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期末テスト

里枝ちゃんの家庭教師になってから早1か月ほど経った。

なんとか今まではマイペースで教えてあげられることができたけど今からはちょっとマイペースでは厳しいかもしれない。

なぜなら…



「せんせー期末テストですよー。テストとかありえませんよー」

そう期末テストだ。里枝ちゃんの中学校は後10日ほどで期末テストが始まる。


「気持ちはわかるよ。俺も期末テストまでもう少しだし」

同じく俺の高校も期末テストまでもう少しとなっている。というか俺の方はテスト始まるまで残り丁度1週間だ。

俺の方も勉強はしないといけないがやはり家庭教師としては自分の教え子のテストもそれ以上に大切だ。


「あ~テストとかなくなればいいのにー」

全く一緒の気持ちだ。自分で言うのもなんだけど本当にこの子は俺と似ているところがある。



「でも期末テストまでまだ時間はあるんだし頑張って勉強しようよ。里枝ちゃんだって勉強頑張ってるしなんとかなるさ」

「そうですね~。先生がそこまで言ってくれるなら頑張れる気がします。それじゃあ今日は数学をお願いします!」

里枝ちゃんは少しやる気を取り戻してくれたらしい。これは俺も気合いを入れて教えてやらないとな。




里枝ちゃんに数学のテスト範囲を聞いて大体テストに出そうな問題を教科書から抜粋してその問題を一通りやってもらうことにした。

俺は里枝ちゃんが問題をを解いている間に自分の勉強をすることにした。少しでもやっておかないと次こそは赤点を取りかねない。





俺は学校の先生からもらった数学のテスト用のプリントをやり始めた。







やり始めたのだが…たった3問目の計算問題でペンは止まってしまった。



やばい、全然わからない…。というかこんな問題習ったっけ?


最近中学の頃の問題集ばっかりやってて全然高校の勉強しなかったこともあるがその里枝ちゃんに教える勉強のため夜遅くまで勉強してて学校の授業中に寝ていたのも悪いと思う。



