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夏の思い出

「あ~原付って楽だな」

今俺はこの前先生から譲り受けた原付スクーターを運転中である。

先生教えのもとで原付免許取得のために勉強を必死でやったおかげもあり無事に1日で免許をとることができた。あの日先生はほぼ俺に付きっきりで勉強を教えたこともあり深夜まで勉強は続いた。

あの日は本当に大変だった。だが今思うとそこまで詰め込んで勉強をしなくてもその次の日の日曜日や一週間後にでも取りにいけばよかったような気がするが。


だけど何にしても免許が取る事ができて本当によかった。


「よし、着いた」

俺は目的地の近くに来たので原付を降りた。免許をとってまだ間もないので少し運転は心配していたがなんとか着く事が出来た。

これからも安全運転でいかなくちゃな。


俺は原付を駐車スペースのあるところに原付を駐車すると建物の中へと入って行った。



「いらっしゃい綾人君待ってたよ~」

「先生どうもです」

今日原付でやってきた場所は先生の住んでいるアパートだ。

先生の住んでいるアパートは俺の家から原付で8分ほどのところで先生の通っている大学の近くのアパートである。

アパートは木造建て3階のアパートで少し古ぼけたアパートである。たぶん家賃は安いだろうな。

というか俺が先生のアパートに来るのは久しぶりで中学の頃先生に勉強を教えてもらっていた時ぶりだ。


「こんにちは。待たせちゃったかな?」

「いえいえそんなことありませんよ。私も今さっき来たところですし」

先生の部屋は2階にあり部屋の中は8畳ほどのスペースの和室で一人暮らしをするには十分のスペースである。

先に来ていた里枝ちゃんはどうやら自転車でここまで来たようだ。俺の学校がもう少し早く終わったら一緒に自転車で来るべきだったんだが。


「綾人君そんなところに立ってないで座って座って~」

先生は床に置かれている座布団に指をさして俺を座るように促した。俺はさっさと先生に言われたところに座って落ち着いた。


「綾人君原付の調子はどうかな?」

「全然問題ありませんよ。なんていうか新品同然みたいな感じで元気ですよ。運転も少しずつ慣れてきましたし好調です」

「そっかぁそれはよかったよ~。それじゃその調子で安全運転でね♪」

先生は余程自分があげた原付が気になったのか俺から様子を聞いた後ほっとしていた。


「えーっとそれよりも本題だけど里枝ちゃんテストの方は?」

「持ってきましたよ。見てください先生」

里枝ちゃんは俺にテスト用紙を渡してきた。俺は里枝ちゃんからテスト用紙を受け取りひとつひとつ見ていくことにした。

なんだかこの前の先生と俺のやりとりみたいだな。




「凄いよ数学に理科ちゃんとできてるじゃないか!」

「そ、そうですかね~」

里枝ちゃんは数学と理科、英語が苦手だったのだがのテストを見ると数学は80点、理科は78点という得点を出していた。

英語は62点と良いという点数ではないが前の中間テストの時と比べるとかなり点数がのびているのがわかる。

他の教科も得意だったという国語や家庭科はかなりの高得点で社会などもそこそこの点数を出していた。


「本当に凄いよ!やればできるじゃないか里枝ちゃん」

「いえいえ、そんなに褒められたら照れますよー」

里枝ちゃんはかなり照れているようだ。ちょっと褒めすぎたかな?

でもこれぐらい褒めても悪くはないだろう。なんせ本当に俺は里枝ちゃんの点数が上がった事が嬉しかったからだ。


「ふにゃ~ん」

里枝ちゃんは何故かとろける様な声を出して顔までとろける様な表情をしていた。

ちょっと俺自身が安心しきったこともありすぎたせいもあり褒めすぎたが限度があったかもしれないな。



「確かに里枝ちゃんはよくやったと思うよ。だけどもう少し応用問題とかをしっかりとやったらもっと今よりも点が伸びると思うよ~」

先生は褒めるばかりではなく改善すべき点なども里枝ちゃんにちゃんと伝えた。


「わかりました。次のテストは今よりももっとがんばりますね!」

里枝ちゃんは先生に言われた事を聞いてか気合いを入れた。

今度からでも俺も先生として言うべき事は言わないといけないな。


「さてさて~里枝ちゃんのテストも無事終わったしこれで夏休みは安心して海に行く事ができるね」

そういえばこの前そんな話あったな。

すっかり忘れていた。


「海楽しみです!ですよね、先生」

海はいいのだがこの女性2人に俺が一緒に行くのもな~と思ってしまうのだがこの先生の誘いを断るのもどうかと思ってしまう。

なんせ先生には家庭教師として俺に勉強を教えてもらった借りもあるし原付という高額なものをもらったこともある。

ここまでしてもらっているのに断るのはさすがにひどいだろう。


「そうだね…」

まぁ女性2人といっても俺を含めて3人だけだしそこまで問題も起こりそうにないし大丈夫だろう。

たぶんだけど。


「その海の予定なんだけどね私の大学の方が綾人君と里枝ちゃんと比べると夏休みに入るのが遅いから私が夏休みに入ってから海に行こうと思うんだけどいいかな?」

「俺は全然大丈夫ですよ」

「私も問題ありませーん」

俺は夏休み特に予定はない。それに里枝ちゃんの家庭教師の日も夏休みに入ると週1日だけになるので大分時間が空く事になる。


「二人ともありがと~。あ、それと1泊2日の予定だから二人ともちゃんと着替えとかは準備してきてね」

「はーい。分かりました」

何だろう里枝ちゃんは納得したようだけど何故か俺には耳を疑うようなことが聞こえたのだが。


「先生。一泊二日ってどういうことですか?」

「ん、そのままの意味だよ?ちなみに海の近くの旅館を予約する予定だよ」

先生は当たり前のような感じで言っているが俺はまさか1泊2日の旅行だとは思わなかった。というより海に行くだけかと思った。




だけどここで断るわけにもいかないんだよな。

今さっき俺が思った通り先生には大きな借りがあるわけだしやはりこの借りは返さなくちゃいけないしな。



「というわけでこれから旅行についての事を話していきたいと思いま~す」

「イエーイ!」

こうして夏の旅行についての話し合いが始まった。









しばらくして夕日が沈んでいく頃に夏の旅行についてのだいたいの事が決まった。

夏の旅行は8月2日に行く事が決定で目的地は最初から言っている通り海。

そして先生は俺たちの保護者としてついて行くということになった。旅館などで泊まるときにはやはり保護者はついておかないといけないらしい。

あとは海までは先生の運転で行くことになっている。先生の運転しているところなんて想像できないんだけど大丈夫なんだろうか?



「さてと日も暮れてきた事だしそろそろ帰ろうか里枝ちゃん」

「そうですね。ちょうど旅行についても決まったところですし」

「ふたりともちゃんとお母さんとお父さんに旅行のこと言っておいてね」

「わかってますよ。それじゃあ先生また今度」

「遥さんさようならです」

「うん。ふたりとも気をつけて帰ってね」

俺と里枝ちゃんは先生に別れをつげるとアパートの部屋から出て行った。

階段を下りて外に出ると置いていたところにある原付のところへ行って俺は鍵を入れてエンジンをかけた。

原付に乗って里枝ちゃんのところへ行こうとした時先に里枝ちゃんが自転車で俺のところへ来てくれた。


「先生それではまた次の家庭教師の日によろしくお願いします」

「それはそうなんだけど俺も一緒に帰るよ」

「え、でも先生は原付ですし自転車に速度あわせるのはちょっとめんどくさいんじゃありませんか?」

「大丈夫だよ。ここの道そこまで車や自転車も通らないし速度落として走っていても迷惑にならないと思う。だからせっかくだし一緒に帰ろうか?」

そこまで車や自転車も通らないといってもさすがに人はちらほら歩いているがこの道なら問題ないだろう。

「ですけど」

「それにこんな時間に女の子一人で帰らすわけにもいかないでしょ?」

「先生…」

里枝ちゃんは俺を見て何やら考え込んでいる。ちょっと強引すぎたかな?


「こちらこそ是非一緒に帰ってください先生!」

里枝ちゃんは笑顔で承諾してくれた。

「よし、行こうか」

「はい!」

俺はアクセルを軽く吹かせて里枝ちゃんの自転車に合わせるようにゆっくりと走り出した。






帰っている時は他の歩行者に邪魔にならないように走っていたが他の歩行者が居ない時には里枝ちゃんと喋りながら走っていた。

最初里枝ちゃんと会った時は少しぎこちなく喋っていたこともあったが今となってはこうやって普通に楽しく喋ることができている。

これは里枝ちゃんとの距離が縮まったということと思っていてもいいのかな?






