第060話 魔導士マリーネルカ
俺たちの足下の魔法陣が一瞬眩しくて目を開けていられないくらいに輝いたかと思ったら、すぐに石畳の床に紋様だけを残して光りは消えた。
紋様は床に彫られたかのようになっていて、線の部分が赤い。
何らかの魔法が発動されたのだろうが……特に何の変化も起こらない?
何かされていても、俺たちが気付かないだけなのだろうか?ハニーたちも全員がキョトンとしている。
まさか、床に魔法陣を描くだけの魔法ってことはないよなぁ?
「ガハハハハハハッ!どうだ?体重が20倍になった感想は!?ガハハハハッ!
自重により押し潰されてしまうがいい!ガーーッハッハッハッハッハッ!」
あ、そういうことね!? な~んだ、つまらん。重力操作系の魔法かぁ。
局所的に重力を……魔法陣の中の重力を20倍にしたというわけね?
折角だから"ぬか喜び"させてやるか!?
いかにも苦しそうに言葉を発した……
「うぐっ……く、苦しい………」
ハニーたちが『あーあ、またダーリンの悪いクセが出た』というような表情を浮かべて苦笑いしているなぁ……。
あれ?苦しんでいるのが俺だけなのにあいつは全く不自然に思っていないのか?
俺たちの周りにはシールドが展開してある! このシールドは実に優れている!
外部からシールド内部の重力に加えられる大方の強制的な重力操作さえも防いでくれるのだ!
だから、この程度の威力の重力操作魔法では俺たちに危害を加えるようなことは絶対に不可能なのだ!
シールドの中の俺たちには全く影響はない。それどころか、何をされているのか敵に言われるまで分からなかったくらいだ!
まあ……さすがにブラックホールに放り込まれるようなことになればヤバいかも知れないが……。
「ガハハハハハハッ!どうだ?お前が侍らせている女どもを、俺のオモチャとして差し出すって言うのなら、もっと楽に殺してやるぞ!?ガハハハハッ!」
「く……くっそう……だ、誰がお前なんかに……」
苦悶の表情から一転、ニヤリと笑いながら言う……
「……な~んちゃって!ははは!
どうだ?俺の演技は?ちゃんと苦しんでいるように見えたか?はははっ!」
「ガハハ…?…な、なにっ!?そんなバカなっ!?ど、どうして平気なんだ!?」
「おいおい。俺を嘗めてもらっちゃぁ困るぜ?これでも一応神だからなぁ」
「う、煩い!この世の神はシオン様だけだ!邪神めっ!だま……」
「重力操作!重力100倍化!」
ブチャッ!……
ヤツの足下の重力を100倍にしてやったのだ。
ヤツは一瞬で自重により潰れて死んだ。呆気ない……。
しかし、神はシオン様だけだと言いながら、俺を邪神と呼ぶ?……邪神も神の内じゃないんだろうかなぁ?矛盾してないか?
「えーっ!?シン!シオン神聖国最強の魔導士、ガギガガ師を瞬殺ですかっ!?」
元シオン教聖女のマルルカとその隣にいたシオン神聖国の魔物使いのマイミィがひどく驚いている!?
「へっ?あの程度で最強なのか?100倍の重力に堪えられない重力系魔法使いが最強なのか!?シオン神聖国も人材不足だねぇ~。ははは」
マルルカとマイミィは、『呆れてものが言えない』というような表情を浮かべて絶句する。
グチャグチャに潰れたガギガガ師とやらの死体をそのままにしておくのも気持ち悪いので、死体は烈火で燃やし尽くした。
俺のハニーたちを自分のオモチャとして差し出せ…だなんてふざけたことを言いやがったクソ野郎、ガギガガの魂は当然"奈落システム"へと放り込んでやった!