俺は完全に頭の中がこんがらがってしまった。




「先生どうしたんですか?」

里枝ちゃんは俺の様子がおかしいことに気付いたのか声をかけてきた。


「あ、いやなんでもないよ。なんでも!それより問題終わった?」

「はい!終わりましたよ。今回は結構自信があります!」

俺は里枝ちゃんからノートを受け取ると答え合わせをしてあげることにした。


里枝ちゃんの問題を答え合わせをしてあげて見ていると最初教えていた頃よりも確実に数学はできている。

なによりちゃんと数式も書いて答えを導き出せれている。



「里枝ちゃん凄いじゃないかほとんど正解だよ。これなら期末テストもいけるんじゃないか?」

「えへへ~。照れますよせんせー♪」

簡単な方の計算問題とはいえ10問中9問正解は凄いと思う。本当に里枝ちゃんはできるようになったんだな。

教えた側の俺も里枝ちゃんが数学が少しはできるようになったことは嬉しい限りだ。



それに引き換え今の俺は。


「里枝ちゃん、次はこの問題やってもらおうかな」

「うわぁ、この問題ですか。私苦手だけどやってみます!」

里枝ちゃんは今さっきの問題がよくできていたのが嬉しかったのか調子を上げて早速問題にとりかかった。



俺も里枝ちゃんがやっている内にさっきできなかった問題をとばして他の問題にとりかかる事にした。





とりかかったはずなのだが、やはり問題を見た限りどれもわからない。

これは本気でヤバすぎる…。期末テストは赤点をとるかもしれない。

いや、赤点をとれば夏季補習がある。さすがに夏休みにわざわざ学校へ行って勉強をしたくない。



これはなんとかしなければ。




「あのぅ、先生?やっぱり具合悪いんじゃないんですか?」

里枝ちゃんは再び俺を心配してくれて声をかけてきてくれた。どうやらまたしても俺はそのような困った顔をしていたようだ。


「いやいや、全然大丈夫だよ!それより問題できた?」

「はい!なんとかできましたよ」


俺は里枝ちゃんから再びノートを受け取った。


とにかく今は自分の事は置いておいて里枝ちゃんの勉強に集中しよう。俺の勉強の事は帰ってからだ。

俺は自分にそう言い聞かせて答え合わせをすることにした。












「やばい、やばいぞ…。なんとかしないと」

夜、俺は自分の部屋のベッドで悶えていた。

まさか自分がここまで数学ができなくなっていたとは。


ちゃんと里枝ちゃんに教えてあげる勉強と両立して自分の勉強をしておくべきだった…。

今さら後悔しても仕方ないけど。

そんなことよりこの数学をどうすればいい?他の教科はなんとか教科書やプリントを見たらなんとかなるけど数学は無理がある。



ここはいっそカナや匠に教えてもらうか?



いや、それはないよな。

カナは今の俺のこの状況を見ると確実に怒って話しにならないだろう。匠にいたっては言ってる事が難しすぎて何を喋っているのかわからなくなってくるし…。


やっぱりこの方法は駄目だ。せめてまともな人が居てくれたら。




この数学をどうするかと悩みに悩んでいた時突然携帯が鳴った。こんな時間に一体誰だ?

携帯の画面を見ると「遠藤遥」と表示されていた。


「もしもし」

俺はあまり気が進まなかったが先生からの電話に出た。まぁこの人の場合電話に出なかったらしつこくかけ続けるし。


「綾人君、ごめんね~こんな時間に」

「別に大丈夫ですけど。それよりどうしたんですか?」

「んーちょっと心配な事があってね」

「心配な事?」

なんだろう。先生が心配ごとあるなんて珍しいな。



「綾人君の勉強の事なんだけど」

「勉強?勉強ならちゃんと里枝ちゃんに今日も教えましたよ」

「あ、里枝ちゃんのことじゃなくて綾人君の高校の勉強の事だよ」

「俺のですか?」

「うん。里枝ちゃんの勉強のことばっかりで綾人君は自分のテスト勉強の方大丈夫なのかなぁって思ってね~」

わざわざ心配してくれてたのか。少しだけ変な人だけど本当に優しいんだよな。

でも悪いけど先生が心配してくれてるように全然勉強の方はやばい。


「あの、実はですね…」


俺は今の勉強のやばさを先生に伝えることにした。





「へ~それはかなりやばいねぇ」

「もうやばいっていうレベルじゃないんですけどね。もう1週間しかないし」

「だったら私が綾人君の勉強教えてあげるよ!」

「え、先生が?」

「うん。綾人君が中学生の時みたいに教えてあげるよ。もちろん里枝ちゃんの家庭教師が無い日にでも」

確かにこの人なら勉強をちゃんと教えてくれるだろう。

少し変な人だけどそこだけ目を瞑ってさえいれば何も問題ない。


「先生。また家庭教師お願いできますか?」

「任せてよ!あ~久しぶりに綾人君に教えられるのか~。楽しみだな♪」

勉強を教えるだけなのにそんなに楽しみなのか?


