「魔法とは」
短いです。。。
「魔法とは」
加速の魔法のおかげで予想以上に早く到着した関所で、昼食を兼ねて少し長めの休憩を取ることにした。ついでに『フェイ先生の魔法講座』をすることになった。
関所というのは国境にある施設で、通過する旅人の身分証明カードに、専用の魔法具で通過を記録するところである。
ユーリの場合は冒険者ギルドカードになるが、一般の人も申請すればもらえるカードがある。パスポートのようなものだ。
もっとも、関所を通らないと入国できないかといえば、そうではない。入国はできる。ただし首都には入れない。関所を通らない怪しい人物ということになるからだ。
関所の人員は国境を接する両国から役人と警備が数名派遣されており、概ね15日程度の交代制になっている。
この関所にはサニエスタ王国と、これから向かうタスバルがあるシルヴァスタ商業都市連合国から、役人が一人ずつ、警備が2人ずつ常駐していた。
関所の周囲に街を作れば良かったのではないか、という意見もあったが、どちらの国が管理するかなど揉め事の原因になるのを見越して、関所から徒歩で半日程度のところに街を作るという案で合意した。それが件の砦街である。
つまり、反対側に半日歩けば商業都市連合国の街があるということになる。
ユーリたちは、今日はその街で泊まることに決めたため、時間に余裕ができたのである。
「まず最初に言っておくけど、僕が教えるのは魔法の基礎の基礎だけだから」
「ええーっ」
「具体的な魔法はギルドの養成所で教えてもらいなさい。僕は、ユーリもだけど、教本に載っているような呪文を教えてあげることができないからね」
「どうしてですか?」
「君たちは見たと思うけど、ユーリは魔法を使うとき、呪文を口にしてた?」
「あ……」
「してないよね。これは大前提なんだけど、魔法は想像力なんだ。細部まで想像できれば、より正確な魔法が使えるし、魔力の消費も少ない。その想像力を補助するのが呪文の役割だから、想像さえできれば呪文は唱える必要がない。で、僕もユーリも呪文は唱えないから教えられない」
すぐにでも魔法を使ってみたかったイアンとキャシーは肩を落として頷いた。納得はしたものの残念だという気持ちが消せないようだ。
残念そうな表情をしているのは2人だけではない。アレクもだ。
関所に着いた途端、イアンたちが自分たちが見た魔法を興奮気味に話すのを聞いて興味が沸き、目を輝かせてフェイを見つめている。アレクの隣でクロードも興味深そうに聞いていた。
馬に乗っていた2人は後ろを振り返ることなく前進していたため、ユーリの魔法を見なかったのだ。
ちなみに、魔法の話ということで興味が沸いたらしく、キアとジスも聞いていた。
魔法だけでなく、それを教えてくれるフェイや一緒に聞いている3人組にも興味を持ってほしいとロルとアリアは心の中で思っていたが、子どもたちの人間不信は根深いようで、話しているフェイはともかく3人組には見向きもしなかった。
その様子に、ロルとアリアは顔を見合わせてため息を吐いた。
そこからはフェイ先生の質問コーナーになった。
魔法って何?−想像を具現する力。
どうやって使うの?−想像しながら魔力を体外に出す。
どんなことができる?−想像できることならば何でも。ただし、魔力量による。
などなど。
最後に。
「弟子入りしたわけでもなく、仲良しパーティでもない魔法使いに魔法を教えてって頼むのはマナー違反だからね」
「そうなんですか?」
「教えたら真似されるかもしれないし、対策を考えられるかもしれない。魔法は魔法使いの想像力と発想力の賜物だから、自分の魔法を赤の他人に教える魔法使いはいない。それをあえて聞くのは失礼になる。まぁ養成所でも言われるだろうけど」
「じゃあ、自分の魔法は自分で創らないとダメなの?」
「基本の魔法は教本にも載っているし、いくつかは図書館で調べても見つかると思う。タスバルは大きい都市だから図書館もそれなりに充実してるだろうし。でも複雑なのは創るしかないね。他人が使ったのを見て真似ることもできるけど、そういう魔法は無駄が多くなるから勧めない。君たちは剣がメインなんだから『肉体強化』の魔法がいいと思うけどな」
「『肉体強化』! あれ、凄いですよね!」
イアンが興奮気味に声を上げる。彼は最初の夜営地でのことを思い出していた。
「そうらしいね。僕は前に出ないから、自身にかけたことはほとんどなくて、実はよくわからないんだ。あとは、そうだな。ユーリ」
「ん?」
「剣出してくれる?」
ユーリは突然振られた内容に首を傾げながら、かばんの中から昔使っていた中堅どころの剣を取り出す。例のレプリカ剣ではない。
「『炎の剣』とか『いかずちの剣』とかやってみて」
「ああ」
何をさせたいのか理解した彼女は、刀身に炎を纏わせた。そのまま、軽く振り回す。
「ああいうのもいいと思う」
フェイの声は彼らに届いているか怪しい。
彼らは一様に目を輝かせて炎の剣を見つめていた。
「……ユーリは剣も使えるんだな」
「使えるよー。ギルドの得意武器の登録、剣だもん」
剣の振り方で熟練度を測ったらしいクロードに、ユーリはあっさりと答えた。嘘をつく意味も理由もないからだ。
「本当にFランクかと言いたい」
「Fランクだよ。昇格試験を受けないかと言われたことはあるけど」
「受けなかったのか? もったいない!」
「だって、腕に自信があるだけじゃダメでしょ? 依頼慣れしてないし」
「昇格してから慣れれば良かったのに……」
クロードは酷く悔しそうに言った。他人事なのに。
ユーリは、彼のお人好し度に苦笑した。
「急いでないから、のんびりでいいのよ」
どうせ2年ぐらい帰れないんだし、と心の中で呟く。
そうして、「フェイ先生の魔法講座(超初級編)」が終了し、彼らは関所を出発する。
サニエスタ王国を出国し、シルヴァスタ商業都市連合国へ入国したのだった。
ありがとうございました。




