新生ロシア革命軍制圧戦 事後
記念すべき20話です。
よろしくお願いします。
透哉と涼はロシア防衛軍長官のカメルダからの助力の礼として軍用車を一台もらった他、マジックギミックスの活動資金として金をたくさんもらった。
とはいっても、ロシア軍からもらった金額のおよそ9割は日本政府が持っていくだろう。
そのことを涼から教えてもらった透哉は、
「なんでもっと活動資金くれっていわねーんだよ。そんなんだから睡眠手榴弾の1つもかえねーんだ。だから俺が死にかけるんだー」
などと、それこそ文句を言いながら軍用車の助手席に座っていた。
「まあ、そうだな。確かに活動資金が政府にサクシュされるのは納得いかねーよな」
透哉は涼が珍しく賢いことを言っている、と思ったが、搾取という言葉を発する際にぎこちなさを感じて、これはハツキか誰かが言った言葉をパクってるだけだとすぐに気付いた。
そんな会話をしていると、突然車に付いてあった無線機から声が聞こえてきた。
「あー、あー、聞こえるかね? 透哉君、涼君」
いきなり少し威厳のあるおじさま風の声が聞こえてきて、透哉と涼は戸惑った。
「え? 誰?」
透哉が疑問に満ち満ちた声で問う。
「私だよ私」
「新手の詐欺か? オレオレ詐欺のブームが過ぎたからって一人称変えるだけでいいと思ってやがるのか」
涼が頭の悪い中学生みたいな返答の仕方をする。涼の頭は実際に悪いが。
「おほん。この声ならわかるかな?」
「あ、カメルダさんですか!」
透哉がそう言うと、カメルダは、そうそう、と返してきた。
「なんだ、長官のおっさんか。声全然違うからびびったぜ」
「そうだったか。すまなかった。普通の時と戦の時では声が変わる裏設定があったみたいだな。全く、作者は分かりにくい設定をよく作るからな……」
「カメルダさんがメタい……」
新たなメタ人の出現に呆れた透哉がため息をついた。
「ところでおっさん、ユーリのおっさんはどうなったんだ?」
「ユーリなら牢屋だ。独房にぶち込んでやった」
(そう言えばカメルダさんとユーリって親子だったんだな……)
透哉はその事実を先ほど涼から聞いてカメルダとユーリの名字が一緒だったことについて合点がいっていた。
その事実を知ったうえで独房にぶち込んだと聞いて、なかなか過激なお父上だと透哉は思った。
(まあ、そりゃ独房にもぶち込まれるか。大量殺人未遂だもんな)
「そういえばおっさん、ユーリが魔術を使っていたんだが、それについてなんか聴いてないか?」
「ああ、それなのだが……なんでもあまりよく覚えてないらしいのだよ。私たちは記憶を消去する魔術を使う魔術師の関与を疑っているところだ。ユーリが人工魔術師である以上、その魔術細胞をユーリに移植したものがいるはずだ。それがその記憶消去魔術師と同一人物かどうかはわからんがな」
自分で聴いておきながら、涼が、何言ってんだよこの人……話難しすぎだろ、と言いたそうな表情で透哉の方を見てきたが、透哉は説明しても意味がないだろうと涼のことを無視してカメルダに次の質問をした。
「じゃあ、ユーリがあの洞窟の地底湖に毒か何かをまこうとした理由はなんですか?」
「ああ。話せば長くなるのだが、それでもいいかな」
「はい」
長い話、と聞いて絶望の表情を浮かべている涼に、運転に集中しとけ、と言わんばかりにハンドルを指さし、透哉はカメルダの話に耳を傾けた。
「実はユーリの母、つまり私の妻は2年前の聖剣戦争の際、仕事の関係で出向いた先のエジプトの魔術師に殺されているんだ。私は当時、ロシアの魔術師を押さえるのに精一杯だった。だから妻を守ることができなかったのだ。ユーリはその後、エジプトの魔術師が死んだと知り、母が死んだ怒りの矛先をその魔術師を押さえることができなかったエジプト政府に向けた。エジプトを恨み、エジプトの民を恨んだのだ。だからユーリはエジプトの民を殺めるためにエジプトとロシアが共同の水源としているあの水源洞窟に感染病のウイルス、毒をまこうとしていたというわけだ。感染病を世に与え、そして新しい水源を用意して自分ならこの状況を救うことができると言ってあわよくばロシアの王になり、私を見下したかったのだろう。セクメトと名乗った理由も感染病をエジプトにもたらす者としてエジプト神話からとったのだろう」
予想以上に長かったカメルダの説明を透哉は余さず聞いた。
「そう……だったんですか」
「ああ……。咎められるようなことをした息子を制裁するのは親の役目だと思ってな。独房にぶち込んだのだ……。……ところで、透哉君、貴公は毒をまく装置を見事止めてくれた。それに関して、ロシアとエジプトの民の代表として礼を言わせてもらう。ロシアとエジプトの関係が悪化しなかったのも貴公のおかげだ。もちろん涼君も。だが、透哉君。貴公はなぜあの場所で倒れていたのだ?」
「地底湖の……あの場所?」
透哉は自分が先ほどまで気絶していたということを思い出した。しかし、なぜ気絶していたかが思いだせない。
(あれ……どういうことだ? 確か涼とユーリが戦ってるところから抜け出して……地底湖の入り口を塞いでいた壁を壊して……そこから思い出せない……? そこで気絶したわけじゃないよな。実際に装置は破壊されていたんだから……。あれ? 思い出せないぞ……?)
