73.ラストマッチ
「と言ってもそこまで完全に危ないって状況じゃないんだけどね?」
慌てて訂正するブラの言葉に安堵する二人。
「例えるなら、首絞められてる状態的な?」
「「危ねぇじゃねぇか!」ゲホゲホ」
吐血する輪。
「今、リンの体はどうなってるの?」
真剣な顔でブラに問う。
「今はノラ、魔王に侵食されてるのを私が抑えてる状況よ」
(だから黒く変色した右腕から生えてきてるのね)
「あんたがいなくなったら俺はどうなるんだ?」
「自我を保てる時間は数秒くらいでしょうね、それも苦痛でもだえる時間」
……
「何とかできないの?」
「何とかした結果がこれなの、ごめんね」
懇願するカスミの思いを優しく振り払う。
「そっか…」
長い沈黙が辺りを包み込む。
その沈黙を最初に破ったのが―――
「でもさ、多分何とかなるよ」
「リン…」
頭のいい輪から出たことのない楽観的意見。
のように思えた。
「行こう、カスミ」
「そうだね、今はあいつに集中しよう」
立ち上がり、一方は翼で、一方は重力に反して空を飛んだ。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!」四週目に入りかけている縡。
「ああああああああ?あら、準備は終わったのかしらね」
数千メートル先のカスミ達を認識する。
「これで最後にしよう」
「あぁ、そうだな」
「そろそろ終わらせましょう」
お互いがこの戦いを終わらせに掛かろうとする、最初の一撃。
構えを取るカスミ。
「ー聖典・超新星ー」
構えを取る縡
「ーロック☆ー」
「火炎…」
「リン」
「ブラ?なんだよ」
構えを取っている輪に話しかけるブラ。
「いいかい?私の能力はとても自由なんだ」
得意げに自分の力を語る右腕の寄生生物に少しイラっとする。
「こんな時になんだよ」
「君は頭が固いから難しいかもしれないんだけど」
コイツホントに潰そうかな。
「いいかい?ありえないなんてありえないんだよ」
…
「鋼錬?」
「真面目に聞いてくれないかな!!」
怒っているブラにクスっと笑いかけて感謝を述べる。
「ありがとう、ブラ」
「ん?いいのよ」
構えを取る輪。
「私あなたのこと嫌いなのよ」
「あ?」
「でも、ちょっと好きになったわ」
「…あっそ」
ぶつかり合うその寸前、輪が先に動いた。
「ーショックボルトー」
コンマ数秒にも満たない時間で縡に向かって白い光が走った。
その場の、技を撃った本人でさえ気づかない速度で光は約300メートル離れた縡に触れる。
途端、縡の体は頭から尻にかけてまっすぐに半径15センチ程度の円状の穴をあけた。
だがすぐさま内側から肉体を再生し、構えを取り直す頃にはすでにカスミが眼前まで来ていた。
「ーバルー二」
「ー宇宙を作った最初の爆発ー」
縡を自分の拳に引き寄せ、さらに自分の拳を縡に引き寄せ、さらに縡を吹っ飛ばす方向に重力の核を随時移動させることにより、縡を地球の重力の何十倍で渓谷に吹っ飛ばす。
「凄い、凄いわ!今までとは比べ物にならない威力よ二人とも!」
落下しながら自分の体を抱き寄せる。
「とってもきもちい♡」
この隙に畳みかけるべく、落下する縡に追いつこうと頭を下にしてトップスピードで落下するカスミと輪。
「いいわ!来て!もっと!」
渓谷に入っていくカスミ達。
「行くよ、リン」
「来い」
輪の片足を掴むカスミ。
「ーメテオ」
「ーウィンド」
「グラビティーー!」
「ブラストー!」
輪の重力を数倍上げるカスミ、それに勢いをつけるべく自分の周りに追い風を作りさらにスピードを上げる。
「いいいいいいいぃぃぃぃぃ!」
吐血するも両の目は縡を離さない。
落下する二人は重力のせいで身動きを取ることができない。
「あはっ♡」
「こぉぉぉとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
縡と輪のいる場所の温度は1500度を超えていた。
縡は熱傷しながら再生を繰り返している。
一方輪は周りを氷で覆い、溶けたそばから生成を繰り返すことで少しの火傷で済んでいた。
精一杯の力を振り絞り変形し変色してる右腕を縡に向ける。
二人の距離、およそ50メートル。
光輪が生成され始めた。
距離、およそ10メートル。
右腕が伸び、縡の顔面を鷲掴みにする、その間輪は猛烈な苦痛と酸素不足と低血圧により頭痛と吐き気、めまいや寒気に襲われていた。
これで終わらせる!
「ーテイクマターー」
縡の体から複数の何かが輪の腕へと流れて行った。
落下し続ける二人は次第に――――――――
平均温度2200度、気圧125万の外核へと突入した。




