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第15話 鳴り響く警報

 ――ピピピピッ!


 手首の枷から鳴り始めた警告音が、狭い待機室に響き渡った。


 魔封石は赤く明滅し、その光がユウキの手元だけでなく、ドランの険しい顔まで照らしている。


「認証が切り替わっている。こいつは通常の解除具じゃ開かん!」


 ドランは焦った様子で道具を操作したが、鉄輪はびくともせず、警告音の間隔ばかりが短くなっていった。


 通路の向こうからは複数の足音が近づいてくる。


 ユウキの心臓が激しく鳴った。


 このままでは捕まる。


 しかも、自分だけではない。


 助けに来てくれたバルドも、ドランも、逃亡を手伝った罪に問われるだろう。


「坊主、動くな! ドランが何とかする!」


 バルドがそう言ったものの、その声にも焦りが滲んでいた。


 ユウキは手首の赤い光を見つめながら、震える呼吸を整えようとした。


 怖い。


 今すぐ目を閉じて、誰かが何とかしてくれるのを待ちたかった。


 けれど、その考えが浮かんだ瞬間、トーマの顔を思い出した。


 同じ牢で待っている、まだ熱の残る少年。


 自分が戻ると信じてくれた仲間。


 ここで諦めたら、あの約束は守れない。


 ユウキは唇を噛み、目の前の光へ意識を集中させた。


「ドランさん、あとどれくらいで警報が外に伝わりますか?」


 突然の質問に、ドランが顔を上げた。


「もう伝わっている可能性はある。だが、今鳴っているのは拘束具の局所警報だ。中央監視へ異常が送られる前に止められれば、まだ望みはある」


「中央監視に送られるまで、少し時間があるんですね」


「ああ。ただし長くはない」


 ユウキは頷いた。


 できることを考える。


 ただ怯えるのではなく、今ここで役に立てることを探す。


 そのために必要なのは、力任せに枷を壊すことではなかった。


「ドランさん、昨日、検査台の術式が暴走したときのことを覚えていますか?」


「何?」


「あのとき、下の金属板が振動していました。今回も、何か別の装置と繋がっているんじゃないでしょうか」


 ドランの表情が変わった。


「そうか。移送用の枷には、待機室の監視術式と連動するものがある」


 男はすぐに壁際へ視線を向けた。


 そこには小さな金属板が埋め込まれ、赤い光が点滅している。


「壁の中継盤だ。だが、あれを壊せば、それこそ異常が伝わる」


 ユウキは首を振った。


「壊すんじゃなくて、何が起きているのか確かめたいんです」


 そう告げると、膝をついて石床へ手を当てた。


 振動感知 Lv.1。


 岩穿ち鼠から奪ったばかりの技能は、まだ細かな違いを見分けられるほど熟練していない。


 それでも、周囲の揺れを感じ取ることはできる。


 足音。


 壁の向こうを流れる魔力による微かな震え。


 そして、自分の手首から伝わる不規則な振動。


 ユウキは目を閉じ、三つの感覚を慎重に比べた。


 魔封石が赤く点滅するたび、壁の金属板がわずかに震えている。


 だが、その振動は完全には一致していなかった。


「ドランさん、壁の板が光るのは、枷の警告音より少し遅いです」


 男は一瞬だけ目を見開いた。


「それがわかるのか?」


「正確にはわかりません。でも、手首の振動が先に来て、そのあと壁が揺れています」


 ドランは中継盤へ駆け寄り、外側に刻まれた術式を確認した。


「なるほど。中央へ直接流しているわけじゃない。待機室の中継盤で一度、異常を照合しているのか」


 バルドが周囲を確認しながら尋ねる。


「なら、止められるのか?」


「外から完全に解除することはできん。だが、検査中の誤作動として一時保留にする操作ならある」


 ドランは道具箱から別の器具を取り出し、中継盤の検査口へ差し込んだ。


 赤い光が黄色に変わる。


