第061話 勇者エディション
「待て!ユリコ!」
"見えざる神の手"で閒利子を追いかけようとするユリコの行く手を阻む。
「どうして!?行かせてよ!閒利子が逃げちゃうわ!」
「大丈夫だ!閒利子が逃げていった先にはミニヨンがいる!
あの女はもう逃げられねぇから安心しろ!
それに……たとえミニヨンたちがあの女の捕縛に失敗してもマーキングしてあるから、いざとなったら転送でこっちに連れてくることもできるしな……。
だから落ち着け!」
「わ、分かったわ。取り乱したりしてごめんなさい」
「ああ。気持ちは痛ぇほどよく分かるぜ。まあ焦らずに待とうぜ?」
「うん」
「それで、閒利子を捕まえたらどうするつもりだ?
お前さん、さっきかなり痛めつけてただろう?あれだけやったんだからもう気が済んだんじゃねぇのか? 罰だったらあれで十分じゃねぇか?
どうだ、もうここいらで許してやるってのは? それともまだ足りねぇのか?」
「十分?シン、あなた正気なの!?私はあの女に殺されたのよ?それに…あなたを慰めるふりをして亜輝良と一緒にバカにして笑っていたのよ!?
そんなの許せるわけないでしょ? 足りないわよ! 全然足りないわっ!
戻り次第、即処刑よっ!当然、魂も…"奈落システム"だっけ?そこ行きよ!」
やはりどうもユリコらしくないな……。
「いや、許すと言っても無罪放免ってわけじゃねぇよ。全能力を一般女性並にして装備無しの町娘の服装でこの世界に放り出してやるつもりなんだが、それじゃだめなのか?」
「そんなの手緩いわっ!被害者の私が許さないと言っているのに、あなたが勝手に許すって言うの!?冗談じゃないわ!」
魂データを編集されたことが、性格にまで影響を及ぼしているのだろうか?
「分かった。そうだよな。確かに被害者はお前さんだ。お前さんの気の済むようにしよう。処刑するって言うのなら、魂もちゃんと"奈落システム"へ送ってやる」
「ええ。そうしてちょうだい。……それにしても捕まるのが遅いわね?」
実はもう既にミニヨンが閒利子を見つけて麻痺させてある。
ここの亜空間バイパスを通り抜けた先は第4階層だった。あのGとスケルトンがうじゃうじゃいた階層だ。
亜空間バイパスの出入り口から大笑いしながら出てきた魔導士マリーネルカこと如夜叉閒利子を、ミニヨンが即座にフェイザー光線で麻痺させたのである。
閒利子は今第4階層で気絶している……。
ユリコが興奮気味に話をしていたので、閒利子の身柄を確保したことを言い出す切っ掛けを失っていたのだ。
「ユリコ。閒利子の身柄は確保した。今からこっちへ転送する。……転送!」
気絶したマリーネルカこと、如夜叉閒利子が俺たちの目の前に現れる……。
「ん…んんん……」
閒利子が意識を取り戻す……が、事態を飲み込めないのかボーッとしている。
「はっ!?えっ!?なんで!ユリコから逃げられたはずなのにっ!」
ユリコがニヤリと笑いながら閒利子のもとへと近づく……
その右手にはロングソードが握られている!?
閒利子は脂汗を流しながら後退りする……。
「ゆ、許して!……ユリコ、許して……」
シュンッ!……ブシューッ!ブシュッ!ブシュッ!……
許しを請う閒利子の首を、ユリコのロングソードが容赦なく刎ねたのだ!
閒利子の頭はごろりと後ろへ転がり落ちる……
直後!閒利子の身体から…首の部分から大量の血が噴き出し、閒利子の頭の無い身体は、何度か脈打つかのように血を噴き出しながら後方へと倒れたのであった。
その脈打つかのような出血もすぐに収まったが……あたりは血の海だ!
"きゃあぁぁぁぁっ!"
ハニーたちから悲鳴が上がる!
俺の方を振り返ったユリコは満足げな笑みを湛えている!?
