第三十七話 グレイと初配信
ロッキーとグレイの初配信はターニャの想像以上に穏やかだった。
場所はAster Crownの庭。
芝生の上に座ったロッキーの隣で、グレイがちょこんと前足を揃えている。
「えっと…こんにちは!ロッキーです」
「わふっ!」
「グレイもいます」
コメント欄が一気に流れた。
『かわいいいい』
『鳴いた!』
『わふってなに』
『挨拶できるウルフ』
『遠吠えできない赤ちゃん』
『グレイかわいい』
『ロッキー緊張してる?』
「…はい、緊張してます」
ロッキーは正直に答えた。
横でサポートしているターニャが笑う。
「自然体でいいのよ」
「自然体…」
ロッキーは少し考えてグレイの頭を撫でた。
「今日は、グレイの好きなおやつの話をします」
「わふっ」
「これはこの前買ったやつ、鹿肉が使われていてよく食べます」
コメント欄がまた盛り上がる。
『おやつ紹介きた』
『案件?』
『違うだろ、この子絶対自腹』
『グレイのお気に入り知りたい』
『首輪似合ってる』
ーーその瞬間。
500X yas4a『グレイのおやつ代』
画面に表示が出た。
ロッキーが固まる。
「え」
1,000X Lenalee『いっぱい食べて』
300X ban333『首輪似合ってる』
「またお金…」
ロッキーは目を丸くしてターニャを見る。
ターニャは横で楽しそうに笑っていた。
「おやつ代ですって」
2,000X reina_o『グレイくんに美味しいおやつを』
ロッキーは困った顔でグレイを見る。
「グレイ、おやつ食べたい?」
「わふっ」
「食べたいらしい」
コメント欄が沸いた。
『買ってあげて』
『グレイが言うなら仕方ない』
『お金大事だけど可愛い子のおやつも大事』
『ロッキー折れたw』
『わふは肯定』
『稼ぐウルフ』
ロッキーはグレイを見つめて真剣に悩んだ。
投げ銭はありがたい。
でも、お金は大事だ。
簡単に受け取っていいのかまだよく分からない。
けれど、尻尾を振りながらグレイが膝に顎を乗せてくる。
「…グレイのおやつ代なら」
ロッキーはカメラに向かって、ぺこっと頭を下げた。
「ありがたく受け取ります!グレイのおやつに使います!ありがとうございます」
その素直さに、また投げ銭が飛んだ。
500X udgw『素直でえらい』
700X yui_t『おやつ報告待ってます』
1,000X kova84『グレイと半分こして』
「半分こ…俺、グレイのおやつ食べられるかな」
ターニャが吹き出した。
「食べなくていいわよ、別に買いなさい」
「あ、そっか」
『食べる気だったw』
『ロッキーもおやつ買って』
『人間用も買って』
『ターニャ止めてくれてありがとう』
グレイは何も分からない顔でロッキーの膝に丸まった。
「グレイ、人気者だね」
「わふ」
「うん、すごい」
ロッキーは嬉しそうに笑った。
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ーー配信後
Aster CrownのラウンジでJr.は切り抜きを見ながら腹を抱えて笑っていた。
「“お金大事だけど可愛い子のおやつも大事”だとよ」
画面の中では困った顔のロッキーがグレイに相談している。
ポポは実物のグレイを撫でながら言った。
「グレイも人気者ネ」
「わふ」
ロッキーは膝の上のグレイを抱きしめる。
「よかったねグレイ、おやつたくさん買えるよ」
「わふっ!」
グレイはしっぽを振って答えた。




