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Aster Crown 〜100勝するのが面倒で100人乱戦に出たら優勝して、最強の仲間ができました〜  作者: 辛子高菜


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第四十一話 成長



ロッキーは満身創痍だった。

ダンとの試合に向けて、依頼の数は少しセーブしている。

その代わり、空いた時間のほとんどは訓練に使われていた。

相手をするのは、ポポ、ゾロ、ビアンカ、そしてバイオレット。

日によって違う。

時には二人がかり。

時には連戦。

メレー連覇前にも似たような特訓はあったが、今回は明らかに違った。


 重い


 速い


 容赦がない


ポポの一撃は、受ければ腕が痺れる。

ゾロの踏み込みは、気配が消える。

ビアンカは間合いの内側へ潜り込むのがうまい。

バイオレットに至っては、視界に入ったと思った瞬間には転がされている。


ヴィオいわく、


「センスはちゃんとある。でもまだ形ができていない。実戦経験が足りてない」


とのことだった。


その「足りてない」に、ロッキーは何度も地面へ転がされながら向き合うことになる。




ーーーーーーーーーー




その日も、訓練場の土の上でロッキーは大の字になっていた。


「…生きてるっ!」


「まだね」


ビアンカが木陰から歩いてくる。

手には水筒。


「はい」


「ありがとうございます…」


ロッキーは起き上がり、水を受け取る。

喉を通る冷たさに、ようやく体が少し戻ってきた気がした。


「…なんか前回よりもみなさん本気って感じがするんですけど」


ロッキーは水筒を握りながら言った。


「ダンってそんなにすごいんですか」


ビアンカは少し笑った。


「それもあるけど、それだけじゃないわよ」


「え?」


「メレー前の特訓の時は、対人戦闘に慣れていないあなたを鍛えるって感じだったけど、あなまはもう慣れてきてるでしょ?」


「慣れて…きてるのかな」


「きてるわよ」


ビアンカはロッキーの隣に腰を下ろす。


「私たちもいくら特訓だからって何もできない相手に本気を出すほど鬼じゃないの」


「そうなんですか」


「そうよ。前より私たちが本気に感じるなら、それだけあなたも強くなってるってこと」


ロッキーは黙った。

その言葉は、少しだけ胸に染みた。


「あなたがついて来られると思ってるから、みんなも本気を出してるのよ」


「…そうなんだ」


ロッキーは、自分の手を見る。

槍に打たれた手はまだ震えている。

けれど、その手は以前より早く剣を振れるようになっている。

避けるだけだった攻撃に、少しずつ返せるようになっている。

逃げ道を探すだけだった目が、相手の隙を探すようになっている。

ビアンカはにこっと笑った。


「まぁ、まだ全力じゃないけどね」


「ひっ」


思わず変な声が出る。

そんなロッキーをみてビアンカは楽しそうに笑う。


「大丈夫、死なない程度にするから」


「それ、最近みんな言うんですけど安心できないんですよね…」




ーーーーーーーーーー




最初は一方的だった。

ポポの圧に押し潰され、ゾロの速度に翻弄され、ビアンカに懐へ入られ、バイオレットには触れられたことすら分からず倒された。

けれど今は少しだけ違う。


ポポの一撃を受け流せる時がある。

ゾロの気配を一瞬だけ拾える。

ビアンカの入りを足で止められる。

バイオレットの影をほんの少しだけ目で追える。


ほんの少し。

それでも、前にはなかったものだった。

それをロッキーも訓練の中で実感していた。




ーーーーーーーーーー




休憩時間になると、ロッキーはラウンジのソファへ倒れ込む。


「グレイ…癒して…」


「わふ」


グレイは慣れたようにロッキーの胸元へ乗り、もふっと体を寄せた。


「あー…生き返る」


その様子を見て、ターニャが苦笑する。


「はいはい、ついでに本当に生き返らせてあげるわ」


淡い光がロッキーの肩や腕を包む。

ターニャの回復魔法は、いつも優しかった。


「ありがとうございます…」


「無理しすぎないこと」


「…みんなが無理させるんです」


「それはそうね」


否定はしなかった。




ーーーーーーーーーー




その日何度目か分からないほどバイオレットに転がされて戻ると、Jr.がグレイにおやつをやっていた。


「ほら、美味しそうなの見つけたから買ってきてやったぞ」


「わふ」


「高かったんだからすぐ飲み込むなよ、ゆっくり噛んで味わえ」


「…わふ」


ロッキーはふらふらと近づく。


「グレイにおやつあげてくれてたの」


「勝手に寄ってきたんだよ」


「ありがとう」


「ほら、ご主人様が来たぞ」


「わふっ」


グレイはすぐに駆け出し、ロッキーの足元へ飛びついた。


「ただいま、グレイ」


ロッキーはしゃがみ込み、両腕で抱きしめる。


「今日も転がされたよ」


「わふ」


「慰めてくれてる」


「たぶんな」




ーーーーーーーーーー




寝る前はターニャが探してきたダンの試合映像を見て研究する時間だった。

ラウンジの大きなモニターにダンの姿が映る。

赤いバンダナ。

褐色の肌。

両手に持つ短めの剣。

軽い足取り。

何度見ても無駄のない、仕上がった動きだった。


「…この人と戦うのか」


映像の中のダンは楽しそうに戦っていた。

遊ぶように、けれど確実に相手を追い込んでいる。

強い。

ただそう思った。




ーーーーーーーーーー




昼ごはんを食べてくつろいでた時、ロッキーの端末が鳴った。


「あ、ダンからだ」


全員の視線が集まる。

ロッキーは少し緊張しながらメッセージを開いた。


『試合は10日後、協会の演習場を借りて行う。

非公開って言ったけど、ギルドのメンバー数名の応援はOKってことでどうだ?

1人より安心だろ。

うちのギルドからは2人連れてく予定だ。

何か分からないことがあったら連絡くれ。』


ロッキーは読み上げてから、顔を上げた。


「応援、来てもいいみたいです」


Jr.がすぐ言う。


「行く」


「即答」


「Aster Crownの名前背負ってんだ、見届けるに決まってんだろ」


ターニャが端末を構える。


「記録は?」


「非公開だって」


「なら内部資料ね」


「撮る気だ」


ビアンカはロッキーの肩を叩く。


「あと10日、仕上げましょう」


ロッキーはそっとグレイを抱きしめた。


「…グレイ、俺まだまだ転がされるみたい」


「わふ」


バイオレットが立ち上がった。


「休憩は終わり」


「今メッセージ読んだばっかりなのに」


「10日しかない」


その声は厳しかった。

けれど、ロッキーを見る目には確かに期待があった。

ロッキーは立ち上がる。

体はまだ痛い。

でも、不思議と嫌ではなかった。


「はい、お願いします」





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