第071話 フォスジャルボの戦い
今を遡ること1時間ほど前のことである。
ここは、獣人族国家ニラモリアの首都、ニラモウラ。この国の中央神殿内にある管理助手、シノの執務室に俺はひとりでやって来た。
「……というわけでお前さんの亜空間倉庫に神殿騎士風ゴーレムを1万体転送しておいたから自由に使ってくれ」
「ダーリン!ありがとうございます!
ああ……よかった!これでウチのかわいい子たちを戦場に送り出さなくても済みそうです」
「かわいい子たち……か。そうだよな。
ハニーの努力の賜物なんだろうな。獣人族の子たちは信心深い者たちが多いから俺もかわいくてなぁ。
ハニーんとこの子は神殿関係者じゃねぇ子たちも何も言わねぇのにちゃんと俺の正体に気付くんだから大したもんだよ。嬉しくなっちまうぜ。
しかもちゃんと敬意を払ってくれるんだからな。かわいいよなぁ。思わず守ってやりたくなっちまう」
「うふふ。ダーリンにそう言ってもらえると、自分のことのように嬉しいです」
「ははは。過干渉と言われるかも知んねぇが、俺はこの国、ニラモリアの子たちを絶対に守ってやる!
シオン教徒どもめっ!攻め込めるもんなら攻め込んできてみろってんだ!
ボッコボコのギッタンギタンに……けちょんけちょんに打ち負かしてやるっ!」
『上様。お知らせいたしたき儀がございます』
「シノ、ちょっと悪ぃ。念話が入った。そのままちょっと待っててくれ」
「はい。承知しました」
『おお。おギンか。シオン神聖国で何かあったのか?』
『はい。シオン神聖国と、サル族の独裁国家であるワッドランド帝国が軍事同盟を締結したことが判明しました。
両国は共闘してニラモリアへ侵攻しようとしています』
『なにっ!?シオンとワッドランドがかっ!?』
『はい』
分を弁えぬ者どもめっ!許さん!
ならばワッドランドとニラモリアとの国境線にもミニヨンとゴーレムを配備する必要があるな。
『おギン。大儀である!いつもありがとうな。助かるぜ』
『ははっ!もったいなきお言葉!』
『ホント、お前さんのように美人で仕事ができて頼りになる子が他の種族にもいてくれたらなぁ……。こういうときに心底そう思うぜ』
『い、いえ。そんな……』
『今度他の種族にも忍者部隊を作ろうと思っているから、その時はどうか俺に力を貸してくれ。お前さんだけが頼りだ。頼む!』
『は、はいっ!喜んで!』
『おギン……俺にはお前さんが必要なんだ。お前さんがいねぇとダメなんだよ。
だから、絶対に無理だけはするなよ。命は大切にしてくれよな?』
『はひゃぁっ!!?は、はいっ!過分なるお言葉、ありがとうございます!』
『困っていることはねぇか?足りないものとか……?
遠慮無しに言ってくれよ? お前さんの頼みならなんでも聞いてやるぜ』
『な、ななななな、なんでもっ!?はふっ!……』
ん?クールなおギンにしては珍しく動揺しているな?どうしたんだろう?
『今度ゆっくり飯でも食いながら、今後のことを話そうな。それじゃぁな。
引き続きよろしく頼むな』
『こ、今後のことっ!?? はひぃっ!……し、失礼しまふ!』
な、なんか最後の方は様子が変だったよな……
おギンも大分疲れているのかな? 今度長期休暇をやらないとなぁ……。
「ダーリン、何かあったのでしょうか?」
「ああ。ワッドランドがシオンと手を組みやがった。この国へ侵攻するつもりだ。
俺たちを敵に回すとはなぁ……バカなヤツらだぜ。ワッドランドもこの惑星から消し去ってもらいてぇようだなぁ……ふっふっふっ!」
「それで……どうしましょう?」
「取り敢えず地図を見せてくれ」
「……はい。どうぞ」
「えーと、ワッドランドが攻め込んでくるとしたらどこだ?」
「国境のほとんどで両国を分ける岩山が立ち塞がっていますので……彼等がもしも侵攻してくるとしたら……ここです!この峡谷にある関、フォスジャルボですね。でも、難攻不落ですよ」
「ここは空からの攻撃にも耐えられる作りなのか?」
「いえ。サル族に空中から攻撃できる兵器はありませんし、能力もありませんので想定されていません。どうしてですか?」
「ああ。多分同盟を結んだシオンの魔導士が手を貸すだろうからだ。
そうなると恐らくレッサードラゴンで空から攻撃を仕掛けてくる。マズいな。
早急にミニヨンとゴーレムを配備した方がいいな」
「な、なるほど。じゃ、早速先ほどいただいたゴーレムたちを……」
「いや。あれはシオン神聖国側の防衛に使ってくれ。新しくミニヨンとゴーレムを各2万体ずつ生成して、ワッドランド側の防衛用に配備するから」
こんなこともあるんじゃないかと思って、ここへ持ってくるゴーレムを生成する時に、大量生産用のマクロを組んでおいたのだが……大正解だったな。
ミニヨンの方も、ゴーレム用の大量生産マクロをコピーして、チョコチョコッと修正すれば……はい、できあがり!
