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クリスマス大作戦!

「ほら、見てみろ綾人いい景色じゃないか!」

「ああ、そうだな。それよりも匠」

「なんだ?」

「なんでお前と俺が展望台まで一緒に来なくちゃいけないんだよ」

そう、俺は今匠と山の上にある展望台まで来ている。


「そりゃツーリングに決まってるだろ」

「ツーリングって言っても原付じゃないか!しかもお前いつの間にバイクの免許取ったんだよ!?」

それに匠の奴は俺の知らないうちにバイクの免許を取っていた。しかも原付ではなく中型だ。


「バイク乗ってる奴っていえばお前しかいないしな。それと俺がいつ取ったかは気にするな」

「原付はいいとしても学校的にはバイクしかも中型の免許取ってもいいのか?」

「そのことも気にするな。とにかくバレなきゃ問題ないさ」

こいつって意外と適当なところあるんだよな。


「お、そうだ綾人。ここに来たのはツーリングのためでもあるんだが少しお願いがあるんだが。いや、こっちの方がツーリングよりも大切だな」

「お願い?珍しいなお前が俺にお願いなんて。それでどうしたんだ?」

「実はな…」














「鳴海さん!聞いているんですの!?」

「あっと、ごめんごめん」

「全く仮にも私の先生なのですからしっかりとしてほしいですわ」

先日の匠との話の事を思い出していたらボーっとしていたようだ。

それにしても匠の奴まさか俺に西園寺さんの家庭教師を頼んでくるなんて…。

といっても2週間の期限付きなのだけど。

「ここの問題なのですけれど」

「ああ、これはね…」


それにしても西園寺さんはやっぱり頭がいいんだな。問題の間違いだってほとんどないし何より一人でほとんど勉強を進めていっている。

これは決して里枝ちゃんと比べてるわけじゃないんだがやっぱり感心してしまう。

たまには質問もしてくれてるんだけどやっぱり質問が少ないから少し寂しい気もする。

里枝ちゃんの時はこれでもかというぐらい質問が多いからな~。









「今日はここまでですわね」

「うん、お疲れ様」

長いようで短い授業の1日目はやっと終わった。


「意外とあなたの勉強の教え方悪くはなかったですわよ」

「そうかな?ありがとう」

「でも、調子には乗らないでくださいね。今のは悪くなかったと言っただけで決して良いと言ったわけではありませんから」

「あ、あはは…」

せっかく珍しくほめてもらえると思ったのに結局はこれか。

西園寺さんせっかく顔は可愛いのに性格がこれだとなぁ。


「何か変なこと考えていませんか?」

「いや、何も考えてないよ」

「なんか怪しいですわね」

西園寺さんの視線が痛い。余計な事は考えるのはやめよう。この子意外と察しがよさそうだし


「それにしても本当に先生は困った人ですわ」

先生といえば匠のことか。あいつが先生って言うのもなんか未だに考えられないんだよな


「まさかアイツ家庭教師もやっててまだ塾も行ってたなんてな。受験が終わってとっくに辞めたと思ってたんだけどな」

今回匠が俺に西園寺さんの家庭教師を2週間やってほしいという理由はあいつの塾のことでだ。

どうやら2週間後に塾でテストがあるらしい。珍しく匠はそのテストが危ないらしい。

でもあいつのことだから危ないと言ってもさほど点数は変わらないだろうが。


「あなたとは全然違いますわね」

相変わらずこの子は痛いところを突いてくるな。でも西園寺さんの言う事は当たってるから反論のしようがないわけだが。


「だけどそれがあなたの個性と言うことでしょうね。別に私は否定しないですわよ」

「あ、ありがとう」

とりあえずお礼は言ったがそろそろ褒められてるのか馬鹿にされてるのかわからなくなってしまった。



「それよりも鳴海さんひとつお願いがあるのですが」

「ん、どうしたの?」

「この2週間ほどあなたに家庭教師としてやってもらっているわけなのですがこの事については柳瀬さんには内緒ということでお願いできませんか?」

「それはいいけど。でも、どうして?」

「あなたは本当に分かっていませんね、私と柳瀬さんはライバル同士なのですわよ。それなのにライバルの家庭教師に勉強を教えてもらっていると知られたら私の立場がないですわ」

気持ちは凄いわかるけど里枝ちゃんならそんなこと全然気にしないと思うんだけどな。これが西園寺さんのプライドなんだろうな。


「わかったよ」

「ご協力感謝いたしますわ」

この後しばらく話した後今日の家庭教師の授業を終えて俺は家へと帰って行った。












「先生大丈夫ですか?」

「え、何が?」

里枝ちゃんの家庭教師の授業の日、国語の問題をしている時に里枝ちゃんは唐突にそんなことを聞いてきた。


「先生、何か疲れているように見えるんですけど」

「そうかな?」

「そうですよ。いつもの先生の調子じゃないような」

そんなに俺疲れてるのかな?

でも、疲れてる原因といえばやっぱりアレか。西園寺さんの家庭教師のことだな。

里枝ちゃんと比べるのはなんだけど西園寺さんはやはり頭が良い。問題を出したとしてもどんどん解いていくしこっちがついていけなくなるくらいだ。こっちとしてもなんとか西園寺さんに教えられるように夜遅くまで勉強しなきゃならないし。

といってもまだこの前の1日しか西園寺さんの家庭教師はしてないわけだけど。


「どうかしたんですか先生?」

「いや、なんでもないよ。期末テストの疲れがたまってるだけだからあまり心配しないでいいよ里枝ちゃん」

「そうですか。だったらいいんですけど…」

そう理由をつけて言ったのはいいけど里枝ちゃんはそれでも俺のことを心配してくれているようだ。西園寺さんの家庭教師を匠の代わりにやっていることは西園寺さんとの秘密だからな。

それでも里枝ちゃんには心配をかけないようにしないといけないな。それにこの後も西園寺さんの家庭教師が入っているわけだし2人には迷惑をかけないようにしよう。


「先生この問題なんですけど」

「ああ、これはね…」












「鳴海さん、この問題なのですけれど」

「え、えっと、ちょっと待ってね」

や、やべぇ。里枝ちゃんと差がありすぎてやっぱりついて行けない。


「全く。ちゃんとしてほしいですわね」

うわぁ、やっぱり里枝ちゃんと全然違う。里枝ちゃんなら素直に優しい言葉で待っててくれるんだけど…。なんだか今さっき会ったばかりだというのに里枝ちゃんに会いたくなってきた。

