第059話 名作映画
「マイミィ。いねぇなぁ?芋虫がうようよいるどころか一匹も出て来ねぇよなぁ?
まあ、ありがてぇっていやぁ、ありがてぇんだが……なんか不気味だよな?」
「はい。一昨日来た時には、確かにここは芋虫で一杯で、足の踏み場もないくらいでしたのに……一体あの虫たちはどこへいったのでしょう?」
ピラミッドの最下層である第2階層へと降りてきたのだが、石造りの通路を暫く進んでいるが全く魔物を見かけない。
巨大芋虫がうようよいると聞いていたので覚悟してきたのだが……拍子抜けしてしまった。
マップ画面で確認すると、この先のボス部屋のような広い部屋に、魔物の反応が無数に存在するようなので、そこで俺たちを待ち伏せしているのかも知れない。
虫とはなるべく直接戦いたくはない。
だから、ミニヨンを100体出して先行させ、魔物どもを先に殲滅させることにしたのだが、怖いもの見たさというのか……どんな魔物か確認しておきたいので、全部を消滅させるのではなく、死骸を数体残すように命じてある。
フェイザー銃の出力レベル設定は各ミニヨンに任せることにした。
シュピィュィュィュィーーッ!……
フェイザー銃の発射音が絶え間なく鳴っていたが、暫くすると静かになる……。
「殲滅が完了したのようだな。それではみんな、行こうか。念のためにティアラをフルフェイスヘルメットモードにしてくれ」
”はいっ!"
ボス部屋だと思われる部屋に到着すると、ミニヨンたちが宙に浮かんで待機していた。命令通り死骸が何体か残してある。……ミニヨンは優秀な部下だ!
「えっ?どう見ても芋虫じゃねぇよなぁ、マイミィ?」
「はい。蟻の化け物みたいです。妙です。ひょっとするとこの魔物が芋虫を食べてしまったのかも知れません」
その場に転がっていたのは、芋虫の死骸ではなく黒い人型の魔物だった。だが、よく見ると手足が合計6本ある?人型に進化した昆虫なのか?
二足歩行も可能だと思われる太く長い後肢が2本と人の腕のような前肢が2本。そして、脇腹の左右にもう一対、2本の中肢が生えているのだ。
マイミィは蟻と言ったがどちらかというと、昔見た『エイ○アン』という映画に出てくるエイリアンのように見える。
ガァーッ!
「きゃあーっ!」
グシャッ!
直接触るのは嫌なので、棒を生成してツンツン突っついていたら突然、死骸だとばかり思っていた魔物がマイミィを目がけて襲いかかってきたのだ!
咄嗟のことでつい加減を忘れて魔物の頭をぶん殴ってしまったため、魔物の頭はまるで爆発したかのように木っ端微塵に吹き飛んでしまった!
吹っ飛んだ魔物の体液や肉片等が付着した床や壁からは『シューシュー』と音を立てて、嫌な臭いのガスが発生している。どうも床や壁の材料の一部が溶けているようだ。 体液は強酸性かなにかなのか?
マイミィは顔面蒼白!その場にへたれ込んだかと思うとガタガタ震えながら泣き出した。
「よしよし。もう大丈夫だ」
俺は座り込んでしまっているマイミィの頭を撫でる。
「いやっ!やめてっ!魔物を殴った方の手で頭を撫でないでぇ~」
マイミィは魔物を殴った方の手で頭を撫でられているのに気付き、声を上げる。
俺は撫でるのをすぐにやめて言う……
「ああ、それなら大丈夫。極薄シールドが張ってあったから手には魔物の肉片とか体液とかは一切ついていないから。安心しろ」
「それでも……やはりなんとなく気持ち悪いです」
「そうか。配慮が足りなかった。申し訳ない」
「い、いえ」
「ミニヨン!念のためにここにある他の死骸もすべて消滅させてくれ!」
取り敢えずこれで安心だ。
油断大敵だな。今度からはちゃんとステータスで確認するようにしよう。
◇◇◇◇◇◇◇
ボス部屋には、俺たちが入って来た入り口とは反対側の壁に扉がある。
扉を開けるとそこには大きな部屋があった。
「うわっ!なにこれ!?卵じゃないの?魔物の卵かしら?」
その大きな部屋の床には、白い卵のような物体がたくさん置かれていた。
それぞれがダチョウの卵の3倍くらいの大きさである。
みんなが警戒しながら立ち止まって眺めている中、元冒険者……取り敢えず今は冒険者に戻っている近衛騎士のラヴが卵らしき白い物体に近づいていく……。
俺はふと、地球にいた頃に見た映画『エイリ○ン』の1シーンを思い起こした!