透哉は何も思い出せず、だんだん頭の中が混乱してくるような感覚に襲われた。
「なにも……思い出せません」
1分ほど思い出そうと頑張ったが、結局何も思い出せず、透哉はそう言った。
「むう……そうか。ならば、もしかしたらあの地底湖の入り口にあったがれき……あれをやった者が、透哉君の記憶を消し去った、と考えるのが妥当か……」
「そうですね……」
透哉はカメルダの言葉に頷きながら返答した。
「了解した。ロシアの方でもその人物の正体を調べておこう。ではまた会える時があれば再会しよう。本当に感謝する。ありがとう、涼君、透哉君」
カメルダはそう言って無線を切った。
「透哉……大丈夫か?」
涼は頭を押さえて混乱している透哉にそう問う。
「ああ……ちょっと、ゆっくりしとくよ……」
透哉は自分の記憶を消した人物への思考的な恐怖と同時に、なぜか直感的、身体的、本能的な恐怖を感じていた。
「おい、透哉、着いたぞ」
「ん、もうか?」
清々しい日曜日の朝……というには、少しベッドが硬すぎたようだ。軍用車のシートの上で寝ていた透哉は少し痛む腰を押さえながら車のドアを開けた。そしてそれと同時に、視界に車に付いている時計が入ってきた。
「え、もう11時なのか?」
「らしいな」
「涼、お前徹夜で運転してくれてたのか」
涼の目の下にクマができているのを見て透哉がそう言った。
「まあな。2日連続だぜ」
涼のその言葉を聞いて、透哉はロシアに行く時も涼が運転してくれていたことを思い出した。
(なんだかんだ言って、こいついい奴だよな)
そう思って透哉は涼に感謝の言葉を伝えた。
「いいって。帰ったら寝るし。じゃあな」
涼はそう言って車を発進させた。
透哉はこのごく普通の住宅街に非常に不似合いな軍用車が視界から曲がり角をまがって視界から消えるのを見届けてから自分の家に入った。
「久しぶりに帰ってきたー。ん? ハツキからLANEがきてる……」
LANEとは、スマホで使用できるチャットのようなアプリで、俗に言うSNSである。
ハツキからのメッセージの内容はこんな感じだった。
「10時00分 任務終わった?」
「10時01分 打ち上げパーティーは今日の6時から僕の家でやるから絶対来てねー」
「10時01分 そういえば美佳が無線通じないよー! って言ってたけど、ロシアに行くときに車の中に置いといた無線機どうしたの?」
ハツキからの無線機のメッセージを見て透哉はロシアに着いた後、車がどうなったのかを思い出した。
(……あの車……確か……)
透哉はロシアの地で車がドカーンと爆ぜる光景を思い出していた。
読んでくださりありがとうございました。
今回は制圧戦の事後談でしたね。正直この章の話は進行に合わせて作っていったものなのですが、終わりの方の無線機が車ごとドカーンは最初から思いついてました(そこだけ)笑
次回は新しい章に突入して打ち上げパーティーの様子の回想なども入れていきたいと思います。
そして、この「マジックギミックス」の過去編を描写した作品、「担イシ者タチ」を、昨日より投稿しております。「マジックギミックス」だけ、または「担イシ者タチ」だけ読んでいても十分楽しめる内容にはしていきたいと思いますが、もう一方の作品も読んでいただけると幸いです。
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