あ、やっとできた。


「この問題はね…」


なんとかこの問題を教えることはできたがまだまだ安心することはできない。

とにかく西園寺さんに失望させるようなことはできない。


「だから、この問題はこの公式を使って」

よし、これでこの問題は解けるはずだ。



ん?なんだか西園寺さんが俺の方をチラチラ見ている気がする。

いや、おもいっきり見てる。


「どうしたの西園寺さん?」

俺は落ち着かない様子の西園寺さんに声をかけたが西園寺さんはびっくりした様子だった。


「え、えぇっとですわね」

やっぱり何かおかしい。俺の教え方がおかしかったかな。


「俺のやり方間違ってたかな?だったら全然言ってくれていいんだけど」

「…すぎ」


西園寺さんは何かを言ったが声が小さくてよく聞こえなかった。


「え?」

「だから、近すぎるんですわ!」

今度はかなり大きな声で言ったせいで部屋中に声は響き渡った。


「近すぎって、一体何が?」

「私とあなたの距離がですわよ!」

距離…。あ、そういうことか。


「ご、ごめん!いつもの里枝ちゃんとの家庭教師ではこれぐらいの距離で授業やってるから」

西園寺さんと俺の距離はほとんど両者の体があたるくらいで俺が西園寺さんの机に置かれている教科書を見ようとするとほとんど西園寺さんの顔の横に俺の顔がくるくらいだ。

でも、里枝ちゃんの家庭教師の授業の時はこれが当たり前になっていて逆に俺は全く気付かなかったぐらいだ。


「あなたと柳瀬さんの神経を疑いますわね」

「あはは…」

いつもの笑って誤魔化すしかない。とにかくこれからは気をつけよう。


「鳴海さん、そろそろ時間ですわね」

「そうだね。それじゃあ今日はここら辺にしておこうか」

「はい。それともう一ついいですか?」

「ん?なんだい」


西園寺さんは勉強机から離れて何故か大きなテレビの元へ行きテレビ台のところを漁り始めた。そして西園寺さんはテレビ台のところから何かを取り出した。


「これなんですけど」

「あ、それって…」

西園寺さんが取り出しのたは最近出たゲームソフトだった。しかもそのゲームソフトはこの前西園寺さんとデパートでやった格闘ゲームのやつだった。


「へぇ、西園寺さん買ったんだ」

「はい。この前やったとき楽しかったですからつい買ってしまいましたわ」

この前一緒にこのゲームをした時も思ったが西園寺さんがゲームをするなんて意外だよな。しかもゲームソフトまで買うなんて。


「それで、このゲームなんですけどもしよかったらですけれどもあなたと一緒にやってあげてもいいですわよ」

「ああ、じゃあ一緒にやろうか」

言い方は遠まわしだったけれど彼女の言いたい事はわかった。まぁ素直じゃないのが西園寺さんか。


俺と西園寺さんはこの後格闘ゲームをしていたがそれが意外と盛り上がった。

というより西園寺さんとこの前やったときは半端ないくらいド下手だったのだがそれが前回とは段違いでうまくなっていた。

たぶん西園寺さんはゲームセンターに通って練習したんだろうな。

努力するところは里枝ちゃんと同じでそこが二人の良いところだろう。






「ふぅ、楽しかったな」

「そうですわね。まぁ、あなたがまた今度是非このゲームをしたいと思うのであれば一緒にやってあげないこともないんですけれど」

「そっか、それじゃあまた一緒にやろう」

相変わらずの遠まわしの発言だがどうやら西園寺さんも楽しんでくれたようだ。


「勉強のことは匠の奴に負けるけどゲームとかそういう娯楽の事は他にも教えられると思うからそっちの方もじゃんじゃん言ってくれていいからね」

「そうですか。それじゃあお願いしますわ」

冗談で俺は言ったつもりなのだが西園寺さんは意外な反応を示した。



「さてと、それじゃあ俺は帰るよ」

「はい。今日はありがとうございました」

授業を終わらせて俺は西園寺さんの家を出て行った。と言っても授業よりもゲームの方が捗っていた気がするが。

それでも無事今日が終わってよかった。やっぱり授業2連続はきついな…。















「よう、綾人。どうだ家庭教師の方は」

「ぼちぼちってところだな」

12月12日。今日も西園寺さんの家庭教師の日なので俺はさっさと帰ろうとしていると匠が声をかけてきた。


「そうか。それならいいんだがな」


言っても匠の教え子なのでやっぱり匠自身西園寺さんのことが気になるのだろう。


「そんなに心配してるならお前が教えてやればいいだろ。少しぐらい時間はあるんだろうし」

「ふっ、悪いな綾人。今回はどうしても自分の事をなんとかしたいんだ」

ここまで言うとは匠の奴相当追い込まれてるんだな。


「というわけでアイツのことよろしく頼むな」

そう言うと匠の奴は教室から出ていった。

匠の奴もがんばってることだし俺も今できることをがんばるとしよう。


俺も帰る準備を済ませるとさっさと教室を後にした。












「ん?」

家の前まで帰ってくるとそこには見慣れた姿があった。


「西園寺さん?」

「な、鳴海さん!」

俺の家の前に居た制服姿の西園寺さんは俺の顔を見るなり何故か驚いた。


「俺の家の前でなにしてるの?」

「そ、それはですね…」

西園寺さんは何か言いづらそうにしていた。

でもわざわざ西園寺さんがここに居るってことは…もしかしたら。


「あの、いつも私の家まで来てもらうのは悪いですしたまには私の方から来て勉強をしようかなと」

そうだとは思ったがやっぱりか。


「勘違いしないでくださいね!柳瀬さんもアナタの家で授業をしていると聞いて私も思っただけで…」

「ああ、そうなんだ。それじゃあこんなところで話もなんだしとりあえず家に入って」

「は、はい。それではおじゃましますわ」

どこか落ち着きのない西園寺さんは俺の家へ入っていった。





「ここがアナタの部屋なんですね」

「散らかっててごめんね。まぁ適当に座ってよ」

西園寺さんに座るように言うといつも里枝ちゃんが座っている場所に座った。座った後も西園寺さんはキョロキョロと俺の部屋を見ているようだ。