それを見た俺は思わず背筋が寒くなってしまった……。
この子は絶対に俺が知っているユリコじゃない!何かがおかしい……。
魔導士マリーネルカこと、如夜叉閒利子の死体は、烈火で灰も残らないくらいに焼き尽くしてやり、そして、彼女の魂を"奈落システム"へと放り込んだことを念のために付け加えておこう……。
橘ユリコの復讐が完了したというのに、気持ちが晴れることはなかった……。
◇◇◇◇◇◇◇
>>基本システムが勇者エディションであることが原因と思われます。
その確率は99.8%です。
俺の質問に対する全知師からの回答だ。
変わってしまったユリコのことが…悪には全く同情も容赦もしない彼女のことが気になって全知師に彼女、ユリコを分析するように命じたのだ。
全知師によると……
オペレーティングシステム……魂と肉体との間に位置し、魂が肉体のシステムをできるだけ容易に使えるようにするための"基本的なソフトウェア"だが、これには役割に応じて複数のエディションが存在するらしい。
なるほど、地球で多く使われていた某PC用OSにも『HOMEエディション』とか、『PROFESSIONALエディション』とかがあったものなぁ……。
あんなもんなのかなぁ?
勇者エディションというのもその1つで、それがユリコが転生する前に転生用の肉体にインストールされていることは分かっていたが……それはとんでもないものだったのだ!
そのエディションがインストールされると、強く勧善懲悪を求める欲求が高まるというのだ。
しかも、悪と認識したらそれを徹底的に、必ず殲滅したくなる……という欲求が特に高まるように調整されているらしいのだ。それが基本的設定らしい。
神術の威力はどれほど実現したいことをイメージできるかによって変化する。
強い意志や念を持つ者ほど高威力の神術を行使できる……というこの世界の理がこの勇者エディションのこの基本設定に関係しているのかも知れない。
邪神のような強大な敵に立ち向かうためには強い意志と念が必要ということなんだろうなぁ……。
<<全知師。今からユリコのOSを別のエディションに変更することは可能か?
>>可能です。
ただし、互換性のない部分が失われる危険性を伴います。
勇者エディションは一般的エディションよりも高機能であるため、グレードを下げることによって失われる情報も多く、場合によっては起動しなくなる可能性もあります。
OSのエディションを変更する前に、まず、プロパティ値の変更や、イベントハンドラの追加で対応可能ではないかを検討すべきと進言します。
<<なるほど。分かった。ちょっと検討してみる。ありがとう。
ことはアイデンティティーに拘わる問題だ。
いくら神である俺でも、そう簡単に手を出すべきものではない。
彼女がどうして変わってしまったのかが分かっただけでも大収穫だ。その変化を踏まえて彼女と付き合っていけば大きな問題にはならないだろう……。
彼女の前に立ってしまった悪者には気の毒だが……。まぁ、自業自得だよな?
◇◇◇◇◇◇◆
「あのさぁ、翠玉。ちょっと疑問なんだけど……聞いてもいいか?」
「はい、ダーリン。なんでしょうか?」
「さっきさぁ、アキュラスの野郎をこっちに転送しただろう?」
「はい」
「あの時さぁ、ヤツはやつれてヘロヘロだったけど、なんだ…その…ヤツのナニはビンビンだったじゃねぇか?分かるか、俺が言っている意味?」
翠玉が頬を染める……。
「あ、は、はい。だ、ダーリンは……よ、夜の生活でお悩みですか?よ、嫁が多いから大変ですよね?」
「い、いや!違うっ!俺には"精力絶倫モード"があるから…ってそうじゃなくて!『何でかなぁ?』と気になっただけなのっ!」
「ああ……そ、そうでしたか。す、すみません。勝手に想像しちゃって……
でも、夜の生活はどうされているんですか?一度にあんなに大勢とお相手を?」
「俺の方はいつでも臨戦態勢になれるから、主導権はハニーたちが握っている。
彼女たちが気乗りしねぇのにそういうことはできねぇからな。
だから、彼女たちの都合とか気分に合わせてスケジュールが組まれているんだ。
俺には精力絶倫モードってのがあって全員一度でも大丈夫なんだがな……って、おーいっ!そんな話はどうでもいいだろうっ!?」
「す、すみません。後学のために……近いうちに役立つと思いまして……」
「そうか、ならしょうがないな……いや違う!あのなぁ……」
翠玉が喉の調子でも悪いかのように『ん、んっ!』と言ってから……
「はい。ダーリン。それでご質問は?」
「ああ、アキュラスの男性自身がビンビンだったのはなぜかって話だ!