まだ周りにはミノタウロスの大群がいるのでシールドの外に出たわけではない。
ガギガガを倒してからヤツの魂を"奈落システム"へ放り込むまでの一連の処理はすべてシールド内から行ったのである。
この程度の処理をするのに、わざわざ敵の側まで行って行う必要はない。
◇◇◇◇◇◇◇
ガギガガ師とやらが死んで暫くの間、俺たちを包囲していたミノタウロスたちは呆然として立ち尽くしていた。
ガギガガ師とやらの死体が、烈火によって完全に燃やし尽くされたのを見て我に返ったのか、ミノタウロスの先頭集団が一斉に襲いかかってきた!
グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!……
だが!ガギガガ師とやらが刻んだ魔法陣の中に入った瞬間、まるで見えない手か何かで、魔法陣に入った身体の部分を、思いっきり床に叩き付けられたかのようにつんのめった!?
襲いかかってきたミノタウロスの先頭集団のすべてが、魔法陣内に入った身体の部分を床に叩き付けられて潰され、そして、すべてが果てたのだった!
コイツらはアホだ……。
先頭集団が果てるのを目の当たりにしたミノタウロスの後続集団は進軍をやめ、その場に立ち竦んでいる!? 今が攻撃のチャンスだ!
「ハニーたち!ミノタウロスを殲滅せよっ!攻撃方法は問わぬ!なんでもいいから思いっきりぶっ放せ!」
"はいっ!"
こうなると一方的な展開となる。ミノタウロスたちには攻撃手段がない。
それどころか、ガギガガが作り出した強重力場の所為で俺たちに近づくことさえできない。結果は火を見るより明らか……
ヤツらはすぐに戦うのを諦めて潰走したのだった。
俺たち……いや戦ってのはハニーたちだけだから……ハニーたちの圧勝だ!
だが、これで終わりではない!
この俺が、女性を凌辱するためだけに創られたような魔物であるミノタウロスをこのまま放置しておくわけがないだろう?ふっふっふっ!
皆殺しだ!一匹残らずぶっ殺す!
「ダーリンが悪者顔になっているとお知らせします」
「うわっ!ホント!邪神モードですぅ!」
「ジー!マルルカ!お前さんたちは…ったくもう……」
やはり、ミノタウロスの残党狩りを行うにはミニヨンを使った方が良いだろう。
ということで、ミニヨンを1000体起動して、ミノタウロスを殲滅するように命じることにした。
一応念のためにマップで索敵する……
あ!女性の生命体反応が7つある!これはまずいぞ?早く救出しなければ……。
敵は女性を凌辱した上に孕み袋にするあのミノタウロスだ!
女性たちの苦痛を考えれば一刻も早く救出しなければならない!
ミニヨンへの命令を変更して、女性救出を最優先として早急に送り出す……
「ハニーたち!どうやらミノタウロスどもに女性が7人も捕まっているようだぞ!このまま放っておくわけにはいかねぇ!彼女たちの苦痛を考えると一刻も早く助け出さねぇとなっ! さあ!急いで助けに行くぜ!」
"はいっ!"
その時である!
天井から"ミシッ!ミシッ!"といった音がするっ!?
ふと天井を見ると……岩肌がむき出しの天井には無数のヒビがっ!?
「まずいっ!天井が崩落するぞ!衝撃に備えろ!」
パラパラ……パラパラ…………ズッ………
"きゃあぁぁぁぁっ!"
……ズガーーンッ!ドガーンッ!
最初はパラパラと小石が降ってくる……その直後、大型トラックほどの大きさの大きな岩が落下してきたのだ! 迫り来る大岩にハニーたちは悲鳴を上げる!
大岩はシールドに当たると真ん中あたりから二つに割れる!
それら二つに割れた岩はそれぞれシールドを避けるかのように分かれて落ち……
それぞれ、片方の端は床に落ちたのだが、もう片方はシールド上に残り、まるでシールドに"もたれかかる"かのような状態になって漸く止まった!
当然、俺たちは無傷だ!シールドにしっかりと守られている!
ガギガガ師とやらの重力操作魔法によって生み出された20Gの重力に対して、魔法陣上方の天井が堪えられなかったために、この崩落事故が起こったのだ!
ガギガガのクソ野郎の困った置き土産だ!
