不協和音 6
マルゴーは、ヴィンランド家の敷地に足を踏み入れると、息が詰まった。
美しいサファイアブルーのドレスをまとった彼女は、控えめながらも優雅な雰囲気を纏っていた。
その瞳は淡いヘーゼルで、初めての場に胸を高鳴らせているのか、期待と興奮に輝いている。
豊かな栗色の髪は肩の少し下で柔らかなウェーブを描き、白い肌をいっそう引き立てていた。
上品で温かみのある佇まいは、名門の邸宅にも自然に溶け込み、令嬢として申し分のない気品を感じさせる。
エレガントで温かみのあるオーラを与え、ジュリアンより少し年下の、若々しく活気のある外見を際立たせている。
お見合い写真の通り、繊細で輪郭がはっきりしており、頬骨が高く、鼻はわずかに上向き、唇はふっくらと柔らかい。
眉は自然にアーチ型になっており、表情豊かで少し遊び心のある外見。
マルゴーは、両親や友人から、この邸宅の壮麗さについての話は聞いていたが、実際に見るのはまったく別物だった。
彼女は周囲を素早く見回し、天井の精巧な木工細工、まるで生き生きとした絵画、そしてこの一族が持つ富と権力の規模など、あらゆる細部を捉えようとした。
ここは、エリート層だけが足を踏み入れる場所だった。
マルゴーは壁の書棚や工芸品を眺め、感心したように言った。
「本当に素晴らしいお屋敷ですね。長い歴史を感じます」
そして少し考えるように続ける。
「我が家も、もう少し格式を整えなければと思ってしまいます」
その言葉に、隣に座っていた父親がわずかに苦笑した。
「いやいや、我が家は堅実を家風としておりまして。このような名門と比べられるものではありません」
父はそう言いながら娘をちらりと見る。
——あまり前のめりな発言はするな、という無言の制止だった。
しかしマルゴーは気にした様子もなく微笑む。
「でも、お父様。家というものは努力で磨かれていくものですもの。今日こうして拝見していると、学ぶことがたくさんある気がします」
その言葉に、ジュリアンの母は満足そうに頷いた。
父親と一緒に定刻に客間に入室したジュリアンは、先に移動していた母親と会話をする彼女の反応に気づいた。
彼は、彼女の金色の斑点が少し入った印象的な薄茶色の目に畏敬の念が宿って、彼女が繊細なハンカチをほんの少しだけ強く握りしめているのがわかった。
彼にとっては見慣れた光景だった。
だが彼女にとっては、これまで想像することしかできなかった世界を、初めて間近で目にしているのだろう。
そのことは理解できた。
ただ、ジュリアンはそれを静かに観察するだけだった。
この邸宅に初めて足を踏み入れる者の反応としては、珍しくはない。
両家は、邸宅で最も豪華な応接室の一つに集まっていた。
壁一面には古い書物や工芸品が並び、一家の長い歴史と名声を静かに物語っている。
息子と娘の両親は、重厚なアームチェアに腰を下ろし、挨拶や丁寧な世間話を交わしていた。
威厳ある佇まいのジュリアンの母は、先ほどからの雑談の様子を見て、この縁談に非常に前向きな若い女性にすでに満足している様子だった。
一方、娘の両親は平静を装いながらも、屋敷の格調高さに感嘆を隠せない。
ジュリアンとマルゴーは、テーブルを挟んで向かい合って座っていた。
ふと視線が合う。
マルゴーは微笑みながら立ち上がった。
「ジュリアン様、お初にお目にかかります。本日はお招きいただき、誠にありがとうございます。お話を伺ったときから、この日を心待ちにしておりました」
優雅に一礼する。
だが、その声はわずかに震えていた。周囲の壮麗さに、まだ気持ちが高ぶっているのがわかる。
ジュリアンも立ち上がり、軽く頭を下げた。
「マルゴーさん、お会いできて光栄です。どうぞ、お掛けください」
落ち着いた口調で着席を促す。
その態度は礼儀正しく穏やかだったが、意識の一部はどこか別の場所にあった。
——もし彼女がこの会のことを知ったら、どんな顔をするだろうか。
そんな思いが頭をよぎる。
それでも彼は、ここにいる意味を理解していた。
両親の期待に応えることが、今の自分の役割なのだ。
マルゴーは席に戻り、嬉しさを抑えきれない様子で言葉を続ける。
「お母様から伺いましたが、ジュリアン様のご家系は本当に名門中の名門で、長い歴史をお持ちなのですね。お話を聞くたび、その偉大さに圧倒されてしまいます」
「ありがとうございます。家の歴史や名誉は、私たちにとっても大切なものです」
ジュリアンは小さく微笑んだ。
「ですが、これからは私たち自身がどう歩んでいくかの方が、大切だと思っています」
家柄よりも、互いの人柄を重んじたい——
そんな含みを込めた言葉だった。
マルゴーはその言葉に、ぱっと表情を明るくする。
「もちろんです。このような機会をいただけるなんて、私にとって本当に幸運なことです。お母様とお話しするたび、ジュリアン様やご家族とご一緒できる未来を想像してしまって……胸が高鳴るんです!」
やや高い声でそう言う彼女の様子に、ジュリアンはわずかに戸惑いながらも、礼儀正しく応じた。
「そのように思っていただけるのは、ありがたいことです。本日の時間が、お互いを知る良い機会になればと思います」
「はい。きっと素敵な未来になると信じています。どうぞ、今日のひとときを楽しみましょう」
マルゴーはそう言って、満面の笑みを浮かべた。
両親たちは、若い二人の会話を静かに見守っていた。
互いに伴侶と視線を交わす。
特にジュリアンの母は、内心強い満足感を覚えていた。
マルゴーは、息子に付きまとう「変人」という噂をまるで気にしていない。
むしろ積極的に会話を重ね、距離を縮めようとしている。
おそらくジュリアンは、すぐには心を開かないだろう。
それでも根気よく向き合い、やがて彼に安らぎをもたらしてくれる——
そんな女性なら、家の新しい娘として迎えてもよい。
彼女はそう考えていた。
――――――――――
人間界
ある日の深夜近く、古びた洋館の2階の一室。
髪の長い女性が書斎の机にむかい、何やら書類に目を通しているところ、若い青年がノックをして入室をする。
彼は姉のそばまで歩み寄り、用件を伝える。
「先日、あの方から、グリムヴァイザーをお借りできたので、騎士にぶつけて戦闘能力を測ってもらいましたよ。また僕が得た情報も、あの方にお伝えしました。」
弟が入室してきても書類から目を離さなかった長い髪の女性が、その一言で彼の話に興味を示し、顔を上げる。
「あの方も、あれからさらに情報が集まってきているので、もうすぐ誰が騎士かわかるんじゃないかっておっしゃってました。」
姉に顔を上げてもらったのを見計らって、彼は言葉を続けた。
それから、と、さらに話しかける。
「今度、僕のお友達が手伝ってくれるみたいなので、姫を手中に収めることができるんじゃないかって思ってます。その話も、伝えました」
「なるほど。イグナシオは現在、あの方の命令で、あるものを調達に行っている。あれが不在の間、お前が活躍してくれて助かるよ」
女性は、嬉しそうに目を細めて答えた。




