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第024話 千人の諾諾は一士の諤諤に如かず

 砦跡の中、一番奥にある廃屋に20人ほどの生命反応がある。

 その他の廃屋には生命反応はない。


 取り敢えず、砦の方は後からにしよう。

 まずはこちらへと向かってくるヤツらを片付けるとするか……。


 約20人だな。

 ソルヴェン・ケヴァインとその手下どもが、馬でこちらへと向かっている。


 砦跡の門の前でストーカー野郎を待ち構えることにした。

 暫くして、ヤツらがやって来たので、俺はヤツらの前に立ちはだかった。


「お前は誰だ!?邪魔をするな!そこをどけ!」


 手下どもも、皆、馬を止めてこちらを睨み付けている。


「困った兄ちゃんだな。人に名前を聞く前に、まずはてめぇが名乗るのがスジってもんだろが?違うか?」

「ああ、それは失礼した。

 私は、ラウロボルムの町のケヴァイン男爵家の5男、ソルヴェン・ケヴァインである!……さぁ名乗ったぞ、今度はお前の番だ!名乗れ!」


 なんか調子狂うヤツだなぁ……。


「俺か?俺の正体を知ると震えが来るぜ?聞いても大丈夫か?」

「うるさい!私はちゃんと名乗ってやったんだぞ!とっとと名乗れよ!」

「しかたねぇなぁ、教えてやろう!俺はこの世界の神だ!ほれ……」


 眉間の"印"を一際輝かせる。


「はははっ!神がお前みたいな小僧であるわけがあるかっ!本当のことを言え!」


 ダメだこりゃ……ああ、もう面倒くせえ……。


「転送!」


 ストーカー男一味が乗っていた"馬だけ"を遠くへと転送してやった。

 馬はみんな止まっていたから、転送によって怪我をすることはないだろう。


 うわっ!どわっ!ぶひっ!がはっ!……


 急に馬が消えてしまったため、ほとんどのヤツが、ケツを地面に"しこたま"打ちつけ、顔を歪めている。他には、顔面から地面に落下したヤツもいた。

 あまりの痛さに目に涙を浮かべている者もいるな……。


「てめぇが俺の大事なレキシアデーレにつきまとっているクズ野郎だな?」

「お前は誰なんだ!我が愛しのレキシアデーレの何だ!?」

「俺か、俺は保護者だよ」

「そうか!保護者か!じゃぁレキシアデーレとの結婚を認めてもらおう!

 さもないと……この神官の命が……あれ?」


 間抜けだ……。今頃神官のスリンディレがいないことに気付いたとは……。

 スリンディレを馬の背に、自分のすぐ後ろに縛り付けていたんだから、せめて、馬が消えた時には気が付けよな……ったく。

 あきれていると、ストーカー男の手下どもが、俺を取り囲もうと動き出す。


 "見えざる神の手"で全員を上から地面に押さえ込み平伏させ、身動きが取れないようにしてやった。さあ、ではコイツらを始末しようかと思ったその時……


「小僧!動くな!ゆっくりとこっちを見ろ!」


 背後から男の声がした。

 ん?なんだ?


 ストーカー男とその手下どもを地面に押しつけたままにして……おもむろに振り返る……


「この女どもが目に入らないか?若を解放しなければ、娘たちを殺すぞ!

 さぁ!若を放せ!」


 全裸の女性数名が、ガラの悪い男どもに腕を後ろ手にねじ上げられて砦跡から、連れられてきた!

 女性たちは真っ青な顔をしながら、苦痛に顔を歪めている。


 多分、このストーカー男の守り役かなんかだろうな……ストーカー男を解放するように迫ってきた男は勝利を確信したかのような表情を浮かべ、ニヤリと笑った。


「おのれぇーーっ!卑怯だぞ!女性たちを解放しろ!

