突然戦場へ送られるということ
また少し遅れました……。すみません……。
11話です。
よろしくお願いします。
(わけわかんねーよ……)
軍用と思われるオフロードカーが夜の山の中をガタン、ガタンとタイヤを弾ませながら進んでいた。その車の中、助手席にいた鷺村透哉は心の中でそうつぶやいた。
「おーい、もうすぐ着くぞー」
「あ、ああ……」
車の運転手である南雲涼の呼びかけに反応して透哉は身をこわばらせた。
西暦5639年、運転免許は16歳にまで引き下げられていて、17歳である涼も免許を取得することができる。つまり、涼は合法で車に乗っているのだ。
「通報しないでくれよ☆」
「誰に言ってんだよ……」
「読者のみなさんだよ、この小説はメタいのが売りだろ?」
車の中には2人しか乗っておらず、後部座席には何かが大量に積まれていた。
全く緊張感のない涼がそんなことを言っているが、透哉は本当にそれどころではなかった。
(合法とか違法とか、傭兵組織やってる高校生が気にすることなのか……)
透哉は心の中でそう思いながら自分のバックパックの中を見た。
(手榴弾が3個と粘着爆弾が4個か……。結構重いもんなんだな……)
バックパックのほかに防弾チョッキを着ている透哉は、自分の体が持っている荷物の分地球に引っ張られている感覚を覚えていた。
「なあ、お前はなんも着なくていいのか?」
「防弾チョッキとか? 別に大丈夫だよ。魔術使えば」
「そ、そうか……」
もう透哉には何かを言い返す余裕はなかった。
これから送られるのは本物の戦場だ。
前日のようなただのマフィアがビルの中に何人かいるなんていう状況じゃない。
どこに誰がいて、そいつが敵か味方かもわからなくなっちまう可能性のある本物の戦場だ。そいつを敵か味方かじっくりと判断していたらいつの間にか殺されていた、なんてことになりかねないのだ。
(ったく、なんで俺が……)
透哉はほんの数時間前のことを思い出していた。
透哉と涼がこの作戦を実行することが決まった直後のことを……
「じゃあまあ、透哉と涼、よろしくね。自己紹介とかは帰ってきてからで。パーティの準備はしておくからさ」
ハツキは玄関で透哉と涼にそう言った。
「おい、待て。なんで俺が行かなきゃなんないんだ?」
「入隊試験みたいなもんかな」
「入隊したいなんて言ってませんけど!?」
9人の少年少女に囲まれてもう後戻りはできない、という状況の中で透哉は必死に抵抗した。
が、そんな抵抗はある少女の言葉によってむなしく散らされることになる。
「透哉さん、頑張ってください。料理作って待ってますから! 帰ってきたらいっぱい食べてくださいね!」
ハツキの妹であるあずさがそう言って透哉に対して満面の笑みを浮かべた。
(く、行くしかないのか。こんなに期待されてるんだから……行くしかないのかッ!? いや、というかあずさちゃん、俺の死亡フラグたたせようとしてるよな!?)
あずさの言葉に続いてアイが言った。
「あ、あの、ボクも応援してますよ! 透哉さん!」
(ああ、この子、いい子だ。あずさちゃんも死亡フラグがなかったらいい子だ……)
続いて美佳と楓が言った。
「先輩、頑張ってきてください! 初任務ですから、あまり無理はしないで! まあ、別に活躍してきても構わんのですよ?」
「透哉、死ぬときは、快く死んで来い!」
(いや結城も死亡フラグたててるよ! 一条なんかもう死んで来いって言ってるし!)
