残った清掃員
夜明け前、品川のビルへ規制線が張られた。毎朝同じフロアを清掃していた女性が残る。勤務回数は百日を越えるが、対象会社の業務には参加していなかった。 真壁は到着直後に階段とエレベーターを封鎖し、入館者名簿を確保する。班員は必ず二人一組で動いた。
二十五という数字は、最初の三件では偶然に見えた。別業種、別階、短時間勤務を加えても境目が動かず、班は初めて暫定規則へ記した。
同じフロアへ毎日来ても、対象会社の仕事に加わらない清掃員と設備員は残った。滞在日数だけを数える仮説は崩れる。
二十四日以下なら安全とは断言できない。現時点で消えなかったというだけで、次の事例が同じ規則に従う保証はどこにもなかった。
会議室の壁には、消えた人の写真ではなく確認済みの条件だけが貼られた。家族へ返せる答えがないことを、真壁は毎晩思い知らされる。
真壁は明日の対象階を予告できなかった。できるのは危険な勤務を止めるよう伝え、発生後の記録を失わないことだけだった。
消失者はチームの外にいる。班員は現場へ入るたび滞在と作業内容を記録し、同じ役割へ二十五日固定されないよう交代した。
原因を示す物質も装置も信号もない。規則らしきものが増えるほど、それを誰が何のために数えているのかという空欄だけが大きくなった。
特別班は現象を再現する実験を行わない。危険が疑われる人を検証のため勤務させることは、捜査ではなく犠牲を選ぶ行為になる。
消失者はチームの外にいる。班員は現場へ入るたび滞在と作業内容を記録し、同じ役割へ二十五日固定されないよう交代した。
原因を示す物質も装置も信号もない。規則らしきものが増えるほど、それを誰が何のために数えているのかという空欄だけが大きくなった。
(本文実測:714字)