 …………とでも言うと思ったか?ざぁ~んねんでしたっ!……転送!」


 俺は拘束されていた女性たちを、俺のもとへと転送してやった。

 俺のもとへと転送されてきた女性たちを浄化、治療し、服を着せてやる。


「完全浄化!完全修復!下着、衣服類装着!……」


 自分たちが拘束していた女性たちが突然目の前から消え、きょろきょろとあたりを見回していた男どもが、女性たちが服まで着て俺の側にいることに驚愕する。


『おい、さゆり!聞こえるかぁ?』

『はい。シンさん。何でしょう?』

『今からそっちに女性を数名転送するからさ、面倒を見てやってくれ!

 盗賊に拉致、監禁されていたようなんだ。ケアを頼むわ』

『分かりました!』


 女性たちは、近隣の村々から攫われて来て、慰み者にされていたようだ……。

 このクソクズゲス野郎どもは絶対に!…絶対に許さん!


 だが、まずは彼女等を安全な場所へと送ってやらなきゃなっ!

「転送!」


 突如、女性たちが消えるのを目の当たりにしたクソ野郎どもすべてが、目が飛び出んばかりに目を見開き、アゴが外れんばかりに大きく口を開けて驚いている。


 俺は強烈に威圧する……

「女性を凌辱するようなクソ野郎を、俺は絶対に許さねぇ!……てめぇら、覚悟はできてるんだろうなぁ?」


「ま、ままま、待ってくれ!俺たちは、そ、そこの若造に金で雇われただけだ!

 もう絶対に悪いことはしねぇ!だから、か、勘弁してくれ!助けてくれ!」

「はぁーっ!ったく!そう言って改心したヤツなんざ見たことねぇからなぁ~。

 それに……てめぇたちは、助けてくれと言われて助けてやったことがあるか?

 ねぇだろう? さっきの女性たちが助けてと言っても凌辱したんだろう?

 なんでそんなてめぇらを助けてやらにゃ~ならんのだ?

 許せねぇなぁ、ぜっ・たい・にっ、なっ!……爆殺!!」


 ズバババババババババーーーーーーン!!!!


「爆殺ーーーっ!」


 ズバババババババババーーーーーーン!!!!


 まずは砦跡の方のクソ野郎どもを吹っ飛ばし、振り向きざまに、フロルセンドゥ村の神殿を襲ったクソ野郎どもを吹っ飛ばしてやった!

 もちろん、爆死したヤツらの魂は、キッチリと!"奈落システム"へと放り込んでやったことは言うまでも無い!当然だ!


 残るは、ストーカー男、ただひとりである。


「ひいいいぃぃぃぃぃっ!!」


 あーあ、失禁しやがった……。


「許して下さい!許して下さい!許して下さい!許して下さい!許して下さい!

 もう絶対に、絶対にレキシアデーレには近づきません……許して下さい!許して下さい!許して下さい!許して下さい!」


「や~なこったぁ!てめぇの言うことなんざ信用できるか!?

 てめぇを始末するのが一番確実だとは思わねぇか?そうだろう?」


 さてと、どうしたものかなぁ……。


 そう考えていると、神官を救おうと追ってきた神殿騎士3人が漸くやって来た。


「おう!ご苦労さん!」


「あれっ!?上様!どうしてここに?」

「ああ、お前さんたちの仲間が知らせてくれてなぁ、先回りして、コイツらをぶっ殺しに来たんだよ。

 ちょうど今、コイツの手下どもを、みんな始末したところだ。

 ……ああ、そうだ。安心しろ、スリンディレは無事だ。

 俺が助け出して、今は神殿の方にいるぞ。怪我も治してやったし、元気だぜ」


「グラウギンは……コイツの手下に斬られた、私たちの仲間のグラウギンは無事でしょうか?上様に事態を知らせたヤツです」

「おうっ!そっちも無事だ。ちゃんと治してやったからな、安心しな。

 大怪我をしているのに、必死になって俺に知らせてくれてな。大したヤツだぜ。 お陰で先回りしてコイツらを始末することができた」


「おお!そうでしたかっ!仲間をお助け下さり、ありがとうございます!」


「さてと……コイツをどうするか……だなぁ?

 誰か、たっぷりと苦痛を味わわせながらコイツを殺すいい方法を知らねぇか?」


「足に錘をつけて海に沈めてはどうでしょうか?」

「ひいいいぃぃぃぃぃっ!!」


「手緩いんじゃねぇ?

