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Aster Crown 〜100勝するのが面倒で100人乱戦に出たら優勝して、最強の仲間ができました〜  作者: 辛子高菜


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第八話 ランチ



協会での報告は思ったより大ごとになった。



 立ち入り禁止区域であることを依頼書に記載していなかったこと。


 黒金草の相場に対して、報酬が著しく低かったこと。


 新人ランカーに危険情報を伝えず採集へ向かわせたこと。



それらがまとめて問題視され、依頼料は大幅に修正された。


「報酬額は依頼者への罰金分と危険度を加味してこちらになります」


受付の女性に提示された金額を見て、ロッキーは目を丸くした。


「…え、こんなに?」


「本来なら最初からこの額に近い金額で出されるべき依頼でした」


「はぁ…」


ロッキーは受け取った報酬を見つめ、少し困ったように笑った。


その後ろで金髪の少年が腕を組む。


「だから言ったろ、完全に足元見られてたんだよ」


ロッキーは報酬袋をしまいながら、ふと振り返った。


「あの」


先ほど助けてくれた面々がロッキーを見る。


「ご飯、食べませんか」


赤髪の大男が片眉を上げる。


「ご飯?」


「はい、その…依頼料たくさん貰ったし、助けてもらったので」


 ロッキーは少し照れたように頬をかく。


「ちょうどお昼時だし、お気に入りのお店あるんです」


緑髪の男は呆れたように笑った。


「お人好しだなぁ」


「だめですか?」


「だめじゃないよ」


金髪の少年は肩をすくめる。


「ま、腹減ったしちょうどいいか」


赤髪の大男がにっと笑う。


「話してみたいと思ってたネ」


黒髪の女も頷く。


「いいわね、お腹空いたし」


最後に、紫髪の女はロックを一度見てから静かに頷いた。


「行きましょう」




ーーーーーーーーーー




ロッキーが案内したのは、協会から少し離れた通りにある小さな定食屋だった。


 木の看板に、手書きのメニュー

 店内には香ばしい焼き魚の匂いと、煮込み料理の湯気が漂っている


「ここ、安くて量が多いんです」


ロッキーは嬉しそうに言った。


「あと、お肉が美味しいです」


「肉好きネ」


赤髪の大男が笑う。


「山に住んでた時は干し肉とか魚がメインだったから、久しぶりに食べたら美味しくて…」


「それで肉の投稿だったのか」


少年が呟く。


「投稿?なんで知ってるんですか」


「お前、まだ自分が話題になってる自覚ねぇのか」


「えっと…ちょっと通知が多いなぁとは思いました」


「ちょっとじゃねぇだろ」


席に着き、それぞれ注文を済ませる。

しばらくして、出来立ての定食が並んだ。


ロックは目を輝かせ、


「いただきます」


そう言って食べ始める。


その顔があまりに幸せそうで、黒髪の女はつい笑った。


「本当に美味しそうに食べるのね」


「美味しいので」


ロックは真面目に答えた。



「自己紹介がまだだったネ」


赤髪の大男がニコッと笑い口を開く。


「俺の名前はペドロ・パウロ・ペレイラ・パウロ、よろしくネ」


 サングラスをかけた筋肉質の男だった。


 褐色の肌に、赤いブレイズヘア、そして髭、


 座っているだけで存在感がある。



ロッキーは箸を止める。


「えっと…ペドロ…」


「覚えなくていいネ、ポポって呼んでヨ」


「はい、ポポさん」


「さんはいらないヨ」



次に、緑髪の長身の男が短く名乗る。


「ソロ・シュトラウスだ」


 オールバックに整えられた緑の髪


 サイドは刈り上げられ、鋭い目つきはどこか刃物のようだった


「ソロさん」


「ソロでいい」


続いて、黒髪の女性がにこっと笑う。


「ビアンカよ、ビアンカ・クルス、よろしくね」


 ポニーテールの黒髪


 小柄な体に似合わない長い槍を背負った女性だった


「よろしくお願いします」


そして、小柄な少年が腕を組んだ。


「Jr.だ」


ビアンカがすぐに横から突っ込む。


「もう、ちゃんと名乗りなさいよ」


「必要ねぇだろ」


ロックはJr.を見て、少し迷ったあと言った。


「…子ども?」



空気が一瞬止まり、みんな笑い出す。


Jr.の眉が跳ねる。


「ガキじゃねぇよ」


「11歳は子どもネ」


「うるせぇ」


ビアンカがフォローするように微笑む。


「まぁ、マシンレースの常勝レーサーで、天才エンジニアだからただの子どもではないわね。マシン関係のお店も持ってるのよ」


それを聞いてロッキーの目がきらきら輝いた。


「…すごい人だ!」


「…まぁな」


Jr.は照れたようにそっぽを向いた。


ポポがにやにやする。


「照れてるネ」


「うるさい」


最後に、紫髪の女性が静かに口を開いた。