ほら、男というのは結構繊細で……なんというか、無理矢理そういうことをされそうになると萎えるというか……機能しなくなるのが普通だと思うんだが、ヤツの場合はビンビンだっただろう?それが不思議なんだよ」
「ああ。そのことですか。なるほど。それは……」
人にはあまり聞かれたくない話なんだろう……翠玉は俺の耳元へと口を近づけて内緒話をする……
「アマゾネス・オーク秘伝の媚薬を飲ませているからです。そうするとオスどもの局部は意志とは関係なく、死ぬまで臨戦態勢状態になるのです」
「うわぁ~。えげつねぇ薬だなぁ……。でも聞いてスッキリしたぜ。すっげぇ気になっていたからなぁ……。ははは」
精力絶倫モードの薬物版ってところか……。解毒薬もあるのかなぁ?
「ちなみに、媚薬の効果を打ち消す……解毒剤みたいなものはあるのか?」
「はい。ございます、ご安心下さい。いかがですか?一度お試しになりますか?」
「いやいやいや!俺にはさっき言った精力絶倫モードがあるから不要だぜ」
いつもクールな翠玉が珍しく、俯きながら頬を染め、少女のようなかわいらしい表情を浮かべながら、そして、恥じらいながら言う……
「ああ……早くダーリンのお嫁さんになりたいです。そのなんとかモードとやらがどんなにすごいのかも知りたいです。お願いです、ダーリン。お嫁さんにして」
六根清浄一根不浄。 煩悩の犬は追えども去らず……。
話題が話題だっただけに……だ、だめだ!こんな超絶美人にお願いされたら……クラックラッとしてしまうぜ!
ああ……この子が魔物初の嫁になるのも時間の問題だろうなぁ、多分。
◇◇◇◇◇◆◇
「ラヴ、女性たちの様子はどうだ?」
「それが……全員が意識を失っていて目を覚まさないんです。それで、完全浄化は行わず、体内外の浄化と、小さな怪我がありましたので修復を施してあります」
「そうか。妊娠しているとマズいからな。彼女たちの意識が戻ってからじゃねぇと完全浄化はできねぇもんな。良い判断だ。ハニー」
「それと、ちょっと妙なのです。あのミノタウロスが彼女たちには全く手を出していないようなのです。着衣にも乱れはありませんでした」
「なるほど。それは良かった。どうしてなのかは分からねぇが……ミノタウロスの餌食になる前に助け出せたのなら重畳たぜ!」
そういえば、さっきの階層で助けた女性もそうだったが、今回も全員が服を着ていたなぁ……。
さっきは虫が幼生を寄生させるために女性を襲ったから、着衣に乱れがないのも理解できるが……今回はどうも妙だなぁ?
魔導士マリーネルカこと、如夜叉閒利子が彼女たちと一緒にこの場にいたことと何か関係があるのだろうかなぁ?
ちょっと気になったので、コピーしておいたマリーネルカの"魂の履歴"を調べてみることにした。
マリーネルカが宝箱トラップに嵌まってこの階層に飛ばされてきた時、ちょうど魔導士ガギガガとその手下がこの女性たち6人を肩に担いでこの場所に運び込んでいるところだった。
ミノタウロスたちはマリーネルカに襲いかかろうとしたが、ミノタウロスたちを支配していたガギガガの部下の魔物使いがそれを止めて、彼女が自分たちの仲間であるとミノタウロスたちに周知徹底させている。
当然だが、同じ国の魔道士ということもあって、ガギガガたちとマリーネルカは面識があり、仲間だと知っていたからだ。
マリーネルカが女性たちのことを尋ねると、上の階層で倒れているのを見つけてここへ連れてきたとガギガガが説明した。
後でガギガガと部下たちで慰み者にするつもりだとも説明していた。
なるほど……それでミノタウロスには手を出させないように命令していたのか?
