第三十四話 撮影
ターニャとのお出かけはだいたい景色のいい場所だった。
今回はジニアから東の方にしばらく行ったところにある白い岩肌が続く渓谷。
青く透き通った川が流れ、風が吹くたびに草花が揺れる。
ロッキーはグレイの首元を撫でながら感嘆の声を漏らす。
「すごい…ここ、ほんとに綺麗ですね」
「でしょう?」
ターニャは撮影用の小型ドローンを飛ばしながら笑った。
「前から撮りたかったの、ロッキーとグレイなら画になると思って」
「俺、ただ歩いてるだけですけど…」
「それがいいのよ」
グレイが川辺に鼻を近づける。
ロッキーは慌ててしゃがんだ。
「グレイ、落ちないでね」
「わふ」
ターニャはすぐに端末を構える。
「今の撮ったわ」
「え、今のも?」
「もちろん、今日の目玉候補ね」
しばらく歩いて、岩陰で休憩することになった。
ターニャはバッグから小さな包みを出す。
「はい、今日の分」
ロッキーは差し出された封筒を見て目を丸くした。
「え?これ」
「バイト代」
「いや、でも俺ついてきて動画撮ってもらってるだけですよ?」
「違うわ」
ターニャはきっぱり言った。
「あなたとグレイがいるから動画になるの、だからこれは対価」
「でも、俺も楽しかったし…」
「楽しくても仕事は仕事よ」
ターニャは封筒をロッキーの手に押し込む。
「ちゃんともらって」
ロッキーは困ったように封筒を見る。
「…いいんですか?」
「いいの」
「じゃあ…グレイのおやつ買います」
「ふふ、そう言うと思った」
グレイがロッキーの膝に顎を乗せた。
ロッキーは嬉しそうに笑う。
「グレイ、おやつ代稼いだよ」
「わふ」
ターニャはその横顔を見て、少しだけ柔らかく微笑んだ。
「その顔も見たかったのよ」
「え?」
「なんでもないわ」
夕方、ターニャのxNestには一枚の写真が投稿された。
川辺に座るロッキー
その膝に顎を乗せるグレイ
文章は短い。
《#本日のロッキー グレイを添えて》
コメント欄はすぐに賑やかになった。
『可愛い』
『マイナスイオン出てる』
『ロッキー&グレイは癒し』
『ターニャ姉ありがとう』
『景色よりロッキー見てしまう』
コメント欄を眺めてターニャは呟く。
「…いいわね」