里枝ちゃんの家に着くころにはすでに日が落ちていた。

さすがに自転車と速度を合わせて走っていたということもあったので帰るまでに20分ほどかかってしまったが里枝ちゃんと楽しく会話することができたのであっという間の様にも感じた。


「先生わざわざ一緒に帰ってもらってありがとうございました楽しかったです!やっぱり先生って優しいですよね♪」

「あはは、そんなことないよ。でも俺も楽しかったよ。また今度先生の家行った時は一緒に帰ろうね」

「こちらこそお願いしまーす」

「それじゃあ俺は帰るから。またね里枝ちゃん」

「はい。気をつけて帰ってくださいね」


里枝ちゃんに見送られながら俺は原付のグリップを握りアクセルを吹かそうとしたのだがその時問題が起きた。


「綾人?」

聞き覚えのある声が俺の名前を呼んだ。俺は原付に乗りながら恐る恐る後ろへ振り返った。


「カ、カナ…」

そこには制服姿をした幼馴染のカナがいた。

「ちょっとなんで綾人が女の子の家から」

や、やばいこれは色々とヤバい展開になってしまった。

「先生この人知り合いですか?」

里枝ちゃんは不思議そうな顔でカナの顔を見ていた。

ここを切り抜けるにはもうアレをするしかない。



「またね里枝ちゃん!」

俺はアクセルをおもいっきり吹かせてこの場から逃げて行った。

「あ、先生」

「ちょっと!ちゃんと説明しなさいよ綾人!」

二人の声が聞こえたがとにかく今の俺は逃げるしかなかった。










次の日。

今日は学校の終業式。つまり今日が終わればついに明日から待望の夏休み。

今年の夏休みはどうだらだら過ごすかだがその夏休みを迎える前にひとつだけ厄介な障害がある。


「あの、カナさん。そこ俺の席なんですけど」

登校するとクラスの自分の席には他のクラスのカナが俺の席に座っていた。


「ねぇ綾人。私が何を言いたいかわかるよね?」

カナが言いたい事。それはたぶんというか絶対昨日のことだな。


「分かるといえば分かるけど俺なにか悪い事したか?」

「したに決まってるじゃない!なんで綾人が家庭教師なのよ!!」

「なんでお前俺が家庭教師してることを知ってるんだ!?」

「昨日綾人が逃げた後あの場に居た女の子と少し喋ったの。そしたらあんたがあの子の家庭教師をしてるって聞いて私本当にびっくりしたんだから!」

あの子といえば里枝ちゃんの事だろう。それにしてもまさかカナに俺が家庭教師をしていることがバレてしまうなんて本当に油断したな。


「でも別に家庭教師をしてることは悪い事じゃないだろう?なんでそんなに怒るんだよ」

「怒るにきまってるじゃない!綾人の成績でなんて家庭教師ができるのよ!?」

うっ、こいつ痛いところ突いてくるな。まぁこいつの言っている事は分かるけど。


「だけど俺だって中学1年生くらいの勉強は教えられるさ。それに里枝ちゃんの成績だって上げることができたんだ。別に悪いことなんてないだろ?」

「そうみたいだけどでも自分の成績のこと忘れてるんじゃないの?アンタ今回の期末テストも微妙な点数だったじゃない!」

こいついつの間に俺の成績を見たんだ?


「でも今回は数学ちゃんとできたし」

「数学に限ってはね!でも他の教科は平均点ぎりぎり一部の教科は平均点よりかなり下だったじゃない」

平均点よりかなり下の点数のことを言われたらちょっと俺としても色々と自信がなくなってしまう。


「ねぇ綾人。家庭教師っていうのは簡単なことじゃないんだよ?それに教え子に勉強を教えるって言う事は責任だって凄くかかるんだから」

確かに俺みたいな成績の悪いやつが家庭教師をやってそしてお金を貰っているというのはおかしな話だろう。

最初母さんから家庭教師の話が来たときは凄くめんどくさくて嫌だという感情が大きかった。というか俺が他人に勉強を教えるという自信がなかった。



でも、それでも今の俺は違う。


「カナ聞いてくれ。俺は里枝ちゃんと一緒に勉強をしていて本当に楽しいんだ。それに里枝ちゃんができなかった問題ができるようになった時は本当に嬉しい。だから俺は里枝ちゃんのその笑顔を見たいために今はちゃんと中学1年の勉強とかをちゃんと復習しているんだ」