エイリアンの卵の最上部が開き、その中をのぞき込んだ人間の顔に、中から飛び出したエイリアンの幼生が引っ付いて寄生するというシーンだ。
今見ている光景にそっくりじゃないか!?嫌な予感しかしない……。
「ラヴ!やめろ!今すぐその卵から離れるんだ!」
「え?なに!?」
ラヴは振り返りこちらを見る。
ラヴがのぞき込もうとしていた白い物体の最上部が開く!あの映画のようだ!
「そこから離れろ!転送!」
ラヴの動作を待っていたらマズい!転送した方が早い!と考えて即座にこちらへラヴを転送する!
間一髪だった!直後、白い物体の開口部からカブトガニのような魔物が、ラヴの頭があった空間へ目がけて飛びつこうと飛び出してきたのだ!
目標を失って床へと落下していくカブトガニのような魔物はすかさず近くにいたミニヨンによってフェイザー光線を照射され、床に落ちる前に蒸発させられた!
ミニヨン!グッジョブ!
俊敏かつ柔軟な動きから判断すると、カブトガニのような魔物のカブトの部分は硬くはないようだった。逆にふにゃふにゃで柔らかそうに見えた。だから、却って気持ち悪く感じる。
ラヴはその様子を見て、あのままあの場所にいたら、彼女の身になにが起こったのかを悟って怖くなったのか、俺に抱きつき震えながらおいおいと泣きだした。
俺は彼女をギュッと抱きしめて頭を撫でてやる……。
やはり思った通りだったな!危なかった!
ラヴのティアラはフルフェイスヘルメットモードだし、極薄シールドも展開しているから、恐らくは大丈夫だとは思うが、あんなモノが顔に飛びかかってくるのを体験してしまったら、当分の間、悪夢に魘されそうだもんなぁ……。
ホント、助けられて良かった……。
だが、事態はこれでは収まらなかった。
今の騒ぎで俺たちの存在に気付いたのか、すべての卵の最上部が一斉にゆっくり開きだしたのだ!
「ハニーたち!飛び出してくるぞっ!フェイザー銃の出力レベルを3にセットして準備ができ次第ぶっ放せ!……ミニヨン!攻撃開始!殲滅せよ!」
"はいっ!"
そう言った直後!ウジャウジャウジャッと!ものすごい数のカブトガニのような魔物が一斉に飛び出し、俺たちに向かってものすごい速さで這って来るっ!
「うぎゃぁぁぁぁっ!」
"きゃあぁぁぁぁっ!"
迫り来る恐怖にまずオークドゥが絶叫し、間、髪を入れず、ハニーたちも悲鳴を上げる!
パニック状態に陥っている!無茶苦茶にフェイザー銃をぶっ放し始めた!
そんな状態だから、フェイザー光線がうまく当たるわけがない。
床に飛び降りたカブトガニのような魔物たちがすごいスピードで迫り来る!
ラヴをこちらへ転送した直後にシールドを展開したので、ヤツらに飛びつかれる心配は全くないのだが、恐怖に支配されてしまうとこうなってしまうのか……。
俺とミニヨンたちで一匹ずつ倒しても埒が明かない!
「ミニヨン!面攻撃だ!」
命令に従いミニヨンたちは、オークドゥに集った虫たちを殲滅した時のように、あたかも面で攻撃しているかのようにフェイザー光線を照射する!
フェイザー光線を、ものすごい速さで左右に振りながら、手前から奥へと一瞬で移動させることで、人の目には残像であたかもフェイザー光線を面で照射しているかのように見えるのだ!
ミニヨンたちの攻撃開始からまもなく、俺たちに襲いかかろうとしていたカブトガニのような魔物たちも、床にある卵の殻も一切合切が消滅した!