 ――ピッ。


 警告音が一度だけ鳴ったあと、静かになった。


 三人は思わず息を止めた。


「止まったのか?」


 バルドが尋ねる。


「一時的にな。中央への自動通報を保留しただけだ。認証失敗の記録までは消せん」


 ドランは額の汗を拭った。


「検査担当者が説明すれば、点検上の不具合として処理できる可能性はある」


 ユウキはほっと息を吐いたが、すぐに通路の向こうから声が響いた。


「おい! 今の警告音は何だ!」


 看守だった。


 三人の表情が引き締まる。


 危機は、まだ終わっていなかった。


 ◇◆◇


「何をしている!」


 待機室へ駆け込んできた看守は、開いた扉と床に置かれた道具箱を見て顔をしかめた。


 その後ろには、黒い鎧の帝国兵が一人立っている。


 ドランは慌てる様子を見せず、拘束具の検査器具を持ち上げた。


「移送用の枷を確認していた。認証が通常品と違っていてな、検査中に警告が出た」


「検査だと? 誰が許可した!」


「明日の移送で不具合を起こせば、困るのはお前たちだろう。午前中に確認を頼まれたんだ」


 看守は言葉に詰まった。


 実際、ドランが移送前の拘束具を検査していたのは事実だった。


 しかし、夜中にバルドまで同席している理由は説明できない。


 看守の視線が老人へ向く。


「そこの奴隷は何だ?」


 バルドが口を開こうとしたとき、ユウキが先に答えた。


「俺が呼びました」


 二人が驚いたようにユウキを見る。


 看守も眉をひそめた。


「何?」


「昼から体調が悪くて、移送前の検査が怖かったんです。バルドさんは、俺を落ち着かせるために来てくれました」


 完全な説明にはなっていない。


 勝手に人を呼べる立場ではないことも、ユウキはわかっていた。


 それでも、ドランが逃亡を手伝っていたと疑われるよりはましだった。


「お前、勝手なことを!」


 看守が一歩踏み出す。


 ユウキは反射的に肩を震わせたが、目を伏せなかった。


「すみません。俺が悪いんです。二人は検査を手伝ってくれただけです」


 怒鳴られるのは怖い。


 殴られるかもしれないと思うだけで、身体が硬くなる。


 それでも、ここで黙っていたら何も変わらない。


 そう思った。


 看守がさらに近づこうとした、そのときだった。


「待て」


 背後の帝国兵が声を上げた。


「その少年は明朝移送する特別管理対象だ。勝手に傷を増やすなと命じられている」


 看守は悔しそうに顔を歪めたが、すぐに一歩下がった。


「失礼しました」


 帝国兵はドランへ視線を向けた。


「検査結果は?」


「認証の再登録が必要です。今夜中に無理やり開こうとすれば、術式が不安定になります」


「移送に支障は?」


「拘束状態は維持されています。今すぐ逃げ出せるようなものではありません」


 兵士はユウキの手首を確認した。


 鉄輪は閉じたままで、魔封石も赤い光を失っている。


「ならば、明朝まで触るな。移送隊に報告しておく」


「承知した」


 ドランが頭を下げる。


 帝国兵は看守へ命じた。


「この二人を戻せ。少年は待機室に残す」


 バルドの顔が険しくなる。


 だが、ここで抵抗するわけにはいかなかった。


「行くぞ、爺さん」


 看守が腕を掴む。


 バルドはユウキを見つめた。


 その目には、心配と悔しさが浮かんでいる。


 ユウキは小さく頷いた。


「大丈夫です。まだ、終わってませんから」


 老人は何か言いたそうに口を開いたが、結局そのまま看守に連れられていった。


 ドランも道具箱を抱え、部屋を出ようとする。


 すれ違う瞬間、男が低い声で囁いた。


「よく気づいたな。あの中継盤がなければ、もう捕まっていた」


 ユウキが顔を上げると、ドランは続けた。


「だが、今夜はこれ以上動けん。枷も外せなかった」


「わかっています」