「あはは、そんなに部屋を見られるとちょっと恥ずかしいかな」

「す、すいません。ただ私男の人の部屋に入るのが初めてで…」

「え、そうなの?同級生の男の子とか匠の部屋は?」

「同級生の男の子の友達は居ません。それと先生の部屋で勉強をすることもありませんわ」

「そうなんだ」

西園寺さんに同級生の男の子の事を聞いたんだけど実際俺も同級生の女の子で親しい人といえばカナぐらいしか居ないんだよな。まぁあいつは幼馴染だし除外だろうけど。

それにしても匠の家では勉強をしないのか。



「それよりもそろそろ勉強を始めましょうか」

「そうだね。テストも近いししっかりやらないとね」








「ここはこれで合っていますか?」

「うん。ここの問題テストに出ると思うからチェックしておいてね」

今日はいつも以上に順調だ。里枝ちゃんと西園寺さんの学校のテストが近いから土日で中学の問題を集中してやったのが良かったようだ。

まぁその土日に勉強をしたのは俺一人じゃなく先生が居てくれたからちゃんと復習することができたわけなんだけど。


「後はこの問題と…」

西園寺さんにテストに出そうな問題を教えているとポケットに入れている携帯が鳴りだした。


「おっと、ごめんね」

どうやら電話のようだ。

携帯の画面を見てみると里枝ちゃんから電話のようだ。


「里枝ちゃんからか…」

「私の事は気にせず出てあげてください。あ、わかっていると思いますが私と今授業しているということはご内密に」

「ああ、わかってるよ」

西園寺さんに了承を経て俺は電話に出た。


「もしもし」

「あ、先生。今大丈夫ですか?」

「いいよ。それでどうしたの?」

「急なんですけど今日家庭教師の授業を入れてほしいんです」

「今日か…。それで何時から?」

「えっと、19時からはどうですか」

19時か、今は17時30分であと1時間で西園寺さんの授業は終わる。ギリギリ大丈夫だろうか。

それにテスト期間中だし里枝ちゃんを放っておくわけにもいかない。


「わかった19時前には行くね」

「はい!それではまた後で」

19時か。一旦家に帰っている時間はないな。


「柳瀬さんからですの?」

「ああ、うん。ちょっと授業のことでね」

「貴方も大変ですわね。2人も同時に家庭教師をするなんて」

「そうかな?」

「お疲れでしたら今日はここまででいいんですよ?私の事よりも本当の生徒の柳瀬さんの方を優先してあげてください」

「俺は大丈夫だよ。それに西園寺さんもった2週間だけでも俺の大切な生徒だよ。それに匠とも約束をしたしね」

「はぁ…やはりあなたはとことん変な人ですわ」

これで何回目だろう?またしても俺は西園寺さんに変な人と言われた。でもどこか悪い気もしないような気がする。


「それでは続きをお願いできますか?」

「もちろんだよ」











「よし、今日はここまでだね」

「ありがとうございました」

今日は俺自身が復習をだいぶやっていたこともあり中々のペースで授業を行える事ができた。

やっぱり復習って大事なんだな。


「それじゃあ私はここで」

「あ、待って。俺も里枝ちゃんの家行かなきゃいけないから途中まで一緒に行こう」

もう6時半だし外も暗い。さすがに女の子一人で帰らすわけにもいかないよな。

まぁこんな恥ずかしい事は口に出しては言えないけど。


「わかりました。それじゃあ外で待ってますわね」

西園寺さんに先に行ってもらい俺はさっさと今日の里枝ちゃんの授業でやる教科書などを入れてからさっさと外に出た。

どうやら西園寺さんは歩いてここまで来たようだし俺も歩いて行くとするか。







「ところで西園寺さんはなんでわざわざ俺の家まで歩いてきたの?」

歩いている途中特に喋らないのもなんなので俺は西園寺さんに聞いてみた。

確か西園寺さん家まで原付でも20分はかかる。歩いてくるとなると結構かかるはずだ。


「いえ、途中まで車で送ってもらいましたわ」

「あ、そうなんだ。それならよかった」

だったら安心だ。その車で送った人ってたぶん西園寺さんの家に居る使用人の人なんだろうな。西園寺さんの家に行ったら大抵居るし。

さすがお嬢様だよな。


「そういえば西園寺さんのご両親は仕事何やってるの?」

俺は西園寺さんの両親を見た事はなくいつも授業に行った時は使用人の人しか居なかった。


「会社は言えませんが父は社長をやっていまして母はそこの会社で一緒に働いていますわ。そのこともあっていつも帰りが遅いんです」

「そうなんだ」

少しだけ空気が重くなったような気がした。

それにしても帰りが遅いか…。いくら大人っぽくみせていても西園寺さんはまだ子どもなんだしやっぱり寂しいよな。


「あ、そうだ。残り家庭教師の授業も3回だけどよかったら俺の家で家庭教師の授業やらない?」

「アナタの家でですか?」

「うん。もしよかったらなんだけど」

家でやるなら食事だって母さんが作ってくれるだろうし授業が終わった後一人で晩飯を食べるより全然いいだろう。

それに正直なところ西園寺さんの家豪華すぎるってこともあって少し落ち着かないんだよな。


「鳴海さんが良いなら私はいいですけど」

「もちろんいいに決まってるよ」

「そうですか。それなら仕方ありませんわね今度からはアナタの家でやりましょう」

そう言うわりに隣に居る西園寺さんはどこか嬉しそうにしていた。

やっぱり一人で寂しく家に居るよりはいいよな。西園寺さんはまだ子どもなんだし。




「それじゃあ朝倉さん私はこちらなのでここで」

「うん、気をつけて帰ってね」

「はい、アナタも柳瀬さんの家庭教師の方頑張ってください。それでは」

そう言うと西園寺さんは俺と逆の道の方へ帰っていった。

それにしても別れ際に西園寺さんが俺に頑張ってと言っていたがなんだか西園寺さんにそう言われるのは初めてかもしれないな。

少しは俺の事わかってくれたってことなのかな?