ハニーたちの顔はまだ青ざめていて……ガタガタ震えている者もいる。
取り敢えず全員に、精神状態を安定させるための神術を施す……。
それが効いたのか暫くしてからハニーたちも落ち着きを取り戻したのだった。
この場所から移動するために、まず、ガギガガが生成した魔法陣を管理者権限で無効化してやった。発動中の魔法等は管理者権限により強制的にキャンセルさせることが可能なのだ!
実は魔法発動前であっても、発動自体を管理者権限で強制的にキャンセルさせることが可能だ。
だから……ガギガガの魔法陣が効力を発揮する前に、強制的に発動をキャンセルさせることも可能だったのだが……ガギガガが作った魔法陣から一体どんな魔法が放たれるのかを知りたいという好奇心には勝てず、それを行わなかったのだ。
さて、魔法陣は消したから、今度はシールドにもたれかかっている大きな二枚の岩をなんとかしないとなぁ……。
シールドにもたれかかっている二枚の大きな岩は二つに割れたため、もとの岩に比べれば半分の大きさになっているのだが、それでもそれぞれはかなり大きい。
フェイザー光線で消滅させるにしても、神術で吹っ飛ばすにしても少々大変そうだったのでレプリケーターの機能を使って消滅させることにした。
二枚の大きな岩が一瞬で姿を消す……
その他の岩は、最も大きいものであっても"軽自動車"程度の大きさだったので、それらはフェイザー光線で消滅させることにする……。
さあこれで綺麗に片付いた!
すぐにミニヨンたちを追いかけて女性たちを助け出さないと!
「ハニーたち!それじゃぁ、今度こそ女性たちを助けに行こう!」
"おーっ!"
◇◇◇◇◇◇◆
女性たちのもとへはミニヨンたちを先行させている。
なお、ミニヨンたちには、途中で遭遇する魔物はすべて倒すように命じてある。
直接女性たちのもとへと転移することも考えたが、この事態が巧妙に仕組まれたワナである可能性も捨てきれない。
だから、すぐに助けに行けないのは大変歯痒いのだがミニヨンたちの後を追って進むことにしたのだ。
今こうしている最中にも捕らわれている女性たちが凌辱されているんじゃないかと思うと、気ばかりが焦ってくる!
ミニヨンたちが露払いをしてくれているため、一匹も魔物に遭遇することはなく今のところは順調に歩を進めることができている。
あともう少しだ。もう少しで女性たちがいる場所に到着する!
ん?ミニヨンたちの攻撃音が止んだ!?殲滅が完了したのか?
マップで確認するとやはりそうだ。この先には女性7人の生命体反応しかない。
こうもあっさりと魔物の殲滅ができてしまうとは……ミニヨンさえいればどんなダンジョンでもあっという間に攻略できそうに思えてくる……。
そんなことを考えている内に、女性たちの生命反応がある場所へと到着した!
◇◇◇◇◇◆◇
「あっ!?マリーネルカさん!?」
「あらぁ?勇者ユリコに聖女マルルカ!漸くここに辿り着いたのね?
あれ!?ええっ!?生け贄にしたはずのアキュラスの性奴隷たちまでいるの!?なんで!?ねぇ、どうして!?どうやって助かったの!?」
どうやら、宝箱トラップに引っかかって、下階層へと飛ばされてしまった魔導士マリーネルカのようだ。……念のためにステータス画面で確認したが間違いない。
魔導士マリーネルカの顔を見たラヴィッス、ミョリム、ヴォリルの3人の表情が曇る……。それどころか見る見るうちに顔色が悪くなっていく。
「どうした?ハニーたち。あの女が苦手か?」
「あの女は酷いんです!アキュラスの奴隷だった時、『獣人のあそこがどうなっているのかしっかり見せろ!』と言って、私たちの大事なところを……そのう……」
「そうです!指を突っ込んで広げて中を見たり、太い棒を突っ込まれたり……」
「『お前たちもこうすると気持ちいいのか?』と言いながら、あれやこれや……」
「ご、ごめんよ。嫌なことを思い出させちまったなぁ。……しかし、とんでもねぇ女だなぁ!俺の大切なハニーたちに何しやがるんだ!ったく!許せんなっ!」
「ねぇ、あんたたち!アキュラスは?アキュラスはどうしたの?ねぇ彼はどこ?」
『ハニーたち!急いで女性たちを見てやってくれ!……あっ!そうそう!魂の色の確認は絶対に忘れるなよ!悪人だったら何もしないようにしてくれ!』
『"はいっ!"』
<<全知師!