 ユウキは答えた。


「それでも、まだ考えます。諦めたくないので」


 ドランは一瞬だけ目を細め、それから小さく頷いた。


「そうか。なら、わしも考えてみる」


 扉が閉まる。


 ユウキは再び一人になった。


 ◇◆◇


 冷たい石壁へ背を預け、ユウキはゆっくりと呼吸を整えた。


 警報は止まった。


 バルドもドランも、今のところ連行されてはいない。


 しかし、枷を外すことには失敗した。


 明朝には帝国へ移送される。


 時間は、ほとんど残っていなかった。


 ユウキは手首を見つめた。


 魔封石は静かに光っている。


 強い力で壊せば警報が鳴る。


 解除具を使っても、認証が合わなければ開かない。


 今の自分にできることは少ない。


 それでも、今日一つだけわかったことがある。


 恐怖を感じても、考えることはできる。


 震える手でも、誰かの役に立つことはできる。


 これまでの自分なら、ただ謝り、助けを待っていただろう。


 しかし今回は、ドランへ状況を伝え、看守の前でも自分の言葉を口にできた。


 結果が十分だったとは言えない。


 それでも、何もできなかったわけではなかった。


「次は、もっとちゃんと考えよう」


 ユウキは小さく呟いた。


 守りたいという気持ちだけで、すべてが解決するわけではない。


 大切なのは、誰かのために無茶をすることではなく、できるだけ多くの人が生き残れる道を探すことなのだ。


 バルドなら、きっとそう言うだろう。


 ユウキは立ち上がろうとして、膝の痛みに顔をしかめた。


 今の自分は、まだ弱い。


 だからこそ、一人でどうにかしようとしてはいけない。


 そのとき、足元から微かな振動が伝わってきた。


 ――トン、トン。


 ユウキは目を閉じ、意識を集中させた。


 振動感知が捉えたのは、遠くを歩く複数の人間の足音。


 そして、それとは別に、地面の深いところから伝わる大きな揺れだった。


 ――ドクン。


 第三坑道。


 その奥に眠る、名前のない少女。


 ユウキは静かに目を開けた。


「また、呼んでるの?」


 返事はない。


 だが、視界の端に青白い文字が浮かんだ。


《未登録の魂魄反応を検出》


《反応源:第三坑道最深部》


《固有権能「略奪」が共鳴しています》


 ユウキは胸元を押さえた。


 第三坑道の封印は、帝国の魔術師たちが必死に維持しているはずだ。


 それなのに、なぜ何度も自分を呼ぶのだろう。


 少女は、今は扉を開けるなと言っていた。


 では、自分に何を求めているのか。


 答えが出ないまま、ユウキは冷たい床へ腰を下ろした。


 ◇◆◇


 一方、通常の牢へ戻されたバルドは、トーマに囲まれていた。


「ユウキは? 無事だったのか?」


 トーマの質問に、バルドは頷いた。


「ああ。今のところはな」


「今のところって、どういうことだよ」


「枷を外そうとしたが、失敗した」


 老人は短く説明した。


 トーマの顔が青ざめる。


「じゃあ、明日になったら本当に連れていかれるのか?」


「そうなるかもしれん」


 バルドは壁へ背を預けた。


「だからこそ、次の手を考えにゃならん」


 トーマは唇を噛んだ。


「俺、何もできなかった」


「またそれか」


 バルドは静かに言った。


「お前がここで騒ぎを起こせば、ユウキが戻る場所までなくなる。今はそれを守ることも大事なんだ」


 トーマは俯いた。


 そして、しばらくしてから顔を上げる。


「じゃあ、俺にできることを教えてくれ」


 老人は少し驚いたように目を見開いた。


「何だ?」


「ユウキはいつも、自分にできることを探してる。俺も、そうしたい」


 バルドは少年を見つめた。


 以前のトーマなら、恐怖に押し潰されて泣き出していたかもしれない。