しかし、シオン神聖国の男どもってクソ野郎ばっかりだなっ!ったく!
念のために、さっきコピーしておいたガギガガの"魂の履歴"でも確認してみたが相違はなかった。
ガギガガの方に記録されている映像の中から、女性たちを見つけた場面のものを見たのだが、倒れている女性たちの顔の横には、なぜか、あのカブトガニタイプの魔物が腹を上に向けて転がっている。それも全員の顔のすぐ横にだ! 妙だ……。
ガギガガたちが、その転がっているカブトガニタイプの魔物を踏みつけても全く動かない。どうやらすべてが死んでいるようだ。
魔物は彼女たちが倒し、そこで力尽きて気を失ってしまったのだろうか?
いや違う!これはあの映画と一緒じゃないのか!?嫌な予感がする……。
その時である……
"きゃぁっ!"
突然女性たち6人が全員目を覚ますと、仰向けに寝ていた状態から急に上半身を起こして座ったのである。それも無言で、そして、無表情で……だ!
それを見て付き添いをしていたハニーたちが驚き、悲鳴を上げたのであった。
◇◇◇◇◇◆◆
今、全員で野営用テント内の食堂にいる。もちろん、助けた女性6人も一緒だ。
目を覚ました女性たちにその場で状況を説明したのだが、説明に一区切りつくと彼女たちは皆、空腹を訴えた。
それで、そういえばバタバタしていて、俺たちも昼食をとるのをすっかり忘れていたことに気付き、みんなで遅めの昼食をとろうということになったのだった。
女性たちの好みが分からないので、例によってバイキング形式の昼食とした。
女性たちの食欲はものすごい!日本人だった頃にテレビで見た"大食い選手権"の出場者のようにガンガン、気持ちがいいくらいに食べていく!
俺もハニーたちも、オークドゥまでもがその食べっぷりに驚いて呆然として見ている。大男ならともかく、こんな可憐な女性たちが……とにかくすごい!
すると突然!女性のひとりが食べ物を喉につまらせたのか急に苦しみだした!
これはヤバい!絶対にそうだ!あの映画と一緒だ!
これから飛び出してくるであろう何かが食堂以外に移動できないように、食堂を覆うシールドを即座に展開する!
後から思えば、目の前の女性6人だけを覆うようにシールドを張った方が効率が良かったのだが、この時はそこまでは頭が回らなかった。
「全員完全防御シールドを展開せよ!」
ハニーたちは、俺が急にそんなことを言ったので『えっ?』というような表情で固まっている!
「早く!みんな、シールドを張れ!」
"はいっ!"
「修復!」
修復神術は効果なしだ!女性たちは全員が両手で腹を押さえて苦しみだす!
やはりダメか!?
一番最初に苦しみ始めた女性が意識を失ってその場に倒れたのを皮切りに、他の女性たちも同じように次々に意識を失って倒れ始める!
もう躊躇はしていられない!
「体内、及び、血液の完全浄化!」
"きゃあぁぁぁぁっ!"
最初に倒れた女性には間に合わなかった!
彼女の腹を食い破り、血で真っ赤になった虫型の魔物が飛び出してきたのだ!
あの例のSF映画の1シーンを彷彿とさせる!そっくりだ!
腹を食い破られた女性は一瞬で絶命した!
飛び出してきた虫型の魔物はトンボの幼虫"やご"に似ている。
そいつは、俺たち全員に対して順に視線を送ったかと思うと、突如、宿主だった女性の身体から飛び出してこの場から逃げ去ろうとした!
だが、そうは問屋が卸さない!
ヤツはすぐにシールドにぶち当たる!そして、別の方向へ向かっていってはまたシールドにぶち当たる!それを繰り返している!
「重力操作!重力20倍!……フェイザー起動!出力レベル6!発射!」
まず虫の周辺の重力を20倍にして動きを封じた後、フェイザー光線を発射したのである。虫は一瞬で蒸発する!