「綾人…」

「だから俺はこれからも里枝ちゃんと一緒に勉強をしていく。いや、していきたいんだ!」

俺はカナに自分の本心を全て伝えた。

恥ずかしながらここまで俺の想いを伝えたのだから少しはわかってくれるだろう。



「綾人がまさかロリコンだったなんて」

「は?」

今何か聞いてはいけない言葉がカナから聞こえてきた気がするんだが。


「家庭教師としてじゃなくて普通の人間として綾人を説教しなくちゃいけないようね」

「ちょっと待て!なんでそんな話になってるんだよ!俺の熱い想いを聞いたんじゃなかったのか!?」

「聞いたよ。綾人が凄く里枝ちゃんが好きだってことが!ロリコンだってことをね!」

意味がわからない。なんで俺が里枝ちゃんが好きでロリコンだという事になってしまっているんだ。


いや。この場はとにかくやばいここは恒例のアレでなんとかしよう。



「ちょっと綾人どこ行くのよ!?」

俺は席に無理やり荷物を置いてから部屋から出て行こうとした

「トイレだ!!」

まぁただ逃げただけなんだけど。

とにかく今はカナに話が通じる様子はない。朝のホームルームが始まるまでトイレに引きこもって時間をつぶすしかない。






終業式後クラスに戻り一人一人に成績が渡された。

俺の高校1年目の成績は決して良いものとは言えないが決して悪すぎるともいえない。

まぁ一言でいえば「微妙」と言えるだろう。

中間テストの時さえ頑張っていれば数学だって良い成績がとれただろうが贅沢は言えない。


成績が配られている時匠が見たいとも言わないのに勝手に自分の成績を見せてきた。

匠は中学の時と比べると成績は悪いほうだと言っていたが俺から見たら全然悪くないと思う。

むしろ匠の成績はかなり良い方でほとんどが4という数字でたまに5の数字があった。ほとんど3の俺から見ればありえない成績だ。

まぁこいつに関してはどうせ自慢でもしているんだろう。




全ての人に成績が配り終わられ夏休みの過ごし方などの話も終わり1学期最後のホームルームが終わった。

ホームルームが終わると俺はさっさと荷物を持って教室から出て行こうとした。

早く学校から出て行かないとまた朝の時みたいにカナに色々と言われかねない。


俺は急いで門まで走って行った。途中匠に声をかけられた気もしたがアイツより今は自分のことが大事だ。







「さてと、後はのんびりと帰るだけ」

門まで来ると俺は解放された気分になった。


「のんびりとは帰さないわよ」

前言撤回。俺は解放された気分になったつもりだった。

門を出ようとしたところ何故かカナが俺より先に門を出たところに居た。


「や、やぁカナ。こんなところで一体どうしたんだい?」

「どうしたもこうしたも綾人私が言いたいことわかってるよね?」

カナが言いたい事といえば確実に朝の事に決まっている。


「ちょっと待て。わかってはいるけどお前絶対朝のこと誤解してるからな!?」

「誤解って何?綾人がロリコン家庭教師でただあの子のために勉強を教えているんでしょ」

「それが誤解だよ!確かに里枝ちゃんのために勉強は教えているけど何で俺がロリコンになるんだよ!」

「だって綾人はあの子が好きなんでしょ!?」

やばい。こいつ根本的に何か間違っている。



このままじゃあ朝と同じになってしまう。ここはなんとかしないといけないが何も思いつかない。


「先生!」

カナをなんとかしようと考えている時前の方から俺を呼ぶ声が聞こえた。


「え?あれ、里枝ちゃん!?」

そこには制服姿をした里枝ちゃんが何故か居た。


「先生待ってましたよー」

「いや、なんで里枝ちゃんが?というか学校は?」

「授業も昨日で終わりましたし今日は午前中で終わりなんですよ。それで時間もたっぷりあるということなので先生の学校に来てみました」

そうか明日で里枝ちゃんの学校も終業式だったな。

それよりもここに里枝ちゃんが来たという事は余計めんどうなことになってしまった。


「ということで一緒に帰りましょう先生♪」

「あ、ああ。それじゃあ俺は里枝ちゃんと一緒に帰るから。じゃあなカナ」



「ちょっと待ちなさいよ!まだ話は終わってないでしょ!」

俺は里枝ちゃんの傍まで行き何もなかったように帰ろうとしたがやはり簡単にはいかなかった。


「あれ?昨日のお姉さんじゃないですか。先生の友達ですよね?」

「まぁ友達というか幼馴染かな」

「へ~そうなんですか。先生はお姉さんと何話してたんですか?」

「いやぁ、そのことなんだけど…」

「綾人がロリコンということについて話してたのよ」

「先生がロリコン?」

「おいカナ!里枝ちゃんに変な事言うなよ」

俺の言葉を耳にもせずカナは話を続けた。


「だから綾人があなたのこと好きじゃないかという疑惑があるのよ」

あ~言っちゃった。絶対これめんどいことになるな。


「先生が私の事を!?」

「それは誤解で…」

「それに朝あなたのことを熱く語っていたのよ」

本当にこいつは一体どこからどこまで誤解をしているんだろうか。


「先生そんなに私のこと好きだったんですか?」

「あの、里枝ちゃん。こいつの言ってることは聞かなくていいからね」

「先生私の事好きなら早く言ってくださいよ~♪」

「へ?」

里枝ちゃんはなぜか恥ずかしそうにもじもじしている。


「というかそういうことは二人きりの時に言ってくださいよ~」

どうしてだろう里枝ちゃんまで何か誤解をしているような気がする。


「やっぱり決まりのようね綾人!」

そう言うとカナは異様なるオーラを出しながら俺に近づいてきた。

やばい。これは冗談抜きでやばいぞ俺殺されるかも。




「ヤッホー綾人君♪」

じりじりとカナに迫って来られている時またしても聞き覚えのある声に呼ばれた。



「せ、先生!?」

里枝ちゃんの方から声が聞こえてきたのでそちらの方を見てみるといつの間にか先生が居た。


「あれ?遥さんいつの間に?」

どうやら里枝ちゃんは隣に居る先生に気付いていなかったようだ。


「ん~綾人君がそこの子に迫られてる最中にかな~」

またしても変なタイミングで現れてしまったな。

というかなんで今日に限ってこんなに集まってくるんだ。


「ところで綾人君とその隣の子は一体何をしてたのかな~?」

「えーっとそれは…」

「綾人がそこに居る子が好きでロリコンだということについての真相を今この場で聞いていました」

カナの奴が勘違いしている事を先生に伝えた。

こいつのせいでまためんどくさいことになりそうだ。


「うーん、それはないよ」

意外な事に先生は俺が里枝ちゃんが好きな事もといロリコン疑惑を否定してくれた。

やはり俺の元家庭教師だけあって頼りになる人だな。


「どうしてですか?」

「だって綾人君は私の事が好きなんだよ。里枝ちゃんのこと好きになるなんてありえないよ~」

前言撤回だ。何故こうなってしまったんだ


「ちょっ、何言ってるんですか先生!?」

「え?何か私変な事言ったかな?」

先生の顔を見る限り全然わかってないようだ。


「遥さんそれこそあり得ませんよ!先生は私の事好きって言ったらしいんですから」

「え~違うよー」

先生と里枝ちゃんは何故か言いあいを始めた。というかなんでこんなことになってしまうんだよ。


「ねぇ綾人」

「なんだ?」

「結局綾人は年上好きなの?それとも年下好きなの?」

「いや、そう聞かれてもな」

「でもでも私としてはやっぱり「同い年」がいいと思うけどね」

何故かカナは「同い年」というところをはっきりと大きな声で強調して言った。

こいつは何を言いたいんだ?


「あ、ちょっとカナちゃんだっけ?抜け駆けは禁止だよ!」

「そうです!卑怯ですよ!」

「抜け駆けって私はそういうわけじゃ」

「言い訳禁止!綾人君は私がもらうんだからね~」

「だから先生は私の事が好きなんですって!」

今度はカナを混ぜた3人で言いあいが始まった。


この泥沼状態の中にこれ以上居るのはやばい。

俺は3人で言いあっているのをチャンスに一気に走って逃げる事にした。




今回はなんとか逃げる事で助かったが次回が怖い事になりそうだ。











数日後。

里枝ちゃんの家庭教師の日で今日は珍しくお昼からの授業で俺の家での授業だ。


「なんで3人も」

何故か俺の部屋には前回の言いあいをしていた3人が来ていた。


「今日は家庭教師の日ですよ先生?」

「そうだよ~。夏休みでも少しは勉強をしないとね」

もちろん里枝ちゃんは分かる。先生も勉強を見てくれるために来てくれたなら分かるけど。


「いや、二人じゃなくてさ」

「なによ!私が来たら駄目だって言うの!?」

「駄目とは言わないけど何でお前まで居るんだよ」

「それは綾人の家庭教師ぶりを見に来たのよ」

そういえばこの前だいぶ俺の家庭教師ぶりについても心配していたな。


「そうですか。それじゃあ邪魔にならないように見ていてくれよ」

「邪魔ってなによー!」

「はいは~い、ふたりとも喧嘩しないの。綾人君も女の子には優しくしなきゃ~」

「そうですよ先生。私達のことももっと紳士的に扱ってくださいね」

そう言うと3人は顔を合わせて仲がよさそうに声をそろえ「ねー」と言った。

この様子を見ると凄く疑問になることがある。


「なんか3人とも仲良くなってないか?」

里枝ちゃんと先生は元から仲はよかったと思うがこの前は言いあいをしてぶつかり合っていたと思ったのに今日は何故だか仲が良さそうに見える。


「綾人君女の子には色々とあるのよ」

「そうですよ先生女の子は奥が深いんです」

「女の子の気持ちが分からない綾人に言ってもしょうがないだろうけど」

やっぱり仲が良くなったようだ。

この前の事で何があったかは気になるがこれ以上探らない方が身のためだしやめておこう。


「そんなことよりもそろそろ勉強始めようか」

「はい!今日は英語をよろしくお願いしますね」

「見せてもらうわよ綾人の家庭教師ぶりを」

こうしてカナを交えた勉強が始まった。





里枝ちゃんを教えている途中カナの視線が痛かったがいつもの俺なりに里枝ちゃんの勉強を見ていた。

先生の方はいつもと変わらず俺がうまく教えられなかった問題を手伝ってくれた。まぁ大半は俺の漫画を読んでいたのだが。





そして勉強開始から2時間が経った。



「まだまだね綾人」

勉強が終わり部屋で母さんが持ってきてくれたお菓子を食べているとカナが俺の家庭教師ぶりについて評価をしてきた。


「でも綾人君の家庭教師としてのレベルは最初の頃と比べるとだいぶ上がったと思うよ」

「ですね。先生の教え方本当にわかりやすいです」

2人はカナと違って俺の事をかなり良い方向に評価してくれた。


「まぁ勉強の方はアレだけど…教え方は確かによかったわ」

まさかいつもツンケンしてるカナが俺の事を褒めるとは。

これは最近流行ってるツンデレってやつなのかな?