 もっと……なんていうかな、こう、『早く殺してくれーっ!』ってコイツが思うようなエグいのはねぇかなぁ?」

「か、かかか、勘弁して下さい。許して下さい!許して下さい!」


「軍隊蟻の群れの中に放り込んでやっては?」

「ひいいいぃぃぃぃぃっ!!」


「ひいひいひいひぃと…うるせぇんだよ!四肢粉砕!」

 ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁあ!!


「修復!……今度は"ぎゃあぎゃあ"か、かえってうるさくなっちまうな……。

 軍隊蟻ねぇ……面白そうだなぁ。でも蟻がどこにいるか分からねぇしなぁ。

 探すことはできるが……それもちょっと面倒だしなぁ……」


「生きたまま棺桶に入れて、地中に埋めてやったらどうでしょう?」

「ひいっ!」


「……あーーっ!もう!考えるのが面倒くせえ!転送!」


「えっ!?ヤツをどうしたんですか?ど、どこへ転送されたんですか?」

「ああ、面倒くせえからな、もう…海のど真ん中に転送してやったわ。

 なんかの海洋生物が適当に始末してくれるだろう」

「「「は・は・は・は……」」」


 ちょっと面白くねぇやり方だが……まぁ、いいっかぁ!レキシアデーレの前からいなくなってくれりゃぁ、取り敢えずはOKだ!

 もちろんヤツのプライマリーキーの値は"輪廻転生システム"のブラックリストへ登録済みだ。


 既に、マップ画面上で砦跡には誰もいないことを確認済なのだが、念のために、砦跡地を4人で調べてみた。

 やはり、砦跡地には俺たち以外誰もいない。敵も、拉致被害者もいなかった。


「ようし!取り敢えずフロルセンドゥ村へ帰るぞ!馬を連れて俺の側に来い」


 彼等は言われるままに馬の手綱を引きながら、俺の周りの集まる。


「転送!」



 ◇◇◇◇◇◇◇



 神殿前広場に転移してきた。

 俺と一緒に転送してやった神殿騎士3人は、馬の手綱を握ったまま、ポカ~ンとしている。


「シンさん!お帰りなさい!」

「おう!みんな!こっちの様子はどうだ?」

「みんなで手分けして怪我人の治療をしていましたが、大怪我をした人はいませんでしたので、すぐに済みました」


 さゆりの報告に耳を傾けていると、貴族らしきひとりの男性が率先して火事場の後片付けをしているのが目に入った。念のために魂の色を確認すると"青"だ。

 年齢は43歳。名前はカルロス・デイビッド・バウル。


「まぁ領主様。お久しぶりですわね」

「ああ、ヘルガちゃんか!久しぶりだな!元気かい!?