「あ、綾人君。一つだけ言っておくけどお金とか取らないから安心してね」

「え?でも家庭教師してもらうんだし」

「そんなのはいいよ。私は好きでするわけだしね」

まぁこの人がこれぐらい言ってくれるわけだし無理には言わないけどさすがにお茶菓子ぐらいは出そう。


「わかりました。では早速明日俺の学校が終わり次第お願いできますか?」

「うん、わかったよ」

「学校が終わり次第電話しますので。それじゃあ先生おやすみなさい」

「おやすみー」

俺は電話を切った。

結構長い事話してしまったな。まぁ毎回この人と電話をするときは長くなるけど




とにかく数学の対策はできた。後は先生から勉強を教えてもらうだけだ









そして次の日。


「なんで先生がここに居るんですか?」

「な~にいってるの綾人くん?昨日約束したじゃない」

学校が終わりすぐに家に帰って来た俺が目にしたものは俺の部屋のベッドで寝転がってえらくくつろいでいた先生の姿だった。


確かに先生の言った通りだけど俺は学校が終わり次第先生に電話をすると言ったはずなんだけど。


「そうですけど。先生はどれくらい前から来てたんですか?」

「んー、30分ぐらい前かな?」

結構前から俺の部屋に居たのか。というか中学の頃もこんな感じだったな。


「それより綾人君早速勉強始めようか!今は時間が惜しいからね」

それもそうだ。先生が早くに俺の部屋に来て何かしていたかを考えるのじゃなくて今はテストだけのことを考えないと。



「そうですね。じゃあよろしくお願いします」

こうして久しぶりの俺が教えられる方の家庭教師が始まった。









「綾人君そこは代入してだね~」

始まったのはいいんだけどやはり数学は難しい。

俺って本当にここまで数学できなかったとは。


「あ、こうですね」

だが、本当に先生の教え方が良いおかげで見事に問題は解けていっている。

やはりこの人は家庭教師の先輩として本当に尊敬できる。




「よくできましたー!よーし問題が解けたご褒美に先生がちゅーしてあげるよ♪」

「結構です」

尊敬できるのはこのおかしいところを除いたらの話だけど。



「相変わらず綾人君はノリが悪いんだから~」

「ノリが悪いとか悪くないとかの話じゃないですから。それより次の問題お願いします」

今は一分一秒でも時間が惜しい。とにかく今は赤点をとらないもとい夏休みの補習なんか受けないためにも問題をひたすらやるしかない。








この後も俺は先生に教えられながら大量の数学の問題を解いていった。











「お疲れ様ー綾人君」

「先生こそお疲れ様です」

時刻は7時半。

時間にもなったので今日の家庭教師は終わり今は母さんが部屋に先生と俺の分のご飯を持ってきたので食事中だ。


「先生ありがとうございました。先生のおかげでだいぶ数学の問題解けるようになりました」

正確にいえば「解けるようになったと思う」だけど。

でも、最初と比べると数段マシになったと思う。


「あはは~私は少し手伝っただけだよ。綾人君の飲みこみが早いからできたんだよ」

先生は少し照れながらも否定しているが本当にこの人のおかげなんだけどな。


「謙遜しないで下さいよ。それより後少しだけ教科書の方残っているのでこれはまた明後日お願いできますか?」

