第四十五話 シルバーランク
配信で宣言した通り、ロッキーは翌日からランキングバトルを再開した。
ダンに負けた悔しさをただ抱えているだけではいられなかった。
「もっと強くなりたい」
そう言って、端末から対戦申請を入れた。
山での生活で身についた足運び。
祖父に叩き込まれた剣の扱い。
魔獣相手に生き残るための観察眼と勘。
それらはもともとロッキーの中にあった。
だが、それは全部荒削りだった。
ポポに吹き飛ばされ、ビアンカに間合いを潰され、ゾロに背後を取られ、バイオレットに転がされ続けた2週間。
そのすべてが、ロッキーの戦い方を少しずつ変えていた。
無駄に逃げない。
受けるべきところは受ける。
誘導する。
崩す。
決める。
ロッキーは淡々と勝利を重ねていった。
勝つたびに少しずつ注目は増えたが、本人は相変わらずだった。
《今日も勝てました!帰りにグレイのおやつ買います!》
そんな投稿ばかりしてJr.に呆れられた。
「もっと強そうなこと書けよ」
「強そうなこと?」
「“次も勝つ”とか」
Jr.にそう言われ、投稿する。
《明日も頑張ります!》
「そうじゃねぇよ」
そして残り10勝になった時、ちょうどメレーの開催日が来た。
「出るの?」
ビアンカが尋ねる。
ロッキーは頷いた。
「うん、メレーで勝てばちょうど100勝になるから」
Jr.が笑う。
「また派手なことしやがる」
「派手かな?」
「派手だよ。3回目で3連覇してシルバー昇格なんざ普通じゃねぇ」
ポポがロッキーの肩を叩く。
「でもロッキーらしいネ」
バイオレットは短く言った。
「あなたなら勝てる」
ロッキーは笑った。
「頑張ります!」
ーーーーーーーーーー
3回目のメレー。
ルーキーマントのロッキーはもう大穴ではなかった。
観客席には今回もロッキーコールが起きる。
ロッキーは少し照れながらそれでも剣を握る手は落ち着いていた。
試合開始。
今回も最初から囲まれた。
だが、ロッキーは慌てなかった。
1人目の突進を流す。
2人目を端へ誘導する。
3人目の攻撃を利用して、背後の相手を崩す。
危うさはもうない。
山で生きてきた野性はそのままに、仲間たちとの特訓で余分な動きが削ぎ落とされていた。
観客席のJr.が呟く。
「…仕上がってるな」
ターニャが笑う。
「記録のしがいがあるわ」
ポポも頷く。
「強くなってるネ」
最後の1人を場外へ落とした瞬間、歓声が沸き起こった。
Mr.Zの声が響く。
「優勝したのはまたもこの男!!ロック・レオンハート選手!!3連覇達成です!!!」
その言葉に会場がどよめく。
だがそこで声は切れない。
「そしてなんと!!ロック選手、これでブロンズランク通算100勝到達!!」
大型モニターに文字が映る。
Rock Leonhurt
Rank Up:Silver
ロッキーはそれを見上げて、少しだけ息を呑んだ。
「…シルバー」
それから、嬉しそうにガッツポーズをして笑った。
「やった!!」
観客席でグレイが「わふ!」と鳴く。
その日、ロッキーは正式にシルバーランカーとなった。
そしてxNestにはいつものように投稿された。
《シルバーランクになりました!今日はお祝いにお肉食べます!》
Jr.はそれを見て、頭を抱えた。
「だから、もっとこう…あるだろ」
バイオレットは小さく笑った。
「ロッキーらしいわ」




