先生と生徒
金曜日。週3回の家庭教師の1週間での最後の日だ。
ちなみに家庭教師として今日が3回目の授業だ。
俺は時間もギリギリなので急いで自転車に乗り学校から家に帰ろうとしていた。
「綾人!」
校門を出ようとしたところで誰かに呼びとめられた。
声が聞こえた方に振り返ってみるとそこには女子高生の平均的な身長でそして長い黒髪を揺らしながらよく見知った女性が走って来ていた。
「どうしたんだよカナ?」
「どうしたんだよじゃないでしょ!綾人今日日直でしょ、日誌先生に提出するの忘れてるんじゃない!」
こいつは小野寺香苗。俺とは幼馴染…というより腐れ縁だ。こいつのことは香苗を略して「カナ」と呼んでいる。
どうやらカナは今日日直の俺の役割の日誌を持ってきてくれたようだ。
「あーごめん。それお前が出しといてくれ」
「なに言ってるのよ!なんで他のクラスの私がやらないといけないのよ!日直は綾人でしょ」
「外せない用事があるんだよ。今度何か奢るから!それじゃ頼んだよ」
「あっ!待ちなさいよ!」
俺は逃げるように自転車を漕いで家へと帰って行った。
「全く、いつも綾人はこうなんだから」
昔っから適当というか、中途半端というか…。
「大変だな小野寺」
「あ、二条」
校門のところに居ると綾人の友達の二条匠がやってきた。どうやら今さっきの私と綾人の友達の掛け合いを見ていたようだ。
「綾人の奴最近忙しそうにしてるけどなんかあったのか?」
「さぁ?私は何も聞いてないけど…」
そういえば最近綾人授業中も寝てるし、夜遅くまでなにかしているのかな?
「もしかしたら綾人のやつ中間テストでショック受けてたし夜遅くまで勉強でもしてるのかもな」
「綾人が勉強!?ないない!それは絶対ないから。中学の時は家庭教師が居て真面目にやってたようだけど高校になった今の綾人が勉強だなんて考えられないし!」
「それもそうだな。さすが綾人の幼馴染だな。よく綾人のことわかってるじゃないか!いや、夫婦と言ってもおかしくはないか!」
「誰が夫婦よ!」
二条が変な事を言ってきたので殴ろうと思ったが二条は既に校門を出てかなり離れた距離に居た。
「甘いな、小野寺よ!そんなことより日誌ちゃんと提出しろよー」
二条は遠くからそう言うと歩いて帰って行った。
なんだか余計に疲れてしまった。そんなことより綾人と私が夫婦なんてありえない!!というか幼馴染だけでも疲れるというのに…。
でも、夫婦とか言われても悪い気はしなかったな…。
「こんにちはー」
「あ、先生入って来てください」
俺は里枝ちゃんの家もとい部屋の前まで来ていた。
さすがに女性の部屋ということもありまずはノックをして返事を聞いてから中へと入って行った。
まだ3回目と言う事もあるがどうも女性の部屋ということもあり少し緊張してしまう。
「先生何か疲れてませんか?」
「え、そうかな?」
まぁ確かに学校終わるのが4時で家庭教師の時間まで1時間しかない。
帰って急いで準備などしていても結構時間がかかってしまう。
それに今日はカナのせいで結構時間を食ってしまった…。
「そうですよ。顔を見ればわかりますよ」
この子かなり俺のこと見抜けるようだな…。
「そうだ!先生さえよければ家庭教師の日の3日のうちの1日だけ先生の家で勉強しませんか?」
「え、俺の家で?」
「はい!我ながら良い考えだと思うんですけどどうですか!?」
なんだろう、この光景ついこの前見たような気がするんだが…。
でも確かに里枝ちゃんの言っている通りそうしてもらえるとこっちも少しは楽になるかも。
「じゃあ月曜日にお願いできるかな?」
「はい!任せてください。あ、でもお母さんに言っとかないとなぁ。先生に週3で料理作るとか言ってウキウキしてたからなぁ」
「あはは、そうなんだ…」
余計な気も使わなくて済むからよかったかもしれない。
そして一通り喋ってから俺と里枝ちゃんは勉強を開始することにした。
今回は里枝ちゃんの英語の宿題を見てあげることにした。