魔導士マリーネルカがここにいるってこたぁ、この階層のどこかに亜空間バイパスの出入り口があるはずだ。それを探してみてくれ!
>>承知しました!
空間の歪みを計測………………亜空間バイパスの出入り口を見つけました!
出入り口は、魔導士マリーネルカの後方30mにある壁にあります。
<<そうか。やはりあったか!ありがとう、全知師。
すかさずミニヨンを100体程起動して、亜空間バイパスの向こうを調査させるために送り出した。
「ねぇ、ちょっと!アキュラスはどこなのっ!?教えなさいよっ!」
マリーネルカがラヴィッスたちに掴みかかろうとしている!?
「おい!マリーネルカ!やめろっ!彼女たちに手を出すと承知しねぇぞ!?」
「誰だい、あんたは?部外者は引っ込んでいろよ!」
「彼女たちはもうアキュラスの奴隷じゃねぇ。俺の嫁だ」
「え?この子たちがあんたの嫁?はあぁっ?冗談は顔だけにしてよ!はっ!
アキュラスがすんなり手放すわけないじゃん!バッカじゃないの?」
「よく言うよなぁ。自分たちが魔物から逃げるために簡単に手放したじゃねぇか?
俺がそれを知らねぇとでも思っているのか?
彼女たちを人身御供にしただろうが?違うか?」
「そ、そんなの……し、知らないわよ。妄想癖でもあるんじゃないの?」
「妄想癖だとぉ~? お前なぁ……さっき自分で言っただろう?
『生け贄にしたはずの……』とか、『どうやって助かったの!?』てな!?
なぜそんなことを言った?さあどういうつもりで言ったのか説明してみろよ?
『生け贄』ってなんだ?『どうやって助かったの』ってどういう意味だ?
さあ聞いてやる。正直に言ってみろ!」
「そ、それは……」
「彼女たちを人身御供として差し出した魔物からどうやって助かったのかと聞きたかったんだろう?違うか?」
「ええ!そうよ!その通りよ!アキュラスはそこの奴隷たちを捨てて逃げたわよ!
でもそんなの当然でしょ!主人の役に立つのが奴隷の仕事よ!」
「ほらみろ?アキュラスはこの子たちの所有権を放棄してんじゃねぇか?
まあ、無理矢理この子たちを奴隷にした時点で重罪人だ。所有権云々なんて言う資格は端っからねぇけどな!」
マリーネルカを威圧しながら……
「もう一度言っておく。この子たちは俺の嫁だ!手出ししたら……ぶっ殺す!
いいな?よく覚えておけっ!」
「ひぃぃぃぃぃぃっ!」
マリーネルカは脂汗をたらたらと流しながら、腰が抜けてしまったのかその場にへたり込んでしまった。
「わ、分かったわよ!……それでアキュラスは!?彼はどこなのよ?」
「アキュラスのことがそんなに知りてぇのか?
それじゃぁ、アキュラスがどうなったのか教えてやろうじゃねぇか。
ヤツはなぁ……今頃アマゾネス・オークたちとお楽しみ中だ!
