉ!」「ウルセェッ! ほら曲がれっ!」『キキィッ!』

 乱暴にハンドル操作までされ、四平は『シートベルトしてて良かった』と思う。馬鹿め。左に思いっきりハンドルを切れば、黒沢の方が飛んで行ってしまうに決まっているではないか。そのまま落ちろ。


「おりゃぁっ!」『バキッ! ドォオォンッ!』「ほら加速ぅっ!」

 黒沢が『何か』を蹴り倒したのを見た四平は、指示に従うのみ。

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