でも褒められると素直に嬉しい。


「でも調子に乗らないでよね!勉強はまだまだなんだからね」

まぁでもやっぱりオチがあるよな。



「先生、先生!今から時間ありますか!?」

「今から?別に時間は空いてるけど」

今日は昼からの勉強だったのでまだ3時だ。それに特に予定も入ってはいなかった。


「でしたらこれからデパートへ行きましょう!」

「デパートに?何か用事があるの?」


「水着を買いに行くんですよ!!」











「先生どれがいいですか?」



俺の部屋で里枝ちゃんが言った一言によって俺は皆にデパートに連れてこられた。

普通の買い物ならよかったものの女性の水着選びとなればさすがにこの場に居づらい。

「それよりもなんでカナまでここに居るんだよ?」

「私も遥さん達と一緒に今度の旅行行く事になってるんだもん」

「はぁ?なんでお前が」

「だって男の綾人1人じゃ色々と間違いを起こしそうで心配だしだからアンタのためについて行ってあげるのよ」

間違いってなんなんだよ。というかカナが来る時点で女性3人になるから余計にめんどくさそうになりそうなんだけどな。

「なによ?なにか文句ありそうな顔ね」

「別に。なんでもないよ」

色々と言ってやりたいがこの場で言うの間なんなので言うのはやめておくとしよう。


「せんせー聞いてますか?どの水着がいいと思います?」

「綾人君これなんてどうかな?」

「綾人の好みの水着ってどれなのよ」

3人の女性から水着について聞かれてもどう返答していいのか困ってしまう。


「どれでもいいんじゃないかな」

「先生適当じゃ困りますよ~」

「そうよ!ちゃんとはっきり言いなさいよ」

そう言われても女性の水着を選ぶのなんて初めてなのでどう選べばいいのかわからない。


「それじゃあ皆で試着してみようよ~。それで綾人君に見てもらうの」

「さすが遥さんです。早速試着しましょう」

「そうですね。綾人!今度はちゃんと感想言ってよね」

そう言うと3人は水着を選んで試着室へと入って行った。

なんだろうこの3人の相手をするとなると凄く疲れるな。





「せんせー開けますよ」

「どうぞ」

まず最初に里枝ちゃんが準備できたらしい。

さて今度は感想をうまく伝えなきゃな。




「じゃーん!どうですか先生!?」

里枝ちゃんはカーテンを勢いよく開けて出てきた。

俺は出てきた里枝ちゃんを見ようとしたのだがあまり女性の水着姿と言うのは生で見慣れていないのでなかなか直視できない。



「先生ちゃんと見てくださいよ。あ、もしかして恥ずかしいんですか~?」

里枝ちゃんはニタニタと悪戯な笑みを浮かべて言った。

「そ、そんなことないさ」

俺はなんとか勇気を出して里枝ちゃんを見てみると白い水玉模様をしたスカート付きの水着を里枝ちゃんは着ていた。


「先生どうですかー?」

里枝ちゃんはスカートをチラッとめくるとスカートの下が見えそうになった。

スカートの下はもちろん水着なのだがなんだかドキドキしてしまう。

「えっと、かわいいと思うよ」

「本当ですか!?」

「ああ、うん」

「やったー!先生が褒めてくれた♪私これ買いますね!」

嬉しそうな里枝ちゃんはそう言うとカーテンを閉めた。

普通な感想だったのだが里枝ちゃんに喜んでもらえたからいいとするか。



「綾人ー着替えたらからカーテン開けるね」

「りょうかーい」

どうやら次はカナの準備ができたようだ。


俺が返事をするとカーテンを開けて水着姿のカナが出てきた。

「ど、どうかな?」


カナを見ると珍しく緊張している事が一目で分かった。まぁ男性に水着をまじまじと見られるのは誰だって恥ずかしいだろう。

それにしてもカナの奴色々と成長したんだな。特に胸の方とか。


「ちょっと綾人!どこ見てるのよ!」

カナは俺の視線を感じたのか自分の胸を手で隠した。


「お前が水着がどうかって聞いたからただ単に水着を見てるだけだろ」

「本当に?だったら早く感想言ってよね!」


危ない。危うくマジで胸の方を見ていたところがバれるところだった。

それよりもカナの水着の方だが青色のショートパンツタイプの水着だ。里枝ちゃんの水着と違って活発な女性が着ているというイメージが俺としてはあるな。


「いいんじゃないかな?カナらしい水着で似会ってると思うけど」

「私らしいってなによ!」

「いや、それはだな」

ヤバいどうやら俺の言ったカナへの水着の感想がお気にめさなかったようだ。


「でも綾人がそこまで言うならこれでもいいけど…。言っておくけど仕方なくだからね!」

そう言うとカナは勢いよくカーテンを閉めた。

お気に召さなかったと思ったのだが一体今さっきのはなんだったんだろう。



「綾人く~ん、私も準備できたから開けるね~」

先生も準備ができたようだ。

少しは女性の水着を見るのに慣れてきたのだがさて最後の先生は一体どんな水着を着ているのだろう。


そんなことを考えていると先生はカーテンを開けてその姿を現した。


「ちょっ!先生その水着!?」

「えへへ~どうかな?」

先生の水着姿姿を恥ずかしながら見ると先生は黒色の紐ビキニというなんとも目のやり場に困ってしまう姿だ。

いつもは全然感じないのだが今俺の前に居る水着姿の先生から大人の魅力というものを感じてしまう。


「綾人君恥ずかしがってないで何か言ってよ~」

「え、え~っとそのっ」

あまりにも先生の姿が衝撃的ですっかり感想を言うのを忘れていた。

というかこの先生の迫力ある水着姿どう感想言えばいいのか。


「早く早く~」

先生は目を輝かせながら俺の感想を待っているようだ。



「凄く先生に似会ってはいるんですけど…目のやり場に困るというか」

「本当に!私に似会ってる!?」

「そうですけど目のやり場に」

「よーっし綾人君を悩殺できたし私これ買うね!」

「いや、だから」

先生は俺の言っていることをほとんど聞かずにそのままカーテンを閉めた。





この後結局皆は俺に見せた水着を買っていった。

3人ともかなり満足していたようなんだけど俺の感想だけで決めてよかったんだろうかとふと思ってしまう。


水着を買った後は少しデパートの中を見て回ってからその後解散となった。


皆の水着を見ただけだったはずなのだが何故かどっと疲れが出た気がした。







3人の買い物に付き合わされての解散後の帰り道家の方へ歩いて帰っているとよく見知った顔がこちら向いて歩いて来ていた。

俺はその見知った顔に声をかけることにした。

「おーい匠」

「ん?綾人か」

匠はラフな格好をしていたのだが匠の肩には何故か大きな鞄がかかっていた。


「珍しいな匠がこんなところ歩いてるなんて。というかその大きな鞄は一体何だ?」

「お、聞きたいか?」

匠は不敵な笑みを浮かべて俺の方を見た。なんだろうこの笑みは。


「いいから早く教えろよ」

「相変わらずお前は素直じゃないな。いいだろう俺が何をしていたか教えてやろう」

そう言うと匠は肩にかけていた大きな鞄のチャックを開けて鞄から何かを取り出した。


「これを見ろ綾人!」

匠は俺の前に教科書を数冊掲げて出した。

俺は意味がわからず教科書を見てみるとその教科書には中学1年と書かれていた。

というかこの教科書最近どこかで見たような気がする。


「これがどうしたんだよ?」

「わからないのか?実はな俺一昨日から家庭教師始めたんだ」


匠はどこか誇らしげに言ったが俺はその「家庭教師」という言葉を聞いて驚いた。

というかなぜ匠が家庭教師に。


「嘘だよな?だって家庭教師のバイトって大学生以上だろ?」

「俺の母親の友達がどうしても俺に娘さんの勉強を見てほしいというお願いがあったからその依頼を受け入れたというわけだ。要するに公式的な家庭教師ではなく非公式な家庭教師だな」

