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SWORD of C 〜 人斬り令嬢《ブルートザオガー》と呼ばれた少女  作者: 無色
Episode:7

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夢は夢のままで

『緊急事態発令! 緊急事態発令!』


 平時の安穏を掻き消すが如く、無機質なサイレンが鳴り響く。

 

『皇城内に侵入者あり! 各員速やかに対処せよ! 繰り返す、皇城内に侵入者あり!』

 

 帝国軍本部は第一部隊を初めとした面々が現場へと急行した。

 隊員らが緊急車両に乗り込む中、先行し猛然と駆け出したのは帝国の一等星二人。

 第一部隊隊長ノクト=(シリウス)=ミューラー、第三部隊隊長ソフィア=(スピカ)=ハイレーン。

 外套をはためかせ、円状の城壁の上を駆けた。


四獣皇朝(スーシェン)から来賓があるタイミングでの襲撃……侵入者の狙いは、やはりそちらでしょうか」

「おそらく。……ハイレーン大佐」

「はい?」

「じつは、報告には上げていなかったことが。昨夜ツルギが桜花会(おうかかい)と交戦しました」


 ソフィアは静かに驚き目を丸くした。


「本人は魔術の行使が原因で昏睡していますが、居合わせた他の隊員に話を聞いたところ、ツルギが斬れなかった相手だとか」

「あの人斬り令嬢(ブルートザオガー)さんが……?! それほどの手練れだったということですか……も、もしシュナイダー大佐が交戦している人物がそれと同一であるなら、シュナイダー大佐といえど!」

「危ういかもしれません……ハイレーン大佐、先行します!」


 足に風を纏わせ加速。

 文字通りの突風となって、ノクトは一瞬でソフィアの視界から消えた。

 風景を置き去りにするほどのスピードの中、ノクトは思考する。

 

桜花会(おうかかい)の目的は何だ……? ディアナ殿下が婚姻されたこのタイミング……奴らの狙いは婚姻の阻止か、それに関することで間違いないはず……だがそれにしては……)


 影で百花糖(バイホァタン)を蔓延させていたかと思えば、白昼堂々の皇城の襲撃で騒ぎを起こす。

 その行動の支離滅裂さがノクトに違和感を覚えさせた。

 しかし思考を巡らせるには判断材料が足りない。

 今自分に出来ることは、一刻も早い到着に向かうことだけであった。






 ――――――――






 レーヴェ=(レグルス)=シュナイダー。

 彼が獅子の爪(レグルス)を拝命し、一等星将(アストラル)として第二部隊の隊長となったのは、もう五年も前のこと。

 士官候補生の頃から、他の隊員とは毛色が違った。

 誰よりも早い時間から誰よりも遅い時間まで訓練に励み、嗜好品の一切を摂らず、休日全てを奉仕活動に捧げる、ストイックとは一線を画す病的なまでの労働中毒者(ワーカホリック)

 しかしだからと他者と交わることを嫌うことなく、むしろ周囲の意見に耳を傾け配慮を怠らない紳士的な一面もある。

 そして、苛烈なまでの暴力性をその甘いマスクの下に秘めている。

 そんな人間性は、第二部隊の主題(テーマ)にこれ以上なく適合していた。

 獅子が標的を定めたならば、その爪は必ず獲物を捕らえ焼き尽くす。


「ふっ!!」


 押しも押されたりの目まぐるしい攻防を繰り返し、三者は戦いを白熱させた。

 炎を纏わせた蹴りを腕で止めながら、ジンウォンは不敵に笑みを浮かべる。


大天使系(アーク)の魔術師にしては、体術も相当ダナ。さすが一等星将(アストラル)ってところカ」


 軽口を叩きながら拳を返す。

 レーヴェはそれに合わせて身を翻し、身体を反転させながら再度蹴りを見舞った。


「口数の多い男だ。その舌はさぞ脂が乗っているように見える」

「普段はそうでもないんだがナ。一等星将(アストラル)相手に気分が昂ぶるのは仕方ないダロ」

「ならばその高揚ごと燃やし尽くしてやろう」

「そう熱くなるなヨ」


 ジンウォンが腰を落とし腕を引く。

 熾天使の尾(ザドキエル)……白虎の爪を顕現させようとした時。

 