ハニーたちの中にはまだフェイザー光線を放ち続けている者がいる。目を瞑っているようで事態の把握ができていないようだ!
「さあ、みんな落ち着いて!魔物は全部片付いたぞ!目を開けてよく見てみな!」
こう言うと同時に、状態異常を解消するための修復神術を全体に施した。
それでみんな漸く落ち着きを取り戻す。
「怖かったっす!もう虫は嫌っす。勘弁して欲しいっす。帰りたいっす……」
ウェルリ、気持ちは本当によく分かるよ。
ズゥーーーンッ!
突如、卵が置かれていた床の上方、天井付近の何も無い空間が歪み……
そこから巨大な腹を持つ巨大な昆虫型魔物が出現して、重量感のある音を立てて床へと降り立った!
「きゃあぁぁぁぁっ!」
「うぎゃぎゃぁぁぁぁっ!」
ハニーたちが、そして、オークドゥが再び絶叫した!
こいつが卵を生んだ女王なのか!?
あの天井には亜空間バイパスの出入り口があるのか?
ギイッ!グキィッ!ギイッ!ギイッ!
怒っている?目には涙か!?
そう思った瞬間……
ズガッ!
女王の前肢の一本がものすごい速さで振るわれてシールドに当たる!
当然、こちらにはなんの被害もない。シールドもそのまま維持されている。
ズガッ!ズガッ!ズガッ!ズガッ!ズガッ!ズガッ!
何度やっても同じなのに……女王は執拗に攻撃を繰り返す。
女王の腹の部分は大きく膨らんでいて、中身がぼんやりと透けて見えるのだが、中には卵がいっぱい詰まっているようだ。
うわっ!気持ち悪ぃ!身体中がムズムズするなぁ……。
そんなことを思っていると再び、女王が出現した天井付近の空間が歪み、中からものすごい数のエイリアンのような黒い人型の魔物がわらわらと出てきた!
その光景に、ソニアルフェら数名のハニーたちが卒倒してしまった!
もう……とっとと片付けることにしよう!
「烈火の壁!」
烈火の壁をシールドのすぐ向こう側に出現させ、ゆっくりと奥へと移動させる!
グギャーッ!
女王と思われる断末魔の叫びが一瞬聞こえる。
烈火の壁が通った後には灰すらも残らず……女王も兵隊エイリアン?もすべてが消え去った。
◇◇◇◇◇◇◆
俺とミニヨンたちで念のために、女王たちが出現した、天井付近にあるの亜空間バイパスの出入り口から中に入って調べることにした。
「うわっ!最悪だ!」
そこには、エイリアンタイプの黒い人型魔物が数匹残っていて、俺たちを見るや否や襲いかかってきたので始末したが、その他には魔物は一匹もいなかった。
だが、その代わりというのも変だが……そこには顔にカブトガニのような魔物が引っ付いた冒険者らしき女性が12名寝かされていたのだ!
はてさて、この魔物をどう引き剥がすべきか……。
映画では、エイリアンの体液は強酸性で、無理に顔から引き離そうと傷つけると酸が噴き出してエイリアンが寄生している宿り主を傷つけることになったのを思い出した。
まさかと思って全知師にこのカブトガニのような魔物を調べさせたのだが……。
やはり体液は強酸性だということだったのだ。
あの映画を見たことがあるヤツがこの魔物をデザインしたのか?
思わずそう疑いたくなってしまう……。
まずは慎重に、カブトガニのような魔物だけをターゲット指定して…っと。
いや、万全を期してターゲット指定は全知師に任せよう。
<<全知師。カブトガニタイプの魔物だけを女性たちから排除する。
まずはカブトガニタイプの魔物だけをターゲット指定してくれ!
>>承知!
カブトガニタイプの魔物について魔物反応を識別…………識別完了!
全女性に付着している同魔物をターゲット指定…………指定完了!
12名の女性の顔に付着している全魔物をターゲット指定しました。
この間に女性たちから少し離れた場所の床に直径2m程の円を描いた。この中にカブトガニタイプの魔物を転送するためだ。
「ありがとう、全知師。……ミニヨン!今からあの円の中に魔物を転送する!