 しかし今は、震えながらも何かをしようとしている。


 ユウキの優しさが、少しずつ周囲を変え始めているのだろう。


「わかった」


 老人は小さく頷いた。


「なら、明日の朝までに看守の交代時間を覚えろ。無理に近づく必要はない。ここから見える範囲でいい」


 トーマは真剣な表情で頷いた。


「任せて」


 ◇◆◇


 同じ頃。


 第三坑道の最深部では、灰色の外套をまとった男が封印の記録を確認していた。


 石の扉に走る亀裂は、以前よりもさらに広がっている。


 赤黒い魔法陣が明滅するたび、周囲の魔術師たちは緊張した表情を浮かべた。


「封印維持率が再び低下しています」


 若い魔術師が報告する。


「昨日、あの少年が接触した直後は安定したのですが、時間の経過とともに元へ戻りつつあります」


 男は静かに頷いた。


「やはり、一時的なものだったか」


「もう一度、接触させますか?」


「いや。明朝の移送命令は変えん」


 魔術師は驚いた。


「しかし、封印が破損すれば鉱山全体が危険に晒されます」


「わかっている」


 男は石の扉へ視線を向けた。


「だが、少年をここで失うわけにはいかん。帝都の上層部は、すでに彼の存在に関心を示している」


 その言葉に、魔術師は黙り込んだ。


 男は続けた。


「封印の維持は我々の仕事だ。少年の調査は、帝都で行う」


 そのとき、扉の奥から微かな声が響いた。


『違う』


 男が眉をひそめる。


『その子を、連れていかないで』


 赤黒い魔法陣が、一瞬だけ青白く輝いた。


 魔術師たちが慌てて装置を確認する。


「反応値が変化しています!」


 男は扉を睨みつけた。


「また、あの少年か」


 だが、少女の声はそれ以上続かなかった。


 ◇◆◇


 深夜。


 待機室の中で、ユウキは小さな物音に目を覚ました。


 扉の外から、金属が擦れるような音が聞こえる。


 最初は看守が巡回しているのだと思った。


 しかし、足音が妙に軽い。


 ユウキは身を起こし、鉄扉を見つめた。


 ――カチリ。


 鍵の回る音。


 扉がわずかに開いた。


「起きてるか」


 低い声だった。


 ユウキは目を見開いた。


「ドランさん?」


 扉の隙間から、白髪交じりの男が顔を覗かせた。


 その表情は険しい。


「時間がない。静かに聞け」


 ユウキは頷いた。


 ドランは周囲を確認してから、低い声で続けた。


「移送隊が明朝、予定より早く出発することになった」


「早く、ですか?」


「ああ。夜明け前だ。中央の命令らしい」


 ユウキの背筋が冷たくなる。


 残された時間は、さらに短くなっていた。


「バルドさんたちは?」


「まだ牢にいる。今は動かせん」


 ドランは小さく息を吐いた。


「それと、悪い知らせがある」


「何ですか?」


「お前の拘束具は、移送隊専用の認証に切り替えられている。わしが持っている解除具では開けない」


 ユウキは手首を見つめた。


 やはり、そうだった。


 ドランは続けた。


「ただし、移送前には必ず拘束具の確認がある。そのときだけ、移送隊の正式な解除具が使われる」


「じゃあ、そのときなら……」


「可能性はある。だが、簡単じゃない。兵士の前で解除されるんだ」


 ユウキは黙って考えた。


 力ずくでは勝てない。


 兵士の人数も、装備も、こちらとは違いすぎる。


 それでも、何か方法はないだろうか。


「ドランさん」


「なんだ?」


「俺が逃げるだけなら、まだできるかもしれません。でも、それじゃ駄目なんです」


 ドランは黙っていた。


「バルドさんとトーマ、それから助けたい子がいます。俺だけ先に逃げたら、二人まで疑われるかもしれません」


 ユウキは一度、息を整えた。


「だから、三人とも生き残れる方法を考えたいです」


 ドランはしばらく少年を見つめていた。