「先生先生!もうすぐクリスマスですよ!」

家庭教師の休憩中里枝ちゃんがいきなりそんな事を言いだした。


「そうだね。もうそんな時期かぁ早いもんだね1年って」

「そうですよね~。先生とこうやって授業し始めてもう半年以上経つんですよー」

里枝ちゃんの家庭教師になって半年以上経つのか。思えばよくここまでやってこれたなと思ってしまう。



「里枝ちゃんは今年のクリスマスはどうするの?」

「え?もちろん先生と遥さんと過ごすに決まってるじゃないですか」

里枝ちゃんは当たり前のようにそう言ったのだが俺は全然意味がわからなかった。


「えっと、里枝ちゃん?それってどういう事なのかな?」

「どういう事ってもしかして遥さんから聞いてないんですか?」

「全然聞いてないんだけど」

「クリスマス先生の家でクリスマスパーティするってことになってるんですけど」

クリスマスパーティのことなんて何も聞かされていなかった。しかも俺の家でクリスマスパーティなのか。

全く夏の合宿の事と言いあの人はなんでも勝手に決めるんだから…。


「あのぅ、先生はクリスマス予定が入ってるんですか?」

「入ってはいないんだけど」

「じゃあクリスマスパーティ大丈夫ですよね!?」

「いやぁ、それは…」

「駄目ですか…?」

里枝ちゃんは上目づかいをして更に目を潤ませながら俺をジッと見つめてきた。

これは破壊力が半端ない。


「大丈夫に決まってるじゃないか。うん、全然大丈夫!」

「本当ですか!?やったー!クリスマスが楽しみです!」

里枝ちゃんは凄く喜んでいるようなのだが後で先生にクリスマスパーティのことについて電話しておかないとな。


「里枝ちゃん先生に少し似てきたよね…」

「え、何ですか?」

「いや、なんでもない。とにかくクリスマスパーティの前に期末テストだよ。がんばって期末テストを乗り越えよう!」

「はい!がんばっちゃいますよー私!」












「ただいまー」

家に帰って来たのは10時過ぎだった。里枝ちゃんの家でいつも通り食事をして歩いて帰って来た。

それにしても今日は疲れた。この前もそうだったが2連続で授業は疲れるな…。

早く風呂に入って寝るか。


「ん?」

靴を脱ごうとした時この家のものでない靴が綺麗に並べられていた。この靴はもしかして…


「あっ!綾人君おかえりー」

「やっぱり先生か」

何故かこんな夜遅くに先生が俺の家へと来ていた。まぁクリスマスパーティについて電話しようと思っていたところだし手間が省けるな。


「あの、先生話があるんですけど」

「あっ!丁度よかった。私も綾人君に大事な話があるんだよ」

どうやら先生も話があるようだ。ここで話もなんなので俺は先生を自分の部屋に招き入れた。



「話の事なんですが先生からどうぞ」

「うん。それでねクリスマスの事なんだけど」

「それってもしかして家でクリスマスパーティをするってことですか?」

「あれ?なんで綾人君知ってるの?もしかして私が言いたいことが全て分かるとか!?」

「違いますよ。今日家庭教師の時里枝ちゃんから聞いたんですよ」

「なるほどー。だったら私が言わなくても大丈夫だね」

「あの、先生毎回思ってることなんですけど先生一人だけで先だって決めるのはどうかと…」

「いやー楽しみだねクリスマスパーティ!プレゼント交換もしたいよねー。あ、そうだカナちゃんも呼んであげる?」

駄目だ、この人全然聞いてない。このテンションが上がっている状態の先生に何を言っても無駄だろう。


「はいはい、わかりましたよ」

「だったら早速明日からクリスマスに向けて準備しないとね!あ、そうそう綾人君の話ってなんなの?」

「いえ、もう終わりましたから大丈夫です」

「そう?それじゃあ私はそろそろ帰るねー。いやー楽しみだな♪」

先生はテンションが上がりっぱなしのまま帰っていった。


結局先生に言いたい事は言えなかったがもうどうでもいいや。あの人に言ったとしても何も変わらない気がするし。



それにしてもクリスマスパーティーか。また色々と疲れる事になりそうだ。まぁそれも最近は慣れてきたけど。

そういえばクリスマスと言えば西園寺さんはどうするんだろう?両親も帰ってくるのが日頃帰ってくるのが遅いらしいし。

とりあえず次の家庭教師の日に聞いてみるか。

今は疲れてるしさっさと風呂に入って寝よう。












そして2日後の西園寺さんの家庭教師の日。


「どうだった西園寺さん数学の方は?」

「当然余裕に決まってますわ」

「そっかそっか。それならよかったよ」

里枝ちゃんに今さっき電話した時はなんとかできたと言っていたが全然西園寺さんは自分で言っているように余裕のようだな。


「社会は少し手こずりましたがでもあなたが教えてくれた通りのところが問題で出てきたので助かりましたわ」

どうやら俺が事前にテストに出そうな問題をまとめていたところが出たようだ。がんばってまとめて教えた甲斐があったな。


「それじゃあ明日は西園寺さんが苦手な国語だね」

「アナタの言うとおり国語は一番苦手です。それに前回の模試で柳瀬さんにも負けてしまいましたし…」

どうやら西園寺さんは前回の模試で国語で里枝ちゃんに負けたのが相当悔しかったらしい。

といっても模試の結果にせよ学校のテストの結果にせよ国語が苦手というわりに別に恥じるべき点数ではないんだけどな。


「それじゃあ早速とりかかろうか」

「お願いします」



西園寺さんの中で一番難関となる国語にとりかかることにした。


西園寺さんは自分で国語が苦手と言っている割には問題を難なく解いていっている。多少間違えるところもあるのだがそこまでというより全然悪い結果ではない。

さすがは学年成績優秀者といったところかな。相変わらず俺は俺で西園寺さんに教えるのに必死だし…。



そんなこんなで今日は国語を集中的にやっていき家庭教師の時間は過ぎて行った。




「今日はここまでだね。お疲れ様西園寺さん」

「ええ。も御苦労さまでした」

気のせいかな、やっぱり西園寺さんはどこか俺に対して口調が柔らかくなった気がする。


「二人ともお疲れ様」

教材を片付け終わったところでタイミング良く母さんが料理を持って入って来た。


「今日はいっぱい作ったからたくさん食べてね西園寺さん」

そういうとたくさん盛られた料理を西園寺さんの前に置いた。これはいくらなんでも多いんではないだろうか。

俺のと比べると凄い違いなんだが。


「ありがとうございます、おばさん」

「いえいえ。それにしても綾人ったらまたこんな可愛い女の子を捕まえちゃって、私はアンタが女たらしだとは思わなかったわー。やっぱりお父さん似なのかしら?」

「母さん!適当な事言わなくていいから!」

「はいはい。それじゃ西園寺さんごゆっくりしていってね」

そう言うと母さんはちゃっちゃと部屋から出ていき階段を下りて行った。全く、あの人はいつも余計な事を言うんだから。


「あはは…、ごめんねうるさい母親で」

「いえ、楽しいお母さんですわね」

「めんどくさいだけだけどね。まぁ、そんなことより御飯食べようか」

「はい。それではいただきます」

俺と西園寺さんは御飯を食べ始めた。山盛りの料理に明らかに動揺していた西園寺さんだが俺も手伝って食べてなんとか量を減らしていった。


「あ、そうだ西園寺さん。ちょっと聞きたい事あるんだけどいいかな?」

「はい、なんですか?」

あらかた御飯が終わりかけていた時俺は思い出したように西園寺さんにあの事を聞いてみることにした。



「クリスマスの事なんだけど24日って西園寺さんって用事とかあるの?」

「特にこれといった用事はありません。父も母もどうせ仕事ですし」

「そっか、それなら丁度いいや。24日のクリスマスイブに里枝ちゃん達とクリスマスパーティをすることになってるんだけどよかったら一緒にどうかな?」

「柳瀬さん達とですか?」

「うん、あと俺の昔の家庭教師の先生と友達が居るんだけど二人には一応言ってあるんだ。それでどうかな?」

「そうですか。でも、そのお誘いお断りさせてもらいますわ」

「えっ、やっぱり嫌かな?」

さすがに2人も西園寺さんの知らない人が居たら来づらいかな。


「いえ、前にも言いましたけど私と柳瀬さんはライバルなのです。ライバルと一緒にパーティをすることなんてあってはいけないことなんです」

パーティを一緒にすることなんてあってはいけないか…。ライバルと言っても一応この二人は友達同士じゃなかったのか?

ていうかちょくちょく里枝ちゃんの家に西園寺さんが遊びに来るって里枝ちゃんから聞いたんだけどそれとパーティとは違うのかな?