 でもどうしてここに?神様の后候補に選ばれた君が……はっ!上様!」


 カルロスという男性が俺に気付いて跪く。


「あ、跪かなくてもいいぜ。俺たちは忍びの旅をしているからな。普通にしていてくれ」

「恐れ多いのですが……わ、分かりました。仰る通りにします。普通に……。

 あ、申し遅れましたが、私は前領主をしておりました、カルロス・デイビッド・バウルと申します。よろしくお願い致します」

「ありがとうな、率先して後片付けをしてくれて。助かるぜ」

「いえ、恐縮です。これは貴族たる者の使命のようなものです」


「ノブレス・オブリージュっていうやつか……。

 お前さんのような貴族ばかりだと助かるんだけどなぁ……。

 実際はクソ貴族ばかりだから困るぜ。

 この火災を引き起こしたのも、男爵のクソ5男坊だしなぁ……」

「はい。嘆かわしいことです」


 彼は、にこにこしながら俺たちの会話を聞いていたヘルガに話しかける……。


「ヘルガちゃんは小さい頃からの夢が叶ったんだね?よかったね!神様のお后様に選ばれたんだね……本当によかったね!」

「ふふふ。さすがの上様も、私の魅力にイチコロでしたわ。ふふっ!」


「は・は・は……。ヘルガにゃぁ敵わねぇなぁ~」


 この男が神殿の怒りを買ったとかいうのが信じられないな……。

 こんな立派な人物がどうしてクビになったんだ……こりゃ裏に何かあるな。


「お、そうだ。今からこの焼けちまった神殿を修復するから、お前さん、悪ぃが、みんなを神殿から遠ざけてくれねぇか?」

「はい。承知しました。では、少々お待ち下さい」


 元領主、カルロスは後片付け作業をしている者たちのところへと足早に向かい、テキパキと指示を出す。……やはりできる男だ。

 かなり人望が厚い。みんなは彼の指示に従って、あっという間に神殿から距離をおく……。これで神殿の完全修復が可能だ。


「完全修復!」


 淡い緑色をした美しい半透明な光のベールに包まれる神殿を見て、遠巻きに見ている人々が皆、感嘆する。 いつ見ても美しい光だ。


 光は一瞬で消え、神殿が焼ける前以上に美しく蘇る!

 人々からは大歓声が上がる!


「いやぁ~上様!お見事でござりまする!」


 そう言いながら、ぶよぶよに太った男が近寄ってくる。

 魂の色は"赤"だ。警戒しておこうかな。

 男はゆっくりと、大げさに拍手をしている……。


「ん?お前さんは誰だ?」


「ははは。まさかご存じないとは。遺憾ですなぁ。

 私は統括神官のジーノ・イスト・ギューノです。どうかお見知り置きを」


 元領主、カルロス・デイビッド・バウルの表情が険しくなる。


「ジーノ、ちょっと教えてくれるか?お前さんは何でこのカルロスを領主の座から引きずり下ろしたんだ?」


「引きずり下ろすとは人聞きが悪いですねぇ……。

 この男は、神殿への寄進を渋ったのです。上様のご結婚のお祝いとして、全村民からお祝い金を徴収するようにお願いしたのに、この男は突っぱねたんですよ。

 神殿の意向にしたがって下さらないから辞めていただいたに過ぎませんよ」


「お祝い事は、当人たちの気持ちの問題です。お祝いの金品を送る、送らないは、それぞれ個人の判断に委ねるべきだと私は申し上げただけです。

 税金のように徴収するものではないと私は今でも思っています。

 この考え方は間違っているのでしょうか?」


「間違っているからクビにしたんです。神殿の意向に逆らうのは不敬です!

 商業ギルドも、冒険者ギルドも……他のどの団体も快く寄進しましたよ!

 貴方だけですよ。ごねたのは!」


 ああ……なんということだ!

 千人(せんにん)の諾諾(だくだく)は一士(いっし)の諤諤(がくがく)に如(し)かず!

 この元領主は稀代の賢人だ!これほどの人材を手放すなんて愚かだ!


 元領主とコイツが話している間に、ジーノの魂の履歴をざっと見て色々なことが分かっている。


「おい、統括神官のジーノ・イスト・ギューノとやら、てめぇはクビだ!

 とっととこの村から出て行きやがれ!」

「な、なななな、何を仰るんですかっ!恐れながら……頭は大丈夫ですか?

 どうかなさったんじゃないですか!?」

「てめぇ、失礼なヤツだな!殺されてぇのか!?」


 強烈に威圧した。


「ひぃ~っ!」


「これだけの賢人を領主の座から引きずり下ろしやがって……お前はバカか?

 しかも、寄進させた金品はすべててめぇが私してるじゃねぇか!?

 俺が分からねぇとでも思ったか!?このクソぶた野郎がっ!

 てめぇの全財産は没収する!身ひとつでこの村からとっとと出て行きやがれっ! このスットコドッコイがっ!」


「おのれぇーーーーっ!言わせておけば……ファイヤーボー……ぐはっ!」


 ぶた野郎が俺に向かってファイヤーボールを放とうとしたようだ……。

 だが、この男は、最後まで言葉を発することはできなかった。


 男が言葉を言い終える前に、スケさんとカクさんが男の前へと高速移動し……。

 二人は男の前で走る方向をクロスさせながら、男の身体の直前で剣を抜いた!