「バイオレット・チャイムズ」


 肩までの紫色の髪と、同じ色の瞳


 姿勢は美しく、余計な動きがない


 そこにいるだけで、空気が少し張り詰めるようだった


ロッキーは少し緊張したように頭を下げる。


「ロック・レオンハートです」


ポポが笑った。


「有名人ネ」


「えっ、俺がですか?」


Jr.が呆れたように魚の切り身を口に運ぶ。


「無自覚だなぁ」


「でも…何もしてないですよ」


「メレー優勝しといて、何もしてないとは驚きだな」


「それがなにか…」


Jr.は箸を置き、ロッキーを見た。


「知らねぇのか」


「普通は100勝しないとブロンズに上がれないけど、1回勝つだけで上がれるやつですよね?」


「その1回が重いんだよ」


Jr.は呆れ半分、感心半分の声で続ける。


「ブロンズランクがメインの乱戦で、ルーキーランクの、しかも本物の新人が勝てるわけねぇだろ!だから話題になってんだよ」


ロッキーは少し困ったように笑った。


「俺はただ、早く依頼を受けたくて…どうしようって困ってたら優しいお兄さんが1回勝てば上がれるイベントだって教えてくれたから参加しただけで…」


「そのお兄さん、ロブだろ」


「…そうですけど」


「あいつ…」


ため息をつき、天井を見上げる。

ポポが楽しそうに笑う。


「ロブも見る目ないネ」


Jr.は改めてロッキーを眺めた。


「どっかの国で傭兵やってたとかか?出身はどこだ」


「ベリスのずっと北にある山奥です」


「ベリス?」


ビアンカが首を傾げる。

ソロが静かに説明した。


「ここから西に列車で半日ほど行くとある港町だ、エルダー公国へと続く唯一の船が出ている」


「港町?行ってみたいなぁ」


ビアンカが興味深そうに呟く。

Jr.はロッキーを見た。


「そこに住んでたってのか?」


「はい、ずっと祖父と2人で住んでたんですけど、半年前に亡くなっちゃって」


ロッキーは少しだけ声を落とした。


「そこからは1人で暮らしてたんですけど、街に降りた時にランカーになると稼げるって聞いて」


「のこのこやってきたってわけか」


「あはは…そうですね」


ロッキーは笑った。

ポポが納得したように頷く。


「だから採集が得意なのネ」


「はい、小さい頃から祖父について森に入ってたので、剣も少し習いました」


Jr.が半目になる。


「少しってレベルじゃねぇと思うけどな」


ソロも静かに頷く。


「動きは訓練だけのものではなかった、森に慣れている」


「そうなんですかね」


「自分でわかってないのか」


「対人は祖父以外経験がないので…一度も勝ったことなかったですし」


「祖父何者だよ」


ビアンカはロックの服装を見ながら言った。


「でも装備はかなり心許ないわね、メレーの賞金は?」


「まだ使ってないです。事足りてますし、もったいないので」


「可愛い理由ね」


バイオレットはずっと静かに聞いていた。


ロックが肉を一口食べて、幸せそうに目を細める。


「美味しいなぁ」


その表情に、バイオレットの視線が少しだけ和らいだ。

Jr.はそれに気づいて、にやっとする。


「おいヴィオ、何見てんだ」


「何も」


「嘘つけ」


「うるさい」


ロックは二人のやりとりを不思議そうに見る。


「仲良いんですね」


Jr.が即答する。


「よくねぇ」


ポポが同時に言う。


「仲良いヨ」


ビアンカも微笑む。


「仲良しね」


ソロも短く言った。


「悪くはない」


バイオレットはため息をついた。


「勝手に言わないで」


ロックはふふっと笑った。


「いいですね」


その一言に、場が少し静かになる。

ロックは照れくさそうに続けた。


「俺、知らないことばっかりでよく分かんないし、こういう風に誰かとご飯食べるのも久しぶりで」


ポポの表情が少し柔らかくなった。

ビアンカも箸を置く。

Jr.は何か言いかけて、やめた。

バイオレットは静かにロックを見る。


「これから覚えればいい」


ロックが顔を上げる。


「え?」


「知らないなら、覚えればいい」


バイオレットは淡々と言った。


「騙されない方法も、依頼の選び方も、戦い方も」


ロックは少し驚いたあと、嬉しそうに笑った。


「はい」


その笑顔を見て、Jr.がぼそっと呟いた。


「放っといたら本当に騙され続けそうだな」


ポポが笑う。


「じゃあ、放っとかなければいいネ」


ビアンカが頷く。


「それがいいわ」


ソロは何も言わなかったが、否定もしなかった。


バイオレットは目を伏せる。


「…まだ、決めるには早い」


Jr.がにやりと笑う。


「ヴィオの“まだ”は、だいたい決まってる時の言い方だろ」


「うるさい」


ロッキーだけが何の話かわからず、首を傾げていた。



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