第二十五話 写真
その日のロッキーはターニャに教わりながら写真を撮っていた。
場所はギルドハウスから少し離れた丘の上。
街並みが見渡せて、反対側には薄く山の稜線が重なっている。
夕陽が草を金色に染めていて、風が吹くたびに景色全体がゆっくり揺れているようだった。
「ロッキー、少し右」
「右?」
「そう、その木を端に入れて空を広めに」
「こう?」
ロッキーは端末を構え直し少しだけ角度を変えた。
「そう、そのまま撮ってみて」
ぱしゃり。
画面に映った写真を見て、ロッキーは目を輝かせた。
「おぉ…なんか、さっきより綺麗」
ターニャは満足そうに頷く。
「上達したわね」
「ほんと?」
「えぇ、最初はただ「綺麗!」って撮ってたけど、今はちゃんと見せたいものを考えて撮れてる」
ロッキーは嬉しそうに写真を見つめた。
「へへ…部屋に飾ろう」
「いいわね、プリントして額に入れましょう」
「額!」
「せっかくだもの、今から買いにいきましょう」
「うん!」
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ギルドハウスに帰り、買ったばかりの額に写真を入れながらロッキーはにこにこしていた。
「コレクション、ちょっとずつ増えてきたなぁ」
そう言った時だった。
背後から静かな足音が近づいてきた。
「ロッキー」
振り返ると、バイオレットが立っていた。
「ヴィオ」
「いい写真ね」
「でしょ?ターニャが教えてくれたんだ」
ロッキーがぱっと笑う。
ターニャはその表情を見て、目だけでにやにやした。
バイオレットはロッキーの隣に立ち、端末を差し出す。
「これ、私のお気に入りの場所」
画面には、1枚の写真が映っていた。
高い崖の上から見下ろす湖。
水面は淡い青に輝いていて、周囲を白い花が囲んでいる。遠くの山の影が湖に映り込み、空と地上の境目がわからないほど綺麗だった。
ロッキーは息を呑んだ。
「…えぇ、すごい」
しばらく画面から目が離せない。
「行きたいなぁ」
ぽつりと、本音がこぼれた。
バイオレットは少しだけ目を細める。
「今度連れてってあげる」
ロッキーは顔を上げた。
「えっ、いいの!?」
「うん」
「ほんとに?」
「ほんと」
ロッキーの顔が一気に明るくなる。
「行きたい!絶対行きたい!」
「じゃあ、晴れた日に」
「うん!」
ロッキーはもう一度写真を見て、嬉しそうに笑った。
「ヴィオのお気に入りの場所、見てみたい」
バイオレットは一瞬だけ黙った。
それから、ほんの少しだけ視線を逸らす。
「…そう」
ターニャが横で小さく呟いた。
「あらあら」
バイオレットがすぐに見る。
「何」
「何でもないわ」
「その顔は何かある顔」
「ただ、いいなぁと思って」
「ターニャ」
ターニャはにこにこしている。
「写真、撮ってあげましょうか?今の2人絵になるわよ」
「いらない」
バイオレットは即答した。
ロッキーはきょとんとする。
「え、撮らないの?」
バイオレットが少しだけ困った顔をした。
「…あなたが撮りたいなら」
ターニャの目が輝く。
「あらあらあら」
「ターニャ」
「はいはい、黙って撮るわ」
そう言ってターニャはカメラを構えた。