彼女たちにたっぷりとかわいがってもらってることだろうぜ!はははははっ!」
「え?何それ!?どういうこと?」
「ヤツは大罪を犯したクソ野郎だからなぁ、罰を与えたんだよ。
ヤツはアマゾネス・オークの生け贄にしてやったのさ。
凌辱されまくって、子種を搾り尽くされた後、活け造りにされて食われちまうことになっている」
マリーネルカは顔面蒼白になる。
「あ、あんたになんでそんな権利があるのよ!?アキュラスを返しなさいよ!」
「権利ならあるぜ。俺はこの世界の神だからなぁ。俺がこの世界のルールだ!」
マリーネルカは絶句する……。
『ユリコ、聞こえるか!とんでもねぇことが分かったぞ!』
『なに?どうしたの?』
『驚くなよ!?この女……如夜叉 閒利子だ!』
『えっ!?ま、まさか!そうなの!?あの閒利子なのっ!?』
『これで漸く復讐も完結できるな!?どうするよ、この女?』
『決まっているわ!地獄行きよ!絶対にねっ!』
「お前……日本からの転生者だってなぁ?」
「あんた、な、なんで知っているの?そうか!ユリコかマルルカに聞いたのね?」
「俺はこの世界の神だと言っただろう?なんでもお見通しだ。如夜叉閒利子」
「え!ど、どうしてその名前を知っているの!?」
「だから、俺は神だと言っているだろうが!それになぁ……俺も日本に居たことがあってなぁ」
「そ、それと私の名前を知っているのとどういう関係があるのよ!?」
「俺が日本人だった頃の名前を教えてやろうか?」
「そんなのどうでもいいわよ!それよりも今すぐアキュラスを返してよ!」
「俺は壱石 振一郎だ。覚えているか?」
「えっ!?シン!?シンなの?えーーっ!うそぉっ!ホントなの?」
「ああ。本当だ。日本では世話になったなぁ。なあ?ユリコ!」
「ええ。本当にねっ!私を殺そうとした閒・利・子・さ・ん!私はあなたを絶対に許さないわっ!」
「え?勇者ユリコ……えっ!まさかっ!?橘ユリコ!!」
「やっと分かったようね?そうよ。あなたたちに殺された『橘ユリコ』よ!」
マリーネルカこと如夜叉閒利子の顔から血の気が失せた……そして、ガタガタと震え出す!
今回も、現在逃亡中の地球の管理助手、さゆりの前任者の元日本担当者には感謝したくなった。
俺を逆恨みして、俺に嫌がらせをするために、わざわざ『腐った魂の持ち主』を選んでこの世界に送りつけたつもりなんだろうがなぁ……ははは。
まさかそれが俺、そして、ユリコにとっての最高のプレゼントになるとは、あの女は夢にも思わなかっただろうなぁ。ははは。痛快だぜ!
「わ、私は頼まれただけよ!そうよ、鬼神 亜輝良にあなたを呼び出すようにとねっ!」
「閒利子!嘘はいけねぇなぁ。俺は神だと言っただろう?お前が言っていることが嘘かどうかは一発で分かるぜ?亜輝良に聞いたぜ?お前に唆されたってな!」
「う、嘘よ!そ、そんなのデタラメよ!あんたの妄想よ!」
「翠玉!アキュラスはまだ生きているか聞いてくれねぇか?」
「はいっ!お待ち下さい」
……………………
「ダーリン。アキュラスはまだ生きています」
「そうか。悪ぃけど一旦ここに転送してぇんだが……ダメか?」
「いえ。大丈夫です。部下には私から連絡しておきますので、いつでもどうぞ!」
「すまねぇ、翠玉。ありがとう」
アキュラスをこちらへと転送した。
ヤツは素っ裸だった。大分やつれたような顔をしている? が、ヤツの下半身は甚だ元気そうだ!?
"きゃあぁっ!"
全裸で大事なところがおっ立っているアキュラスを見て、ハニーたちは手で顔を隠す!例によって好奇心には勝てないのか、顔を真っ赤にして指の間からチラチラ見ている!? ははは。
「アキュラス!」
「ん?マリーネルカ……。無事だった…のか?」
アキュラスはなんだかぼんやりとしている……。
「おい、亜輝良。この女が如夜叉閒利子だということをお前は知っていたのか?」
アキュラスの死んだ魚のようだった目に生気が戻る?