「でも、別に里枝ちゃんはそんなことは気にしないと思うんだけどな」

「私が気にするんです」

「でもさ、せっかくのクリスマスだしさ…」

「ライバルとして絶対に行きません!」

これは簡単に折れそうにないな。まさかここまで西園寺さんが頑固だったなんて。


「わかった、無理強いはするつもりはないからね。でも、もし気分が変わったら俺に電話してよ」

「わかりました。まぁ変わるつもりはありませんけどね」

西園寺さんはそう言うと残りの御飯を食べだした。

それにしてもせっかくのクリスマスなのにあの広い家でひとりってやっぱり寂しいよな。

なんとかしてあげたいんだけどな…。

しょうがないこういう場合はアイツに相談してみるか。









「なるほどな。なかなか興味深い話だな」

俺は次の日匠の家へとやって来ていた。あまり頼りたくなかったのだが言ってもこいつは本当の西園寺さんの先生だしなんとかしてくれるんじゃないかと期待を持ってやってきたのだが。


「それにしてもまさか菜緒がお前ん家で勉強をしているとはな」

「えっ、普通じゃないのか?」

「いや、俺はあいつの家でしか勉強はやったことないぞ。そもそも家庭教師は生徒の家に行くの普通じゃないのか?」

そうなのかな?俺の先生が先生だからそれに影響されているのかもしれない。


「まぁ、それはそれで面白いからいいんだがな」

「面白いって…。それよりなんかいい案ないか?西園寺さんがクリスマスひとりってのも可哀そうだろ?」

「ふむ…。そう言われてもそのクリスマスの日は俺は忙しいしな」

「また塾なのか?」

「家はクリスマスは毎年家族で過ごすということがお決まりになってるからな。出掛けるわけにもいかんのだ」

こいつって意外と家族思いなんだな。まぁ、歳の離れた妹も居る事だし匠が居てやった方がいいか。


「というわけで菜緒のことはお前に任せるわ」

「適当だな。西園寺さんの先生はお前だろ?少しは手伝おうと思わないのかよ」

「といっても菜緒の今の先生は綾人だ。ちょうど期限は24日のクリスマスイブの日までだしな」

確かに2週間の期限は24日のクリスマスイブの日までだ。反論のしようがない。


「それにこういうことはお前の方が得意だと俺は思うがな」

「別に得意もなにもないよ」

「そうか?まぁ、がんばれよ!俺はお前のことを信じてるからこそ菜緒を頼んだんだからな」

こう真っ直ぐに信じてるとか言われたらなんとも言えなくなってしまう。


「はぁ…、わかったよ。なんとかしてみるわ」

「よく言った綾人!それでこそ俺の親友だ!というわけでお前がわからない勉強を今日は俺が特別に見てやるぞ」

「断る」

俺は要件が済むとさっさと匠の家を飛び出た。危うくお勉強コースに行くところだったし。

それよりもなんとかしてみると言ってみたものの特に何も考えはないんだよな。





そうこうしている内に気づけばクリスマスイブ当日となっていた。

西園寺さんの事を考えてはいたというものの全然クリスマスに関しては考えがまとまってないのであった。


「先生大丈夫ですか?」

考え事をしていると里枝ちゃんが声をかけてきた。どうやら困っている事が筒抜けているらしい。


「大丈夫だよ。それよりも里枝ちゃんテストも安心の点だったし無事に冬休みが迎えられたね」

「はい!これも先生のおかげですよ♪」

「あはは、そう言ってもらえると俺も教え甲斐があったってもんだよ」

なんとか安定した成績で里枝ちゃんはテストを終える事ができた。最初と比べるとやはり里枝ちゃん自信も自分から勉強をするようになってきたし俺としても安心できる。

後は西園寺さんだけだよなぁ…。


そんな事を考えていると里枝ちゃん家のインターホンが鳴った。


「遥さんです!私出てきますね」

そう言うと里枝ちゃんは部屋を出ていった。

とにかく今日の事を早く考えないとな…。特に考えは浮かばないのだけれども。



しばらくすると里枝ちゃんは遥さんと何故かカナを連れてきた。


「なんでカナが居るんだ?」

「なによ!私が居たらいけないの!?」

「別にそういうわけじゃないけど…」

「私が呼んだんだよ。やっぱり皆でパーティした方が楽しいしね♪」

先生が呼んだのなら何も言えないな。まぁ特に言う事もなかったけど。


「そういうわけよ。綾人が2人に変な事しないかが心配でもあったから来たということもあるからね」

変な事ってなんだよ…。めんどくさいことになりそうだからあえて聞かないけど。


「それじゃあ早速クリスマスパーティの準備を皆でしよう!私この日のために色々買って来たんだよー」

「はい!それじゃあ私はお母さんの料理のお手伝いしてきますね」

「じゃあ私は飾り付けをしようかな。綾人も手伝ってよね」

「わかってるよ」

クリスマスパーティが始まるまでに時間がまだあることだしちょっと西園寺さんに電話してみようかな。


「悪い。ちょっと電話してくる」

そう言うと俺は部屋を出て早速西園寺さんに電話をかけることにした。



「もしもし」

「あ、西園寺さん今いいかな?」

「ええ、いいですけれど。それよりどうしたのですか?」

「えーっと、その元気にしてるかなと思って」

「なに言ってるんですか昨日あったばかりですし元気に決まってますわ」

それもそうだ。電話したのはいいものの何を聞いたらいいのかに焦ってしまって適当な事を聞いてしまった。


「それはそうだよね。えーっと今日は何してるの?」

「どうして私が今日何しているかをアナタに教えないといけないのですか?」

またしてもうまく質問できなかったな。空回りをしてばっかりだ。


「別にいいんだけどね。あ、そうだ!テストの結果はどうだった?」

「おかげさまでいつも通りクラスの上位に入ることができましたわ。苦手な国語も思ったより良い結果でしたし」

ということはテストの結果は良かったということだろう。良かった俺のせいで前回より下げなくて済んで。


「それは良かったよ。とにかくテストお疲れ様、あとのことは匠に任せるよ。というか元はアイツが家庭教師なんだし」

「そうですね。鳴海さんも短い間でしたがありがとうございました。アナタの教え方悪くなかったですよ」

「そう言ってもらえるとこっちも教え甲斐があったってもんだよ」

「ですが調子に乗らないでくださいね。もう少しアナタには匠先生と同じくらい勉強してもらいたいものです」

「あはは…」

やっぱり最後まで西園寺さんはこうか。まぁこのほうが西園寺さんらしいよな。


「それではここら辺で」

「ちょ、ちょっと待って西園寺さん!」

電話を切ろうとした西園寺さんを僕は声を強めて引きとめた。


「なんですか?まだ何かありますの?」

「今日さ、里枝ちゃんの家でクリスマスパーティやってるんだ。ほら、前言ったでしょ?だから良かったら里枝ちゃんも…」

「お断りしますわ。何回も言っている通り柳瀬さんとはライバル同士です。だから私のプライドにかけて行くわけにはいきません」

「いや、でも今日ぐらいは…」

「お断りします!」

西園寺さんがそう言うと電話が切れてしまった。やっぱり上手くいかなかったか…。だいぶ前里枝ちゃんの家に来た時は西園寺さんは普通に里枝ちゃん家に遊びに来てたのにこういうイベントの時は西園寺さんのよく分からないプライドで駄目なのか。

こうなると西園寺さんもなかなか頑固で絶対来ないだろうな。

せっかくのクリスマスだからなんとかしてやりたいんだけどなんとも案が浮かばないな。


「ちょっと綾人ー。電話終わったなら早く飾り付け手伝ってよねー」

「わかったよ。今やるから」

とりあえずこっちはこっちで楽しんで西園寺さんの件はまだ今日も長いし早く考えるか。




「「メリークリスマース!!」」

準備も終わってしばらくしてからクリスマスパーティは始まった。パーティをしている場所はいつもの里枝ちゃんの部屋ではなく1Fのリビングだ。

リビングは飾り付けによってクリスマス一色のような感じになっていた。そしてテーブルの上には里枝ちゃんのお母さんが作ってくれた豪華な料理、そしてクリスマスケーキがある。

