表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
59/60

新たなる研究者たち(中編)

魔素反応記録。

それは。アリア・フェルミナが長年追い続けてきた研究の中で、最も奇妙な結果だった。


しかし。彼女はすぐに発表しなかった。理由は単純だった。

証拠が足りない。


研究室。


アリアは何度も同じ実験を繰り返していた。

測定装置を変更する。観測場所を変える。時間帯を変える。季節を変える。

条件を変えても。同じ傾向が現れる。


魔素反応。一定間隔で変化する波形。

まるで。規則を持った信号。


助手の青年が画面を見る。


「やはり。何度見ても偶然とは思えません。」


アリアは頷く。


「ですが。規則があることと。意思があることは別です。」


研究者として。そこを混同してはいけない。


過去。


多くの研究者が同じ失敗をしてきた。

説明できない現象を見つける。

そして。自分の望む答えを当てはめる。


しかし。


科導の歴史は。その逆だった。

現象を観察する。仮説を立てる。検証する。

間違っていれば修正する。


アリアは慎重に研究計画を立て直した。


目的。「未知存在との通信」

ではない。


まず。「規則的な魔素変化の原因を特定する」こと。


研究チームは調査を開始した。


反応が強く現れる場所。

古代森林。高濃度魔素地域。人間の影響が少ない場所。


数週間後。調査隊は山奥へ入った。

そこは。古代から手つかずの自然が残る地域だった。


案内役の冒険者が言う。


「この辺りは危険ですよ。」

「魔獣が多い。」


アリアは頷く。


「だから調べる価値があります。」


かつて。冒険者たちは戦う者だった。

しかし。科導文明の時代。

冒険者の役割も変化していた。


未知の地域を調査する。

危険な環境を記録する。

研究者を護衛する。


それもまた。文明を支える仕事になっていた。


森の奥。魔素観測装置を設置する。

すると。反応が現れた。


しかし。予想とは違った。


魔素の流れは。一方向ではない。

周囲全体から集まり。また広がっていく。


まるで。森そのものが呼吸しているようだった。


アリアは記録する。


「魔素流動は。」

「生命活動と関連している可能性があります。」


その時。同行していた冒険者が声を上げた。


「何かいます。」


木々の間。一頭の巨大な生物が姿を現した。


ドラゴン。


しかし。古代伝承にあるような凶暴な存在ではなかった。

静かにこちらを見ている。


冒険者が警戒する。


「下がってください。」


しかし。アリアは動かなかった。

理由があった。観測装置が反応している。

ドラゴンから発せられる魔素波形。

それは。先ほど記録したものと一致していた。


アリアは気付く。


「この反応。あなたが出していたのですね。」


当然。ドラゴンは言葉を話さない。

しかし。魔素の変化が起こる。


一度。二度。三度。観測装置が記録する。


それは。単なる魔力放出ではなかった。


一定の構造を持つ。情報。


アリアは震えた。


「まさか……。」


ドラゴンは。魔素を使っていた。

しかし。人間の魔導とは違う。


術式を組むわけでもない。

魔経絡を意識的に操作するわけでもない。

もっと自然な方法。


生命活動そのものが。魔素との関係を持っていた。


アリアは記録を続ける。

そして。一つの仮説へ到達した。


「魔導は。」

「人間が作った技術ではない。」

「生命が世界と関わる方法の一つだったのかもしれない。」


それは。


アルフレッド。

エゼキエル。

レオン。


何世代もの研究者が追い続けた問いへの。新しい答えだった。


しかし。同時に。新たな疑問も生まれる。


なぜ。人間だけが。

魔素を人工的に制御する技術を発展させたのか。


なぜ他の生命は自然な形で利用しているのか。

そして。

なぜ人間には魔力を持つ者と持たない者が存在するのか。

研究は。さらに深い領域へ進もうとしていた。


その夜。野営地。


アリアは古い記録を読み返していた。

アルフレッドの言葉。


> 「理解できない力を、理解したと思い込むな。」


彼女は思う。

自分たちは。まだ入口に立っただけなのだ。


翌朝。さらに調査を進めるため。


アリアたちは森の奥へ向かった。

そこには。古代遺跡が存在していた。


しかし。その遺跡は。

人間が作ったものではなかった。


壁面には。古代文字。

そして。魔素によって刻まれた記録。


アリアが読み取る。

そこに書かれていた言葉。


> 「我々は魔素を使う者ではない。」

> 「我々は魔素と共に存在する者である。」


アリアは息を飲む。

これは。新しい文明の発見ではない。

人間が知らなかった。

もう一つの世界との出会いだった。a

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