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SWORD of C 〜 帝国の人斬り令嬢《ブルートザオガー》は心ゆくまであなたを斬りたい  作者: 無色
Episode:6

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人生史上一番喧しい

 キティ=アルレシュミットは、工房の扉が乱暴に叩かれて、不機嫌そうにその客を出迎えた。


「なに……って姫? どしたのこんな時間に」


 ツルギは足早にキティの脇を抜け、テーブルの上の物をどかし、それをドンと置いた。


「なになになに? 何が始まったの? あ、てか姫おたおめ〜♡ 今からパーティーしちゃう?♡ 二人っきりで♡」

「私もいますけど」

「あ? リゼいたの? どうりでくせーと思ったわ。くっさ。離れてくんない次元ごと」

「自分の息が臭いのってわかりませんもんね。胃の中に腐った汚物でも溜め込んでるんですか?」

「死んでろワキガ」

「ゴミクズ」


 ドン

 ツルギが鞘の先を床に打ち付けて、二人は同時に肩を竦ませた。


「仲が良いのは結構です。が、今はこちらを優先してください」

「はーいはい」

「申し訳ありません……」

「で? そんなに急いで何持ってきたの?」


 テーブルに置いた箱を開ける。

 露わになったそれを目にして、キティは一言感嘆の息を漏らした。


「ワーォ……」


 それはインゴットであった。

 表面で模様が揺らめく、神秘的な輝きに目を奪われるような白い石。

 その場で唯一価値を知らないエリザベートだけは、眉根を寄せて首を傾げた。


「ヴォルフラム中将の贈り物にしては、何というか地味?いえ、渋いチョイスですね」

「っは、これだから学が無いお姫様は」

「は?」

「無知なる者に教えてやろう。これはね」

「ゲルムライト」


 ツルギは呑み込まれそうな白い輝きに、蕩けるような笑みを浮かべた。


森賢国(グリンディアン)原産の超硬度を誇る鉱石です」

「それって……ブルー様が求めてた例の砥石ってことですか?! ほわぁ……ということは、これがあれば!」

「待ち焦がれた私の刀が……フフ、フフフ! ああ、大いなる祝福を与え給うた主よ! 百の祈りを以て感謝いたします!」


 工房にツルギの惜しみない歓喜が轟く。

 表情に張り付いているのは、人を斬るときのような狂気であったが、エリザベートはここぞとばかり、どさくさ紛れにツルギに抱きついた。


「おめでとうございますブルー様! あとは刀の完成を待つだけですね! さぁキティさん、ブルー様のために一心一打で鎚を振るいなさい!」

「命令してんなタコ! 言われなくてもさいっこーの刀打つわバカが死ねぇい! てか姫から離れろ! 刀が出来たら真っ先に試し斬りしてやるからな臭マン!」

「ブルー様に斬られるなら本望ですぅ! あ、キティさんには無理ですよねざまぁ〜です……ぁえ?」


 ツルギはエリザベートの頭を鷲掴みにすると、勢いよく彼女を床へと叩きつけた。

 頭蓋が潰れ辺りに血飛沫が飛び散るが、頭を潰した本人、目撃者、頭が潰れた本人でさえも大きな反応は無い。


「うっわきったな……もー姫、ここ一応アタシの仕事場だから汚すの勘弁してよね〜」

「フフ、フフフ……ブルー様に手をかけてもらえる快感は、いつでも最高です♡」

「キティさん」

「ん」

「刀はいつ頃完成出来そうですか?」

「一週間」

「そんなにかかるんですか? アルレシュミットも大したことありませんね」


 ゲルムライトを持ち上げ宙に放る。

 手遊びの玩具同然にそれを扱いながら、キティは言い返した。


「寝ない休まないで作業続けられる職人がいるんなら他に連れて来い」

「むぅ……」

「どのみちこの刀がキティさんにしか研げない以上、一任せざるを得ません。キティさん、ちゃんと応えてくださいね。私の期待に」


 でなければ、とキティの胸元に左手を当てる。


「あなたを拾った意味がありませんから」


 対しキティは、上等……と一つ笑い、ツルギの手を取り指先に小さく齧りついた。

 薄く流れた血を見て、憤慨したのはエリザベートだ。


「あな、な……ブルー様に、なァにィおおおお?!!」

「うっさ。黙ってろ」


 軽くあしらいながら、キティは更に自分の指先を噛み切った。

 垂れた赤を自分の唇に塗る。

 

魔導帝国(ヴェルトリーチェ)の血の誓い……」

「どれだけ正当化されても武器は武器。所詮人殺しのための道具で、それを使う奴も作った奴も人殺しだ。だからこそアタシたち職人は使い手を選ぶ。アタシが刀を打つ以上、アタシたちは運命共同体、共犯者だってことを忘れんな。ザコに持たせる刀なんか無いし、折れて曲がることも許さねぇ。その覚悟、姫にあんの?」


 ツルギは一拍も置かず、指で唇をなぞった。


「愚問です。私はただ、斬れればそれでいい」

「……ッハ、やっぱ好きピだわ。愛してる、姫。アタシが姫の最高を打ってあげる」


 重なった唇。だが、けして甘さは無い。

 声も吐息も漏れない事務的なキス。

 故に、キティはほんの悪戯を仕掛けた。


「……♡」


 ニュル……自分の口の中に入り込んできた舌の感触に、ツルギは思わずキティから距離を取った。


「…………」

「ニッシッシ、可愛い反応するんじゃん姫。ベロチュー初めてだった?」

「……次やったら斬ります」

「次はそっちからおねだりさせてやんよ」

「な、な……なんて、羨ましいことを!! ズルいですズルいですズルいです!! ブルー様私とも熱烈でディープでセンシティブなキスをォォォ!!」

「鬱陶しいです」

「きっしょ」

「きぃー!! ブルー様の唇を奪った泥棒猫のくせに!! はっ、そうです……キティさんとキスすればそれは実質ブルー様とキスしたことになるのでは?! この際あなたで我慢しますキティさんそこに直りなさい!!」

「キモすぎワロタ。お前とチューするくらいな便器舐めるわ」

「いいから黙ってキスさせなさぁい!!」


 女三人姦しく、とはならずとも。

 人生史上一番喧しい誕生日に、ツルギは小さく微笑んだ。

 祝ってくれた人たちへの感謝……など僅かも抱かず、ただ自らの欲望が赴く先。

 錆びた刀を真っ直ぐに見つめて。

 読んでいただきありがとうございますm(_ _)m


 もしおもしろいと思っていただけたら、リアクション、ブックマーク、感想、☆☆☆☆☆評価にて今後も応援してもらえたら幸いですm(_ _)m

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