第四十話 鍛える
「ダンと試合するって!?」
ビアンカの声がギルドハウスのラウンジに響いた。
ロッキーはグレイを抱いたままびくっと肩を跳ねさせる。
「う、うん」
「なんでそんなことに!?」
「公園で会って話してたら…戦ってみる?って言われて、面白そうだからOKした」
「軽すぎるわよ!」
ポポが頷きながら腕を組む。
「ダンは強いヨ」
ソロも静かに頷いた。
「Ophiuchusに入った男だ。並の相手ではない」
ターニャが端末を操作しながら言う。
「非公開試合とはいえ、噂にはなるでしょうね」
Jr.がソファにもたれて鼻を鳴らした。
「Aster Crownの名前背負ってんだ。だっせぇ負け方はできねぇぞ」
「えっ、そんなに?」
「そんなにだ」
ロッキーは困ったようにグレイを見る。
「グレイ、俺大変なことしたかも」
「わふ」
バイオレットが静かに立ち上がった。
「なら、準備すればいい」
「準備?」
「今日から鍛える」
ロッキーの顔が固まる。
「今日から?」
ビアンカが笑顔で肩に手を置いた。
「大丈夫、死なない程度にするから」
「死ぬ可能性がある言い方」
ポポが拳を鳴らす。
「まずは耐久ネ」
ソロが木刀を取る。
「回避も見る」
ターニャが端末を構えた。
「動きの癖を記録するわ」
Jr.が立ち上がる。
「逃げんなよ」
バイオレットは短く言った。
「私も相手する」
「…俺、死なないかな」
「「「「「「死なないようにする」」」」」」
その日から、ロッキーはみんなにしばかれ…鍛えられることになった。
手始めに今のロッキーの実力を見るために1人ずつ順番に相手をすることになった。
結果は、ポポに吹き飛ばされ、ゾロに背後を取られて足をはらわれ、ビアンカとは間合いを詰められず翻弄され、バイオレットに容赦なく転がされた。
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ーー夜
ラウンジの床で大の字になったロッキーがかすれた声で呟く。
「グレイ…俺、生きてる?」
「わふ」
応えるようにグレイが顔を舐める。
Jr.が横から言った。
「まだ死んでねぇならもう一回できるな」
「お、おに…」
ポポが笑う。
「強くなるネ」
バイオレットはロッキーを見下ろして、少しだけ口元を緩めた。
「あなたの力はわかったわ、明日からちゃんとやるわよ」
「…はい」
Aster Crownのメンバーによる特訓は、優しさと暴力の境目がやや曖昧だった。