里枝ちゃんのお母さんはどうやら料理を作って行ってくれたようで今は里枝ちゃんのお父さんと二人きりのクリスマスパーティを外でしているらしい。里枝ちゃんのお父さんは2、3回ほどしか見たことないが夫婦仲は相当良いようだ。


「んーおいしー!やっぱりクリスマスの日のお母さんの料理はおいしいなぁ」

里枝ちゃんは次から次へと料理を口に運んでいる。相変わらずこの子の食べっぷりは凄いよな。


「私も何か作ってくるべきだったなー」

「お前はやめとけ」

「綾人、何か言った?」

「別に」

カナが作る料理は本当にどうやって作っているんだろうと思うほど不味いからな。見た目はいいのにな…。


「皆、2学期もお疲れ様ー。3学期もまだあるけど気を抜かない程度で次もがんばっていこうね」

「そうですね。でも、先生の方がもっと大変なんじゃないんですか?確かもう就活始まったんですよね?」

「ウッ…綾人君、それ禁句」

そう大学3年生のこの時期となると就職活動が始まる。先生も今現在就職活動で説明会の方に行ってて忙しいようだ。


「と、とにかく今は就活も勉強も忘れて楽しもうよ!」

「そうですね。やっと冬休みが始まったわけですし」

「そうですよ!冬休みですよ!今回はどこ行きますか!?」

「どこ行くってどういうこと里枝ちゃん?」

「夏休みには合宿行ったじゃないですか!もちろん今回の冬休みにもまたどこか行くんですよね?」

そういえば夏休みには海の方へと合宿へ行ったな。楽しかったんだけれど色々と大変だった事の方が多かったけどな。


「そうだねー。今回は特に何も考えてなかったからね~」

「えー!行きましょうよー遥さん!香苗さんも行きたいですよね!?」

「え、私?んーっと、そうだね…」

「ほら!香苗さんもこう言ってるんですし行きましょうよ遥さん!」

里枝ちゃんは必死に先生を説得している。里枝ちゃんは皆とどこかに行きたくてしょうがないようだな。


「もちろん私も皆とどこか行きたいよ~。でもどこがいいかな…?」

「初詣とかいいんじゃないですか?」

困っている先生たちに俺は提案をしてみた。


「初詣!いいじゃないですか!先生ナイスアイデアです!」

「そうだね。さすが綾人くん冴えてるね♪」

「綾人にしては珍しくいい提案するじゃない」

にしてはってどういうことだよ…。でも確かに自分でも思うが俺が皆に提案するのは珍しいかもしれない。


「というわけで1月1日はまた私の家に集合ということでお願いします!」

1月1日か、忘れないようにしないとな。毎年その時期は昼まで寝てることが多かったからな。というか長期休暇の時はいつもそうか。



「さてと、行くところも決まった事だしそろそろプレゼント交換しようか!」

「やったー!待ってました!本日のメインイベントですね」

「綾人、ちゃんとプレゼント持ってきた?」

「それぐらい持ってきてるよ」

持ってきてると言っても誰に自分のプレゼントが渡るかわからないからな。自分のプレゼントにあまり自信がない。

皆が持ってきたプレゼントが入っている袋を見る限り里枝ちゃんのは普通のサイズの袋で先生のは小さな袋カナはそれなりに大きな袋だ。


「どんな感じで交換するんですか?」

「そうだねー。それぞれの袋に番号を書いてあみだくじで引くってのはどうかな?あみだくじの方は私が作るから余ったくじを私が引くよ」

「わかりましたー!それじゃあ早速始めましょう!」


ルールを聞いた後先生は袋にそれぞれの番号を書いてからあみだくじを簡単に作った。


「皆好きなところに名前書いていって」

先生が言った後に俺達は好きなところに自分の名前を記入した。俺は一番右端のところに名前を書いた。

皆が名前を書いたところで先生も最後に名前を書いてあみだくじの先の書いていた番号を出して先生が一つずつ引いていった。


「里枝ちゃんは1番だね」

「やったー!一番大きいのだ!」

「それと香苗ちゃんが2番で綾人君が4番。それで私が3番だね」

皆はそれぞれ自分の番号のプレゼントを取っていった。自分のプレゼントを取るのではないかという心配があったのだが皆見事に自分以外のプレゼントを取ったようだ。

俺の4番のプレゼントは一番小さな袋のやつだな。恐らく先生のだろう。

袋から出すとプレゼントは綺麗に包装されていた。


「皆ー、袋からプレゼント出したかな?それじゃあ1番の里枝ちゃんから一人ずつプレゼント開けていこっかー」

「わかりました。それじゃあ開けていきますね」

里枝ちゃんからプレゼントを開けていく事になったのだがわざわざ一人ずつ開けていくことはないんじゃないだろうか。


「わー、河童さんだー!」

里枝ちゃんのプレゼントの中身は大きめの河童のぬいぐるみだった。

その河童のぬいぐるみはクリスマス仕様のようでサンタの帽子をかぶっていた。でも普通河童って言えば頭のお皿が特徴的なのだが帽子で隠れてしまっている。


「誰にこのプレゼントが渡るか分からなくてプレゼント選び凄い悩んだんだよね」

このプレゼントはカナからのようだった。まぁ里枝ちゃんがプレゼントを開ける前から袋の大きさでわかってたけど。


「香苗さんこの河童さん凄く可愛いです!というより凄い私好みです!河童さん大切にしますね♪」

「あはは、そう言ってもらえてよかった。うん、大切にしてあげてね」

里枝ちゃんはカナからのプレゼントを凄く気に入ったようだ。それはそれで良かったと思うのだが他にもいっぱい色んなぬいぐるみはあるのになんでカナは河童を選んだんだろうか?


「じゃあ次は香苗ちゃんね」

「わかりました。それじゃあ開けますね」

そう言うとカナはプレゼントを開け出した。ちなみにカナのプレゼントは僕からのものだ。


「これはマグカップだね」

カナは箱から花柄のマグカップを取り出した。このマグカップを買うのに凄い時間かかったんだよな。しかも少し値が張ったんだよな。


「これ綾人からのプレゼントだよね?」

「あー、そうだけど。どうかな?」

「うん、普通だね」

「普通って…」

せっかく時間そして金をかけて買ったというのに何とも味気のない感想だろう。


「えー!先生のプレゼントなんて羨ましいですよ香苗さん!」

「ほんとだよー。私も綾人君からのプレゼント欲しかったなー」

確かに俺としても先生か里枝ちゃんにあげたかった。カナとは付き合いも長かったし子どもの頃はこんな感じにプレゼント交換したこともあるし。


「嫌なら別に貰わなくてもいいんだぞ」

「いいよ、もらってあげる。マグカップあっても困らないし。…綾人からのプレゼントなんだし」

最後の方は聞きとれなかったがどうやら受け取ってくれるらしい。でも無難にマグカップをプレゼントにしてよかったかもしれないな。


「じゃあ次は私だね」

3番目は先生だ。こうなると後は里枝ちゃんからのプレゼントだろう。



「うわぁ、お菓子がいっぱい」

先生がプレゼントの袋を開けてみるとそこにはプレゼント袋いっぱいのお菓子入っていた。

先生はプレゼント袋の中に入っていたお菓子を全て出してみた。見ただけでも分かるが本当に凄い量だ。


「これは凄いね…」

「どうですか!このお菓子の詰め合わせ!この量を買うの結構苦労したんですよ。本当は私が全て食べたいぐらいです」

さすがにこの量を見て俺の隣のカナも苦笑いをしている。


「やっぱりお勧めはこの「うまか棒」ですね!色んな味があっておいしいんですよ。しかも10円なんですよ!」

うまか棒か。確かに10円で買えて色んな味があっておいしいのは同感だ。俺も子どもの頃からよく食べている。

だけどさすがにこのうまか棒の量はないんじゃないかな。お菓子の詰め合わせの大半がうまか棒だ。恐らく50本近くあるんじゃないか?


