四階の朝・夜の記録
新宿の朝、特別班へ一本の通報が入った。次は品川の四階が空になる。階数が三ではなかったことで、単純な一段ずつの進行説が崩れる。 会議の最後に確定、推定、不明を三列へ分ける。現象へ名前を与えず、見た事実だけを次の班へ残す。
フロアには携帯電話、財布、上着が残り、飲みかけの茶からまだ湯気が上がっていた。人だけが失われ、持ち物の位置は動いていない。
真壁は映像に映らない瞬間を想像で補わない。消失した者の視点も、無人になった後にどこへ行ったかも、班が確認できる範囲の外だった。
家族への連絡は死亡通知ではなく行方不明として行われた。遺体も移動記録もない以上、警察がそれ以上を断言することはできない。
一度消えた者から連絡はない。声、映像、位置情報、遺留物のどれも戻らず、行方不明者名簿だけが長くなった。
会議室の壁には、消えた人の写真ではなく確認済みの条件だけが貼られた。家族へ返せる答えがないことを、真壁は毎晩思い知らされる。
特別班は現象を再現する実験を行わない。危険が疑われる人を検証のため現場へ立たせることは、捜査ではなく犠牲を選ぶ行為になる。
消失者はチームの外にいる。班員は現場へ入るたび滞在と作業内容を記録し、同じ役割へ固定されないよう交代した。
原因を示す物質も装置も信号もない。規則らしきものが増えるほど、それを誰が何のために選んでいるのかという空欄だけが大きくなった。
特別班は現象を再現する実験を行わない。危険が疑われる人を検証のため現場へ立たせることは、捜査ではなく犠牲を選ぶ行為になる。
消失者はチームの外にいる。班員は現場へ入るたび滞在と作業内容を記録し、同じ役割へ固定されないよう交代した。
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