百合っ娘と記憶の欠落
「マジックギミックス」第34話です。
また長い間休んでしまって申し訳ありませんでした。
もう少し投稿頻度をあげられるように努力しますので、今後ともよろしくお願いします。
鷺村透哉が目を開けると、その視界には真っ白な世界が広がっていた。
(ん、天井……だよな。なんか俺、仰向けになってるみたいだし)
その世界がただの天井だと気づき、透哉は頭を横に向けた。そこには、透哉が寝るベッドに腕をおき、それを枕にして寝ている霧科祈の姿があった。
「うおおお!?」
目を覚ますといきなり年下の女の子がいるという状況に驚嘆した透哉は、一瞬のうちにベッドから転げ落ちた。
「うん……? あ、目を覚ましましたか。良かった……」
祈はとびきりの笑顔を透哉に向けてくる。
(い、いきなりなんなんだこのイベント……。まさか、この小説はラブコメ小説になっちまったのか? しかもこれは俺が主人公!?)
透哉は起き上がり、ベッドの端から顔を出した。
「なに変な勘違いしているんですか? あなたの考えていることは文面から伝わってきます」
「久しぶりにメタいセリフを聞いた気がするな……。って、お前は……」
部屋の入り口から聞こえてきた声。それはセリナ・フェヴァール……ジェーン・ドゥの声だった。
「何驚いているんですか? ここは統括会の医務室です。統括会の一員である私がいるのはおかしいことではないでしょう」
「だ、だが……いってぇ!」
透哉の体の中でパサ……という音がした。どうやらどこかの骨が粉々になったようだ。
「あ、透哉さん! まだ動いちゃだめですよ。しばらく安静にしていてください」
祈は透哉をベッドに戻した。
「あ、すまない……。ありがとう」
華奢な見た目なのに意外と力があるんだな、と思いながら、透哉はベッドに横になった。
「祈さん、美佳さんが呼んでいましたよ」
冷酷な声……といっても、廃工場の時よりはかなりぬくもりを持った声でセリナは言った。
「あ、ありがとうございます。すいません、私ちょっと行きますね」
透哉に向けて祈が少し微笑む。
「あ、ああ、ありがとう」
「申し訳ありませんが透哉さん、私もツァギールさんに呼ばれているので、失礼します」
そう言ってセリナは廊下を歩いていった。
「透哉さん、祈、かわいいですよね」
「うお!? び、びっくりした……」
先ほどまで祈が座っていた椅子にいきなり現れた人物。それは、銅鈴だった。
「でも透哉さん、残念ですね。祈はあきらめた方がいいですよ」
「ハツキがいるから……か?」
「いえ、私がいるからです」
「……は?」
はい、という肯定の言葉がくると想定していた透哉は、予想外の答えに驚いた。
「あれ、透哉さん知らないんですか? 祈、百合っ娘ですよ」
「な、なに!?」
透哉は再びベッドから転げ落ちた。
「ちょ、何やってんですか」
鈴は透哉をベッドに戻した。
「す、すまん、ありがとう。それにしても、祈さんが女性に興味があるとは。てっきりハツキに好意があるのだろうと……」
(ま、まじかよ。つーか百合ネタとか絶対テコ入れだろ、ああ、そうだ、テコ入れだ)
透哉は作者の趣味と人気への執着に少し引いた。
「まあ、ハツキのこと好きってのはあるかもしれませんが、たまに私にもデレてくるんですよー。それがかわいくてしょうがないんです」
ああ、こいつもか。透哉はそう思いながらえへへー、と照れている鈴に別の質問を投げかけた。
「そういえば、涼たちも負傷していたよな。あいつらは……?」
透哉は周りを見まわしながらそう言った。
「涼と海斗は傷が浅かったのですぐ回復しました。龍弥はかなりの重傷でしたが、祈の魔術ですぐに治りました」
「祈さんの魔術って確か傷の回復だったっけ。あれ、俺、全然回復してないような……」
龍弥の方が明らかに重症だったのに治りが早い、ということに疑問を感じ、言葉にしてみる。
「祈の魔術は目に見える傷に特に有効なんです。透哉さんは骨が折れてたり粉々になったりと、目に見えない傷ばかりだったので、あまり魔術が効かなかったんです。これでも結構治っているんですよ」
「そ、そうなのか。というか、なんでいつも事件が終わった後は怪我して寝させられているんだ……」
「あ、確かに前の章でも医務室的な場所にいましたね。そろそろ忌む室になっちゃうんじゃないですか?」
「うまくねーよ! 怖えーからやめろー!」
透哉はあはは、と笑っている鈴にビシッとツッコミを入れる。
「ところで、もしかして透哉さんって彼女いるんですか?」
「? なんでだ?」
「いえ、祈をあきらめてくださいっていったときにあまり動揺してなかったので」
「……彼女……か。それはいなかった気がするが……。仲の良かった女性は……いた……気がする」
「気がするって……そんな大事な記憶、どうしてなくすんですか」
「あ……れ……本当に思い出せない……つい最近いたのに……いつだったか……どんなやつだったか……どこで、出会ったか……。なんでだ……?」
透哉は、自分の記憶が約1年前から曖昧になっていることに気づいた。
「え……記憶の曖昧なところ……?」
祈は美佳の質問の意図がわからず、訊き返した。
「うん。さっき龍弥から聴いたんだけど、セリナさんと戦うときにセリナさんが龍弥たちは経験を失っている、って言ってたらしいんだ。それと祈の記憶が曖昧なのと、何か関係があるんじゃないかって思って。ほら、ここに来るとき、ジェット機の中で鈴が2年前のこと思い出そうとしたときに思い出せなかったじゃん。それとセリナさんの言葉、何か関係があるんじゃないかって。そんで、祈は、記憶の曖昧なところとかないかなーって思ってさ」
「うーん、特にないかな」
「そっか。ならいいけど。それだけ訊きたかっただけなんだ。ありがとう」
「ううん、いいの。あ、そう言えばハツキ見なかった? 透哉さんの状況とか伝えたいんだけど」
「ハツキなら、今会議室だよ。セリナさんの処遇を決める会議に出席するって……」
「そうなんだ。じゃあ後でいいか。ありがとう」
そういって祈はその場を去った。
「うーん、祈の記憶には異常なし、か。それとも何かきっかけがあったら記憶の矛盾とかに気付いたりするのかな……。というか、私に関しては1年前から2年前にかけての記憶が0なんだけど……」
美佳は自分の記憶の欠落に恐怖と不安を感じた。
読んでくださり、ありがとうございました。
前書きにも書いたのですが、しばらく休んでしまい、すいませんでした。これからは頑張って投稿頻度、あげます!
学校は夏休みに入ったので、それも可能になると思います。
先日、体験入学があったのですが、とある機関の(部活のような、生徒会のようなものの)一員としてそれの手伝いをしていると、自分が体験入学に行ってからもう一年が経つんだな、としみじみしました。
珍しくまじめなことを書いたところで、あとがきを終わらせていただきます。
しばらく休んでいたこと、重ね重ねお詫びします。これから頑張っていきますので、みなさんの応援があると嬉しいです。
感想や文章の指摘などがあれば送っていただけると嬉しいです。
ブックマーク等もしていただけると幸いです。




