第三十一話 シルバーウルフ②
それからロッキーは朝から晩まで依頼をこなした。
採集
荷運び
簡単な討伐
素材の納品
運搬の護衛
少しでも報酬のいい依頼を見つけると、すぐに予定を確認して走っていく。
「ロッキー、少し休んだら?」
ビアンカが心配して声をかけると、ロッキーは笑った。
「大丈夫です。あと少しなので」
Jr.が工具を置いて言った。
「金なら貸すぜ」
ポポも頷く。
「俺も出すヨ」
ターニャも手を上げる。
「私も出せるわよ」
けれどロッキーは、首を振った。
「ありがとうございます。でも借りたお金で生き物買うのは違う気がして」
Jr.が眉を寄せる。
「違う?」
「うん、俺が欲しいって思った子だから俺の力でちゃんと迎えに行きたい」
そう言われると、誰も無理には言えなかった。
バイオレットは少しだけロッキーを見つめてから言った。
「分かった」
ロッキーがほっとした顔をする。
けれど、その翌日からAster Crownの動きは変わった。
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「ロッキー、これ一緒に行くネ」
ポポが持ってきたのは運搬任務だった。
「報酬はいいけど、荷物が多くて1人じゃ面倒ネ」
「いいんですか?」
「手伝ってくれたら助かるヨ」
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「ロッキー、この護衛任務一緒に行かないか」
「え、でもこの任務ランク高いです。ソロの邪魔にならないかな…」
「何事も経験だろう。それにお前ならうまくやれる」
「…ありがとうございます。よろしくお願いします」
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「ロッキー、鉱石採集の依頼あるわ」
ビアンカは地図を広げる。
「素材としても欲しいし、一緒に行きましょう」
「でもビアンカ忙しいんじゃ」
「忙しいわよ、でも素材も欲しいの」
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「ロッキー、この討伐2人で行きましょう」
バイオレットが依頼書を差し出す。
「報酬は折半、問題ある?」
「ないです!」
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「ロッキー、配信兼ねて景色のいい採集地に行きましょう」
ターニャはにこにこしていた。
「動画の素材にもなるし、あなたは報酬も入る、完璧ね」
「ターニャさん、ありがとうございます」
「これも仕事よ」
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Jr.は何も言わず、ロッキーが行こうとしてた依頼書を手に取る。
「この鉱石、俺ならもっと高く買い取る」
「え、でも市場価格より高くならない?」
「必要なんだよ、問題ねぇ」
「ほんと?」
「俺が嘘つくか」
ロッキーは少し考えたあと、笑った。
「Jr.は優しいね」
「うるせぇ」
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お金を出せないなら、一緒に稼ぐ。
Aster Crownの面々はそう決めたようだった。
ロッキーはそれに気づいていた。
気づいていたけれど、断れなかった。
自分の考えを曲げないように手伝ってくれる、みんなの気遣いが嬉しかったから。
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そんな様子をターニャはxNestに投稿していた。
《#本日のロッキー
欲しい子を迎えるために朝から依頼を頑張っています。
「借りたお金で生き物を買うのは違う気がする」らしい。
Aster Crown総出でただいま金策中。》
添えられていたのは依頼帰りのロッキーの写真だった。
少し疲れているけれど目はきらきらしている。
手には採集袋。
隣にはなぜか大量の鉱石を抱えたポポ。
投稿はすぐに伸びた。
『いい子すぎる』
『お金貸してあげたい』
『Aster Crownあったかい』
『何を迎えるの?』
『ロッキーが欲しがるもの、絶対可愛い』
ターニャはコメントを見ながら満足げに笑った。
「ほら、みんな応援してるわよ」
ロッキーは少し照れたように頬をかいた。
「ありがたいですね」
「進捗は?」
「あと、6万ちょっとです」
Jr.が横から言う。
「明日の依頼でだいぶ詰められる」
ポポも笑う。
「もう少しネ」
ビアンカが優しく言った。
「迎えに行けるわよ」
バイオレットは短く頷く。
「きっと間に合う」
ロッキーはその言葉を聞いて胸の奥が熱くなった。




