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Aster Crown 〜100勝するのが面倒で100人乱戦に出たら優勝して、最強の仲間ができました〜  作者: 辛子高菜


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第十九話 2回目のメレー



ーーメレー当日


会場は先月以上の熱気に包まれていた。


中央の円形ステージを囲む観客席は満員、頭上の大型モニターには参加者の名前と番号、そして賭けのオッズが次々と表示されている。



Jr.は端末を見て思いきり舌打ちした。


「ちっ、儲けらんねぇじゃねぇか!」


ポポが隣で笑う。


「それだけ人気あるってことヨ」


端末の画面にはロック・レオンハートの名前。

前回ルーキーランクでメレーを制した黒髪の新人。

今回はブロンズランカーとしての参加だった。

だがすでにオッズは低い。

前回の大穴扱いが嘘のようだった。


「みんなロッキーに賭けてるわね」


ターニャが楽しそうに言う。


「1ヶ月でここまで変わるものなのね」


ビアンカも頷く。


「マントもすっかり目印になったし」


ソロはステージを見下ろした。


「前回より動きが整っている。依頼をこなして実戦慣れしたな」


バイオレットは何も言わずステージ中央を見ていた。

そこには、マントを羽織ったロッキーが立っている。

本人は相変わらず落ち着かなさそうに観客席をきょろきょろ見回していた。




ーーーーーーーーーー




大型モニターに、金髪ポンパドールの男が映る。


「今月もやってきました!メレー!」


Mr.Zの声に会場中が歓声を上げる。


「先月、誰もが予想しなかった大番狂わせを起こした男!ルーキーランクから一気にブロンズランクへと駆け上がったルーキーマント!」


モニターがロッキーを映す。


「ロック・レオンハート選手ーーーー!!」


Mr.Zの煽りに会場が盛り上がる。


「ロッキー!」


「ロッキー!」


「ロッキー!」


いつの間にか、客席からロッキーコールが起こる。

ロックはびくっと肩を跳ねさせた。


「え、俺…?」


周囲の参加者が苦笑する。


「他に誰がいるんだよ」


「人気者だな、ルーキーマント」


ロックは照れくさそうに頭をかいた。

その様子がまたモニターに映り、観客席から笑いと歓声が起こる。

Jr.が顔をしかめた。


「アイドルかよ」


ターニャが端末を構える。


「いい画ね」


「撮るな」


「撮るわよ、可愛いもの」




ーーーーーーーーーー




そして試合開始。


ブザーが鳴ると同時に、参加者たちが一斉に動いた。

今回もロックは最初から狙われた。


「前回王者を落とせ!」


「囲め!」


「マントから行け!」


数人が同時に迫る。

前回ならロックはまず逃げ道を探していた。

だが今回は違った。

剣を低く構え、足を滑らせるように動く。

最初に迫った男の大剣を、正面から受けない。

半歩横へ。

剣先を流し、相手の腕の下に入り込む。

魔獣の突進を避ける時と同じ動き。

ロックは柄で相手の肘を打ち、体勢を崩したところで背中を押す。


「うわっ!」


 1人目、場外。


次に槍使いの男。

突きを見てから避けるのでは遅いということをビアンカとの訓練で学んだロッキーは相手の肩が動いた瞬間、すでに横へ抜けていた。

槍が空を切る。

ロッキーは柄を蹴り、相手の重心を潰す。


「なっ」


そのまま足を払う。


 2人目、転倒。


その横から短剣使いが飛び込む。

ロッキーは一瞬だけ身を沈めた。

短剣が髪をかすめる。

ロッキーは相手の腰布を掴み、勢いを利用して投げる。


 3人目、ステージぎりぎりへ転がったところを、軽く蹴って落とす。


『おーっとロック選手!前回よりも動きが鋭い!完全に狙われていますが、落ち着いて処理している!』


Mr.Zの実況が響く。

観客席が沸く。


「ロッキー!」


「ルーキーマント!」


「今の見たか!?」


Jr.が端末に映し出されるロッキーのオッズを恨めしそうに見ながらぼそっと言う。


「前より無駄が減ってんな」


ポポがにやりと笑う。