こいつと俺の状況が全く一緒なんだが。

というか今さっき匠が見せてきた教科書どこかで見たと思えばアレは里枝ちゃんが学校で使っている教科書だ。

まさかこいつの教え子も中学1年生で女の子だとは。


「どうだ綾人。驚いただろう?」

「うん、そうだな」

ある意味で驚いているだけなんだけどな。


「というわけで今はその家庭教師の帰りなのさ。いやぁ俺の昔の教科書やらノートがまさか今になって役に立つとはな」

匠はそう言って肩にかけている大きな鞄をパンパンと叩いた。

なるほど。だから無駄に鞄が大きいわけだ。


「綾人は今帰りか?」

「あ、あぁ。ちょっと本屋に行っててな」

さすがに女性3人とデパートで買い物だなんて言えるわけがない。

というより特に里枝ちゃんの事はこいつに喋れるわけがない。俺が家庭教師をしているなんてこいつにまで知れたらなんて言われるか知ったもんじゃない。

まぁこいつの場合は同じ家庭教師という事で無駄な対抗意識を燃やすかもしれない。


「綾人顔色悪いが大丈夫か?」

どうやら俺が考えている事が顔に出ているようだ。

「ちょっと頭痛くなってきてさ」

「大丈夫か?熱中症かもしれんな。とりあえず早く帰ってゆっくり休めよ」

「そうするよ。それじゃあな匠」


俺は匠と別れて早歩きで家へと帰って行った。


まさか匠のやつが家庭教師になるなんて思ってもみなかった。

それよりも俺が家庭教師をやっていることをなんとしても隠し通さないといけないな。











夏休みが始まり10日ほど経った。

8月2日皆と海へ1泊2日の旅行へと行く日になった。


「先生大丈夫なんですか?」

「大丈夫大丈夫。私運転には自信があるんだよ」

先生が住んでいるアパートの駐車場のところで俺達は集まっていた。

先生の車は軽自動車の小さめの丸っこい車なのだが問題は先生の運転だ。

俺は今日の朝からそれが心配でしょうがない。


「いいじゃないですかー死んだらそれまでってことですよ」

「里枝ちゃんそれ冗談でも笑えないから」

「まぁまぁ皆乗ってよ。あ、綾人君はもちろん前の席だからね」

俺は心配しながらも先生の車へと乗り込んだ。

というかなんで俺が先生の横に座らないといけないということになっているんだろう。



「よーし!海へと出発だよ!」

こうして1泊2日の旅行が始まった。この1泊2日無事に過ごせる事はできるんだろうか。


海へ移動中の最中車内では先生がとっている旅館についての会話をしていた。


「先生旅館ってちゃんと予約とれているんですよね?」

「とれてるよ~。綾人君は心配性だね~」

「それならいいんですけど」

「ちゃんと綾人君の部屋も私たちと一緒にしてるから安心してね♪」


なんだろう今凄くおかしなことを聞いた気がする。


「ちょっと遥さんなに言ってるんですか!?」

「ん?私何か変な事言ったかな?」

「言いましたよ!何で綾人が一緒の部屋なんですか!?」

「え~だってその方が旅館代も安くなるし」

「例えそうだとしても綾人は男なんですよ!何するかわかったもんじゃないですよ」

カナの奴俺の事を何だと思っているんだ。


「でも私は全然いいですけど」

「里枝ちゃん!?」

「だって先生ってそういうこと絶対しないとおもいますし」

「そうだよ~綾人君がそんなことをするわけないじゃない」

先生に里枝ちゃんは俺の事をちゃんと信用してくれているようだ。


「それに先生だったらそんなことされても私としては悪い気しないですし」

「私も私も~」

里枝ちゃんと先生はそう言ったが明らかに問題発言だと思う。せっかく二人から信用されている事がわかって嬉しく思っていたのにこれじゃ台無しだ。


「そんなの全然よくありませんよ!」

「まぁまぁ香苗ちゃんもう予約しちゃったんだし言ってもしょうがないよ~。せっかくの旅行なんだし楽しもう」

「う、それはそうですけど」

カナは先生の説得で納得したのか乗り出していた体を引っこませ大人しく椅子に座った。

なんというかこの3人の会話に入りづらくて俺としての意見が一回も言えなかったんだけどよかったんだろうか?

というか明らかに俺は被害者だよな。


俺はそう思いながらもやはり口に出しては言えなかった。

先生の運転の邪魔をするのもいけないし何よりまた俺のどうでもいいことでの言いあいが始まるのが嫌だった。








そんなこんなでしばらく車内でとりとめのない話をして1時間半。

なんとか海に着いた。


「先生お疲れ様でした」

「うん。本当に無事海に着けてよかったよ~」

先生はだいぶ神経を使ったせいでかなり疲れたようだ。


「でも皆が居たから楽しく運転できたよ。やっぱり一人で運転しているより安心できるよ」

そう言われると一緒に乗ってよかったと思うけどめちゃめちゃ先生の運転を心配していたということは言わない方がいいだろう。



「先生海ですよ!」

「うん、綺麗だね」

海なんて本当に久しぶりだった。今までの夏は海などには行かずにプールで済ませていた。


「というか人が多いな」

海岸を見るとやはり夏真っ只中ということもあり海には家族連れや恋人同士の人たち多く来ていた。

「そんな事言ってる暇があったらさっさと荷物持って旅館に行くわよ」

カナは手際よく皆の荷物を車から出していた。

相変わらず何をするにも早い奴だ。




「それじゃあ皆いこっか~」

先生は荷物を持ち車のカギをかけた。

俺も皆と比べると少ない荷物を持って先生について行った。

3人とも背中に背負っている鞄が結構膨れ上がっているが一体何を持って来たんだろう?