これでマクロ実行時に生成数を入力すれば後は放っておくだけで勝手に生成してくれる。手動で生成すると一晩くらいかかるんだろうが、マクロだと数分で生成が終わる。
ミニヨンとゴーレムを適切な場所に配置するのは……全知師に丸投げしよう!
そう思っていた時である。
>>マスター。報告します。
ワッドランド軍、シオン軍の混成部隊がニラモリアの関を攻撃中!
ニラモリアの関、フォスジャルボが攻撃されています!
戦力は、歩兵3千。レッサードラゴン兵10。
手を打つのが遅れたかっ!くそっ!
<<全知師!
フォスジャルボへミニヨン10体とゴーレム100体を派遣せよ!
なお、派遣後ただちに敵の殲滅にあたらせろ!
>>承知!
ミニヨン、及び、ゴーレムを転送します……転送完了!
戦術AI起動。殲滅モード開始!
ミニヨン、及び、ゴーレムは敵殲滅行動を開始しました。
<<全知師!続いて命令する!
ミニヨンとゴーレムたちを、ニラモリアとワッドランドとの国境線上で防衛上重要と思われる場所を割り出して配備してくれ!
ただし、フォスジャルボは除け!
>>承知!
地形分析中……完了!
想定される敵戦略のシミュレーション……完了!
ミニヨン、及び、ゴーレムを配備……配備完了!
戦術AI起動。自動防衛モード開始!……防衛準備が完了しました。
<<よし!ありがとう、全知師!
「シノ。フォスジャルボが攻撃されている」
「えっ!?まさかこんなに早く!?」
「ああ。その他の国境線上の要所にはミニヨンとゴーレムを配備した。
指揮権はお前さんに与えるから後のことは頼む!
俺はこれからフォスジャルボへ行ってくる! あ、それから、フォスジャルボの方にも既にミニヨンとゴーレムは派遣済だからな。安心しろ!
現在敵を殲滅中だ。俺が今から行って怪我人の治療と死者の蘇生をしてくる!」
「わ、私も行きますっ!」
「いや。ハニーはここに残ってくれ。シオン神聖国側でも動きがあるかも知んねぇからな。その時はシオリと共に対処してくれ!」
「はい。分かりました!」
シノはちょっと緊張気味だ。戦争だからな……仕方がないわなぁ。
「ハニー、リラックスして。
ミニヨンもゴーレムも戦術AIで勝手に防衛してくれると思うから、お前さんは多分、見ているだけで良いと思う、だから……力を抜いて」
「は、はい」
「大丈夫だ。俺がついている」
でも……サル族も獣人族の一種族だ。シノの管理対象なんだが殲滅してもいいのだろうかな?
「ところで、サル族も獣人族の一員で、お前さんの管理対象だよな?」
「はい、そうです」
「サル族を根絶やしにしちまうかも知んねぇけど……いいか?」
「えっ!?そ、それはちょっと……困ります。
ダーリンの后候補者の中にもサル族の者がおりますので、後々問題になってくるかも知れませんし……それにサル族の者たちのすべてが悪いのではありません。
悪いのは皇帝シザルです。ですから、どうか寛大なるご処置をお願いします!」
「そうか。分かった。
だが、俺に歯向かうヤツと他者を凌辱するような輩には絶対容赦しねぇから、そのことは承知してくれよ?」
「はい。それはもちろんです」
そんな時である。
『ああ……神様!助けてっ!殺されちゃうよぉ~。助けてっ!神様!!』
助けを求める少女の声が頭の中で響く……
「シノ。フォスジャルボ付近にいる女の子が助けを求めているんで行ってくる!