中1の英語はまだ簡単なほうで比較的教えやすく単語を中心に教えてあげた。
「thisとthatってどういう意味でしたっけ?」
「thisが「これ」でthatが「あれ」だよ」
「お~さすが先生ですね」
まぁこれぐらいの問題が高校生の俺ができなければ家庭教師として、いや高校生として失格なのかもしれないけど…。
この後も休憩も10分ほど入れてまた英語を再開した。
この家庭教師3回目で里枝ちゃんについてわかったことは俺と違って集中力が凄いということだ。
俺が中学の頃家庭教師に習って居た時は時間などをちらちらと気にしたりたまに別のことを考えて集中にかけていたりしていたが里枝ちゃんに限っては全くその様子はない。
だけど問題は俺が居ない時にどれぐらいの集中力が続いているのかだけど…。
「里枝ちゃんのお母さんって料理うまいよね」
「そんなことないですよー」
7時になり今日の分の勉強が終了し里枝ちゃんのお母さんがまた俺の分までの料理を持ってきてくれ今は里枝ちゃんと一緒に食事中。今日のメニューはから揚げだ。
「それにしても先生って本当に勉強の教え方上手ですよね!学校の先生と比べるとよっぽど先生の教え方の方が上手ですよ」
「あはは、ありがとう。でも、この教え方ただ単に真似してるだけなんだよ」
「真似、ですか?」
「うん。俺も中学の頃家庭教師に教えてもらってたんだよ。その時の家庭教師の先生の教え方を真似している感じだね」
「先生も家庭教師雇っていたんですね!」
「ああ。といっても今の俺みたいに中途半端な高校生の家庭教師じゃなくてちゃんとしたアルバイトの大学生の家庭教師だったよ」
普通のアルバイトの家庭教師だと基本教えるのは大学生からだし、時給もいいだろう。
今の俺は例外みたいなものだけど。
「そうなんですかぁ。ね、先生。その家庭教師の人は男の人だったんですか女の人だったんですか?」
なぜか家庭教師の性別を聞いてきた里枝ちゃんはどこか期待の眼差しを俺にむけていた。
「えっと、女性だったけど」
「女の先生だったんですか!どんな人でした?」
急に里枝ちゃんはどうしたんだろう?かなり俺の元家庭教師の先生について食いついてきているけど
「そうだな。やっぱり頭のいい人だった、それに教え方も上手だったし」
里枝ちゃんにはあの先生が少し変なところがあるとは言わなかった。余計に食いついてきそうだし。
でも、変なところがあったといっても俺はあの人に感謝している。勉強を教えてくれたことと椿原高校へと合格を導いてくれた事に。
「だったら、先生と一緒ですね」
「え。どういうこと?」
「頭が良くて、教え方が上手って今の先生と一緒だということですよ」
「そんな。俺は別に頭も良くないし教え方だってまだまだだよ」
「謙遜しないでくださいよぉ、せんせぇ」
そう言うと里枝ちゃんは俺をにたにたと笑いならがら見てきた。
さすがにここまで評価されると照れてしまう。
「え、えっと、ごちそうさま!遅くなってきたしそろそろ帰るね!それじゃあまた今度ね里枝ちゃん」
俺は恥ずかしくなって急いで食べた皿をもって部屋から出て行った。
「先生ったら照れちゃって~」
部屋から出ていく間際こんな声が聞こえた。
全く一応先生で年上というのにからかって…。
俺は里枝ちゃんのお母さんに晩御飯のお礼を言ってから柳瀬家をあとにした。
帰り道。俺は携帯を見ながら歩いて帰って行った。
里枝ちゃんの家に行ってから携帯を見ていなかったのでメールがきているのに気づいていなかった。
メールは1件来ていたがカナからで「日誌出したわよ。今度の奢りの時は覚悟しておきなさいよね!」という内容だった。
俺はあえて返信するのをやめた。メールを返信したとしても俺の運命は変わらないと諦めたからだ…。
「だーれだっ!」
「わわっ…!」
携帯をつついてると急に俺の視界は真っ暗になった。
どうやら誰かが俺の目を両手で押さえているようだ。
「誰かな、誰かな~♪」
俺の目を押さえている人物はかなりノリノリのようだ。
このノリ、そしてこの聞きなれた声の持ち主はひとりしかいない。