「任せてよ!先生綾人君のためならなんでもやるよ!」

先生はご飯を食べながらも気合いを入れた。

気合いを入れることは全然かまわないがご飯粒を口につけたまま気合いを入れられても締りがないな。


「先生ご飯粒ついてますよ」

「えっ、あらら~私ったら」

「ちょっと待ってくださいね」


俺はテーブル越しに体を先生の方に乗り出して腕を伸ばし先生の口についているご飯粒をつまみそのつまんだご飯粒をぱくっと自分の口の中に入れた。


「先生ご飯はゆっくり食べましょうよ…ってあれ?先生どうしたんですか?」

先生を見るとなぜか先生は顔を下に向けて凄く震えている。


「あ、ああ、綾人君。い、い、一体な、何を」

先生は下に向けていた顔をやっと上げてこっちを見たのだが今さっきの先生の顔と比べてみると明らかに顔色が赤いような。


「一体何をって先生の口にご飯がついてたからとっただけなんですけど?先生ってば早くごはん食べるから口の周りにご飯粒がつくんですよ」


「とっただけって!?ううん、もしかしたら綾人君はわかっててやってるだけかも」

先生は何故かぶつぶつと一人で喋りだした。


「先生何言ってるんですか?」

「え?あ、大したことないよ。先生はいつでも綾人君を受け止める準備はできてるよ」

意味がわからない。どうしたらこんな話になるんだろう。


「先生よくわからないんですけど。それより先生も明日学校ですし早く帰らなくて大丈夫なんですか?」

「あ、そうだった!レポートがまだあったんだ!急がなくちゃ」

そう言うと先生は急いで残りのご飯をしっかりと食べていった。



「それじゃあ綾人君また明後日ね。先生が居なくて寂しがってちゃ駄目だぞ♪」

「いや、全然大丈夫ですから。またよろしくお願いします」

俺は軽く先生の冗談を受け流して今日は先生と別れた。











俺の数学のテストまでの日は里枝ちゃんの家庭教師と先生からの家庭教師の交互で勉強をがんばった。

里枝ちゃんの家庭教師の時は1日だけ先生が来てくれたので俺の分の勉強と里枝ちゃんの分の勉強を教えてくれたので本当に助かった。

今回のことでやはり家庭教師の先輩である先生が居てくれたのは本当にありがたいと思った。







そして俺は里枝ちゃんのテストより一足早くテストをむかえテスト3日目で数学のテストを迎えた。

先生から勉強を教わる前はまずこのテストの問題は全然解けなかっただろうが先生に教えてもらったおかげでなんとか問題は解けることができた。

たった数日でここまでできるようになったのも驚きだ。まぁほとんどのテスト勉強をこの数学に回したことも正解だったようだ。




「おーい綾人」

数学のテストが終わり3時間目で終わったのでさっさと帰ろうと支度をしていたら匠が声をかけてきた。

たぶんテストのことを聞いてくるだろう。


「どっかで昼飯でも食べていかねぇか?」

俺が思っていたテストの事ではなく珍しく普通の事だった。


「別にいいけどお前から誘ってくるなんて珍しいな。なんかあったのか?」

「そうか?だが何かあったと言われると今さっきの数学のテストだな。俺的には全部できたつもりだったが最後のあの集合の問題なかなかめんどくさかったな。だがなんとか答えを導きだせたけどな」

