一年後の席・名簿の差
正午、渋谷の現場写真が会議室へ届いた。二十日で退職した女性が一年後、元の業務へ復帰する。五回目の出勤を終えた翌朝、その席だけが空になった。 労務担当の白石理沙が出勤簿と契約書を照合し、消えた者と残った者の違いを一項目ずつ外していく。
白石は過去の勤務履歴を破棄しないよう企業へ求めた。忘れた日数が、復帰した本人へ予告なしに戻ってくる。
一年の空白も記録を消さない。退職期間中は増えなかったが、同じ仕事へ戻った日から残りの日数が再開した。
休職、退職、海外滞在の間に消失は起きていない。現象は人を追い続けるのではなく、業務参加を再開した時だけ数える。
「なぜ二十五日なのか」三上が書いた問いには、まだ一文字も答えがない。規則を見つけても、理由へ近づいたとは限らなかった。
一度消えた者から連絡はない。声、映像、位置情報、遺留物のどれも戻らず、行方不明者名簿だけが長くなった。
消失者はチームの外にいる。班員は現場へ入るたび滞在と作業内容を記録し、同じ役割へ二十五日固定されないよう交代した。
原因を示す物質も装置も信号もない。規則らしきものが増えるほど、それを誰が何のために数えているのかという空欄だけが大きくなった。
特別班は現象を再現する実験を行わない。危険が疑われる人を検証のため勤務させることは、捜査ではなく犠牲を選ぶ行為になる。
消失者はチームの外にいる。班員は現場へ入るたび滞在と作業内容を記録し、同じ役割へ二十五日固定されないよう交代した。
原因を示す物質も装置も信号もない。規則らしきものが増えるほど、それを誰が何のために数えているのかという空欄だけが大きくなった。
(本文実測:680字)