 直後、男の身体は水平に3つの"塊"に切断される!


 スケさんが、男の右から左に移動しながら水平にぶった切り、カクさんが、男の左から右へと移動しながら、水平にぶった切ったのだ。

 見事なコンビネーション!


 切り口は相変わらず素晴らしく鮮やかである。


 その様子を見ていた者たちから悲鳴があがる。

 あたりには強烈な鉄さび臭が漂う……。


 スケさんとカクさんが剣を一振りし、剣についた血を振り払い、剣を鞘に収めてこちらへと歩き出した。


「スケさん!カクさん!危ねぇ!しゃがめ!」


 声に反応してスケさんとカクさんはその場にしゃがむ……

 直後二人の頭上を何かが高速に通過した。


「シールド展開!」


 俺は周りにいる人たちすべてを覆うようにシールドを展開する!


 統括神官のジーノ・イスト・ギューノは死んでなかった!分断された身体の部分が元に戻っただけではなく、身体が巨大化し、オーク・キングのような魔物に変身したのだ!

 そして、化け物ジーノがスケさんとカクさんの頭を狙って振るった腕が彼女たちの頭上を高速に通過したのであった。


「がはははははっ!女神シオン様から加護を授かったこの俺をそう簡単に殺せるとでも思ったか!愚か者め!……喰らえ!」


 なーんか攻撃してくるけど、シールドがあるから平気だ。全然問題ない!

 しかし……女神シオンの加護?なんだそりゃ!

 神殿の統括神官がシオン教徒だったのか?ダメダメじゃないかっ!


 ジーノをターゲットに開発環境を起動して確認してみた。


 なるほどぉ、コイツのプロパティとイベントが弄られているな。

 プロパティ値は……変更可能だな。


 ん?イベントハンドラは、全部難読化されて外部に保存されているぞ。

 外部に保存されたコードを、インタープリターらしき外部プログラムへ渡すようになっているな。凝ったことをしやがる!

 イベントハンドラを覗けないようにしているのか……。


 多分、イベントハンドラ内で、死からの復活と怪物化を引き起こすようになっているんだろうな。

 コイツを何度殺しても、イベントハンドラが呼び出されてコイツを怪物化状態で復活させるようにしてあるから、イベントハンドラを修正できないようにしているのだろう……。


 ……だが、笑っちゃうよなぁ。


 コイツの復活を阻止するのに、何もわざわざ、コイツのイベントハンドラを修正する必要がないことくらい分かりそうなものなのになぁ……。


 イベントとイベントハンドラとのつながりを断ち切ってしまえばいいだけだ。

 だから、サクッとイベントハンドラを削除してやろう。


 女神シオンってのは、間抜けなのか?

 それとも……俺がこうすると考えて罠が仕掛けてあるのか?


 イベントハンドラに、インタープリターをワンクッションかませる技術があるというのに、なんだかやっていることが"とんちんかん"だよなぁ。

 だから、きっと罠が仕掛けられているな。な~んかわくわくする!


 取り敢えず、"魔物っぽく"なったぶた野郎の"イベントハンドラ"を全消去して、プロパティ値もただのオッサンレベルに変更してやった。


「リブート!」

「ふへっ!?」


 ぶた野郎のシステムをリブートしてみた。


 シオンの罠が発動するんじゃないかと、わくわくしながら待っていたのだが……何も起きずに無事に再起動してきた。つまらぬ!

 統括神官のジーノは怪物のままだ。変化はない。


 突然意識が飛んだからなのか戸惑っているようで、ジーノの攻撃の手が止まっている。


「それじゃぁ~これでどうだっ!ウインドカッター!」

「ぎ……」


 風属性の攻撃神術、ウインドカッターで、風の刃をぶた野郎にかましてやった。

 ジーノは激痛による絶叫を始める前に、真っ二つに切断される……。


 今度こそシオンの罠が発動するぞ、きっと!

 …………

 …………

 …………

 ……なにも起こらない。ぶた野郎のジーノは死んだままだ。復活しない。


 ん~~!!女神シオンとやらは、やはり間抜けなのかぁ???



