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女人禁制の屋敷に男装潜入したら、浮気の犯人は長官の部下だった  作者: 御厨そら


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8/12

8 潜入捜査失敗

翌朝、エリア(ロザンナ)は馬房の掃除を命じられた。


厩舎に入ったら、糞尿の臭いで顔を思いっきり歪めた。

馬房には六頭の馬がいた。それを厩舎の前に出して逃げないように繋いだ。


馬は、新しい世話係のエリアを興味深げに見ていた。

アランは馬の鼻面を撫でた。

二人とも作業着に長靴姿だ。糞尿まみれの藁を取り替えるのが、今朝の仕事だ。


エリアは糞(ボロ)をスコップで掬って台車に載せた。

尿で汚れた藁は処分して、寝床の床を乾かしてから新しい藁に変えた。


そしてアランは、鉄爪という道具で蹄にたまった泥と糞を掻き落とした。


さらに馬のブラッシング。

フケや汚れを取ってもらって、馬は機嫌良さそうに尻尾を振った。


この大変な仕事をアランは嬉々としてやっていた。


「エリアも馬を怖がらないね。ひょっとして乗馬できるの?」

「はい。乗馬していました」

「うわぁ、すごいね」

「アランさんのほうがすごいです。馬のあつかいも手慣れていますね」

「へへへ、動物好きだからね」

アランは照れて笑った。


(昨夜のことを思い出した。本当に楽しかった)



**********



ノックの音でドアを開けると、アランが立っていた。


「良かったらタバコ吸う?」

アランは紙巻きタバコをケースから取り出して、エリアに見せた。


「何で僕がタバコ吸うの分かったの?」

「僕は隣の部屋なんだ。壁が薄いから『葉巻が吸いたいなー』って大きな声は丸聞こえだよ。同好のよしみで一本どうかと思ってさ」


エリアはタバコを一本受け取った。


「ありがとう」

「いいってことさ。でも君は葉巻を吸いたいって言ったよね。やはり貴族階級の人なの?」


(うっ、バレてる。こんなところで反論するのは最悪だ)


「僕の部屋で一服しませんか? いろいろ教わりたいこともあるので」


アランの顔が輝いた。


「いいの? なんか女の子の部屋に初めて入るようで、緊張するなー」


(それって、もしかして……)


エリアは冷や汗が出た。



**********



エリアが馬の背後に回った。


『あっ、しまった!』


その時、アランの忠告が頭をよぎった。


《馬の後ろに行くときは、絶対に声をかけていかないと駄目だ。馬は臆病だから蹴られるよ》


ブルルル──!

馬が背後を気にして唸った。


次の瞬間、後ろ足が跳ねた!


まともに食らったら、大怪我だ。


エリアは後ろに飛び下がった。


勢い余って馬房の柱に後頭部を打ちつけてしまった。


ゴォン、と鈍い音がした。


エリアの視界が暗くなり、意識を失った。




「エリア、大丈夫!?」

エリアは遠くで声を聞いた。

やがて視界が開けた。目の前にアランの顔があった。


「大丈夫……後頭部を少し打った。あっ、たんこぶできてる。痛い……」


エリアが身体を起こそうとしたら、作業着の前ボタンが外されていて、胸の晒し布が露出していた。慌てて胸元を腕で隠した。


「ごめん、蹴られたと思って身体に傷があるか確かめようとしたんだ。そしたら……」

困惑するアランにエリアが言った。


「私が女だってこと、秘密にしてくれる?」

「訳ありなんだろ? いろいろ勘ぐることはあるけど……僕は誰にも言わないよ」

「ありがとう」


その言葉を聞いたアランが下を向いた。暗い表情だ。


「どうしたの?」

エリアが聞いた。


「もう君の部屋でタバコは吸えないね」

「関係ないよ。アランとタバコ吸ってお喋りするの楽しいし」

「ほんと?」

「……うん」


アランが満面の笑みを浮かべた。



「ロザンナ、潜入捜査失敗だな」


二人が振り返ると、厩舎の入口にジルベルトが立っていた。


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