決着
オレ達の目の前にはアツコが大口を開け欠伸をしており、今にも『あー、スッキリした』と言わんばかりに頭の先から尻尾の先までピンと伸びをしているのだ!!
オレの『トールハンマー』で撃退するストーリーなのに、同じ魔法を受けてまったくの無傷アピールとか計画が完璧に破綻しているじゃないか!!
「あれは………大魔法を喰らって流石の大森林の邪竜も怯んでるのか!?」
「恐らくそう。」
「多分そうです。」
「きっとそうだよ。」
「間違いないな!!」
なんかルーフェがアツコの大欠伸をあらぬ方向に勘違いしてくれている!!
とにかく今はこのビッグウェーブに全力で乗るしかない!!
「大森林の邪竜もあの大魔法を喰らってはただでは済まないだろう!!例えあの悪魔を倒したとしても、傷を癒すため退くしかないに違いない!!!竜と悪魔が相打ちになったとしたら最高だ!!!!」
オレはアツコに向かって全力で叫ぶ!!!!!
周囲にはトールハンマーの轟音がまだ反響しているが、アツコの聴力であればきっと聞こえているはずだ…多分。
アツコはチラッとオレの方を見やり、コクリとうなづくと、アバドンに向かいタンっと軽い歩調で飛びかかる。その軽やかな動きとは裏腹に、アツコの跳躍の反動で大地は裂け、地面はトランポリンのように収縮する。
次の瞬間、アツコはその爪でアバドンのはらわたをえぐり、乱雑にその四肢をもぎ、首を引きちぎり口に咥えた。
グロい!!
想像以上に殺し方がグロい!!!!
オレ達の頭上には絶え間なく血飛沫が飛び交い『アバドンだったもの』の破片が流星のように降り注ぐ。
ミカヅキの魔法のおかげで直接身体にかかることはないが、普通の人間であれば生涯見ることすらないレベルの高位悪魔がいとも容易くバラされ、自分の身の丈ほどもある指や皮膚や臓物が落下してくる恐怖は真っ当な感性で耐えられるものではないだろう。
まさに地獄そのものだ。
「終わりだ…何もかも…何もかも終わりだ。俺は喰い殺される、あの女に。あの竜に。あの口に。何度でも、何度でも、何度でも…あーはっはっはっ…はは。」
エロ垂れ目は早口で捲し立てるよう同じフレーズを繰り返す。兵士の中には叫びながら頭を抱え地面に頭を叩きつけるもの、うずくまりピクリとも動かないもの、逆に絶えず周囲に話しかけひたすら笑い続けるものなど、まともな精神状態のものは誰一人いない。
「オレらもあの竜に喰われるんだろうな…ドラゴンスレイヤーなんて分不相応な夢をみた報いってわけか。まあ最後にいい夢見させてもらって俺は満足だぜ。」
「いや、諦めるのはまだ早い。ヤツも弱っているはずだ。プロテクションの効果が切れたら全力で叩くぞ。」
オレは自分に言い聞かせるようにそういった。
しかし、ここからどうすれば皆が納得するような着地点に持って行くことができる!?考えろ、考えるんだオレ!!
永遠にも思える一瞬が過ぎると、アバドンをボロ雑巾のように引きちぎったアツコはコチラに向き直り、口を開いた………口を開いた??
「若き冒険者どもよ、その力、その技、その精神、その………とにかく見事だ!!竜のねぐらの主たる我をここまで追い詰めるとはな。おかげで、またしばしの眠りにつく必要があるようだ。」
なんかアツコまで説明口調で喋り出した!!
っていうか竜の状態で声出せるんだ、それになんか声低っ!!
竜になると身体が大きいぶん重低音ボイスになるんだな、ミッドガルドでは竜形態のアツコと話したことが無かったから勉強になる。
「一か月……半年………いや一年後、我は再び姿を現し、竜のねぐらを汚すハエどもを打ち滅ぼすだろう。村を焼き、砦を穿ち、町を破壊しつくし、都市という都市を無人の荒野へと変えてやろう。国を滅ぼされたくなければ、二度と竜のねぐらに足を踏み入れぬことだな。では、サラバだ強き者どもよ!!」
アツコはそう言うと天高く舞い上がり、大森林のさらに奥へと消えていった。




