第三十五話 デビュー?
渓谷からの帰り道。
夕陽に染まる街道を、ターニャとロッキーとグレイは並んで歩いていた。
ターニャはふと思い出したように言う。
「ねぇロッキー」
「はい?」
「あなた、xTubeやればいいじゃない」
「…ターニャさんがやってる?」
「そう」
ターニャは当然のように言う。
「景色巡りでも、採集でも、グレイとの散歩でもいいし」
「いやいや、喋ることなんて…」
「あるじゃない」
「え?」
「山の話とか、薬草の見分けとか、生き物のこととか、あなた本人も面白いし」
「本人が…面白い?」
「天然って意味で」
「褒めてます?」
「当たり前じゃない」
ロッキーは苦笑した。
「でも、そんなの見たい人いますかね」
「いるわよ」
ターニャは即答する。
「しかも小銭稼ぎになる」
ロッキーがぴたっと止まる。
「…お金になる?」
「広告とか投げ銭とか案件とかね」
「案件」
「商品紹介してほしいとか」
ロッキーは真顔になった。
「…グレイのおやつ、もっと買えますかね?」
「買えると思う」
「おもちゃも?」
「買えると思う」
「服も?」
「買えると思う」
ロッキー、黙る。
真剣な顔で考え込み始める。
ターニャが吹き出した。
「そこ全部グレイなのね」
「いや、だって」
グレイの頭を撫でる。
「グレイ、おやつ好きだし…」
「わふ」
「おもちゃも1個しかないし…お金全部使って節約中だし…」
「もう考えてるじゃない」
ロッキーは腕を組む。
「景色紹介しながらグレイ映して…」
「うん」
「採集した薬草の解説とかして…」
「うん」
「グレイに芸させる…」
「強いわね」
ロッキーは完全にスイッチ入っていた。
「…少しいいかも」
ターニャがにやっとする。
「でしょ?」
「でも配信って難しそうですよ」
「そこは私が教える」
「えっ、いいんですか」
「やってみる?」
ロッキーは少し照れて笑う。
「なんか、面白そうですね」
「決まりね、とりあえず1回、やってみましょう」
「はい!」




