海戦の結果……
〜前線統括飛竜基地〜
ダンッ!……
夕日で赤く照らされた司令部に机を叩く音が響く。
「何故!……何故こうなった……」
コンラート・バルトシュ侯爵兼大将は苦々しくそう言った。
彼は飛竜を出撃させた時、すぐに飛竜が敵を殲滅し、戻って来るだろうと思っていた。しかし、現実はたった一騎しかも敗残兵が戻ってくるのみであり、残りは敵に殲滅させられたであろうと伝えてきた。
(クソっ……どうにかして揉み消さねば……だが、ここの防衛も必要であるし……まず、兵に聞かれてはいけない……クソっ!)
彼の長い夜が始まるのであった。
〜エユスバニア大公国首都エルメンライヒ〜
この街並みを現代人が見たらどう思うであろうか?産業革命の起こったヨーロッパの都市と答えるだろう。空は排気で黒く汚れ、所々に浮浪者がいて、残っている綺麗な土地も列強などの大使館で埋まっている。道の石畳の上は馬車が往来し、空いたスペースを人が往来する。大量の工場では奴隷の亜人がタダ働きし、労働者も低賃金で働かされ、1日16時間労働の激務に耐えている。
そんな都市をエユスバニア大公国の外交官ドーレア・レムスは馬車に乗り移動していた。目指すは列強である大日本帝国の大使館であり、彼はそこへ何故介入したかを問いただすと言う大役を上から押し付けられたのであった。
彼は中央ターミナルに着くと郊外ヘ行く蒸気機関車に乗り、準備されていた一等席に座ると列強の中でも強大な軍事力を持つ大日本帝国相手にどう交渉するべきかを考え、悩み始めた。一応、上からはどう交渉するべきかは指示を受けているのだが、現場の判断が最終的に優先され、改良するべきとなっていたからである。
〜エルメンライヒ郊外大日本帝国大使館〜
近くには第四ゲルマン帝国の現代的かつ荘厳な大使館があり、他の列強諸国や三大超文明国の大使館も近くにありとても良い立地であると容易に想像出来る。
その大使館は外は純洋風な白を基調とした建物で、正面扉の横に両国の国旗がついている。その国旗は上に黒、下に白と二分割された国旗の境目に赤い竜が描かれた物、つまりエユスバニア大公国国旗と白地に赤い太陽つまり、御國旗(日の丸)である。
中は質素で侘び寂びを感ぜられる建物であり、純洋風の部屋も有るが、落ち着く事間違いなしの建物である……今のドーレアので様な状況を除くとしてだが……。
ドーレアはテーブルを挟んで大日本帝国の外交官と向かい合っていた。
「ほう、つまりあなた方は我々がその……日本国と言う組織を創ってあなた方の戦争に介入したと言うのですね?」
「そうです。そして、我々は何故貴国が介入したかを聞いているのです」
「くどい……我々はそんな物は知らないし、介入しようとも思っていないのです。しかも、その日本国とやらは軍事行動をしたのでしょう?他の国では違うかもしれませんが、我が大日本帝国の国民は陛下の臣民であり、帝国陸海軍は陛下の軍なのです。例え私が知らなくても天皇陛下の臣民である国民や軍が陛下の意思に反する様な事をするはずが無いのです」
数十分後……
「ですから、このように我々は知らないのです」
ドーレアは渡された客観的証拠や文章から本当に大日本帝国はこの事を知らないと言う事が正しいと分かった上、相手がそろそろ我慢の限界に近づきつつある事を察してもう退散するしかなく、上にありのまま伝えるしか無かった。
〜エユスバニア大公国外務省〜
「となると、日本国とは何なんだ?」
ドーレアは必死に報告書を書きつつ頭の角で考えたが、上への対応やその他デスクワークに追われ深く考える余裕は無く、そのまま放置し、風化させてしまった。
〜大日本帝国陸軍東部第33部隊〜
頑丈であろう建物の中、
「日本国……ですか……わかりました」
電話をしていた男は電話を切り、部隊員に指示を出した。
「手が空いている者は"日本国"の情報を集めろ。秘密回線を使ってSDとゲシュタポにもこの事を伝えるんだ。"帝国"の情報を政府は貰ったからな。さあ、仕事にかかれ!」
この後日本国の情報が集められる事になる。