先生の言った通り旅館までは少しの時間で着いた。

外側から見た旅館は普通の作りで中もそこまで変わったところはなく本当に普通といった感じの旅館だ。

まぁでもあの安い値段でこれぐらいの旅館で泊まれるのはいい方だと俺は思う。



それから旅館の女将さんが部屋まで案内をしてくれて俺達は部屋の中へと入った。



「結構いい部屋ね」

「うわぁ先生先生!ここからも海が見えますよ!」

カナと里枝ちゃんはどうやら部屋が気に入ったようだ。

部屋を見てみるとかなりの広さで窓から見える景色も良いときた。

「なんだか俺達4人にはもったいないくらいの部屋ですね」


「えへへ、3人とも気にいってくれたようだね♪」

先生は俺達3人の反応を見て喜んでいるようだ。

でも先生のおかげで良いところで1泊泊まれるのだから感謝しないとな。



「よーし!荷物も置きましたし早速海に行きましょう!」

「え、もう行くの?流石に来るまでに疲れたし少しは休んでもいいんじゃないかな?」

「善は急げですよ先生!さっさと行きましょー!」

里枝ちゃんは疲れた様子など全然なく俺の腕を無理やりに掴んで引っ張っていった。

俺としては睡眠をとりたかったんだけどな。










「遅い」

俺は海にある更衣室で着替えてから砂浜の方に行きビーチパラソルをたててしばらく皆を待っているのだが全然来ない。

というかこんな家族連れや恋人、友達同士が多い海で一人で待たされているって寂しいものだ。



「居た!おーい綾人ー」

座って待っているとカナの声が聞こえてきた。やっと皆来たようだ。

これは少しぐらい文句を言ってもいい気がする。


「ごめんね綾人君。更衣室混んじゃってて中々着替えれなかったんだよ」


文句を言おうと思ったが3人の水着姿を見て文句を言う事ができなくなった。

3人の水着を試着室で見たと今ここで見ると全然違う気がする。というかなんだか3人とも色っぽい…。

「あ、もしかして先生ったら私たちの水着姿に見とれていたんじゃないんですか?」

里枝ちゃんはにやにやしながら俺を見ているが何も返す言葉は出ず否定はできなかった。


「えっ、綾人が私の水着に!?」

「違うよ~綾人君は私の水着に見とれてたんだよ」

「なに言ってるんですか。先生は私の水着に見とれてたんです!」

3人はまた大したことないことで口論が始まった。この3人仲が良いのか悪いのかわからないな。

それよりもこの3人の口論が終わるまで待っていたらいつまでたっても海に入ることはできない。ただでさえ今は暑いというのに。



「3人とも先に海入ってるね!」

結局俺は3人を待っている事ができず海へ入って行くことにした。


「あ!綾人待ちなさいよー」

「待ってください、私も海に行きますよ」

「あーん、3人とも待ってよ~」



「うっ、冷たっ」

海に入ったのはいいが意外と水が冷たかった。

だが砂浜で汗を流していた時よりは全然ましだ。そのうちどんどん体も慣れて…



「せんせー!」

「うわっ!」

肩までつかろうとしていた時里枝ちゃんが俺の近くまで勢いよく飛び込んできた。


「きゃはは!水が気持ちいいですね♪」

里枝ちゃんはだいぶテンションが高くなっているのか笑いながらもばしゃばしゃと水と戯れていた。


「こらこら里枝ちゃんまわりの人たちの迷惑になるからゆっくり入らないと」

カナと先生はゆっくりと水の中へと入って来ていた。

先生は既に浮輪を装着した状態だが。


「はーい、わかりました」



「ねぇ綾人あそこの方まで競争しない?」

カナは70メートルほど離れている大きな岩のところを指差した。


「いいよ。でも意外と遠いけどカナは大丈夫なのか?」

「言うじゃない。昔は上手く泳げなくて泳ぎ方は私が教えてあげたのにね」

「なッ!それは昔のことだろ!」

「そうなんですか!?」

「里枝ちゃん昔のことだからね」

確かにカナには小学1年生の頃泳げなくて泣き泣き泳ぎ方を教えてもらったがカナの奴そんなことをまだ覚えているなんて。


「それじゃあちゃんと泳げるなら私に証明してみせてよ」

そう言うとカナは先に岩の方へむかって泳ぎ始めた。


「ちょっと待てよ卑怯だろ!」

続けて俺もカナに遅れながらも泳ぎ始めた。


「私も参加します!」

「私はあんまり泳げないんだから置いてかないでよ~」












「へぇ綾人やるじゃない」

「はぁ、はぁ…。お前こそな」

俺達は岩の方まで競争で泳いだのだが結局結果は同着という微妙な結果となった。

途中で抜けると思ったのがカナの奴は意外と粘るので全然抜けることができなかった。

おかげで俺は体力のほとんどを使い切ってしまった。


「それよりも驚く事は里枝ちゃんが泳ぎうまいことだね」

「そうね。しかもあまり疲れてないみたいだし」

「そんなに褒められると照れますよ~♪」

里枝ちゃんは俺達の後ろにぴったりとついて泳いでいたのにもかかわらず見た限り疲れていないようだ。




「お~い、3人とも~」

岩から少し離れた所から先生が浮輪を使って泳いできているのが見えた。

どうでもいいことなんだけど先生の浮輪を使っている姿が凄く似合っていた。


先生はやっとのことで岩の方まで来て疲れながらも岩の上に登って来た。



「全く~3人とも私は泳ぎが苦手なんだから考えてよね」

「すいません遥さんつい泳ぎに夢中になっちゃって」

「そうそう悪いのはカナであって俺は別に」

「なによ綾人全部私のせいにしないでよね!アンタだって関係してるんだから」

「いや、それもそうだけど勝負をしかけたのはカナだし…」


なんとか言い訳をしようと思ったがこのカナ相手に良いいいわけがでてこない。



「せんせービーチボールで遊びましょうよー!」

そんな状況の中いいタイミングで里枝ちゃんが声をかけてきたのだがいつの間にか里枝ちゃんはビーチボールを持って水の中へ入っていた。

確かここまで泳いでいきてた時にはビーチボールなんて持ってなかった気がするけど。


「うん、今行くよ」

でもカナとの言い争いになるより何倍もマシなので気にせずに俺は岩から飛び込んで再び水へと飛び込んで行った。


「ちょっと待ちなさいよ私も一緒に行くわよ」

「待ってよ私まだ十分に休憩できてないよ~」








この後俺達は海でビーチボールをして遊んだ。

水の中というのも関係なしで里枝ちゃんはビーチボールをいとも簡単に扱っていた。泳ぎでもそうだったが里枝ちゃんはやはり運動の方は得意の様だ。

カナの方も運動神経はよいのだが明らかにビーチボールを俺の方へむけてアタックを連続でしてきていたが嫌がらせだろうか?