自分の死亡フラグが他人にたてられることを危惧しながらも女性陣からの惜しみない声援の中で透哉はこう言うしかなかった。
「わかったよ……行ってきます」
「「いってらっしゃーい!」」
(くそ、こう言ったときだけ元気になりやがってこいつら、くそ、くそ……)
9人の温かい声援の中、透哉は玄関のドアを開いた。
「さあ、行こうか透哉、本物の地獄へ……」
唯一、透哉と一緒に行くこの変態こと南雲涼だけは透哉に対しての応援の笑みを浮かべず、皮肉のような笑みを浮かべていた。
「はは、結局悪いのは俺なんだな……俺が玄関のドアを開いたから……」
「何ぶつぶつ言ってるんだ。行くぞ」
「あ……もう着いたのか……」
新生ロシア……この太平洋上の新大陸では北東にある新生日本から南西へ、新生韓国、新生ナイジェリアを隔てて、さらに北西へ3つの国を隔てて点在している国だ。面積は前ロシアの約34分の1ほどにまで減少していて、前日本の約2倍ほどになっている。
透哉と涼は、車から降り、100mほど歩くと、時間を確認してその場に座った。
「作戦開始までまだ時間があるな。作戦のおさらいでもしておこうか」
「そ、そうだな。……というか、こんなところにいて見つからないのか?」
「大丈夫だろ。多分」
「多分!?」
ここは敵陣だ。何が起こるかわからない、という点では透哉も先ほどから承知していた。が、ここで見つかれば終わりだ。
というのも、今透哉と涼がいるのは思いっきり平原であり、そこらへんは緑の床オンリー、という見つけてください状態であった。
しかし、そんなことは気にせず、懐の携帯を取り出して涼は言った。
「まあまあ、見つかった時は見つかった時だよ。じゃあ、まずはこの国についてのおさらいだ。この新ロシアは現在、資本主義国的な面が多いが、一部では社会主義的な面もある。そんな社会主義的なやつらがいっそのこと社会主義一色に染めてやろうって言って動いてんのをのを止めるっていうのが今回の作戦だ。まあ簡単に言えば、1900年代に栄えたソビエト社会主義共和国連邦ってのに戻そうっていうピュア気取りで動いてる革命軍を潰すのが今回の目的だ」
「そうなのか。でもなんで革命軍を潰すんだ? 別に革命が成功しても、社会主義が絶対悪いってわけでもないだろ。何より俺らが新ロシア政府に手を貸す理由なんかないだろ?」
「それが理由が2つもあんだよなー。まあこんなとこで言うのはあれだし、あとでゆっくり話そうと思ってたんだが、実は俺たちは無所属の傭兵組織ってわけじゃないんだ。新日本政府と契約してるような形で動いてるだけなんだよ」
「え……」
透哉にとっては衝撃の一言であった。なぜなら透哉はこの組織を取材しようとしていたからだ。言いかえれば、新日本政府がひた隠しにしてきた機密組織を取材していることになるのだ。
「まあ詳しいことはまた今度話すが、そういうことなんだ。だから新日本と新ロシアの友好関係を良好にするためっていうのが理由の1つだ。もう1つは、社会主義一色っていうことだ。国っていうのは社会主義、資本主義できっぱり分けられるほど単純なもんじゃない。それぞれのいいところを混ぜていい国家にしていくもんなんだ。それを社会主義だけでやっていこうってのは、今より悪い国家になりかねない。だから新ロシア政府に協力するっていうのが理由の2つ目だ」
なるほど、と透哉は納得した。が、
「南雲……ウィキペディアとか見ながら話すのはかなりダサいぞ……」
「な! いや、これは、違う……」
「はいはい、わかったよ。で、今回は2人しかいないけど、どういう作戦で行くんだ」
透哉は少し期待しながら聞いた。昨日みたいなピタゴラスイッチ式のような作戦でスタイリッシュな作戦を実行してくれると思ったからだ。
しかし、南雲の答えは透哉が期待したものとは全く違うものだった。
「ふふふ、よくぞ聞いてくれた。今回の作戦名は……行き当たりばったり作戦!、だ!」
「……は?」
透哉は呆れた顔しかできなかった。
そうだ、こいつアホだった、と、透哉は心の中でつぶやいたが、涼はそんなあきれた表情の透哉をスルーして続けた。
「まあ今回の最初の行動はもう決めてある。車の後部座席に大量の何かが積んであっただろ? あれを使うんだ」
武器か何かかと透哉は思ったが、そんな考えは南雲の次の行動によってかき消された。
南雲は懐から何かボタンのようなものを取り出し、透哉に見せた。
「これ、なんだと思う?」
「うん、explosion……爆発って書いてあるね」
透哉はもうわかっていた。今からこいつがなにをやるか。
「その通り。じゃあ……ポチっとな」
ドカーン、と音を立てて100m後方にあった車が大爆発した。
「おいいいいぃぃぃ! お前何してんだ!」
透哉は声を荒げて南雲に迫った。
「何って……あのままあそこにおいてたら敵に見つかるだろ。だから爆破したんだよ。ここは敵陣だからな」
「ここは敵陣だからな、じゃねえよ! 帰るときどうすんだよ!」
「……あ……」
ふざけんなあああぁぁぁ! と透哉は心の中で叫んだ。と、その時、
「おい、そこのお前ら」
ガチャっという銃を構える音とともに後ろから声がした。
「革命軍……か……?」
違う声が聞こえてきた。
「どうでもいい。捕まえろ」
また違う声だ。恐らく透哉たちの後ろには3,4人ほどいるのだろう。
「両手を頭に回してうつ伏せになれ」
最初の声と同じ声が聞こえてきた。
(くそ……デジャヴだ……)
透哉はそう思いながら、南雲と共に両手を頭の後ろに回してうつ伏せになった。
読んでくださりありがとうございました。
最近つい居眠りしてしまい、投稿時間が遅れてしまっています。本当に申し訳ないです……。