やはりテスト絡みか。聞いただけなんか損だったな。


「まぁお前の自慢話はまた後で聞いてやるから早く行こう。俺は数学のテストからやっと解放されて腹減ってるし」

「自慢じゃないさ。そうだな昼時になれば客も増えるしさっさと行くとするか」

俺と匠は鞄を持って教室から出て行った。





玄関を出て校門の方へ向かっていると俺はよく見知った顔を見つけた。


「なんであの人が?」

俺は校門の方を見てみると最近よく会う顔の人がそこには居た。

その人は俺のことに気付いたのか手を振って声をかけてきた。


「おーい、綾人君。こっちこっちー!」

なぜかそこには私服姿の先生が居た。


「ん?綾人知り合いか?」

「いやぁ、知り合いと言えば知り合いなんだけど…」

参った。匠になんて言えばいいだろうか。正直に言ったらなんだかめんどくさいことになりそうだし。


「悪い匠。今日の昼飯のことはまたということで」

「え、ちょっと待てよ」

俺は匠にそう言って逃げるように先生の元へと走って行った。






「綾人君お疲れ様~」

先生の元へ行くと先生は呑気な声で喋りかけてきたが学校の人たちの視線が結構痛い。

あれだけ大きな声で俺の事を呼んだこともあり注目されている。


「先生ちょっとこっちへ」

俺は先生の手をとり校門から出て行った。








校門から出て少し学校から離れたところで俺は一旦足を止めて先生に何故学校に居るか聞いてみる事にした。


「あの、なんで先生が学校に?」

「んふふ~、そんなことより~綾人君って大胆だねぇ♪皆の前で私の手しっかりと握るなんて~」

「あっ!」

俺は校門からここまでの間に先生の手をずっとつないでいる事をすっかり忘れていた。


「わわっ、すいません!」

俺は先生と繋いでいた手をやっと離した。


「ええー!私としてはもっと繋いでたいんだけどな~」

「いや、そういうわけには。というかそんなことより本題からだいぶ遠ざかってますって!」

この人のペースに合わせると本当におかしくなってしまう。


「だから先生はなんで学校に来てたんですか!?」

「ん~綾人君の数学のテストが気になってね。だからいてもたっても居られなくなって来ちゃいました!」

「来ちゃいましたって、先生大学の授業の方大丈夫だったんですか?」

「大丈夫!綾人君の事とたった1限の講義なんかと比べると綾人君の方が断然大切だから!」

気持ちは嬉しいのだがそれはサボったということだろうな。


「ところで綾人君数学の方はどうだったの?」

「とりあえず赤点は確実に回避する事ができました。先生のおかげでなんとかなりそうです」

「本当に!?さっすが綾人君!」

「ちょっ、先生!?」

先生はかなり上機嫌のように俺の頭を撫でてきた。


「恥ずかしいのでやめてくださいって!というか子ども扱いしないでくださいよ」

俺の頭を撫でていた先生の腕を俺は振り払った。


「え~子ども扱いなんかしてないよ~。私はちゃんと綾人君の事一人の男性として見てるよ」

そう言うと先生は何故か俺にウインクをしてきた。

子ども扱いをしてくれてないのは助かるが何故か先生の言った言葉に引っかかるな。



「そんなことよりも~綾人君赤点を回避できたっていうのなら夏休みの補習もないってことだよね?」

「まぁ回避できたかは結果を見ないとなんとも言えないんですけどたぶん大丈夫と思います」

「そうだよね~。それじゃあ夏休みは旅行に行こう!」

「え?どういうことですか?」

俺はこの人のいきなりの発言の意味がわからなかった。


「そのままの意味だよ。綾人君と私とそれに里枝ちゃんとで旅行行くんだよ!いい案でしょ~」

いつの間にか里枝ちゃんまで巻き添えになってるし。


「いや、里枝ちゃんに許可をとらないと。それに旅行って言っても一体どこへ?」

「大丈夫!里枝ちゃんには昨日の内に許可取ったから。それと目的地は海だよ!やっぱり夏といえば海だよねぇ♪」

先生はかなりテンションが高くなっている。そのテンションが高いところ申し訳ないのだがさすがに旅行に女性2人と男性1人の俺が行くのはどうかと思う。


「あの、先生悪いんですが俺…」

「あっ、いっけない!次の講義色々と準備あるんだった!ごめんね綾人君。この旅行の話はまた今度ねー」

先生は慌ただしく走って行ってしまった。

結局俺の言いたい事は何も聞いてもらえなかったがあの人は人の都合を考えた事なんかあるのだろうか?







「海楽しみです!ね、先生」

俺の数学のテストが終わってもまだまだ俺は安心していられない。まだ自分のテストがあと1日残っているし明後日からは里枝ちゃんのテストが始まる。

ここで里枝ちゃんの点数が落ちたりしたら俺としては家庭教師クビになってしまうかもしれない。さすがに家庭教師に少しずつ慣れてきたのにクビは嫌だし何よりバイト代がなくなるのも痛い。