そして先生の方はというと少しだけビーチボールで遊んでからビーチパラソルの方で休憩をとっていた。

今さっきからおもいっきり体を使ったからさすがに疲れたんだろう。それに長時間の運転も体にきているし。

さすがにここは気を利かすべきかもしれない。



「二人ともごめん。俺も疲れたから少しパラソルのほうで休んでるよ」

「わかりました。それじゃあ香苗さんタイマンですよ」

「いいわよ。どこからでもかかってきなさい!」









「先生大丈夫ですか?」

「綾人君いらっしゃい。私の方は全然心配ないよ」

先生の様子を見る限りどうやら疲れは多少とれたようだ。


「綾人君飲み物いる?」

「はい、いただきます」

そう言うと先生は隣に置いていた190gほどの缶ジュースを渡してくれた。

俺はかなり喉がかわいていたということと小さめの缶ジュースということもあり一気に飲み干すことができた。


「ごちそうさまでした」

俺は飲みほしたスポーツドリンクをシートの上に置いた。

先生の方を見てみると先生は俺の飲みほしたスポーツドリンクを見て何故かニヤニヤしていた。


「飲んだね綾人君?」

「えぇ飲みましたけど。というかどうしたんですかそんなにニヤニヤして」

「実はねそのスポーツドリンク私の飲みかけなんだよ」

「別にそれがどうし…」

飲みかけぐらい大したことないと思ったが途中で俺は重大なことに気づいてしまった。


「つまり綾人君と間接キスをしたってことだよ♪」

先生は楽しそうにそう言ったが俺としては何とも言えない。


「綾人君と間接キスか~♪」

「あの、先生はいいんですか?」

「え、何が?」

「俺と間接キスをしたことですよ」

「なに言ってるの!?綾人君と間接キスだよ!勿論嬉しい事じゃない♪」

先生はやはりどこか嬉しそうだ。

今考えるとこの飲みかけの缶ジュースを渡してきた先生は明らかに最初から仕掛けていたんじゃないか…。


いや、深く考えるのはやめるとしよう。


それにたかが間接キス程度の事だ。こんなの小学生でもするだろう。


それよりもこのままテンションの高い先生を放っておくのは危険だし話題を変えなければ。



「先生この後の事ですけど海から帰ったら風呂ですよね?」

「そうだよ。ここの温泉って結構体にいいらしいよ~。楽しみだな♪」

俺はなんとか適当に今後の予定の事を聞いた。

それにしてもあの安い値段の旅館で温泉付きとはやはりいいとこだな。


「あ、そうだ!綾人君一緒にお風呂入らない?あそこの温泉混浴の時間帯があるらしいよ!」

「なに言ってるんですか!?入るわけないじゃないですか!」

「えーつまらないよ~。ねぇ一緒に入ろうよ~」

先生は急に駄々をこね始めた。

まさか適当に話題を変えたつもりだったのだがこんな地雷があるなんて。


「だから駄目ですって。そもそも混浴ってことは他のお客さんも入ってくるかもしれないんですよ?」

「う~、それは嫌だな…。私の裸は綾人君だけのものだし」

この人の言ってる意味がわからない。というかいつもの冗談だろうけど。


「しょうがないなぁ混浴は我慢するかぁ。でもいつかは一緒にお風呂入るんだからね!」

「はは…」

もうここまでくると苦笑いをするしかなかった。


「せんせー何の話してるんですか?」

先生と話していると里枝ちゃんがカナと共にやってきた。


「あ、この後のことについて話してただけだよ。里枝ちゃん達も休憩?」

「はい。ちょっとお腹すいちゃって」

「ねぇ綾人そろそろお昼にしない。とっくに12時過ぎてるし」

俺はカナに言われて時計を見てみるといつの間にか12時を過ぎていた。ここに来てから結構遊んでいたしな。


「そうだね。それじゃあご飯にしようか」




この後俺達は海の家の方に行ってお昼の御飯を食べることにした。

海の家はかなりの人で昼飯を食べるまでにだいぶ時間がかかってしまった。



昼飯を食べて海の家を出たころには既に2時になっており海の家だけで1時間以上は居たことになる。


海の家を出た後はまたしばらく俺達は海で遊んでいた。

俺も最初の方は泳いだり3人で遊んでいたりしたのだが後からは車にずっと乗っていたことと午前かなり遊んだという疲れでパラソルの方で休んでいた。

俺以外の3人は飽きずにずっと遊んでいたが3人の体力には本当に驚かされる。





4時過ぎになると俺達は更衣室で簡単に着替えてから海を離れ旅館の方に戻って行った。

まだ風呂に入る時間には早いと思うが疲れを癒したいのと海の潮で体中まだ少しべたべたしているということでさっさと風呂に入ることにした。

当たり前なのだがもちろん混浴ではない。




「ふぅ、疲れた…」

さすがは温泉。やはり家の風呂と比べると全然温泉の方が良い。

温泉といっても普通の温泉よりも何倍も小さいがこの宿の値段でこれぐらいの温泉なら十分の広さだと思う。


「それにしても誰も居ないな」

温泉に入る時間が早かったせいか風呂には誰も居なかった。

宿では宿泊しているであろうお客さんを何人か見たのだがやっぱりこの時間じゃ誰も入ってこないか。





「おーい綾人くーん」

風呂に使っていると突然横の女子風呂から俺を呼ぶ声が聞こえた。この声は先生だな。


「どうしたんですか?」

他の客も居ないということで俺は少し声を張って答えた。


「ううん、これといって用事はないんだけどね。そっちは誰も居ないの?」

「はい。俺以外は居ませんね」

「そうなんだ~。あ、そうだ綾人君聞いて聞いて!カナちゃんの胸って大きいんだよー!」

「遥さんなに言ってるんですか!?」

今さっきの先生の発言を元に女子風呂の方ではカナと先生がわいわいと騒いでいるようだ。

幼馴染のカナの胸なんて今まで興味はなかったけれどそう言われると普通よりは大きい方だと思う。

まぁカナの事を言っている先生の胸もなかなかなものだと思うが


「羨ましいですよ二人とも。私なんか全然なのに」

「大丈夫よ里枝ちゃん。里枝ちゃんはまだまだ若いんだからこれからだよ」

「うんうん~。里枝ちゃんもおっきくなるよ♪」


女子風呂では胸の話だけで大分盛り上がっているようだけど隣に居る俺まで声が聞こえている事を考えてほしい。



俺はなんだかこっちにひとりだけで居るのが空しくなってきたのでさっさと出ることにした。


「それで綾人君はどれくらいの胸のサイズが好きなのかな?」

「先生はきっと控えめなサイズの方が好きに決まってますよ」

「綾人は少し大きめな方が好みだったはず…」


風呂から出て行く時もまだまだ女子風呂では話が盛り上がっていた。








風呂から出て俺は半袖のシャツにジャージという簡単な服装に着替えて部屋に戻って行った。

部屋に戻ったのはいいが特にすることはないのでとりあえず俺は皆が出てくるまでテレビをみていることにした。



途中料理が部屋に持ち運ばれてきた。なべ料理や刺身などもありまさか料理まで豪華だとは思わなかった。

最初はあまり気乗りしなかったが今日は温泉も入れたし料理もおいしそうで今日は来たかいがあったかもしれない。


40分後。

「お待たせ~綾人君」

先生たちはようやく部屋に戻ってきた。まさかあの話題だけでここまで長い時間風呂に入ってたわけじゃないよな?


「先生私の浴衣姿どうですか!似会ってます?」

よく見てみると3人とも浴衣姿だった。水着姿に続き浴衣姿とは。

今日は皆のあまり見れない姿をかなり見ている事になるな。


「うん。似会ってるよ」

「やったー!さすが先生わかってますね♪」

海とあまり変わらない評価をしたんだけど本人が喜んでるならそれでいいか。


「それにしても綾人は浴衣着てないんだね」

「ああ。いつものこっちの方が落ち着くしな」

それに浴衣は帯があるのでめんどくさいということが嫌だった。


「ねぇねぇ皆そろそろご飯食べよ~。私お腹ぺこぺこだよ」

「そうですね。それじゃあ頂きましょうか」

俺達はそれぞれの料理が用意されている席に座った。


「じゃあ号令はリーダーである私が言うね」

「お願いします遥さん」

「うん!それではみなさん御一緒に~」


「「いただきまーす」」









料理の方は見た目だけではなく味の方もしっかりと良く満足だった。

量もかなりあって途中お腹いっぱいになったのだが残ったものは先生が食べてくれた。

今思えば先生ってかなり食べるんだよな。家に家庭教師で来てた時も母さんが作ってくれていた料理もかなりの量を食べていたし今日の海の家でもめちゃめちゃ食べていた記憶がある。

それだけ食ってこのプロポーションを維持しているってある意味凄いよな。




「さてと料理も食べたことだし少しだけ頭を回転させますか!皆アレ持ってきた?」

「持ってきましたよ」

先生が言った「アレ」というのは夏休みの宿題のことだ。

先生は今回皆の勉強を見てくれるらしい。宿題を全くやってない俺にとっては凄く助かる。


「せんせー私はこの前の数学のテキストの続きからしますね」

「うん。わからないところがあったら聞いてね」

「そうそう。なんせ今回は綾人以外にも助っ人がいるから私たちにも聞いてね里枝ちゃん」

「はい!お願いしますね香苗さん、遥さん」

里枝ちゃんはこの前の家庭教師の授業の時にやっていた数学の続きをやり始めた。

里枝ちゃんも一生懸命やってるんだから俺もちゃんとやらないとな。

俺も数学のテキストをすることにした。


「あー!綾人全然テキスト進んでないじゃない!?」

カナは俺の他の国語と英語のテキストを開いて勝手に見ていた。


「お、おぃ勝手に見るなよ」

「綾人もう8月なんだよ。まさか1つもテキスト終わってないなんて」

「そう言ってもまだ8月入ったばかりじゃないか。まだ夏休み終了まで全然余裕あるしこれからだよ」

「去年も綾人は同じこと言って結局は夏休み終わりまでやらなかったじゃない」

うっ…結構痛いところついてきたな。確かに俺は夏休みの宿題は後回しするほうだ。

去年の夏休みは先生に来てもらっていたが受験があるということで夏休みの宿題じゃなくて受験用の問題ばかりをやっていたしな。


「それでも今年こそはちゃんと…」

「絶対やらないわね!」

「はいはい二人とも言い争ってる場合じゃないよ~。綾人君は私が教えてあげるから香苗ちゃんは自分の宿題を進めようね」

先生が間に入ってくれたおかげでなんとか俺は助かったがカナはまだどこか納得していなようだった。


「香苗ちゃんもわからないところがあったら私に聞いてね」

「はい。でも私宿題もう全部終わってるので自分で買ってきた問題集やりますね」

「里枝ちゃんはもう宿題終わってるんだ!?こうなったら綾人君も負けてられないね!」

カナのやつもう宿題終わったのか。やはり俺に言うだけあってちゃんとしてるな。


まぁ今は自分の宿題だ。なんとか今日で数学のテキスト半分は終わらせておきたい。







こうして勉強会が始まった。里枝ちゃんは必死に数学のテキストを解いていっていた。

途中何問か分からない問題があり俺に聞いてこようとしたのだがカナが教えようとした俺を阻止してカナがが里枝ちゃんに勉強を教えていた。

逆に俺の方は先生が横に付きっきりで居たので難しい問題があった時は先生がわかりやすく教えてくれた。

教えてくれるのは凄くありがたく助かったのだが俺も家庭教師としてのメンツがあるので少し恥ずかしかった。


こうして3時間ほど勉強会は続いた。



「皆お疲れ様~」

「疲れた…。まさかここまで勉強する羽目になるとは」

「常日頃から勉強をしない綾人が悪いんだよ」

人がここまで頑張ったというのにカナの奴はお疲れ様の一言も言わないのか。相変わらずひねくれた奴だ。


「先生は頑張ってましたよ!さすが私の先生です」

里枝ちゃんはやっぱりいい子だ。こんないい子が俺の生徒でよかった。

でも、生徒に褒められるって先生としてどうなんだろう…。


「後は寝るだけだね~。それじゃあ皆布団引こうか」

もう寝る時間か。時計をみるといつの間にか時間は11時を過ぎたところになっていた。

俺は時間を確認した後重大な事を思い出した。


「あの、俺もやっぱりここで寝るんですか?

「当然だよ。綾人君と一夜を共に過ごすんだよ♪」

やっぱりか。まぁここ以外で寝れる場所なんてないしな。

それよりも先生の言った事少し違和感があるのだが。



「変な気は起こさないでよね綾人」

「起こす訳ないだろ!」

カナの奴俺の事本気で信じてないようだ。教え子も居るというのにそんな事するはずないのに。






こうして俺達は布団を敷いた後電気を消して就寝することになった。

ちなみにそれぞれの布団の配置は俺がドアに近い端の方でその左横には先生、里枝ちゃん、カナという順で布団を敷いてある。




俺は疲れたのでさっさと寝ようと目を瞑った。







だが、そう簡単には眠れない。なんだろういつもと枕が違うせいで眠れないのかな?

それとも女性と同じ部屋で寝るという事が初めてだから眠れないのか?


いやいや!そんな事考えている暇があったらさっさと眠ってしまおう。








1時間後。

眠れない。こんなに今日は疲れたというのに眠れない。

俺の左側で寝ている3人は俺の気持ちなんてわからずにとっくに寝ているだろうな。

あぁ、こう起きているとまたお腹が空いてきたなぁ…。




俺が眠れずそんなことを考えていると俺の左隣からもぞもぞと動いている音が聞こえた。

先生が寝がえりをうっているのかな?



「う~ん、綾人く~ん」

先生が寝がえりをうっているだけかと思っていたが何故か先生は寝言を言いながら俺の布団の中まで潜り込んできた。

この人寝ぼけている…。



「ちょっ!先生何してるんですか!?」

布団の中まで潜って来た先生の方を揺さぶってを起こそうとしたが中々起きない。

というか先生は余計に俺の方に近づいてきて俺の体にしがみついてしまった。


やばい。先生の体からはシャンプーの匂いであろういい匂いがしてさらにあの柔らかな膨らみが俺の体に当たっている。

俺の理性が吹っ飛ばないうちになんとかしないと!