お前さんは転送後の魔物をただちにフェイザー銃で消滅させてくれ!」
俺の最も近くにいたミニヨンに対して命令し……
「では!転送するぞ!……転送!……ミニヨン!頼む!」
シュピィュィーーッ!
円の中に転送されてきた12匹のカブトガニタイプの魔物どもは、ミニヨンによるフェイザー光線の面照射により一瞬で消滅した。
◇◇◇◇◇◆◇
「ただいまー」
「あ!ダーリン!お帰りっす!うわっ!」
「ダーリンが女性を攫ってきたと報告します」
「おーい!ジー。攫ってきたとは人聞きが悪い。助け出してきたと言ってくれ!」
"見えざる神の手"で女性たちと俺を一緒に包み込んで、亜空間バイパスを通って戻ってきたのだ。俺たちの後からミニヨンたちも全機無事に戻ってくる。
「この女性たちは魔物に捕まっていたんでしょうか?」
「ああ、そうだ。顔にカブトガニタイプの魔物が引っ付いていた。向こうで魔物は引き剥がしたから……シェリー、悪ぃけどお前さんたちで手分けして、完全浄化と修復を行ってやってくれねぇか?」
顔にカブトガニタイプの魔物が引っ付いていたと言ったときに、シェリーの顔に一瞬だけ『うわっ!』という嫌そうな表情が浮かんだ。
「はい。承知しました。すぐにみんなと治療にあたります。では!」
シェリーがハニーたちに声を掛けると、ハニーたちはいつものようにまるで予め段取りが決められていたかのように、テキパキと女性たちの治療にあたる。
「あっ!マイミィ!やはりお前さんの予想通りだったよ。芋虫型の魔物はあの黒い人型の魔物に食われちまったようだ。亜空間バイパスの向こう側に食い散らされた巨大な芋虫の死骸が無数に転がっていたよ。いやぁ、さすがだぜ!マイミィ!」
「そうだと思いましたよ!うふふ。やっぱりね!」
マイミィは鼻高々にハニーたちを手伝いに向かった。
「ねぇ?珍しいわね?」
ユリコが話しかけてきた。
女性たちの治療はハニーたちだけで十分だ。だから、ユリコはすることがなくて暇なんだろう……。
「あ、ユリコ。なにが?なにが珍しいって?」
「女性たちよ。いつもあなたが助け出す女性は全裸でしょ?でも、今回はちゃんと服を着ているから。珍しいなーって思って」
「なるほど。虫たちは幼生を寄生させることだけが目的だろうから、素っ裸にする必要がなかったんじゃねぇの?」
「なるほどね。でも……気付いた?」
「え?何に?」
「高校の時だったかなぁ?一緒に観に行った映画よ。ほら。なんだっけ?
私は怖いから嫌だって言ったんだけど、あなたがどうして観たいからって……。
SFの……」
「やっぱり!ユリコもそう思ったか?『エイリア○』のことだろ?あれに出てくるエイリアンの生態とよく似ているよな?」
「やっぱりそうよね?あの映画に出てくるエイリアンみたいだったわよね?
あの時、私、怖くって……あなたの腕にしがみついてチラチラとしか見なかったけど……なんとなく覚えていたの。
あっ!そうだ!思い出したわ!あの時あなたは、映画に付き合わせたお詫びに、私が観たかった映画、確か『ニュ○ヨークの恋人』を一緒に観に行く約束をしたわよね?覚えている?
あれれぇ?転生の時に観に行った記憶が消えちゃったのかなぁ~?私、あなたと一緒に観に行った記憶がないのよねぇ~?どうだったかしら?」
「ご、ごめん。次の休みには公開終了になっていて行けなかったんだよなぁ。
ん?でもレンタルが解禁になった時に借りてきて俺の部屋で一緒に観ただろう?
SFっぽい内容が面白かったからなんとなく覚えているぞ?」
「うふふ。バレちゃった?うーん、思い出しちゃったのかぁ。残念。もうちょっとからかおうと思ったのになぁ~。うふふ。
ねぇ?あの時のこと……もしかして忘れちゃった?
公開終了だからって、別の恋愛映画を観に連れてってくれたじゃない?