「先生でしょ?」
「えへへ、せ~いか~い」
そう言うと俺の目を押さえていた人物はやっと俺を解放してくれた。
「やっぱり先生か…」
「ひっさしぶりだね、綾人君!」
そこには茶色味がかかった髪でカナよりは少しばかり短いぐらいの髪の長さをしてぱっちりとした目が特徴的な女性が居た。
この人が俺の元家庭教師の遠藤遥である。
「それにしてもー、私はもう綾人君の家庭教師じゃないんだから「遥」って名前で呼んでよ~」
「いや、それは。まぁでも俺にとってはいつまでも先生ですから」
「うーん、それは嬉しい事なのか悲しい事なのか微妙なところだなぁ。でも綾人君がそう言うなら先生で我慢するけど」
「ところで先生はこんなところで何してるんですか?」
「お腹すいたから久しぶりに綾人君の家でも行こうかなぁって思ってね~」
やっぱり、この人はいつも急なんだよな。
「最近は大学の授業とかサークル、セミナーとかで全然綾人君の家に行けてなかったからねぇ。綾人君のお母さんの料理が恋しくなっちゃって。それに綾人君にも会えると思ってぇ」
1か月ほど来てなかった理由はそういうことか。でも、母さんの料理が恋しくなったってのはまだわかるけど俺の事は冗談にも過ぎるだろう。
「そうですか。まぁ別に家に来てもらって全然いいですけど」
「本当に!?さっすが綾人君は優しいなぁ」
そう言うと先生は俺の腕に自分の腕を絡みつけてきた。
「ちょっと何やってるんですか先生!」
「いいじゃんいいじゃん。久しぶりのスキンシップだよ♪」
それにしてもただでさえ先生は胸結構あるっていうのにこんなに密着されたら。
いや、余計なことは考えないようにしよう…。
「それじゃあ綾人君の家にレッツゴー!」
先生は俺の腕に自分の腕を絡みつけたまま歩き出した。
歩いている間先生はずっと上機嫌だった。
「やっぱり綾人君のお母さんの料理は最高ですね!」
「そうかしら?ふふ、どんどん食べちゃっていいわよ」
「はい!どんどん食べちゃいます!」
母さんは自分の料理が褒められたのが嬉しいのか次々と先生に料理を出している。
その次々と出されている料理を先生は凄い勢いで食べていっている。
なんというかこの光景を見るのは久しぶりだな。
「やっぱり先生の食べっぷりを見るとなんだかこっちも幸せになるわぁ。あ、そうだ!綾人、将来は先生と結婚しちゃいなさい!」
「はぁ!?」
「先生だったら綾人の事を任せられるし何の心配もないし、こっちは最高だわ」
「ちょっ、何言ってるんだよ…」
「お義母さん!素晴らしい考えです!私でさえよければ綾人君と結婚させてください!!」
やばい、めんどうな事になってきた。それに今先生が言った「お義母さん」っておかしいだろう…。
ここは逃げるが勝ちだな。
俺は母さんと先生が盛り上がって喋っている中自分の部屋へ戻る事にした。
自分の部屋に戻ってベッドに寝転んだがさすがに眠くなく風呂も入ってないので寝る気になれなかった。
先生が居るうちに風呂に入ると絶対あの人は余計なことをしてくるはずだ。
そんなことよりも俺は里枝ちゃんに教える数学の復習をしておかなければならないことを思いだした。
俺は自分の机に座り中1の数学を復習することにした。
「おーい、綾人く~ん」
教科書を開き問題にとりかかろうとシャーペンを持った時ノックもせずに先生が俺の部屋へと入って来た。
「あの、先生ノックぐらいは」
「いいじゃなぁい、綾人君と先生の仲でしょ?ところで綾人君は何してるの?」
先生は俺に近づいて来て教科書を覗き込んできた。
「ん?中学1年生の教科書…。あ、そうか!綾人君、家庭教師始めたんだったね」
「まぁ先生みたいに正式な家庭教師ではありませんけど…。ていうかなんで俺が家庭教師始めた事先生が知ってるんですか?」
「綾人君のお母さんが教えてくれたんだよ」
あのお喋りの母さんめ…。
「家庭教師かぁ。なんだか懐かしいな」
なんだか先生は深々と懐かしがっている。
「そういえば先生って今は家庭教師してないんですよね?なんでやらないんですか?」
