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海底パイプライン(四百三十九)

「GRUにこんな間抜けが居るかっ!」「アイ! 鋭いねぇおねぇ」

 バシッと一発。おべっかごと吹き飛ばして話は終わりだ。

 角を曲がって遊郭の街並みが見えなくなって直ぐ、トラックの荷台が現れる。黒沢がカミダイスキーの相手をしている間、これ幸いに辺りをキョロキョロしていた男達も付いて来た。

 名残惜しそうに『いつか来ような』とか、勝手に約束し合うのは良いが『入場条件』はどちらも知らない。一つ判っているのは『すんげー金積まないとダメなんだろうな』だけ。ハイ正解。


「めんどくせーから、お前も一緒に行くかっ!」「何処へっ!」

 カミダイスキーを荷台に放り込んだ黒沢は、両手をパンパンとやるだけで『答えるつもり』は無いらしい。堂々と運転席の方へ行く辺り、運転するつもりなのだろう。荷台を掴み、グイッと体を曲げると運転台の下を覗き込む。気になるのはオイル類の漏れか、それとも不審物の有無か。ここで判り易く『赤ランプ』なんて……。

 ある訳ない。首を左右に振り、満足そうに体を起こした。そして運転席のドアに手を伸ばす。とそこへ、四平がすっ飛んで来る。


「あの、すいませんが、運転は俺です」「あぁあぁ?」「いや顔認証とか色々あるんで」「ちっ。じゃぁしょうがないねぇ。いいさ!」

 ぶん殴られると思っていたが、意外にもあっさりと引いたではないか。最後の『いいさ』が、ちょっと引っ掛かるけど。

 四平がドアを開け、運転席に座る。と、シートベルトを締める前に、窓をコンコンと叩く音がするではないか。見れば黒沢だ。


『んなモンしてないで良いから開けろ!』「俺だけは助かろうと思ってるんですから、シートベルト位、付けさせて下さいよっ!」『っせーな。割ってやろうかぁ? あぁあぁ!』「開けますからっ!」

 割る前に警告してくれるだなんて。なんて親切なんでしょう。とは思っていない。大体普通の人は『運転席横の窓が割れたらどうなるか』なんて経験が無いし、大体乗せて貰っている分際で『いきなり割るぞ』なんて、冗談にも店名にもなりゃしないではないか。


「たく。何すか?」「それが年上に対する口の利き方かっ!」

 一喝されて四平はムッとする。心の中では『単にババアなだけだろうが』と思っているし、それを臆することなく表にも出す。事実だし、三秒後にどうなろうが、そんなの知ったこっちゃ……。


『バフッ!』「テメェの教育が悪いから『こう』なんだろうがっ!」

 三秒も待って貰えなかった。四平をヘッドレストに沈めた右手が、今は虎雄の方へ向かって一直線に伸びている。首を竦めるしかなかった。既にシートベルトを装着済なのが裏目に出た形だ。


「すいません」「教育ってのはな! 人を生かすために有るんだろうがっ!」「はい」「ホントに判ってんのかっ!」「ハイ!」「適当にハイハイ言いやがって……」「いえあの……。決してそんな」

 黒沢の右手が窓の外に出ても安心なんて出来ぬ。引っ込んだ右手が次に見えた瞬間、『何を掴んでいるか』を考えてしまったからだ。虎雄は本能的に両手を前に出し、防御態勢を取るしかない。


「上から言われたことをだなぁ、ただ下のモンに伝えるだけなんて、そんなのはテメェ『教育』とは言わんのじゃ!」「はいぃっ!」

 何の話。良く判らんが、今は兎に角『ありがとうございます』だ。


「ちっ出せ」「あっハイ」「エンジンを掛けろっ!」「あぁそうか」「クラッチを踏みながらっ!」「えっ」『ブルン』「あっホントだ」

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