ほら『ある愛○詩』。主人公の女性が白血病で亡くなる話。覚えてない?」
「あーーっ!思い出したっ! ユリコも人が悪ぃよなぁ~。焦ったぜ!
しかし、あの映画は泣けたよなぁ……。ううう……」
突如、涙が溢れ出てきて止まらなくなる……
「ね、ねぇどうしたのよ?急に泣き出したりして……」
「うう……オリバーがジェニーの死を悲しむシーンを思い出したら、ユリコが亡くなった時の自分に重なって……。な、涙が…涙が溢れ出てきて……うう……」
思わずユリコをギュッと抱きしめてしまった。
溢れ出す涙を全く止められない……。
ユリコに再会できて良かった……。
「ゆ、ユリコ……また会えて良かった。本当に良かった……ううう……」
人目を憚らず涙を流す……
「ち、ちょっと、シン。ねぇ。あ、あなたのハニーたちが心配な顔をしてこっちを見てるわよ。ねぇってばぁ?」
ユリコの言葉には"恥ずかしいから離れて欲しい"というニュアンスが込められているのだが、彼女は俺に応えるかのようにギュッと抱きしめ返したのだった。
「今度こそ絶対に守る!絶対に君を守ってみせるっ!
もちろん、君が俺のこと嫌っているのは十分承知しているさ!
だから、君と共に支え合いながら生きていく……君が一生添い遂げたいと思える素敵な男性が現れるまでは、神として俺が君のことを絶対に守り切ってみせる!」
俺は『抱きしめてしまってごめん』と言いながらユリコから身体を離す……。
ユリコの顔を見る……もらい泣きなのか?ユリコの目にも涙が……。
俺と視線が合い、彼女は頬を染める……。
ユリコは涙を拭いながら、穏やかににっこりと微笑み……
「ダメよ。あなたには一生守ってもらうわ。覚悟してね。一生よ。うふふふふ」
そう言うとクルッと後ろを向き、右手を頭の横で『バイバイ』とでも言いたげに振りながらこの場を去って行った。その足取りはなんとなく軽やかだった。
どういう意味だ?ユリコは一生独身でいるつもりなのか?
それとも、お互いに支え合う大好きな人ができてもなお、俺に守れってことなのだろうか? それとも……いやいやいや、それはないな……。
肩を平手でハタハタと叩く者がいる?……ジーだ!
俺の左肩に右手を置き……俺が向いている方向と同じ方向を向いて横に並ぶと、俯き加減に嬌笑を浮かべながら言葉を発する……
「ユリコなら嫁にしても構わない。と、ダーリンに許可を出す」
「いやいやいや。嫁にはしねぇからな!神として彼女を守るって話だ!」
「あたしもユリコさんなら嫁にしてもいいと思うっすよぉ。
あ、それと……あたしもギュッとして欲しいっす!ダメっすか?ねぇ?」
「私もハグを要求する。拒否権はない。抵抗は無意味だと告げる!」
ああ……いつものパターンだ。
結局、ハニーたち全員を順にギュッとハグすることになったのだった。
◇◇◇◇◇◆◆
カブトガニタイプの魔物が飛び出してくる卵があった部屋を奥へと進むと、その突き当たりは扉になっていた。
マイミィの話ではこの扉の向こうがダンジョンの第7階層への階段になっているとのことだった。漸くこの階層からおさらばできるのだ!