後は頼んだぞ!」
「はい!お気をつけになって下さい!」
しばらくすると、また同じ少女の声が……
『ちがうもん!シオンなんて神様はいないもん!神様!助けて!お願いです!』
そのすぐ後にも……
『ああ……神様、もうダメです。どうか天国に行けますように……』
早く行ってやらないとな……
「それじゃ、行ってくる!……転移!」
◇◇◇◇◇◇◇
『シールド展開!』
助けを求める少女のもとへ転移するとすぐにシールドを展開する……
目の前にいるレッサードラゴンが、今にも攻撃しそうであったからだ!
その直後、レッサードラゴンの口からファイヤーボールが放たれたっ!
もはや少女の命は風前の灯火なのか?と思われたのだが、レッサードラゴンから放たれたファイヤーボールは展開されたシールドが弾き飛ばすっ!
あわや……というところで少女は事なきを得たのだった。
「へっ!?な、なにっ!?ファイヤーボールを弾いただと!?そんなバカなっ!」
「よう、お嬢ちゃん。もう大丈夫だぜ! 助けに来たぜ! 安心しなっ!」
その声を聞いてテナーがゆっくりと目を開けるが、彼女は憮然としてる……
そう、死を覚悟した直後の出来事に驚いて呆然としているようだ。
「大丈夫かい?どこも怪我はしていないかな?助けに来たよ」
「あなたは……神様?です・か?」
「ああ。そうだよ。お前さんの声が聞こえたから助けに来たぜ」
「ううう……うわぁーーーん!が・び・ざ・ば~ごばがっだじょぉ~」
少女は『神様ー、怖かったよぉ-』と言ったのだろう……
泣きながら俺にひしと抱きついてきた。
「よし、よし。すっごく怖かったよなぁ~。うん、うん。でも、もう大丈夫だよ。俺が守ってやるからな」
「えええーいっ!レッサードラゴンよ!もっと強力なファイヤーボールをガンガンぶち込め!あいつらをぶっ殺すんだ!容赦は無用だ!やれぇーーっ!!」
「きゃああああぁぁぁぁっ!」
バッ!バッ!バッ!バッ!バンッ!……
レッサードラゴンが攻撃態勢に入ったのを見た少女は悲鳴を上げて俺の胸に顔を埋める。そして、ガタガタと震え出した!
レッサードラゴンは言われた通り、俺たち目がけてファイヤーボールをガンガン放ってくる!最大威力のファイヤーボールが次々に撃ち込まれてくるのだ!
だが!そのすべてをシールドが弾き飛すっ!当然だ!
レッサードラゴンの最大火力による連続攻撃でもびくともしない!
敵魔導士はそれを目の当たりにして驚愕する!
顔には脂汗がだらだらと流れる!
俺はニヤリと笑ってやった。傍から見るとどっちが悪者なのか分からない。
「ははは。どうした?もう打ち止めなのか?な~んだ、つまらねぇなぁ……。
それじゃぁ、今度はこっちの番だよなぁ。覚悟しろよ。いいか?行くぜ!」
これから起こることを少女に見せるわけにはいかない。
「お嬢ちゃん、俺がいいと言うまでちょっと目を瞑っててくれるかな?」
少女は俺の胸に顔を埋めながら『うん、うん』と頷いている。
R15指定レベルの残酷シーンはちょっと見せられねぇからなぁ……。
「それじゃぁ、いくぜ! 烈火弾っ!」
何者をも焼き尽くす『烈火』を圧縮してボール状にしてから敵に撃ち込む!
「ぎゃっ…」
烈火弾が近づくだけでレッサードラゴンごと敵は一瞬で蒸発してしまった!
悲鳴すら上げる暇もなかったようだ。絶叫しようとした瞬間に焼失したのだ!
『あらら、烈火弾が近づいただけだぞ!?それだけで蒸発しちまうのかっ!?