でもやっぱり里枝ちゃんの成績を上げてあげられないのはもっと嫌だ。


だが里枝ちゃんは俺のそんな考えを全然察してないように今日のお昼に先生と話していた海の話を俺にしていた。


「里枝ちゃんその前にテストがあるからね。その成績次第では行けないかもしれないんだよ」

「大丈夫ですよ。私は先生の力を借りているんですよ?悪い点数なんかとるわけないじゃないですかー」

そこまで俺の事を信じてくれているのは嬉しいけど逆にプレッシャーがかかる。



「それじゃあ海行けるように最後までがんばろう!」

「はい、お願いします!」

俺としては海に行く事は微妙なんだがここまで俺のことを信頼してくれている里枝ちゃんにはなんとしても良い点数をとってもらわないと困る。







里枝ちゃんのテスト期間が始まると同時に俺のテストは終わった。

俺のテストはまぁ結果が出ないとなんとも言えないが里枝ちゃんのテスト期間中3日間は里枝ちゃんのお母さんの頼みで家庭教師を毎日することになった。

里枝ちゃんはテスト期間中はだいぶお疲れの様だったが先生が差し入れなどをもって来てくれたりしたのでなんとか一緒に勉強をがんばることができた。









そして里枝ちゃんのテスト最終日俺は家庭教師の日ではないが里枝ちゃんの家へと来ていた。


「いらっしゃ~い綾人君」

「先生こんにちは!」

里枝ちゃんの部屋に入ると里枝ちゃんのベッドで転がって自分の家のようにくつろいでいる先生と相変わらず元気な里枝ちゃんが居た。

そう何故今日里枝ちゃんの家へ来たかと言うと先生から呼び出しがかかったからである。


俺はいつものようにテーブルの里枝ちゃんと対面になる座布団があるところに座った。


「里枝ちゃん今日のテストできた?」

「数学は中間の時よりも手応えがあったと思います。国語と家庭科は完璧にできましたよ!」

数学は俺と一緒で里枝ちゃんの苦手な教科だったから凄く心配していた。だが里枝ちゃんの今の笑顔と今の言葉で安心した。

それに里枝ちゃんの得意な国語と家庭科もできたようでよかった。

昨日勉強教えている時はほとんど数学に時間を使っていたから国語ができなかったのでそちらの方も心配していたんだよな。


「そっか。それじゃあテスト返却される時が楽しみだね」

「はい!テストが返却されたら先生に一番に見せますね♪」

とにかく里枝ちゃんのテストは終わったけどまだ気は抜いちゃいけない。テストが返ってくるまでが本番みたいなものだし。


「里枝ちゃんのテストも気になるけど今は綾人君だね。綾人君例のものはもってきてくれたかな?」

「はい、持ってきましたよ」

俺は先生に言われて例のものを鞄から取り出した。


「どうぞ、これが全部です」

そう言うと俺は先生に紙を数枚手渡した。先生は紙を受け取るとじっくりとその紙を眺めだした。

同時に里枝ちゃんも俺が先生に渡した紙を見始めた。


そう、この紙というのはこの前やった俺の期末テストのテスト用紙である。

つい先日学校でテストの結果が返って来たのだがそのことを先生は知っていたのかテストを今日持ってきてというので俺は持って来たのである。


「凄いよ綾人君!数学ちゃんとできてるじゃない!」

先生は嬉しそうに数学のテスト用紙を見ながら言った。


「先生のおかげですよ」

この数学のテストなんと俺は89点という高得点を取る事ができた。

たった10日ほど前までは数学が全然できなくて相当焦っていたというのに先生の教えを受けただけでまさかここまでの点数が取れるとは思わなかった。


「さすが私の先生ですね!」

里枝ちゃんは目を輝かせながら俺の事を見つめてきた。

なんていうか本当に先生に教えを受けて勉強してよかったと改めて思う。


「ん~国語、現代社会、情報はまだいいとしてもその他の教科はもうちょっと勉強した方がいいかもね」

「面目ない」

先生の言うとおりだ。今回のテストほとんど数学に勉強をまわしたこともあり他の教科があまり勉強できなかった。

特に数学の次に苦手な理科と英語は赤点じゃないとしても46点、52点という家庭教師ではありえない点数を取ってしまっている。


「先生大丈夫ですよ中間テストの私と大して点数変わりませんし気にすることありませんよ。なんだったら家庭科私が教えましょうか?」

これは喜んでいい事なんだろうか?

「あはは…ありがとう里枝ちゃん。その時は頼むよ」

「そうそう里枝ちゃんの言うとおり気にすることないよ。数学だってこんなにできたんだから!また次がんばればいいんだからね♪」

先生は全く怒らずに優しく諭してくれた。


「ありがとうございます。次こそは他の教科もがんばります」

次回の2学期の中間テストは今よりももっと先生に喜んでもらいたい。


「さて、綾人君のテストも見終わったしご褒美をあげないとね」

「え?ご褒美って俺別にテストの点よかったわけじゃないですし」

「そんなことないよ。私が教えた数学があそこまでできてたんだから」

「確かに数学はできましたけど別に褒美って大げさな…」

「いいからいいから!ほら綾人君外に行くよ。それに里枝ちゃんも」

先生は俺の手を取ってなぜか部屋を出て外の方に向かっていった。






「ジャジャーン!これなーんだ?」

外に出て里枝ちゃん家の裏庭の方に行くと先生はあるものを指差してそう言った。


「原付、ですか?」

「せーいかい♪どうどうこの原付」

丸型ライトで少し短めのグリップで白色のスクータータイプの原付だ。本などで原付を見たりするけどこのタイプはあまり見たことない。昔のものなのかな?


