廃工場
すみません、かなり遅れました。
「マジックギミックス」28話です。
よろしくお願いします。
「……あの、そういえばセリナさんも魔術師なんですよね」
透哉は歩きながらセリナに問うた。
「はい。そうですよ。って、敬語はやめてください。透哉君の方が年上なんですから」
セリナもまた歩きながら笑って答えた。
「ああ、ごめん。なんかつい、さ」
「いえ。それで、それがどうかしたんですか?」
「ああ。どんな魔術を使うんだ?」
「うーん。どう言ったらいいでしょう。重力操作魔術……って言ったらいいでしょうか。ある物体にかかる重力を減らしたり増やしたりできる魔術なんじゃないか、ってハツキが言ってました」
「な、なるほど」
透哉はセリナに少し頼りなさをおぼえた。初対面の時からどこか抜けているような少女だとは思っていたが、どうやら第一印象以上に頼りないみたいだ。
そろそろ日も沈みかけ、空が橙色に染まり始めてくる。
透哉たちが今歩いている道は南の方角に続いており、周りが木に囲まれているため、太陽が南中していない限り光が届きにくくなっている。ましてや夕方となると、もうほとんど夜のようなもので、真上から注がれる淡いオレンジ色の光以外は全く道を照らしていない、という状況だ。
透哉が心配していることはただ一つ。ここでジェーン・ドゥに遭遇したとして、果たして捕まえることができるのか。ただそれだけが心配だった。
(ジェーン・ドゥ……この大陸を仕切っている統括会の軍事長官が危惧しているほどの人間だ……。俺たち二人で勝てるもんなのか……?)
透哉たちの目的はジェーン・ドゥと戦うことではなく、こちらの方向に飛んで行ったと思われる男を助けることだ。しかし、男を追いかけている時点でその男を連れ去った犯人との遭遇は必至だ。先ほどのラッドとリゼーラの反応から犯人はジェーン・ドゥでほぼ間違いないことから、透哉はジェーン・ドゥとの戦闘を覚悟していた。
「なあ、セリナ。もしジェーン・ドゥと遭遇したとして、俺たちで勝てるのか?」
「大丈夫ですよ。もしかしたらハツキから聞いてるかもしれませんが、聖剣戦争で生き残った魔術師は私とハツキを除いて十二人しかいません。その中であんな人を飛ばすなんていうサイコキネシスみたいな魔術を使う人はいません。つまり犯人は人工魔術師ということになります。ということは私よりも経験が少ないということになります。魔術……とくに固有魔術は才能というよりも経験が重要になってきますから、私がいれば大丈夫です。安心しててください」
「そ、そうか」
透哉は少し安心した。経験が重要、というのはどこで得た情報なのかは定かではないが、ロシアで見た涼とユーリの戦闘からすると、セリナの言うとおり人工魔術師よりも普通の魔術師の方が強いのだろう。
「と、いうか……人工魔術師って、なんなんだ? 名前ぐらいは聞いたことあるんだけど……」
「あ、ハツキから聞いてませんでしたか? 人工魔術師、メイダーというのは聖剣戦争後に、文字通り人工的に造られた魔術師のことです。魔術師というのはそもそも脳の中にある魔力細胞という細胞を利用して魔術を発生させています。魔術細胞はその持ち主が死んでも死なないという特性を持っていて、人工魔術師はその魔術細胞を魔術師の死体から移植して魔術師となった人たちのことを示します」
「い、移植……って、それって……」
「はい、もちろん倫理的な問題などから違法になっています。ただ、元新生日本の首相だった鬼狩狂矢氏がこの魔術師造りの研究に携わっていると言われていて、今魔術師に対する対応は過激になっていると言えます。……あ、ここは……」
セリナは急に足を止めた。
「え……どうした……って、ここか」
そう言って透哉が見つめた先……そこにはさびれた工場があった。
読んでくださりありがとうございました。
今回は延期に延期を重ねて投降したものだったのですが、お気に召したのなら光栄です。延期して申し訳ありませんでした。
今回の話は説明回のような感じで歩いているばかりでしたが、次の次からは動きます。
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