 ◇◇◇◇◇◇◆



 ぶた野郎の魂の履歴を確認する前に、元領主と話をする。


「この度は申し訳ねぇ。俺の目が行き届かなかったばっかりに……。

 どうかもう一度この村を初めとする6村の領主になってもらえねぇか?

 頼む!この通りだ!」


 俺は素直に頭を下げた。


「どうか頭をお上げ下さい。喜んでお引き受け致します。だから、どうか……」

「ありがとう!よろしく頼む!お前さんの好きなようにやってくれていいからな。

 神殿の意向も無視してもいい。領民の事を第一に考えてくれればそれでいい」

「はっ!身命を賭して励みます」


 あのクソぶた野郎めっ!優れた人材を下野させやがって。

 この国にとって大損失になるところだったぜ……。



 新しい統括神官には、この神殿で"唯一"魂の色が"スカイブルー"だった30代の女性神官を抜擢する。

 彼女は初め固辞していたが、なんとか頼み込んで最終的には承諾してくれた。

 これで、この村も安泰だな。めでたし、めでたし!

 ヘルガの家族が、今後もこの地に住み続けても、不当な扱いを受けることはまず無いだろう。よかったぁ!



 ◇◇◇◇◇◆◇



 統括神官だった"ぶた野郎"、ジーノ・イスト・ギューノの魂の履歴を確認する。

 ヤツ自身が言っていたように、ヤツはシオン教徒であった。


 裕福なこの村をシオン教の資金源にせよ……という使命を帯びていた。

 最終的には、この村と近隣の村々全体をシオン教の手中に収める計画が進められていたのだ。


 俺たちの結婚祝いと称して人々から集めた金品は、ほとんどがシオン神聖国へと送られてしまっていた。

 複数の商人ギルドや冒険者ギルドを経由して、シオン神聖国とのつながりをぼかそうとしていた。

 金品のみを追跡していたら恐らく金品の行方がシオン神聖国だとは気付くことはできなかったであろう。魂の履歴を見たから分かったのだ。


 レキシアデーレのストーカーである、"ソルヴェン・ケヴァイン"をこの村に呼び寄せたのもヤツの仕業かと疑ったが、そのことには一切無関係であった。意外だ。


 しかし…許せんのは、このクソぶた野郎は、美人信者の情報を、なんと金と引き換えに、ニセ領主だったバルテックに流していやがったことだ!

 コイツの魂は、"輪廻転生システム"に、俺の"所見"付で送ろうと思っていたが、この事を知って頭にきたので即刻、"奈落システム"へと放り込んでやった。



 ◇◇◇◇◇◆◆



 今回の件で、シオン教徒が神殿組織内部にもかなりの数が潜り込んでいる可能性が出てきた。

 こうなると、地方神殿の視察が重要になってくる。

 だから、神殿の視察官を務めている、スリンディレ・クラルケにもっと活躍してもらわねばならないだろう。


「スリンディレ、俺はお前さんにも、レキシアデーレに授けた加護と、転移能力を付与してやろうと思っているが、どうだ?

 今回の件で、お前さんの役割の重要度が大幅にアップした事は分かると思う。

 だから、お前さんが活躍しやすいように、俺は加護してやりてぇんだよ。

 どうだ?どうしても嫌なら無理にとは言わねぇがな」


「ありがとうございます。私も今回の件では危機感を覚えました。

 ですから、加護していただけるのでしたら、ありがたい限りでございます。

 大変恐縮でございますが、お願いしたく存じます」


「そうか!よかったぜ!」


 早速、彼女に俺のフィアンセと同じ加護と、転移能力を授けた。

 転移能力があれば一気に目的地まで行けるので、視察の効率も上がるだろうとの判断だ。

 それと、俺たち管理者へのホットライン念話が使えるようにしてやった。

 スリンディレが望んだ時に、俺、シオリ、さゆりに限定して念話を送れる。


「おエン!いるか?」

「はっ!ここに……」


「悪ぃんだが、お前さんのところの"優秀な手の者"を、このスリンディレの護衛につけてやってくれねぇか?