しかも一瞬かよ?……あっ!?マズいっ!えいっ!宇宙へ飛んで行けっ!』
到達目標を失った烈火弾がそのまま空中を真っ直ぐに突き進んでいくのを見て、慌ててその軌道を変えて、上空へ、宇宙空間へと放出しようとしたのである。
烈火弾は高度を上げるにつれ、その威力が衰え、大気圏外に出る前に消えた。
ふぅ~、焦ったぜっ!祈るような気持ちで軌道が変わるように強く念じたが……なんとかうまくいったなぁ。
しかし、自分でやっておいてなんだけど、軌道のコントロールもできるのかぁ。
これは便利だなぁ。ハニーたちにも後でやり方を教えてやろうかな。って、あの天才ノアハならもう軌道をコントロールできることも知っていたりしてなぁ……。
「さあ、お嬢ちゃん、もういいぜ」
俺の胸から顔を離し、あたりをキョロキョロと見回している。
今までそこにいた敵がいないことが不思議なようだ。
そんな少女の顔に焦りの表情が浮かぶ……黄昏時なのに赤々と明るい東の空を見たからだ。その方向にはフォスジャルボがある。
「お父ちゃん……。神様。お父ちゃんが!お父ちゃんが!……
助けて!神様、お父ちゃんを助けて!」
「ああ。助けてやるぜ。お父ちゃんはフォスジャルボにいるのか?」
東の方角を見ながらこの子は言っているから、フォスジャルボにこの子の父親がいることに間違いないだろう。
「うん。お父ちゃんはフォスジャルボの警備隊員なの。早くぅ。お父ちゃんが死んじゃうよぉ~。お願い、神様」
「よし。それじゃぁ、フォスジャルボに移動するから俺にしっかりと掴まって!」
「うん!」
少女が再び俺にしがみつく……。
「転移!」
◇◇◇◇◇◇◆
フォスジャルボは轟轟と音を立てて燃えている!
ミニヨンとゴーレムが敵を殲滅した後なので敵の姿はない。この場所からワッドランド方面へと離れていくサル族の生命体反応が500強、マップで確認できる。
どうやら敵の撃退には成功したようだな。
ニラモリア兵の生存者はどこにいるのかな……
「お嬢ちゃん、そのままにしてて。あっちを見るんじゃないよ」
ひょっとすると遺体が目に入るかも知れないと思ったので言ったのだが……
見るなと言われると見たくなるのが人の相。少女はチラリと見てしまった。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁーーっ!お父ちゃんっ!……」
フォスジャルボの楼閣と兵舎が炎に包まれているのを見て、少女は悲鳴を上げ、父を呼び、そして、気を失ってしまった……
「テナーっ!」
少女の悲鳴が聞こえたのか、ひとりの男が駆け寄ってきた。
この場に送り込んだ神殿騎士風ゴーレムたちは戦いを終えて、関から伸びる道の左右に分かれて整列している。その後ろから彼は飛び出してきたのだ。
マップ上で確認するとゴーレムたちの後ろには獣人族の生命体反応が120ほどある。この関を守る守備隊員たちのようだ。
「お前さんはこの子の父親か?」
「そ、そうだ!今すぐ娘を離せ!さもないと容赦はしないぞ!」
男は剣を抜き身構える。
「娘のことが心配なのは分かるが、まあ落ち着け。俺が悪ぃヤツに見えるのか?」
「見える!さあ、娘を引き渡せ!さあっ!」
み、見えるのか!?俺は悪者に……み、見えるかもなぁ。でも、凹むなぁ……。
少々腹立たしいがこの男の気持ちも分からんでもない。娘のことが心配で冷静な判断ができないのだろう。
眉間の印を一際輝かせて、その印を指差しながら……
「悪人に見えるたぁ、酷ぇなぁ。ほら、これを見ろ!俺はこういう者だ!」
「えっ!?う、上様!……ははぁぁぁっ!」
少女、テナーの父親、アルトは俺の目の前でひれ伏す。
「これ、これ。そんなことはしなくてもいい。ほら。娘さんを返すぜ」
「はっ!ありがとうございます!」
◇◇◇◇◇◆◇
ゴーレムとミニヨンたちを派遣するタイミングが良かったようで、幸いなことに死者はいなかった。怪我人は十数名いたが、その者たちもすでに治療済だ。
そしてもちろん、フォスジャルボの楼閣や兵舎も完全修復してある。
またサル族どもが攻めてこないとも限らないからだ。
さてと、サル族の死者をどうするかだなぁ……。
獣人族担当助手のシノの話じゃ、悪いのは独裁者である皇帝シザルだということだから、魂の色を見て善良なヤツらだけを復活させてやるか……。
<<全知師。
サル族の死者の内、魂の色が"グリーン"以上の善人だけを検索しろ!
そして、リストアップされた者たちをターゲット指定してくれ!
>>承知。
サル族の死者に対して、魂の色が"グリーン"から"スカイブルー"の者を検索。
…………検索完了!……ターゲット指定しました。
<<ありがとう。全知師。後はこちらでやる。
ここで蘇生すると暴れられた時にマズいな。取り敢えずフォスジャルボの東側、ワッドランド側に死者を全員転送するか……
「転送!」
よし。では、修復と蘇生だな。
フォスジャルボの防壁上、ワッドランド側がよく見える位置に移動し……
「修復!からのぉ~蘇生!」
フォスジャルボの東側、ワッドランド側で死者たちが一瞬、目映いばかりの光に包まれる。そして、その光はすぐに消えた。
サル族の死者たちがその瞬間に蘇生されたのだ。
すかさず現在ターゲット指定されている死者だった者たちに念話回線を繋ぐ……
『サル族の者どもよ!こちらを見よ!俺はこの世界の神である!』
眉間の印を一際輝かせる!