「えっ!そうなのかっ!お前、閒利子だったのかっ!?」
「えっ!ええーーっ!?あんた……亜輝良…だったの?」
二人とも知らなかったようだな。ひどく驚いている。
「亜輝良。悪ぃがもう一回聞く?お前を唆してユリコを襲わせたのは誰だ?」
「ああ……それはこの女、閒利子だ」
「だってよ?閒利子。もう言い逃れはできねぇよなぁ?」
「ご、ごめん、ユリコ。許して!反省している!この通り、謝るから……亜輝良が夢中になっているあなたが邪魔だったのよ。本当にごめんなさい!」
「亜輝良。ありがとうな。それじゃ、戻っていいぞ!お楽しみ中のところ悪かったなぁ。はははは」
「え?助けてくれるんじゃねぇのか!?ま、待ってくれ!シン!助けて……」
「ばっははーーいっ!転送!」
亜輝良は『助けてくれーっ!』と絶叫する間もなく、アマゾネス・オークたちのもとへと戻っていった。
その様子を見て閒利子の顔が再び真っ青になり、ガタガタ震えだした。
「閒利子。反省なんかしなくてもいいわ」
「ありがとう、ユリコ!許してくれるのね!?」
「いいえ。反省は要らないから、死んで地獄にお逝きなさい!でも……その前に、四肢粉砕!」
ぎゃあああぁぁぁぁぁぁっ!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!
「修復!……どう?痛い?でもねぇ……私ね、あなたたちに殺されたときに、首がちぎれちゃったんだよねぇ~。すっごく痛かったわよ!こんな風にねっ!」
そう言うと同時にユリコは閒利子の首根っこを掴むと胴体から頭を引きちぎったのだった!
ブチッ!……ブシューーーーーッ!
"きゃあぁぁぁぁっ!"
ハニーたちから悲鳴が上がる!
あのオークドゥでさえ、真っ青になっている?
こ、怖い!ゆ、ユリコは敵に回したら絶対にダメな子だ!
まさかこんなことをする子だったなんて……ドン引きだ!百年の恋も冷めるぜ!
ユリコは怒りに飲み込まれているのか普段とは全く違う目をしている。顔つきも全然違う!まるで……般若だ!
「修復!……ねぇ、シン。ごめん、彼女を殺しちゃった。悪いけど蘇生してもらえない?」
ユリコが悪魔のようにニヤリと笑う……こ、怖い。
「あ、ああ……蘇生!」
◇◇◇◇◇◆◆
日本人だった頃の俺とユリコが過ごした楽しい日々……。充実した毎日……。
それを突然、亜輝良と閒利子によって強制終了させられてしまった恨み……。
そのユリコの恨みの根深さを今日知ることになった。
彼女は閒利子に対して四肢粉砕!と修復を五回も繰り返した!
日本人だった橘ユリコをよく知っている俺は、こうした彼女の行動には違和感を覚える。彼女がこんな執拗な復讐をするようにはどうしても思えない。
それどころか、彼女なら復讐を考えることすらしないような気がするのだ。
記憶の中で美化された彼女と比較しているからなんだろうかなぁ……。
閒利子は泣きながらユリコに懇願する……
「お、おねがいよぉ……ううう……、ゆ、許してユリコ……私が悪かったわ」
ユリコはこれくらいで勘弁すべきかどうかを思案していたようだったが……
ズバーーーーンッ!
そのスキを突いて閒利子はユリコ目がけてファイヤーボールをぶっ放したのだ!
そして、ユリコがひるんだ隙に閒利子は駆け出したかと思うと、脇目も振らずに亜空間バイパスの出入り口へと向かい、その中へと逃げ込む……
閒利子は身体を半分ほど亜空間バイパスに入れた状態で……
「あははっ!ばぁーかっ!ざまぁっ!
ユリコ!私を嬲りものにした礼は必ずするからね!倍返しにしてやるわ!覚えていなさい! じゃあまたねっ!あははははっ!」
そう言って閒利子は去って行った……。