先生は俺が中学を卒業したと同時に家庭教師を辞めている。正直この頭のいい人が家庭教師を辞めるのはもったいない気がする。
「えー、綾人君以外の子を教えちゃうとなんだか私浮気しちゃうみたいじゃない?だから辞めたの」
「いや、浮気って言われても…」
相変わらずこの人の考えがわからない。たったそれだけのことで家庭教師を辞めちゃったのか。
「それに目的のもの買えちゃったしね~」
「目的のもの?」
「車だよー。家庭教師やってる時の給料貯めて買ったんだよ」
そういえば俺に勉強を教えてくれている時に車の免許取りに行ってるとか言ってたな。
「へぇ。それじゃあ免許も取れたんですね」
「うん!いや~普通の勉強と違って色々と苦労したよ~。これで綾人君とドライブデートができるね!」
笑顔で言っているがこの人の冗談にはわざわざ付き合ってられないな。
俺も早く16歳になったら原付の免許でも取りに行くか。
「そんなことより~、綾人君のお母さんから聞いたよ。綾人君が教えている子って女の子なんでしょ?どんな子なの?」
本当になんでも喋る母親だな…。
「どんな子って言われても中学1年生の子ですけど」
「そんなことじゃなくてー、どんな女の子かって事だよ」
先生は今さっきよりも俺との距離を縮めて近づいてきた。というかなんか迫力が凄い。
「いや、だから普通の子ですって」
「可愛いとか、綺麗だとか思わないの?」
「別にそう言う事は思っていませんよ」
「それならよし!」
先生は何に納得したのかわからないが俺からやっと離れてくれた。
本当にこの人の相手をしていると疲れる。
「そうだ綾人君。久しぶりに私が勉強教えてあげようか!?」
「え、今からですか?」
「うん!綾人君のお母さんにはお料理いっぱいいただいっちゃったしね。それに私としても久しぶりに綾人君に勉強教えてあげたくなっちゃった」
先生ってこういうところは本当に律儀なんだよな。
でも、丁度いいかもしれない。結構中1の数学や英語で忘れたところが何個もあるから教えてもらうとしよう。
「それじゃあお願いします」
「うん。お願いされちゃいます!」
こうして先生と久しぶりの家庭教師…いや、勉強会をすることとなった。
先生に教えてもらっている中でやはり俺みたいな中途半端な家庭教師と比べるとレベルが全然違うことを教えられた。
先生は勉強ができるだけではなく教え方なども本当に素晴らしかった。
すぐには先生の家庭教師ぶりには追いつけないと俺は実感するのだった。
6月半ば。今日は里枝ちゃんが初めて家に来て勉強をする日だ。
正直俺の部屋に女性が来る事はあまりないので少々緊張している。まぁカナと先生は除くけど。
というわけで俺は昨日の家に掃除は済ませた。これなら普通に勉強ができるはずだ。
部屋の最終チェックをしていると階段の下から母さんの声が聞こえた。どうやら里枝ちゃんが来たようだ。
勉強開始するまであと20分ほどあるけどだいぶ早く家に来たな…。
まぁ早く開始して早く終わるのもいいかもしれないな。
「先生、里枝で~す。入ってもいいですか?」
少ししてからノックをして里枝ちゃんがドア越しに喋って来た。
「うん。いいよ」
俺が返事をすると里枝ちゃんはドアを開けて入って来た。里枝ちゃんの今日の服装は学校の制服だ。
「わぁ。先生の部屋って綺麗なんですね!」
「いや、ちょっとは掃除したけどね」
「でも、本当に綺麗ですよー。私も見習わなくちゃ」
里枝ちゃんの部屋も十分綺麗だと思うんだけどな。でも、ここまで褒めてもらえたんなら掃除した甲斐はあったな。
「さーてと恒例のアレをしますか!」
里枝ちゃんは握りこぶしを作り、いきなり気合いをいれた。
「おっ、気合入ってるね。勉強にそんなにやる気がある里枝ちゃんなんて珍しいね」
「せんせー違いますよ~。私がそんなに勉強に気合い入れるわけないじゃないですか。恒例のアレですよ」
勉強は違ったのか。でも恒例のアレと言われても全くわからない。
