第三十二話 シルバーウルフ③
ターニャの #本日のロッキー の投稿には色々なコメントがついていた。
『ロッキー配信してよ〜』
『投げ銭したい』
『お金あげたい』
『足しにして』
『ロッキーのためなら投げる』
それを見てJr.がにやにやした。
「配信して投げ銭貰えばいいのに」
「えぇ…」
「匿名で10万くらい届くかもしれねぇぜ」
「10万」
その言葉に思わず惹かれたが、ロッキーは少し考えて首を振った。
「それは、なんか違う」
「違う?」
「応援してくれるのは嬉しいし、投げ銭も自分で稼いだお金なんだろうけど…」
ロッキーは小さく拳を握った。
「今回は自分の足で稼ぎたい。買うのは命だから、買ってからも責任がある物だからちゃんとしたい」
Jr.は少し黙ったあとふっと笑った。
「頑固だな」
「そうかな」
「そうだよ」
けれど、その声はどこか優しかった。
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ーー2週間後
ロッキーは何度も残高を確認した。
「依頼分が入って…素材の売却分がこれで…Jr.が買ってくれた鉱石が…」
何度も計算する。
何度も見直す。
「…届いた」
ロッキーの目がぱっと輝いた。
「やった!」
そのまま立ち上がる。
「行ってきます!」
ポポが笑う。
「ついにネ」
ビアンカも手を振る。
「気をつけてね」
バイオレットは静かに頷いた。
「迎えに行ってらっしゃい」
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ーートゥリパの市場
あの店に着くまでロッキーは不安だった。
もういなかったらどうしよう。
誰かに買われていたら。
不安になりながら、店の前に立つ。
そしてーー
「…いた」
銀色の幼体は、2週間前と同じように丸いクッションの上にいた。
額の月の模様にきゅるんとした目。
ロッキーを見ると、小さく鳴いた。
「わふっ」
ロッキーはありの前でしゃがみ、視線を合わせて笑った。
「迎えに来たよ」
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ウルフを連れてギルドハウスに戻ると全員が待っていた。
「ただいま!」
ロッキーの腕の中には、銀色でもふもふな小さなシルバーウルフ。
ターニャが胸を押さえる。
「可愛い…」
ビアンカも目を輝かせる。
「本当に綺麗な子ね」
「小さいネ」
Jr.は腕を組む。
「ちゃんと世話しろよ」
「うん!」
バイオレットが静かに覗き込む。
シルバーウルフはロッキーの腕の中で、ふわっと尻尾を揺らした。
「名前は何にするの?」
ターニャが聞く。
「んー…」
ロッキーは小さな額の月模様を見る。
銀色の毛並み。
森の影みたいな柔らかい灰色。
「わふっ」
その声を聞いて、ロッキーは笑った。
「…グレイ」
シルバーウルフがもう一度鳴いた。
「わふ!」
「うん、グレイだね」
ロッキーは嬉しそうに抱きしめた。
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その夜、ロッキーはxNestに投稿した。
《なんとか迎えられました!名前はグレイです。これから一緒に頑張ります。よろしくお願いします!》
添えられていたのは銀色の小さなウルフを抱いてにこにこ笑うロッキーの写真。
コメント欄はすぐに溢れた。
『おめでとう!!』
『グレイ可愛い!』
『ロッキーも可愛い』
『自分で稼いで迎えたの偉すぎる』
『Aster Crownの新メンバー?』
『幸せになって』
『ロッキーに選ばれしウルフ羨ましい』
ロッキーはコメントを見ながらグレイをそっと撫でた。
「よろしくね、グレイ」
「わふ」
ロッキーに、Aster Crownに、新しい家族が増えた。