 本来なら、俺から隊長のおギンに頼まねぇといけねぇんだろうがな……どうだ?

 お前さんの直属の部下の中から都合つけてもらえねぇかなぁ?」


「はっ!喜んでお引き受け致します。

 では、"夜叉王丸"という者をお付けしましょう。

 彼は非常に優秀ですから、きっとお役に立つことでしょう」


「"鳴神の夜叉王丸"がいるのか!!」

「なるかみ?いえ、二つ名はなく、ただの"夜叉王丸"です。

 すぐにつれて参ります……転移!」


 夜叉王丸という言葉に反応し、さゆりも俺の側に来て、ワクワクしながら、夜叉王丸が現れるのを待つ……。

 そうだよな。鳴神の夜叉王丸って、クールで格好良かったからなぁ……。


 待つこと数分……。


「上様、夜叉王丸を連れてきました。夜叉王丸、ここへ!」

「はっ!」


 夜叉王丸が現れた。さゆりはちょっと残念そうだ……。

 キリッとした細めの眉毛に、切れ長の涼やかな目を想像していたんだろうな。


 覆面から覗く目もとは……

 実際には漫画の中で一度も言っていないセリフだが、『俺の後ろに立つな!』で有名なスナイパー、ゴル○13のようだ。


「悪ぃが覆面を外してよく顔を見せてくれねぇか?」

「はっ!」


 あ……デューク○郷のように、鼻筋が通っている顔を期待していたんだが……。

 なんというか……。

 さゆりは、肩をすぼめてこの場から去って行った。


 夜叉王丸くんに失礼だろ!それ!


「あー、夜叉王丸!お前さんにこの忍刀(しのびがたな)を授けよう!シールド展開機能もあるから後でおエンから使い方を学ぶとよい」

「ははっ!ありがたき幸せ!」


 俺は、おエンが持つ忍刀(しのびがたな)よりも"ワンランク"品質を落として、ミスリルで作成した忍刀(しのびがたな)を夜叉王丸に与えた。

 シールド発生機能の方は、おエンの持つものと同じにしてある。


「……ということで、お前さんに来てもらったんだ。

 これからは、スリンディレたちを影ながら守ってやってくれ!頼んだぞ!」

「はっ!」


「スリンディレ。お前さんの任務は、各地神殿の査察の他に、神殿組織内のシオン教徒を炙り出すことも含まれる。

 ヤツらが何か仕掛けてくるかも知れない……。

 大変な任務になると思うが、どうかよろしく頼む」


「はい。心得ました。お役に立って見せます」


「ああ、頼む……だが、ひとつ約束してくれ!」

「はい。なんでしょうか?」

「命を粗末にするな。自分の命を第一に考えて行動しろよ。

 死んだら許さねぇからな!いいな!?」

「はい。分かりました」


「夜叉王丸!お前もだぞ!」

「はっ!」


 さてと……ここでもなんか知らんけど、色々なことがあったが、そろそろ神殿に帰るとするかぁ……。

 あ、そうだ。スケさん、カクさん、さゆりに渡した剣はもう不要だな。

 回収して分解するか。


「スケさん、カクさん、さゆり!」

「「「はいっ!」」」


「今日護身のために渡した剣なんだが、後は家に帰るだけだからな、もう必要ねぇだろう?俺が処分してやるから、こっちにもらおうか」


 ん?スケさんもカクさんも……さゆりまで、鞘に入った剣をギュッと抱きしめてものすごい勢いで首を左右に振って拒否している?目に涙まで浮かべている!


「どうした?嫌なのか?」

「はいっ!シンさんからいただいた大切な剣です。家宝にします。取り上げないで下さい。ぐっすん……」

「「「お願いしますっ!」」」


 あらら、泣くことはないのに……。


「あ、いいよ。必要ならあげよう。じゃぁ……これもあげよう」


 彼女等の目の前に、中で亜空間収納へとつながっている"ポシェット"を生成して出した。取り敢えず7点生成した。

 さゆりは亜空間倉庫を持っている。

 だけど、ひとりだけあげないのはかわいそうだから、ちゃんと彼女の分もある。

 家に帰ったら、他の子たちにもあげよう。


 スケさんに、カクさん、おエンに、ヘルガ、レキシアデーレに、スリンディレ、そして、さゆりに手渡す。

 ん?夜叉王丸が羨ましそうに見ている……がダメだ!女の子限定だ!諦めろ!