ちょっとフェイザーの出力レベルが高すぎたかもなぁ……。レベル4くらいでも良かったかも知れない。
恐らくヤツの体液は強酸性だ。だから、フェイザー光線による攻撃が"最良"だと判断したのである! それにここは食堂だし……色々飛び散ると……。
「体内外の完全浄化!そして、完全修復!……最後は、蘇生!っと」
女性には申し訳ないが完全浄化と完全修復を施してから蘇生させた。
彼女の体内に虫の何かが残っているかも知れない。そして、再びそれが動き出す可能性を完全に潰すためだ。
もともとが28歳であった彼女は、16歳として蘇ったのだった。
蘇った彼女は若返ったことを非常に喜んでいる!そして、他の女性たちもそれを見て是非、自分たちもそうして欲しいと俺に懇願する……。
「いいのか、お前さんたち?
完全修復を施すと若返るが、それと同時に生娘に戻っちまうんだぞ?
それでもいいのなら完全修復を施すが……」
"是非!是非!お願いします!"
彼女たちは、腕を胸の前で組んで俺の前に跪き、目をキラキラさせている。
期待に満ちた表情を向けているのだ!
「よし、分かった。それじゃぁいくぞ!……完全修復!」
女性たちは互いに顔を見合わせながらキャッキャと飛び上がって喜んでいる!
女性たち全員から……
「このお礼に、私の"二度目の初めて"をあ・げ・る!うふ!」
ってなことを言われのたが、即断ったのは言うまでもない!本当だぞ!?
け、決してハニーたちの目が怖かったからじゃないぞっ!
お、俺の相手はハニーたちだけだ!浮気は絶対にしない!そ、そうだとも!
◇◇◇◇◆◇◇
彼女たち6人は全員が貴族階級出身だった。
ランクAのベテラン冒険者パーティーで、どうも道楽半分でしているようだ。
今まで遇った冒険者たちとは全く異なり、金品への執着もなく、どこかお気楽な感じがする。
だから、この子たちには神殿騎士試験の件は勧めないことにした。昼食が終わり次第、彼女たちが拠点としている町へと送り届けて、それでお終いとした。
後で神都までお礼に行くと言っていたのだが……丁重にお断りしたぞ!
お礼はこの身体で……とか、ふざけたことをまだぬかしていたからだ!
◇◇◇◇◆◇◆
女性たちを救出した部屋の奥には扉がひとつあった。その扉の向こうには巨大な空間があることがマップで確認できる。
その空間の一番奥に第8階層へとつながる階段があるようだ。
どうやらこの扉の向こうはボス部屋らしい。そこには巨大な魔物の反応が1つと中くらいの魔物の反応が複数ある。
マイミィの話ではダンジョンマスターの支配下にあるため、マイミィが支配することは不可能であるとのことだ。そうそう簡単には進ませてくれないようである。
「ボスはバジリスクです。 体長は8mほどで、見た目は巨大な蛇のようですが、頭には王冠のような突起物があります。
猛毒液を吹きかけて攻撃してくるらしいですのですが……
使う毒には二種類あって、1つは相手を溶かしながら体力・魔力を奪う猛毒で、もう1つは相手を石に変える毒液とのことです。
それに、バジリスクの目を見ただけでも石化するとも言われていますが、実際はどうなのかは分かりません」
「毒はともかく、石化はヤバそうだなぁ……」
「はい。倒すのに苦労しそうですね。
そして、バジリスクと一緒にいる魔物は、すべてミノタウロスの上位種である、ロイヤル・ミノタウロスです。全部で10匹いますが、こちらは斧による物理攻撃のみです。魔法攻撃はしませんがSTRが100前後ですので要注意です」
「なるほど。そっちの方は多分そんなに心配する必要はねぇな。フェイザー光線でいちころだな」
「はい。高威力のフェイザーや攻撃神術でしたら瞬殺可能でしょう」
「さて、バジリスクかぁ……どうやって倒すかだなぁ。石化が厄介だよなぁ」
「私たちが持つ魔法耐性では防げないのでしょうか?」
「いや、ノアハ。多分大丈夫だと思う。だがなぁ……多分でお前さんたちを危険な目には遭わせられねぇからなぁ。それで思案しているんだよ」
「マイミィさん、それで……石化を解くことは可能なんでしょうか?」
「はい。ノアハさん、それは大丈夫です。
魔導士ガギガガの部下が石化されたことがあったのですが、ガギガガが精神支配解除魔法で石化を解くところを見たことがあります。
その時にガギガガが『バジリスクを倒すわけにもいかんから』と言っていましたので、バジリスクを倒しても石化が解除されるのかも知れません」
ん?精神支配解除?本当に石にされるわけじゃないのか?