「!!」


 横から突き出されたパンチで、ジンウォンの身体が吹き飛んだ。


「チッ……」


 膝をつきながら、ジンウォンは今しがた自分の身体に起きた違和感に眉根を寄せた。


「魔術が使えナイ……?」

「だろうな。そういう()()だ」


 ウェイは光り輝く拳で祈るように構えた。


智天使系(ケルビム)……魔術を縛れるタイプの魔術ってところカ? 範囲は、持続時間……おれに攻撃を当てたあれが発動条件、カ……? 面倒ダナ……将軍ウェイ=ヨウミン……四獣皇朝(スーシェン)最強の魔術師……)


 魔術を発動出来ない状態にも関わらず、ジンウォンは不敵に笑った。

 その最強は、桜花会(おれたち)を数えてないだろウ、と。

 身一つで床を蹴り、低い体勢からウェイの顎先へと白雷を帯びた蹴りを放つ。


「くっ?!」

「生憎お前とおれとじゃあ、魔術のステージが違うんダヨ!!」


 ウェイの身体は宙を飛び、部屋の壁を突き破った。







 ウェイ=ヨウミンの魔術、名を智天使の契約(メタトロン)

 智天使系(ケルビム)に数えられるそれは、自身と他者に対し契約を締結し行使するという権能を持つ。

 契約の際、契約印を打ち込むことが発動の条件となるのだが、今ウェイとジンウォンの間に結ばれた契約は、「自身が受けるダメージを増大させる」代わりに「魔術の使用を禁ずる」というもの。

 相手に強いる契約の内容が大きいほど、自身もリスクを背負わねばならないというデメリットを持つ、智天使系(ケルビム)の中でも異色な魔術。

 しかしそれ故に強力で、契約の強制力から逃れた者など今まで存在しなかった。

 だからこそウェイは驚き、瓦礫から立ち上がって数瞬の間呆けた。


「馬鹿な……」

「良かったな多少なり魔術が効いてる状態デ」

「何……?」

「でなけりゃ今頃お前の首はその辺に転がってイタ」


 ジンウォンはつま先を二回、床に打ち鳴らした。


(まあ、実際大したもんではアル。何の魔術かは知らないが、熾天使の尾(ザドキエル)本来の性能が封じられてるんだからナ。天召(アドベント)でなかったらヤバかったカ)


 余裕を崩さず視界にはレーヴェを捉え続ける。


(獣化は無理……この状態で一等星将(アストラル)と将軍を相手取るのは面倒ダナ。キリの良いところで退散すルカ……。まあ……)


 どちらか一人を殺すくらいはわけはないケドナ、と、ジンウォンは白雷を激しく迸らせた。


「まだまだ遊ぼうゼ」






 ――――――――






 ジンウォンが皇城で戦闘を繰り広げていた頃。


「フッフフ〜ン。キレイな女の子と〜ヌルヌルぐちょぐちょいい気持ち〜」


 小気味よい鼻歌を唄いながら、ユーフェイは暗い路地をスキップしていた。

 目当ては貧民街(スラム)の楽園、薔薇の宿屋(ローゼンパラディース)

 一夜で千夜の夢を見られることで知れた娼館である。


「楽しみやな〜。店の女の子全員に相手しても〜らおっと」


 ニコニコ顔で路地の角を曲がった。

 その時だ。


「全員を買うのは、何とも夢のある話だ」


 声が一つ、ユーフェイの軽やかな足取りを阻んだ。


「申し訳ないが、その夢は夢のままにしておいてくれ」


 服の上からでもわかる隆々とした筋骨と、身の丈ほどある大剣を片手に、その人物は立ち塞がる。

 ユーフェイはつい数秒前の浮かれた気持ちに蓋をして、苦笑いをして肩を落とした。


「この展開は……予想してなかったなぁ。一応挨拶しとこうかな。よろしゅうね、帝国の英雄さん」

「ああ。よろしく頼む。ユーフェイ=シャオリー。桜花会(おうかかい)の首領よ」

 読んでいただきありがとうございます!


 今回の章、いつもより長くなる予感……


 おもしろいと思っていただけたら、リアクション、ブックマーク、感想、☆☆☆☆☆評価にて今後も応援してもらえたら嬉しいです

m(_ _)m

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