「ありがとう里枝ちゃん。一人暮らしだしこれだけあったら助かるね」

「えへへ♪是非感想の方よろしくお願いしますね」

さすが先生大人な対応だ。でもここまでの里枝ちゃんの笑顔を裏切ることなんてできるわけないしな。


「さてと、最後は綾人君だね。私からのプレゼント喜んでくれるといいな」

先生からのプレゼント一体なんだろう?結構小さな箱に入ってるようだけど。

考えても仕方ないしとにかく開けてみるか。それに3人の視線が妙に痛いんだけど。


俺は袋からプレゼントが入っているラッピングされた箱を取り出し箱を開けた。


「これは?」

箱を開けると更に小さな真っ黒い箱が入っていた。真っ黒い箱の上の方には英語で何か書いてあるが良く読めない。もしかしたらブランドものの何かかな?

更にこの小さな箱を開けてみるとそこには驚くべきものが入っていた。


「指輪…?」

何かの冗談だろうか?箱の中には指輪が入っていた。指輪には濃いピンク色をした石がついていた。これは何の石だろう?

いや、その前に指輪って…。


「どう綾人くん?気に入ってくれた?」

「えっと、気に入ったっていうか…。その、お高いものプレゼントしてくれるのは嬉しいんですけど…」

「そうですよ遥さん!指輪は卑怯ですよ!」

里枝ちゃんの言うとおりだ。さすがにこれは不味いだろう。

ふと里枝ちゃんの横にいるカナを見てみると何故か固まっているように見える。


「あはは、わかってるよ。これはそういう意味の指輪じゃなくて綾人君にはパワーストーンとして持っていて欲しいの」

「パワーストーンですか?」

パワーストーンって確か身につけているだけで良いことが起きるとかどうとか聞いた事があるけどこの指輪についている濃いピンク色の石がそうなのだろう。


「この石は「インカローズ」って言ってこれを身につけている人には永遠のパートナーにめぐり合わせ、情熱的な恋をもたらして結婚へと導き、誰もが憧れる愛と幸せに満ちたバラ色の人生をもたらしてくれるといわれてるんだって」

インカローズっていうのかこの石は。永遠のパートナーとか愛と幸せとかバラ色の人生とかはまだいいんだけど結婚はまだ早すぎるように気がするけどな。


「だからちゃんと身につけていてね綾人くん♪」

そう言うと先生は指輪を箱から取り出し俺の左手の人差し指に差し込んだ。

せっかくの先生からのプレゼントだこのままつけておこう。それにしてもこの指輪のつける位置にも何か意味があったような気がする。


「いいなぁ遥さん。私も今度先生にとびっきりのプレゼントあげますからね!」

「あはは…、ありがとうね里枝ちゃん」

「綾人鼻の下が伸びてる」

いつの間にか固まっていたカナが元に戻っていた。というよりも凄いオーラが出ている気がするけど気のせいか?


「綾人くん」

先生が何故か小声で俺を呼んだ。


「本物の指輪は綾人君から貰える事期待してるね♪」

耳元で先生はとんでもないことを囁いた。本物の指輪ってことはやっぱりアレだよな。結婚指輪のことか…。

まぁいつもの先生の冗談だろう。気にしないでおこう。

そういえばこの指輪は俺のために先生が用意してくれたのかな?ということはこのあみだくじ先生がやっぱり何か仕組んだんじゃないのか?