 そして、小さく息を吐いた。


「お前、ずいぶん無茶なことを言うな」


「わかっています」


「一人逃がすだけでも難しいのに、三人か」


 男は眉間に皺を寄せた。


 ユウキは俯きかけたが、すぐに顔を上げた。


「無理なら、別の方法を考えます。でも、最初から諦めたくありません」


 ドランはしばらく黙っていた。


 やがて、低い声で答えた。


「そうか」


 そして、懐から小さく折り畳まれた布を取り出した。


「なら、これを見ろ」


 布の内側には、簡単な線で描かれた坑道の図があった。


 第四坑道。


 第五坑道。


 そして、その奥から細く伸びる、古い連絡路。


「これは……」


「昔、バルドと一緒に調べた場所の記録だ。完全な地図じゃないが、道の方向はわかる」


 ユウキは息を呑んだ。


 長い間探し続けていたもの。


 地上へ続くかもしれない道の手掛かりが、目の前にあった。


 ドランは指で地図の一角を示した。


「第五坑道の奥には、古い点検室がある。その先に、地図に載っていない細い通路が続いている」


「そこを通れば、外へ?」


「確証はない。ただ、昔は外から風が吹き込んでいた」


 ユウキは地図を見つめた。


 まだ道が繋がっているかわからない。


 崩落しているかもしれないし、魔物が潜んでいる可能性もある。


 それでも、何もないよりはずっといい。


「これを、俺に?」


「ああ。覚えておけ」


 ドランは布をユウキへ渡さず、目の前で広げて見せた。


「紙や布を持っていたら、見つかったときに終わりだ。頭に叩き込め」


 ユウキは頷き、慎重に線の位置を追った。


 第四坑道の資材置き場。


 古い標識。


 崩れた線路。


 第五坑道へ続く旧連絡路。


 そして、さらに奥にある点検室。


 すべてを一度で覚えられる自信はなかったが、何度も見直し、頭の中で道を辿った。


 やがて、ドランが布を折り畳む。


「時間だ」


 ユウキは顔を上げた。


「ドランさん」


「なんだ?」


「ありがとうございます」


 男は小さく首を振った。


「礼は、無事に逃げられたときに言え」


 そして、扉へ向かった。


「夜明け前、移送隊が動く。そのとき、お前も判断しろ」


 ユウキは頷いた。


 ドランの背中が扉の向こうへ消える。


 再び鍵が閉まり、待機室に静寂が戻った。


 ◇◆◇


 ユウキはゆっくりと息を吐いた。


 状況は、決して良くない。


 枷は外れていない。


 身体も回復しきっていない。


 帝国兵は強く、移送隊は夜明け前に出発する。


 それでも、今の自分には仲間がいる。


 バルドがいる。


 トーマがいる。


 そして、ドランも協力しようとしてくれている。


 ユウキは閉じた扉を見つめた。


 逃げ道を探すだけでは駄目だ。


 自分一人が助かることだけを考えてもいけない。


 全員が生き残るためには、誰が何をできるのかを理解し、力を合わせる必要がある。


 これまで、誰かに守ってもらうことが多かった。


 けれど今度は、自分も誰かの役に立ちたい。


 頼られるだけの力は、まだないかもしれない。


 それでも、考えることはできる。


 選ぶこともできる。


 そして、その選択に責任を持つことも。


 ユウキは静かに目を閉じ、ドランから見せられた坑道の図を思い出した。


 第四坑道。


 第五坑道。


 旧連絡路。


 点検室。


 順番に道を辿りながら、一つずつ頭の中へ刻み込んでいく。


 夜明けは、もう近い。


 そして、次に扉が開いたとき。


 ユウキは、自分自身で決断しなければならない。


 誰かに奪われる未来ではなく、自分たちで選ぶ未来のために。


――第15話 完。

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