第二十三話 日常
ギルドに入っても生活が大きく変わったわけではなかった。
朝起きて依頼を確認する。
ソロランクに挑戦する。
採集依頼を受ける。
たまにターニャさんに誘われて綺麗な景色を見に散歩へ行く。
Jr.さんに依頼書の読み方を怒られ、
ビアンカに服を着せ替えられ、
ポポにギャンブルに誘われてはターニャさんにから一緒に怒られ、
ソロに足運びを見られ、
ヴィオに訓練で転がされる。
そういう毎日だった。
ただ、少しだけ変わったこともある。
街で声をかけられることが増えたのだ。
「Aster Crownのロッキーだ」
「メレー連覇の子だよな」
「今日も採集?」
名前の前にギルド名がつくようになった。
ロック・レオンハートではなくAster Crownのロッキー。
それは少しくすぐったくて、少しだけ背筋が伸びる響きだった。
変な依頼を受けないように気をつけるようになった。
投稿の写真も、前より少しだけ考えて撮るようになった。
知らない人から声をかけられたら、すぐ返事をせず誰かに相談するようになった。
自分1人の失敗では済まない、そう思うと少し緊張した。
でも、嫌ではなかった。
なにより、俺はもう1人ではなかった。
祖父が亡くなってから半年、1人だった。
朝起きても誰もいない。
ご飯を食べても話す相手はいない。
森で綺麗な景色を見つけても共有する相手がいない。
それが普通になっていた。
でも今は違う。
「ロッキー、朝ごはん冷めるわよ」
「ロッキー、今日の依頼見せろ」
「ロッキー、今度の場所は絶対好きよ」
「ロッキー、肉食べるネ?」
名前を呼ばれる。
帰る場所がある。
ただいまと言えばおかえりが返ってくる。
それは、祖父が亡くなってから本当に久しぶりの感覚だった。
庭が見える自分の部屋で、ロッキーは首元に刻まれた藍色のギルドマークにそっと触れた。
「…俺、ここにいていいんだな」
小さく呟く。
そしてこれからもここでみんなと一緒に笑っていたい、そう思った。