「結構綺麗ですしいい原付だと思いますけどこれって里枝ちゃんのお父さんかお母さんの?」

「いえ違いますよ。私も初めて見ました」

里枝ちゃん家の裏庭に原付はあるのに里枝ちゃんの両親のものではないとしたら一体誰のだ?


「ふたりとも~その原付は私のものだよ」

「え、遥さんのなんですか」

「なんで先生のがここにあるんですか?」

「原付置くところがなかったから仕方なく裏庭にまわってここに置いたんだよ~」

それって勝手に置いたってことじゃないんだろうか。


「それにしても先生原付なんて持ってたんですね。ということは今日は乗ってここまで来たってことですか」

中学の頃先生はいつも俺の家まで自転車で来ていたので原付なんか持っているとは思わなかったな。


「ううん。私原付苦手だから押して持ってきたよ」

「押して持って来たって相当大変なんじゃ。というかだったらなんで原付なんか持って来たんですか?」

「だから~綾人君にご褒美あげようと思って持って来たんだよ」

「ご褒美ってまさか」

「うん。数学をがんばったご褒美にこの原付綾人君にあげるよ♪」

先生は笑顔で言ってくれたが俺としてはかなり驚いている。


「よかったじゃないですか先生」

「いやいや原付だよ!?ご褒美って言ってもちょっと値が高すぎますって!もらえませんよ!」

「大丈夫だよ~この原付元々私が伯父さんからもらったものだしお金は問題ないよ」

「でも伯父さんは俺にあげること知らないんですよね?だったらさすがにそれは」

「あ、それも大丈夫だよ伯父さんに許可取ってるから」

なんて完璧な人なんだこの人は。


「私伯父さんからもらったはいいんだけど全然乗らなくて自転車ばかり乗ってたしね。今は車だってあるし」

「だからって言っても原付もらうのは…」

「それにね私としてはやっぱり乗らないまま家に置いておくより誰か知り合いの人に乗ってもらう方が私としてはいいと思うんだよね。だから私は綾人君に乗ってほしいな」

こんな高価なもの普通だったらもらえないだろうがここまで先生が言うならば俺としては貰わないわけにもいかなくなってきた。


「わかりました。先生ありがたくこの原付貰います」

「うん。この子可愛がってあげてね~」

俺は改めて先生から今譲り受けた原付を改めて見るとやはり全然綺麗な原付だとわかる。

メーターのところを見ても全然乗ってないという事がわかる。


「先生乗ってみてくださいよ!」

「色々手続きとかしなくちゃならないけどこの裏庭ならちょっと乗るくらいなら大丈夫だね。綾人君乗ってみて」

ふたりは軽くそう言うが手続きの前提に俺はまだやってないことがある。




「あの、俺まだ免許持ってませんよ」

俺は16歳にこの前なったのだがまだ免許を取りに行ってない。そもそも原付を買う予定していたので原付を買うお金が貯まってから免許も取りにいこうとしていた。

なのでまだ原付の乗り方がいまいちわからない。


「綾人君明日休みだよね?」

「はい。明日土曜日だし休みですよ」

「よーし、それなら早速原付免許取得のための勉強をしよう!それで明日免許取りに行こう」

「えっ、そんないきなり!?」

「大丈夫大丈夫。原付の免許なんて1日勉強したら取れるっていうし問題ないよ。それじゃ綾人君の家行くよ!ということでまたね里枝ちゃん」

「ちょっ、先生待ってくださいって。そ、それじゃあまたね里枝ちゃん!」

「先生頑張ってくださいね。原付はまた免許取れたときにでも引き取りに来てくれていいですからー」

裏庭から出る時ぎりぎりで里枝ちゃんに別れを告げると俺は強引にまたしても先生にひきずれられるようにして里枝ちゃんの家を出て行った。




テストが終わって安心できたと思えたのだがまた少し忙しくなりそうだ。



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