「これはなんですの?ただのポシェットということはありませんわね?」

「ヘルガ、これはなぁ、ものすごくたくさんのものが入れられるポシェットだ。

 実はこの中は"亜空間収納"につながっているんだ。

 スケさんやカクさんのような、あんなすごい美人が、でかい剣を腰にぶら下げてちゃ、無粋ってもんだろう?だから、こいつに入れておくといいと思ってな。

 それに、これが1つあるとすごく便利だろう?」

「なるほど。そうでしたか。ありがとうございます」


 スケさんとカクさんが頬を染めている?

 みんなは嬉しそうに早速身につけてくれた。デザインセンスが皆無の俺が作ったものでも喜んでくれている……嬉しいなぁ。



 ◇◇◇◇◆◇◇



 砦跡で、ストーカー野郎、ソルヴェン一味に囚われていた女性たちについては、新領主のカルロスが、責任を持って、彼女たちを家まで送っていくと申し出てくれたんだが、彼女たちを少しでも早く家に帰してやりたくて、俺が直接、それぞれの家へと送ることにする。ちょっと遅くなるが中央神殿にはその後で帰ろう……。


 俺が彼女たちを送って行っている間、レキシアデーレ、スリンディレ、さゆり、そして、俺のフィアンセたちには、野営用のテントの中でティータイムを楽しんでもらうことにする。

 そのために飲み物と洋菓子類をたくさん用意しておく……。



 敵と対峙している真っ最中であったことから、囚われていた女性たちには、その意思を確認することなく、完全なる浄化と完全なる修復を施した。

 つまり、身体は否応なく"生娘状態"に戻ってしまっているのだ。しかも、肉体の年齢も最盛期の状態になってしまっている。

 この事に不満を持つ子がいるかも知れないと、少々心配もしていたのだが、この事を説明したら、彼女たちは完全浄化と完全修復を喜んでくれたからホッとした。

 今回も、彼女たちの傷ついた心の方は何もできていない。


 彼女たちの中には攫われた際に家族を失った子もいた。

 帰っても、周りからは偏見の眼差しで見られるであろうことを危惧し、ひとりで村で暮らすことが怖くてできないと訴える子もいた。


 彼女たちは犯罪被害者なのになぁ……小さなコミュニティーでは全員が知り合いみたいなものだから生きづらいんだろうかなぁ……なんにも悪くないのになぁ。


 そういった子たちは、カルロスがフロルセンドゥ村に残れるようにしてくれた。 領主自らが住む場所と仕事を世話して、この村でちゃんと暮らしていけるようにしてくれることになったのだ。本当にこの男はナイスガイだ!

 この村に残ることにした子たちは、涙を流して彼に感謝していた。


 帰ることを希望した子たちを、彼女たちを待っている大切な人たちのもとへと、順に送り届けて行く。

 もう二度と会えないことを覚悟していたんだろう……実際にこの世界なら確実にそうなったであろう。そういった中での再会だ。

 互いに涙し、再会を喜び合う姿は、俺の涙腺を強烈に刺激した。

 全員を送り終える頃には俺の目は真っ赤に……。目の周りは腫れてしまった。



 ◇◇◇◇◆◇◆



 囚われていた女性たちを無事送り届けて、神殿前広場に帰ってきた。

 自身に修復神術を施し、鏡で目や鼻は赤くなっていないか? 目の周りが腫れていないか?を念入りに確認してから、みんなの待つ野営用のテントへと向かう。


「さあ!みんな!それじゃぁ中央神殿に戻るとするか!」





お読み下さり、ありがとうございます。

理由は分からないのですが……

第003話が途中で切れてしまっていましたので、再アップロードしました。

第004話で、"<<"で始まる行が削除されていましたので、再アップロードしました。

(令和元年7月20日)

心からお詫び致します。

m(_"_)m

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