物語の裏側 sideハゲロ
ネコはサボりがち
俺はどこにでもいるようなクソみたいなサラリーマンだった。
毎日上司にこき使われ、残業は日常茶飯事、その後家に帰っては死んだように眠る毎日だった。
何時しか俺の心は過酷な労働のせいで磨り減っていた。限界だったんだ。何の遣り甲斐すら持ないくせに限界まで身体に鞭打やがって、そしていつの間にか死んでいくんだ。
「クソが……」
俺は自殺を決意した。こんなつまらない人生を送り続ける位なら死んだ方がましだ。会社のビルから飛び降りて盛大に死んでやろう。そしたら給料は増えないのに残業ばかり増やす上司や自分の為だけに俺の貯金を使い果たした彼女はどんな顔をするだろうな? それを考えると今から死ぬというのに愉快な気持ちになった。吠え面かきやがれクソ共が!
そう笑って飛び降りようとした直前俺の視界にある文字が浮かんだ。それは広告だった。
『あなたを第二の世界に招待します』
それを見た瞬間さっきまで高揚していた気分はすっかり冷め、今更死への恐怖が沸き上がっていた。俺は何をしようとしてたんだ!? 膝がガクガクと震えていた。そして──
「あっ……」
足が滑った。俺は目を最後の最後に生きる希望を与えやがったあの広告を恨んだ。クソがッ! 死にたくない! 死にたくない!
「ちょ、アニキ何してるんすか!?」
あれ死んでない? 何で俺まだ死んでないの? 下? ……うわぁぁぁぁ!!!? 超高ぇ!!? 死ぬ! 死ぬ死ぬ死ぬ!!!?
「ちょっと落ち着いて下さい! 死にますよ!?」
その声を聞いた瞬間不思議と俺の心は鎮まった。この声は──
「アニキ! 何してんすかっ!? 私を置いて死ぬつもりっすか!? 許しませんよ! そんなの絶対許しませんからっ!!!」
何で泣いてんだこいつ、何で必死なんだよ、俺なんかのために……クソッ!
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あの後結局俺は死ねなかった、いや死なずに済んだ。そして俺は会社を辞めた。あいつは俺の後輩で面倒を見てたらなつかれたらしく、事あるごとに俺に着いてきて「アニキぃ!」と付いてくるアイツはちょっと可愛かった……クソッ!? 気の迷いだ! 気の迷い!
会社を辞めた後、結局俺は何も出来なかった。いやしなかったというのが正しいかもな。怖いんだよ、またクソみたいな思いするかもしれないって思うと、身体震えて言うこと聴かねぇんだクソがっ!
するとある日スマホにメールが来た。
『アニキぃ! することないなら私と一緒にゲームするっすよ!』
俺のことさらりとdisってやがる、しかも真実だから反論できねぇクソっ! メールにはゲームの名前とキャッチフレーズが載っていた。
「エターナル・グロウ・オンライン?『あなたを第二の世界に招待します』」
……これって──
『っつーか、お前仕事はいいのかよ? サボってるとあのハゲにどやされるぞ?』
ハゲとは俺の元上司のことだ。人をこき使うわ、自分の失敗を部下に擦り付けるわ、その癖人の手柄は横取りするわでクソな上司だ。俺が会社を辞める時も「お前みたいな使えないのをいままで見てやったのは誰だと思ってる!」とふざけたこと抜かしやがったからその頭のヅラ剥がしてゴミ箱にぶちこんでやった。
あの時の顔を思い出すだけで今でも笑えてくるな。
『あ、私も会社辞めたんで』
『はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!?』
『だから沢山ゲームできるっすねっ!』
Oh……バカだバカだと思ってはいたもののここまでとは思わなかった。……クソッ! ここまでやられたらやらないわけにはいかねぇえよなっ!
『私もうアカウント作ってるんで、Wは7、プレイヤー名はニエっすよー、早く来ないとアニキの家まで確認に来るっすからねー!』
なんというか……あれだな、俺はこのゲームを切っ掛けに何か変われる気がした。あの時この広告を見てなかったら俺はアイツの助けも間に合わず死んでいただろうからな。
その数日後、会社から支払われるこすっからい給料をひたすら貯めてきたお蔭で、結構ある残高をゲームに必要な物を一式揃えために使った。尚、退職金は支払われなかったけどなっ! 最後までクソ会社だったよっ!
セッティングには手間取ったが、後輩から『そろそろ来ないとアニキの家に突撃するっすよ?』という脅しが送られてきて、俺は急いでゲームをセッティングした。
「ちっ! 最近のゲームはよく分からん配線が多すぎだろクソッ! あれから三時間だぞっ! 素直に業者の言うこと聞いとけば良かったクソがっ!」
こんなに手間取るとか店員の憐れむ視線も納得だクソッ!
『アニキぃまだー?』
後輩から再びメールが送られてきた。そろそろ痺れを切らすとこだな、俺は『今からゲームを始める』と返信し、ベットに横たわり、頭にヘットギアという精密機械を取り付ける。
「自殺しようとした俺を生かしたんだ、なら相応のものを見せてみろ新世界」
俺はエタグロを起動した。
バステト『この話の人物って誰なのです?』
リン「後で判るから待っててにゃー」