「依頼で鍛えられてるネ」


バイオレットは静かに頷いた。


「…悪くない」




ーーーーーーーーーー




参加者が減っていく中、ロブは歯を食いしばっていた。

先月、まさかの場外負け。

相手は新人でしかも何も知らない田舎者。

あの敗北はロブにとって屈辱だった。


「今度こそ潰す」


ロブはロッキーへ一直線に向かう。

ロッキーもそれに気づいた。


「あ、親切なお兄さん」


「その呼び方やめろ!」


ロブの大剣が振り下ろされる。

重い。

先月と同じなら、避けて誘導する。

だがロックは今回はさらに一歩踏み込んだ。

大剣の軌道の内側、危険な位置。

ロブの目が見開かれる。


「っ!」


ロッキーは剣を斜めに当て、大剣の勢いを受け流す。

完全には止めない。

流す、力の向きを変える。

大剣が目標を失い地面を叩く。

その瞬間、ロッキーはロブの懐に入った。


「またその手か!」


ロブが膝蹴りを狙う。

しかしロッキーは読んでいた。

ポポに教えてもらったロブの戦いの癖。

体をひねり、ロブの脚をかわす。

そのまま足首に自分の足を絡め、肩で押しこむ。


「くそっ!」


ロブは踏ん張る。

前回ならそれで耐えられたかもしれない。

だがロックはもう片方の手でロブの腕を引いていた。

押すだけではない、引く、崩す。

重心がずれる。


「う、おっ…!」


ロックは最後に、相手の横に回り込み重心を下げて相手の脇腹に突進した。

ロブの呼吸が一瞬止まり、体が大きく傾いた。


「ごめん!」


「っ…謝るな!」


ロブが叫んだ直後、場外へ落ちた。


『ロブ選手、またもロック選手に敗れるーーーー!!』


会場が大歓声に包まれる。

ロブは場外で地面を叩いた。


「くそおぉぉぉおおおお!」




ーーーーーーーーーー




ロッキーはそのまま順調に相手を倒していき、残るは3人になった。

ロッキーと、双剣使いの女、そして鎧を着た槍使い。

2人は互いに一瞬視線を合わせ、ロッキーを先に落とすと決めたようだ。

前回優勝者を残しておけば勝てない。

二方向から同時に来る。

ロックは深く息を吸った。

森では群れに囲まれることがあった。


 狼型の魔獣


 猿型の魔獣


 鳥の魔獣


囲まれた時、一番やってはいけないのは焦って背中を見せること。

ロックはあえて槍使いの方へ走った。

双剣使いが背後から追う。

槍が突き出される瞬間ロッキーは横へ滑る。

槍はロッキーではなく後ろから追っていた双剣使いの進路を塞いだ。


「おい!邪魔!」


「お前こそ!」


2人の足が一瞬止まる。

その一瞬でロックは槍の柄に手をかけた。

力で奪うのではない、下へ押す。

槍先が地面に刺さる、槍使いの体が前へ流れた。

ロックはその背を押し、双剣使いへぶつける。

2人がもつれ、双剣使いが踏ん張る。

が、ロックはすでに横に回っていた。

剣を横に向け、全力で押す。

場外線まであと一歩。


「待っ!」


体勢を立て直すまもなく、2人まとめて落ちた。

一瞬の静寂ーーそして、爆発のような歓声。


『決まったーーーー!!』


Mr.Zの声が闘技場に響く。


『今月のメレー!勝者はまたしてもこの男!ルーキーマントの新星!』


大型モニターにロッキーの顔が映る。

肩で息をしながら呼吸を整える。


『ロック・レオンハート選手ーーーー!!』


ロッキーコールが起こる。


「ロッキー!」


「ロッキー!」


「ロッキー!」


ロッキーは観客席を見上げ、照れたように笑った。


「…勝った」




ーーーーーーーーーー




ーー観客席


ポポが大きく笑った。


「優勝しちゃったネ、また」


Jr.は端末を見て、悔しそうに舌打ちする。


「儲けられなかったが、しょうがねぇな」


ターニャが微笑む。


「完全にスターね」


ビアンカが頷く。


「マント、似合ってきたじゃない」


ソロは真顔で言った。


「歩法がさらに良くなっている」


バイオレットはロッキーを見つめていた。

歓声の中心でまだ少し戸惑いながら手を振り笑う青年。

あの山育ちのルーキーの勝ちはもうただの偶然ではない。




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