俺は何とかして先生を起こそうと頬を叩いたり頬を引っ張ったり揺さぶったりして様々な方法をしたのだが全く起きない。

こんなことされたら普通は起きるだろうが思ったより先生の眠りが深いことせいか全く起きる気配すらない。



やばい…。このメンバーの場合朝になった時は物凄い勘違いされそうだ。

そうなったらめんどうなことになりそうだし諦めずに先生を起こさないと…。

















「きゃあああぁっ!!」

突如俺の頭に甲高い悲鳴が聞こえた。


「なっ、なんだ!?」

俺はその悲鳴を聞くと驚いて体を起こした。


体を起こして前を見てみると浴衣姿のカナが何故か口元に手を押さえ驚いたような顔でこちらを見ていた。


「どうしたんだよそんなに悲鳴なんかあげて?」

「綾人、何してるのよ…」

「は?」

俺はカナに言われたことがよく意味がわからなかった。

ただカナの目線が俺の方じゃなく俺の少し横を向いていたのでその目線を追ってみると俺は重大な事を思い出した。



カナの目線の先には少し浴衣がはだけている先生が眠っていた。

そういえば深夜に先生が寝ぼけて俺の布団に潜りこんできたんだった。

その後俺はなんとか先生を起こそうと思ったが全く起きずにお手上げの状態だったんだ。

しかもその後疲れて俺は眠ってしまったんだな。

あれだけ勘違いされるからなんとかしようと思ってたのにまさか想像通りの事になりそうだなんて。


いや、今は考えているよりカナをなんとかしないと。

本当の事を言ったらカナだってわかってくれるはずだ。


「あの、カナさん。見て分かる通り先生が俺の布団に入って来たんだよ?だから俺は悪くないからな」

「まさか綾人が年上好きだったなんて…」

カナの奴はいきなり意味のわからない事を言い始めた。てっきり勘違いをして暴力をしてくるかと思ったのだが。


「でもでも!綾人はロリコンだって疑惑があるし…」

いや、どっちみちこいつはなにか勘違いをしているようだ。


「なぁ、カナ。お前なんか凄い勘違いをしてないか?」

「勘違いってなによ!綾人が遥さんと一緒に寝ているのが悪いんでしょ!?」

うわぁいきなり怒りだしたし。こうなるとだいぶめんどくさいぞ。



「ん~、綾人君と香苗ちゃん朝から何してるの?」

カナともめていると今回の一番の原因の先生が眠たそうに起きてきた。


「先生助けてくださいよ!というか事情をカナに説明してください!」

俺は必死に先生に頼み込んだ。こうなると一番の原因になっている先生が説明してくれないとどうもなる気がしない。


「どういうこと?ん、アレ?私なんで綾人君の布団に?」

先生は今さら俺の布団に居る事を気づいたようだ。というか今さら気づいたらもう説明なんてできないだろうな。


「だから先生が俺の布団に寝ぼけて潜りこんできたんですよ」

「ああ、そうなんだ。だから夢の中で綾人君に夜這いをしようとする夢を見たんだ!ん~もう少しだったんだけどでも凄く寝心地よかったんだよね♪」

この人はどんな夢を見てるんだ。


「遥さん!夜這いってどういうことですか!?」

「ちょっと待てカナ!先生は夢だって言っただろ」

「え?夜這いって言ってもどちらかというと私が綾人君を襲おうとしていたかな」

「そ、そんな…。二人がそんなところまでいってただなんて」

カナはどうしてかその場にうなだれた。というかこいつどうしてこんなに勘違いするのかな?


「あれ?香苗ちゃんどうしちゃったの?」

「先生。カナがこうなったらしばらく時間がかかりますから放っておきましょう。それより里枝ちゃんも起こして朝食にしましょう」

「そうだね。それじゃあ私が里枝ちゃんを起こすね」

「はい。それじゃあついでに俺はトイレの方で着替えてますので先生たちも着替えてください。着替えが終わったら呼んでください」


俺は自分の服を持ってトイレの方で着替えることにした。

朝から妙に大変だったけど今日は帰るだけだしゆっくりとしよう。






その後俺達は着替えを済ませ朝食を食べた。

朝食を食べてからはもう帰るだけとなったので部屋に戻って俺達は帰る準備をすることにした。




「あれ、カナは?」

「香苗さんなら1階のお土産屋さんへ行きましたよ」

この旅館お土産まで売ってたのか。俺も一応親の分のお土産を買っておこうかな。


「時間もまだあるし俺もお土産見てくるね」

「わかりました。私は帰る準備してますね」







1階のお土産屋に来るとそこにはお土産を見ているカナがいた。


「お土産決まったか?」

俺はカナに近づいて話しかけてみたのだがカナはどこか俺を警戒しているように距離をあけた。


「まだ怒ってるのかよ」

「別に怒ってるわけじゃないわよ。ただ綾人がまた変な気を起こさないか用心してるだけ」

完全にカナの勘違いだな。なんとかカナの誤解を解きたいんだけどな…。


「あっ」

俺がどう誤解を解くか考えているといきなりカナは小さな声を出した。

何かと思い俺はカナの視線の先を見てみるとそこにはストラップがあった。


「星砂ストラップ?カナこれほしいのか」

「べ、別に!変わったものだから見てただけだよ」

確かに星砂のストラップってあまり見ないな。

そう言うとカナは逃げるようにお菓子のお土産の方を見だした。

でも明らかにカナの奴ほしそうな顔してた気がするけど。


全く素直じゃないんだから。

俺はカナが見ていたストラップを持ってレジの方へむかった。







「ほら、やるよ」

「え?」

土産屋を出たところで俺は今さっき買ってきた星砂のストラップをカナに渡した。


「な、なんで綾人がこのストラップを私に?」

「お前ほしがってただろ」

「でも、ただではもらえないわよ」

「いいじゃないかそんなに高いもんじゃないし。それに朝のお詫びってことでもあるし」

お詫びと言っても明らかにあれはカナの誤解なんだけどな。


「そっかお詫びか…。そういうことなら貰ってあげてもいいわよ!」

「まぁ大事にしてくれよ」

「わかってるわよ。えへへ♪」

ツンツンしていたカナが油断したのかストラップを見て喜んでいるような笑顔をしていた。

こいつも素直に笑っていたら可愛いんだけどな。

なんにしてもカナの機嫌がよくなってくれてよかった。








部屋に戻ると先生たちも帰る準備ができたらしく俺達は旅館を出ることにした。



旅館を出て車を置いている駐車場まで来ると先生は何故かカメラを取り出した。


「先生カメラなんか取り出してどうしたんですか?」

「せっかくだから皆で写真撮ろうと思ってね♪ここからだと海も丁度バックで写るし」

「おっ遥さんナイス提案です!是非取りましょう」

「うん。それじゃあ皆並んで並んで~」

先生がそう言うと何故か里枝ちゃんは俺を真ん中の位置にに連れてきた。


「里枝ちゃん何で俺が真ん中に?」

「いいじゃないですか♪それより先生腕貸してください」

「腕?」

俺は左側の腕を出すと里枝ちゃんは自分の腕を俺に絡みつけてきた。


「ちょっ!里枝ちゃん!?」

「えへへ、思い出ですよ~♪」

「綾人!なにニヤけてるのよ!?」

別にニヤけているつもりはないのだが。どちらかというと里枝ちゃんの体から感じられる軟かな膨らみが俺の腕に当たっている事で俺はどうすればいいのか困っている。


「スイッチ押したよー。私も私もー」

先生は走ってこちら側に移動してきた。そして先生は俺の余っている右側の腕をとり自分の腕を絡みつけてきた。


「ちょっと先生まで!?」

「えへへ~私もだよ~」

「綾人!!」


カナが怒ってこっちにつかみかかってこようとした瞬間カメラのシャッター音が鳴った。




この後車に乗り込んでカナにまたしても説教を食らったが俺は疲れの方があったのでカナの説教を聞きながら車の中では寝ていた。

運転している先生には悪かったが俺は昨日今日の疲れが溜まっていてかなり眠りが深かった。



まぁ色々とトラブルがあって疲れた旅行ではあったがそれ以上に楽しさもあった。

また来れる機会があったらこのメンバーで来てもいいなと思う。



今度は何もトラブルがないことを祈るけど。

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