<<全知師。魔物の設計図というか仕様書みたいなものは存在するのか?
>>はい。存在します。
マスターと管理助手統括官のみがアクセス可能な情報です。
やはり存在したか!思った通りだ!
<<よし。では、アクセス方法を教えてくれ。
>>承知しました。
魂のプライマリーキー値によりアクセス権の有無を判別しますので認証行為は不要です。ただ単に、魔物管理データベースへアクセスすることを要求するだけでデータの閲覧等が可能になります。
『魔物管理データベースへアクセス!』と強く念じて下さい。それだけでデータベースにアクセスできます。
<<ありがとう、やってみる。
『魔物管理データベースへアクセス!』
バジリスクの攻撃の詳細が分かった。
まず、石化と呼ばれている攻撃には二種類あった。
ひとつは空気中の水分を利用して一瞬で固まる"超速乾性コンクリート"のようなものを相手に吹きかけてコンクリート詰めにする攻撃で、もうひとつは精神支配のようなものだった。
精神支配のようなものとは、要するに相手を催眠状態のような状態に陥らせて、身体が動かないと思わせるものだ。
前者の石化は、身体の表面を覆い尽くすコンクリートのようなものを破壊すれば石化された者を助け出すことができるが、密閉されているため、石化後すぐに救出しないと、救出までの間に窒息死してしまう可能性がある。
後者の石化は、精神支配のようなものなので、耐性さえあれば石化状態には陥らないし、バジリスクを倒せば呪縛が解ける。
バジリスクは超速乾性コンクリートの毒液とは別に、身体を溶かしながら体力と魔力を徐々に失わせる猛毒液を吹きかける攻撃もしてくる。
これは、キャットスーツでも極薄シールドでも防げそうだ。
後は物理攻撃で、長い尻尾を鞭のように使って相手にダメージを与えるか、鋭い牙による噛みつき攻撃くらいしかしない。
物理攻撃の方も、身体を吹っ飛ばされる可能性はあるが、極薄シールドを張っておけばダメージを受ける心配はないし、噛みつきにも対応できる。
ただ、翠玉とユリコがそうだったように、急激なGが加わることで意識を失ってしまう可能性もあるのでその点は要注意だ。
ただ、これらは基本的な仕様についてのデータであって、ダンジョンマスターの裁量で他の魔法等が使えるように改造されている可能性もあるから注意が必要だ。
「ダーリン。私が中に入ってバジリスクの攻撃を受けてみますので、石化されたらこちらへ転送していただけますか?」
「ノアハ、だめだ!そんなことはしなくてもいい!いや、絶対にして欲しくねぇ!
誰が大切な、大切なハニーにそんな真似をさせられるかってんだ!」
「え?」
ノアハは頬を染める……。
「バジリスクの攻撃に関する詳細が分かったから……」
俺はハニーたちにバジリスクの基本仕様に基づく攻撃について説明した。
「……ということで、極薄シールドと完全防御シールドを併用した状態で戦えば、石化されることもなく楽に戦えるはずだ。
攻撃はそうだなぁ……やはりフェイザー銃を使おうか。相手が巨大だから、出力レベルは8にセットすることにしよう。みんな準備してくれ!」
"はいっ!"
慣れたものだ。ハニーたちの準備はすぐに整う……。
「さあ、それじゃぁ、サクッと片付けることにしますかっ!」
"はいっ!"
ボス部屋への扉が開かれる……