「わからないんだけど。里枝ちゃんアレってなんのこと?」
「えー!先生本当にわからないんですか!?アレっていうのは大人の本の事ですよ!」
大人の本って…。遠まわしにHな本ということか。
「それがどうしたんだ?」
「捜索タイムです。さぁ先生覚悟はいいですかー?」
「待て待て!何言ってるんだよ!というか里枝ちゃんが今日早く家に来た理由ってまさかそれのことで?」
「そうですよー。私楽しみにしてたんですから!」
楽しみにされても困るのだが…。だけどまさか里枝ちゃんがそんな行動をとるとは。
そんなことよりこの場はマジでやばい。さすがに俺も健全な男子高校生だ。そんな本は何冊かは持っている。
それを教え子に見られたらこの先やっていけない
「里枝ちゃんそんなことより勉強しよう!そろそろ期末テストも近づいてきてる頃じゃないか」
「いえいえ、まだ勉強の開始時間までだいぶあります。それまで捜索させてください!」
「ちょっ、待ってって!」
里枝ちゃんは勝手に俺の机の引き出しを開け始めた。
これはやばい!というか俺のプライバシーはないのか!
「やっほー綾人君」
里枝ちゃんを何としてもやめさせようとした時何故かドアを開けて先生が入って来た。
「先生!?」
「え、誰ですか?」
何でこの人がここに?里枝ちゃんは探るのを中断して先生を見た。
「この子が綾人君の生徒さんか~」
そう言うと先生は里枝ちゃんの近くまで行ってじろじろと観察し始めた。
「あの、先生。一体何を?」
「ん~、これは危険ね。可愛いわ…」
里枝ちゃんを見て先生は何故か唸っている。何をしたいんだ?
「先生。この人誰なんですか?」
里枝ちゃんはさすがに見られてるのに耐えられなかったのか口を開いた。
「あぁ、この人は…」
「初めまして!私は綾人君の元家庭教師の遠藤遥です。よろしくね♪」
「あ、この人が先生が言っていた優秀な家庭教師!」
優秀だけど少し「変」ね。
「私は今先生に勉強を教えてもらっている柳瀬里枝です。よろしくお願いします。え~っと、遥さん!」
「うんうん、元気があっていい子ね。礼儀もしっかりとしてるし」
どうやらふたりは自己紹介が終わったようだ。
少し落ち着いたようなので今さっきからずっと気になっている疑問を先生に聞いてみるとするか。
「先生、何でここに居るんですか?」
「綾人君の教え子を見るためにここまで来たんだよ~。でも、まさかここまで可愛い子だなんて。綾人君が心配だよ」
この人はわざわざそんなことのためにここまで来たのか。
「あ、それともう一つ」
「もう一つ?」
「この前、綾人君のお母さんに頼まれて、しばらく綾人君の家庭教師の補佐を頼まれたんだよ」
「補佐ってどういうことですか?」
「ようするに新米家庭教師の綾人君のお手伝いをするってことだよ」
お手伝いって…。母さん俺には何も言ってなかったんだけど。
「だから、綾人君安心していいよ!里枝ちゃんに教えるのは綾人君だけどもし綾人君が間違ったこと教えてたり里枝ちゃんに変な気を起しそうになったら私が止めるから!」
間違った事を正してくれるのは嬉しいけど、別に変な気を起こすつもりはない。
でも、先生が助けてくれるのは正直力強い。
「わかりました。それじゃあ先生お願いします」
「任されたよ~。里枝ちゃんもよろしくね」
「はい!よろしくお願いします遥さん」
「じゃあ挨拶も終わったし勉強を始めるとしますか。里枝ちゃん、先生」
「そうですね。でもまだ終わってない事がありますよ」
「終わってないこと?」
「はい!お宝捜索です!」
まだ覚えていたとは…。
「お宝捜索って?」
「実は先生の部屋にあるすこーし大人な本を探してまして」
「ちょ、里枝ちゃんその話はもういいでしょ!」
「ああ!綾人君のお宝本ね。私綾人君のお宝本のあるところ知ってるよ~」
「知ってるんですか!?教えてください遥さん!」
なんで先生が俺のお宝本の場所を…。
そういえば中学の時何故か俺よりいつも早く部屋に来てたよな。もしかしてその時…。
いや、今はそんな事を考えている場合じゃない!