「プレゼント交換も済んだし皆、残りの料理食べちゃおっか」

なんにしても皆が楽しんだならいいか。



この後引き続き皆で会話をしながら残りの料理を綺麗に食べ終えた。そして時間も21時を過ぎて解散の時間になってきた。

一通りクリスマス会の片づけをした後は今日はお開きという事で一旦外へ出た。


「今日は楽しかったですねー」

「そうだね。また来年もしたいね」

「珍しいなカナがそんなこと言うなんて」

「なによ。何か文句あるの?」

「別にないけど…。あ、里枝ちゃん冬休み入ったから家庭教師の授業も冬休み終わるまでは休みだね」

「そうですね。勉強は嫌だけど先生と会えなくなるのは寂しいです」

「冬休み短いしずっと会えなくなるわけじゃないんだから。まぁまた遊びにくるよ」

「本当ですか!絶対ですよ!?」

里枝ちゃんは期待している目で俺を見てくる。ここまで期待の眼差しを向けられたら裏切れないよな。


「大丈夫だよ綾人くん、里枝ちゃん。初詣で会う訳だしね」

「そうですよね。絶対に初詣はまた4人で行きましょうね♪」

「というわけで初詣の連絡は私がするから皆ちゃんと覚えていてね」

「はーい」


「それじゃあ里枝ちゃん今日はここでね。おばさんに料理のお礼言っておいてね」

「わかりました!皆さんも気をつけて帰ってくださいね」

「ありがとう。それじゃあおやすみー」

俺達は里枝ちゃんに別れを告げて歩き出した。





里枝ちゃん家から少し歩いたところで俺は足を止めた。


「どうしたの綾人くん?」

「俺ちょっと用事があるのでここら辺で」

「用事って何かあるの?」

「いや~、何というか個人的な用なわけで…」

「何よ個人的な用って?」

カナのやつしつこいぐらい聞いてくるな。言ってもいいんだが何て伝えればいいのかが分からない。


「まぁまぁ香苗ちゃん。綾人くんには綾人くんらしい理由があるようだしそこは聞かないでおこうよ」

「別に綾人の用なんて大したことじゃないだろうし気になりませんよ」

大した用じゃないって…。だったら聞くなよな。なんにしても先生のおかげで助かったようだ。


「というわけで2人とも気をつけて帰ってくださいね」

「うん、綾人君もね」


俺は2人と違う方へと歩き出した。別れ際カナがおもいっきり睨んで来ていたがそこは見なかった事にした。

ここから歩いて行ったら西園寺さんの家まで30分ぐらいはかかるだろう。西園寺さんが寝る前になんとか着かないとな。





「どうやら起きてるみたいだな」

軽く走ってきたので西園寺さんの家までは20分弱で着く事ができ時間は22時を過ぎようとしていた。

西園寺さんの家からはひとつだけ明りが漏れていてそこは西園寺さんの部屋だった。

とにかく出てきてもらわないと始まらないので俺はチャイムを押すことにした。



チャイムを押すと高い音がなりその後中から階段を下りている西園寺さんの足音が聞こえてきた。


「こんな時間に誰ですの?」

扉の向こうから西園寺さんの声が聞こえてきた。


「西園寺さん俺だよ」

「鳴海さんですか?どうしたんですのこんな時間に?」

「ちょっと用事があるんだけどドア開けてもらってもいいかな?」

「わかりました」

そう言うと西園寺さんはドアを開けてくれた。

西園寺さんはピンクと色の水玉のパジャマを着ていた。西園寺さんには悪いかもしれないが少し強めの性格している割に可愛いパジャマを着ているなと思ってしまった。


「ごめんねこんな時間に」

「いえ、まだ寝ていませんでしたの大丈夫です。それよりもここでは寒いので中に入ってください」

「ありがとう。それじゃあお邪魔するよ」



西園寺さんの家の中に入りそのままリビングの方まで西園寺さんについていった。

リビングに入ると西園寺さんがソファに座ったので俺も少し間を開けて西園寺さんの横に座った。

それにしてもクリスマスだというのに特に飾り付けもなく殺風景だな…。しかも今日はこの広いリビングに西園寺さんが一人だったというのだからやっぱり寂しいよな。


「鳴海さんは今日は柳瀬さんの家でクリスマスパーティじゃなかったんですか?」

「終わってからここに直接来たんだよ」

「そうですか。それで用事って一体なんですの?」

「そのことなんだけど…」


俺は背負っていた鞄から一つ紙袋を出した。


「これ西園寺さんにクリスマスプレゼントだよ」

「これを私に?」


特に考えはなかったけどクリスマスプレゼントを西園寺さんに渡した。何かしてあげるよりクリスマスプレゼントが一番てっとり早いしな。

ちなみにこの西園寺さんのクリスマスプレゼントは里枝ちゃんの家でやったプレゼント交換の時に選んだプレゼントと一緒に買ったものだ。


「でも、私あなたに何も用意してないんですけれど…」

「いいんだよ。俺が西園寺さんにクリスマスプレゼントとしてあげたいだけだから。それに西園寺さんテストも頑張った事だしご褒美としてでもいいから受け取ってよ」

「そうですか。でしたら頂きます」

そう言うと西園寺さんは紙袋を開けてプレゼントを取り出した。



西園寺さんが取りだしたのは四角い形をした宝箱のようなものだ。

それを持って宝箱のようなものの蓋を開けた。


「これは」

蓋を開けると小さな丸まっている猫と伸びをしている猫の2匹の人形が入っていて横にはネジがはめてあった。

その猫の隣のネジを西園寺さんは早速回してみた。



「わぁ…」

ネジを回すと癒し系の心落ち着く音楽が流れ始め中に入っていた2匹の猫が回り始めた。

そう、俺が西園寺さんにあげたプレゼントはオルゴールだった。このプレゼントをプレゼント交換の時に出しても良かったのだが誰に回るかわからなかったのであえてプレゼント交換の時にはこのオルゴールは出さなかった。


オルゴールの音色を聴いている時の西園寺さんの顔は今まで見たことない笑顔をしていた。

いつもはちょっと厳しい顔をしているのだが西園寺さんもこんなに可愛い笑顔を見せることもあるんだな。


「どうかな西園寺さん?気に入ってくれたかな」

西園寺さんに声をかけると西園寺さんは我に返ったかのように体をびくっとさせていつもの顔に戻った。


「ええ。あなたにしては気の利いたプレゼントだと思いますわよ」

いつもの西園寺さんに戻ったようだ。というか俺にしてはってどういうことだ?


「ありがとう。そう言ってもらえて安心したよ」

「あなたがありがとうって言うのは可笑しいと思いますけど」

「あはは、そうだね」

「それにしてもクリスマスプレゼントなんてもらったのなんて久しぶりですわ」

「そうなの?お父さんとお母さんからとかは?」

「父と母は仕事で毎年クリスマスの事なんか忘れています。いつからか私もクリスマスなんてないという事の方が当たり前になっていましたしたわ」

クリスマスがない方が当たり前だったなんて…。顔には出さないが西園寺さんはまだ子どもなのに毎年寂しい思いをしていたんだろう。



「ですが、今日あなたにクリスマスプレゼントというものをもらってクリスマスは悪くないものだと思いました。それにこんな特別な日にひとりで居るよりも誰かと一緒に居る方がいいということも分かる気がしましたわ」

「それならよかったよ」

「だから、今日はありがとうございました」

西園寺さんはどこか照れながらも真っ直ぐと俺の目を見てお礼をしてきた。ここまで真剣に西園寺さんにお礼をされたのは初めてだ。

この子は今さっき、そして今みたいな可愛い顔をするんだから厳しい顔は似合わないよな。


「あのそんなに顔を見ないでくださるかしら」

「ご、ごめん!別にそんなつもりはなかったんだけど…」

つい西園寺さんの顔がいつもと違ったものだからマジマジと見てしまった。



「それじゃあ時間も遅いしそろそろ帰るよ」

「そうですね。玄関まで送りますわ」







「うわぁ、雪だ」

二人で外に出るとちらちらと雪が降っていた。


「本当ですね。雪なんて久しぶりに見た気がします」

「そうだね。なんていうかホワイトクリスマスだね」

雪もタイミングよく降ってくれたな。これはこれでいいんだけど。

隣の西園寺さんを見てみるとプレゼントをあげた時と同じ笑みを浮かべていた。今日プレゼントを渡す事ができてよかったな。


「じゃあ俺帰るね」

「はい。今日は本当にありがとうございました。気をつけて帰ってください」

「うん、じゃあね西園寺さん」


俺は西園寺さんに別れを言ってその場を立ち去ろうとした。


「あ、あの鳴海さん!」

振り返って歩こうとした時西園寺さんが急に俺を呼んだ。


「どうしたの?」

「え、えーっと。その…。アナタがどうしてもここに来たいと言うのなら私は別に構いませんよ」

どこか照れながら西園寺さんがそう言ったが素直に言えばいいのに…。


「うん、是非来させてもらうよ。次は友達としてね」

「友達ですか…。そうですねアナタがどうしてもというのなら友達になってあげてもよくてよ」

最後まで相変わらずだな西園寺さん。


「わかった。じゃあ今度こそまたね西園寺さん」

「はい。おやすみなさい」

そう言うと今度こそ俺は帰路についた。





空を見上げると雪がまだまだちらちらと降っていた。

なんだか今日は忙しい日になったが無事にクリスマスを終える事ができた。

なんにしても今日は忙しかったが楽しい日となったと思う。西園寺さんもプレゼント喜んでくれたことだし。



今回は西園寺さんと俺だけだったが来年は今日のクリスマスパーティをしたメンバーと西園寺さんが一緒にクリスマスパーティをできるといいんだけどな。

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