同じくマイミィの話によると、第7階層にはミノタウロスの大群がいて、女性を凌辱しようと待ち構えているらしい。いかにもこのダンジョンらしい魔物だ。
そうなると先ほど助け出した女性冒険者12名をどうしたものか……。
今のレベルではとてもじゃないがこの先へ進むのは無理だろう。
そうかと言って魂の色がオレンジ色の女性が3名いるので、まとめて神殿騎士にするわけにもいかない。
全員が同じ冒険者パーティーに属するらしいので、魂の色がオレンジ色だからといって、その中の一部の人だけを除け者にするのも気が引けるし、気の毒だ。
俺は正体を明かして彼女たちと話してみたのだが、この女性冒険者たちも冒険者ギルドのギルドマスターに騙されて、一攫千金を夢見てここを攻略しにやって来たらしく、装備等を調えるのにかなり借金をしていた。このまま何も得るものがなく帰れば、身売りしなければならなくなるらしい。
借金の金額が金額なだけに、みんな性奴隷にされてしまうことだろう。
自業自得だと言ってしまえば全くその通りなのだが……たとえオレンジ色の魂を持つ者であっても、どうしても俺にはそれを放ってはおけない。
「それで借金の額は利息を含めていくらだ?」
「金貨30枚です。私たちの武器や装備をすべて売っても金貨12枚くらいにしかなりません。ですから、私たちはなんとしてもこの先に進んで、このダンジョンを攻略しなければならないのです!」
「ハッキリ言おう!無理だ!お前さんたちのレベルでは、この下の第7階層でミノタウロスの餌食になってお終いだ。
凌辱された上、子供が産めなくなるまで一生ヤツらの孕み袋にされる。そして、最後は生きたまま食われてお終いだぞ!それでもいいのか?」
女性たちは震え上がる……
「ですが、私たちはこのまま帰っても待っているのは地獄なんです」
「地獄と言っても相手は所詮、人なんだろう?ミノタウロスとどっちがましかって話だ。人相手の方が絶対にましだろう?違うか?」
「それはそうなんですが……」
「言っておくが、このダンジョンを攻略しても得られるのは経験値だけだ。金目のモノは一切ないと思った方がいいぜ?」
彼女たちは逡巡する……。
魂の色がオレンジ色の女性3人の目を順に見つめながら言う……
「単刀直入に聞こう。お前さんたちは人を騙して何かを奪い取っているようだが、その件について正直に話してみろ。その話の内容次第では、お前さんたちを助けてやろう?言っておくが俺には嘘は通じねぇからな。正直に話せよ。誰かひとりでも嘘を言った時点で12人全員をミノタウロスへの生け贄にするからな?」
「ひぃーっ!」
女性たちは全員が震え上がった。
そして、暫くして決心がついたのかオレンジ色の魂を持つ者たちが話し出した。
その内容からすると、3人全員が同じ事件によって魂の色がオレンジ色になったようだ。
さわりだけ話せば……
3人の幼なじみである女性が、父親の借金の形に性奴隷として売り払われるのを詐欺的手法で阻止したためであった。
彼女の父親は友人の借金の連帯保証人になったが、その友人が借金を踏み倒して逃げたために多額の借金を負わされたのだ。
後から分かったことらしいが、奴隷商人と父親の友人はつながっていた。
初めから3人の幼なじみである女性をターゲットにした悪辣な企みだったのだ。
「そうか。話は分かった。俺がお前さんたちの借金を肩代わりしてやろう。支払はある時払いの催促なしでどうだ?」
「え?」
「それに……お前さんたちが良ければだが、中央神殿の神殿騎士試験を受けられるようにしてやるが、どうだ?試験をちゃんと通らねぇと騎士には成れねぇが、多分お前さんたちはランクA冒険者だから、問題なく合格できると思うぜ。どうだ?」
やはり彼女たちも二つ返事だった。
それで早速、彼女たちを連れて彼女たちが拠点としている町へと転移して借金を清算してから、すぐに転移で彼女たちを連れて中央神殿のバルバラのもとを訪れ、彼女たち12名の女性冒険者をバルバラに託してきたのである。
◇◇◇◇◆◇◇
第7階層へと降りてきた。
恐る恐る入り口から階層内に入ったがミノタウロスらしき魔物の姿はない。
「ガハハハハハハッ!邪神め!待っておったぞ!」
その声とほぼ同時に、俺たちが立っている足下の床に、俺たちがスッポリと入る魔法陣らしき紋様が赤い光を放ちながら輝きだした!
俺たちはその魔法陣の中心にいる!?この魔法陣は一体何なんだ!?
なんかヤバいことになりそうだ!
「シールド展開!ハニーたち!完全防御シールドを展開して備えろ!フルフェイスヘルメットモードへ移行せよ!」
"はいっ!"
魔法陣の外にはいつの間にかミノタウロスの大群がいて……完全に取り囲まれてしまっていた!
さあ、鬼が出るか蛇が出るか……なんかわくわくするなぁ!