「ちょっと待ってくれよー!」
「あ、それは教えられないよ~」
「え?なんでですか?」
「だってーやっぱりそれは綾人君と私とのふたりだけの秘密にしておきたいし~。だからごめんね里枝ちゃん」
「そんなー。私もその秘密知りたいですよー」
里枝ちゃんはお宝本の在り処を聞けなかっただけでだいぶショックを受けているがなんとか先生のおかげで助かった。先生のお宝本の場所を言わない理由の言い方はどうかと思ったが…。
「でも、私は諦めません!いつか先生のお宝本を見つけ出します!」
頼むから変なところだけ気合いを入れないでほしい。
「うん。がんばって里枝ちゃん!そしてその目で綾人君がどんなプレイが好みか確かめて!」
この人もプレイとか余計なことを…。
「そんなことより時間もとっくに来てるし勉強始めるよ!」
俺は早くこの話題を終わらせたかったのでさっさと勉強を始めることにした。
この時点で20分は勉強開始時間過ぎてるし…。
この後やっと勉強を俺たちは開始した。
今日は先生も居るので里枝ちゃんへの勉強の教え方などを多少気にしながらやった。
俺がわからない問題が多少あったので里枝ちゃんが問題を解いている間こっそりと先生に問題のやり方を聞いたりした。
こういう時は本当に先生が居てくれることが助かる。
先生は先生で俺が先生を呼ぶ時以外は自分の大学の課題をやったり里枝ちゃんの教科書を眺めていたりと意外と真面目にしていた。
勉強の時は尊敬できる人なんだけどそれ以外はなぁ…と思ってしまったのは秘密だ。
なんとか俺たちは約2時間今日も勉強を終えた。今日はかなり疲れた気がするけど…。
「んー、綾人君なかなかの家庭教師ぶりだったねぇ」
勉強が終わった後先生は母さんの料理を食べながら今日の俺の家庭教師としての感想を言った。
「そうですかね?俺としてはまだまだだと思うんですけど」
「そんなことないですよ!私は先生の緩い感じの教え方素晴らしいと思います!」
緩い感じって…。俺の授業そういう感じに思われていたのか。
「でも、もう少し綾人君が中学生の基礎をやったらもっといい感じに教えられるかもね」
やっぱりか。まぁこれは俺の勉強不足のせいだしなんとか中学の勉強をやり直さねば…。
「だけど心配しないで綾人君!私が綾人君に教えてあげるから!だから安心してね」
「はは…。ありがとうございます」
ありがたいけどさすがに補佐役の先生にはそこまで迷惑をかけられない。それに俺も里枝ちゃんの先生としてプライドというものがあるし。
「先生、私と一緒にがんばっていきましょう!」
「そうだね。期末までまだ少しあるしがんばろう!」
「ふたりとも応援してるよー」
里枝ちゃんもがんばってくれているし俺もなんとか頑張れそうだ。
なんとか少しでも俺の教え方で成績を上げてあげれるといいけど。




