第二十九話 ダン③
ーー王都ヴェルベナの南にある街カレンデュラ
その高台に建つ、Ophiuchusのギルドハウス。
Aster Crownが温かな共同住宅ならこちらはどこか要塞めた雰囲気だった。
広い敷地をぐるりと囲む石造りの重厚な外壁に四隅を見張る監視塔。
内部には探索資料や魔導機材が並び、強豪のギルドらしい空気がある。
「ただいま〜」
ダンがのんびりと入ってくる。
肩にはソル、そして腕にはダークウルフの毛皮。
奥のラウンジで、長身の青髪の青年が本を閉じた。
「おかえり、どこ行ってたんだ?」
ジャック=ポット
Ophiuchus所属のランカーで、ダンの悪友でもある。
ダンは毛皮を投げて渡す。
「ちょっと協力依頼にね、ほら、ダークウルフの毛皮だよ、探してただろ」
ジャックは受け取り、毛皮を観察して目を細める。
「相変わらず仕留め方が美しいな」
「はは、ありがとう」
ソルも胸を張る。
「ソルモヤッタ!」
「お前は見てただけだろ」
「ミテタ!」
ジャックが笑う。
「で、誰の協力依頼だ」
ダンがにやっとする。
「ロッキー」
一拍。
ジャックの眉が上がる。
「…Aster Crownの?」
「そう」
「お前、面白いとこ行ったな」
ダンは椅子にどかっと座る。
「面白かったぜ、ほんとに噂通り変なやつだった」
「褒めてるのか?」
「もちろん」
ーーその時
ばたばたばたっ!!
廊下の奥からすごい勢いの足音。
ダンが顔を上げる。
「…見つかっちゃったかな」
勢いよく現れたのは、柔らかな茶髪をポニーテールにしたリナリーだった。
くつろげるはずのギルドハウスの中にいるはずなのに、どこか顔が真剣すぎる。
「ちょっと!!」
ダンが耳を塞ぎかける。
「ロッキーと相互になってるのどういうこと!?」
ジャックが吹きだす。
「そこかよ」
「んー?」
「んー?じゃない!」
「だってロッキーの協力依頼受けてきたんだもの」
ソルが横から元気に叫ぶ。
「ロッキー!イイヤツ!オレ!ホメラレタ!」
「なっ…」
「ロッキー!カワイカッタ!」
「うるさい!」
ダンは面白そうに笑っている。
リナリーがぐいっと距離を詰める。
「なんで誘ってくれないのよ!」
「だって募集人数1人だったし」
「じゃあ私に譲りなさいよ」
「無茶言うなよ〜、俺も気になってたんだぞ」
「私だってロッキーと採集したかった!」
「ファンかよ」
「ファンだけど!?」
ジャック=ポットは肩を震わせている。
「認めたぞ今」
リナリーはもう顔が真っ赤だ。
「だってメレーから見てたし…」
「へぇ」
「てか知ってるでしょ!言わせないでよ!」
ダンはxNestのフォロー欄を見せるようにする。
「相互フォローにもなりました」
「やめて!見せるな!!」
「また誘ってもいいですか、って言われました」
そう言ってピースする。
「……え」
「面白いからいいぜって言っといた」
意地悪そうにニヤリと笑う。
リナリーは数秒固まったのち口を開いた。
「…ずるい」
「なんでだよ」
「私も話したい」
「リナリー、シット!」
「嫉妬よ!わるい!?」
「今度紹介してやるよ」
ダンがあっさり言うと、リナリーの動きがぴたっと止まる。
「…え」
「今度また協力依頼あったらちゃんとリナリーを誘う」
「ほんと?」
「ほんと」
その瞬間、リナリーの顔がぱぁっと明るくなる。
「単純」
「うるさい」
ダンは椅子にもたれて笑う。
「しかし、妙に人懐っこかったな」
「どうだった?」
ジャックが聞く。
ダンは少し考えて、ぽつり。
「強い」
「ほう」
「でもそれより…放っとけない感じする、目が離せないと言うか」
ソルが羽ばたく。
「ロッキー、イイコ!」
リナリーが真顔で頷く。
「それは知ってる」
「会ってねぇだろ」
「知ってる、切り抜き見てるし」
ジャックがため息混じりに笑う。
「また面倒なやつが増えそうだな」
ダンは口元を上げた。
「もう増えてるよ」