"おおぉ………"
蘇生させた者たちが一斉にひれ伏す。
シノが言っていたように、こいつらは悪くないのかも知れない。
『なぜ生きているのか不思議かも知れねぇが、魂の綺麗なお前さんたちを殺すのが惜しいので蘇生させたのだ!』
ざわざわざわ……
「ああ……我らが偉大なる神よ。ありがとうございます」
「し、信じられねぇ……き、奇跡だ……」
ざわざわざわ……
『いいか、よく聞け!今回はこのままお前さんたちを解放してやるが……』
強烈に威圧する。
『だが……次に攻めてきたら容赦なく地獄に送ってやる!……二度とニラモリアを攻めようとは思うなよ。攻めてきたら……』
さらに威圧を強める。
『お前さんたちはもちろん、お前さんたちの家族も含めて……この世界からワッドランドそのものを消し去ってやるから、そのつもりでなっ!俺は本気だ!』
"ひぃぃぃぃぃっ!"
ざわざわざわ……ざわざわざわ……
ざわざわざわ……
<<全知師。
ワッドランド帝国を監視している衛星をワッドランド皇帝シザルの居城上空に移動させろ!
移動が完了したらフェイザー砲の発射準備!出力レベルは城の屋根を消し去る程度に調整しろ!その調整は任せる!
>>承知!
ワッドランド監視衛星をシザル居城上空へ移動中………移動完了!
……フェイザー砲の発射準備……完了!
……フェイザー砲の出力調整、出力レベルは6にセット……セット完了!
……大気による散乱に対する補正中……補正完了!
いつでも発射可能です。発射命令を待機中……
蘇生させたサル族の者たちに、俺がこれから何をするのかを見せるため、ワッドランド帝国の皇帝シザルの居城がよく見える位置にミニヨンを数体転送し……
フォスジャルボの東側に降り立ち、防壁をスクリーンにして、ミニヨンたちから送られてくる映像を映し出す。
「あ、あれは帝都のお城じゃねぇのか?」
「そ、そうだ。シザル様のお城だ」
ざわざわざわ……ざわざわざわ……
『これから、今回ニラモリアに攻め込もうとした罰を与える!』
皇帝シザルにも念話回線を繋ぐ……
『おい!シザル!てめぇ、よくもニラモリアに攻め込もうとしやがったなぁ!』
『我に話しかけてくるのはだれだ?』
『俺はこの世界の神だ!
行儀の悪ぃてめぇにこれからお仕置きをしてやるから覚悟しろ!
これは最終警告だ!今度余所の国に攻め込もうとしたら……』
強烈に威圧しながら……
『この世界からワッドランドという国が消えるぞ!てめぇら諸共な!』
<<全知師!やれっ!
>>承知!……フェイザー砲発射!
皇帝シザルの居城目がけて上空から白色に近い黄色の光が次々に照射される!
シザルの城は一瞬で屋根を失ってしまった!
"おおおぉぉぉーーっ!"
スクリーンとなっているフォスジャルボの防壁に映し出されている光景を見て、
サル族の兵士たちが驚きの声を上げた。
『うぐっ……、や、屋根がっ!?』
『これは最終警告だ。次はねぇぞ。分かったな。俺は本気だぜ』
『なっ……』
皇帝シザルとの念話回線を切る。
蘇生させたサル族の者たちとはまだ念話回線は繋がっている。
『お前さんたち。俺が本気だということはこれで分かっただろう?』
蘇生させたサル族たちはものすごい勢いで頷いている。
『お前さんたちのことも大切に思っているんだからな。俺にお前さんたちを殺させねぇでくれよ? この俺の思いを裏切るんじゃねぇぞ。いいな』
サル族たちは、鞭打ち症にでもなるんじゃないかと心配になるくらいに高速で、しかも、大きく何度も首を縦に振っている。
『よし。それじゃぁ、帰ってもいいぞ。じゃぁな!』
"ははあぁぁーーっ!"
彼等はそう言うと深く頭を垂れてから、ゆっくりと立ち上がりこの場から去って行った。ただひとりを除いて……。
その、この場に残ったサル族の男が俺に近づいてくる。
かなり上等な装備を身に付けている。サル族の指揮官か?




