第十八話 ブロンズランク
依頼についていくのと別に、ソロランクにも挑戦した。
ブロンズランクでもいいと思っていたが、ランクが上がると難易度の高い依頼も受けられるようになるし、報酬も上がるらしい。
お金は大事だ。
シルバーに上がるまで先は長いけど、こういうのはコツコツやるのが大切だとターニャが教えてくれた。
ギルドハウスを買う費用も俺はほとんど出せていない。
だからその分もちゃんと恩返しがしたかった。
「そういや」
wildfoxのガレージでJr.が工具を片手に言った。
「今月はメレー出ねぇのか?来週だろ」
「え?」
俺が顔を上げると、ソロが続ける。
「10万はデカいよなぁ」
「…また出てもいいの?」
思わず聞き返す。
Jr.は鼻で笑った。
「規約では禁止されてねぇぜ、まぁ1回優勝したと言ってもまだ優勝できるとも限らないしな」
ポポが楽しそうに言う。
「バイオレットはブロンズに上がった後、メレー三連覇してたけどネ」
「三連覇!?」
俺がヴィオを見ると、ヴィオは視線を逸らした。
「昔の話よ」
ターニャさんがすかさず身を乗り出す。
「3ヶ月でシルバーランクに上がったのよ、さすが紫電だわ」
「ターニャ」
「事実じゃない」
「この3週間でいろんな依頼を受けてただろ、動きもだいぶ仕上がってきた」
「そうですか?」
「あぁ、粗さもかなりなくなったしもう簡単にゃ負けねーよ、お前は」
そう言われると胸の奥が少し熱くなった。
Jr.はこういう時変に持ち上げたりしない。
だからこそ、その言葉はすごく嬉しかった。
「…じゃあ、出てみようかな」
ポポがにっと笑う。
「いいネ」
ビアンカも頷く。
「無理はしないこと、怪我したらすぐ下がるのよ」
「はい」
ターニャさんはすでに端末を取り出している。
「今度はちゃんと告知しましょう、あなた前回は優勝後に肉投稿だけだったから」
「告知…」
「大事よ、注目されるのもランカーの仕事」
「それに、お前に賭けたら儲かるしな」
悪い顔で笑う。
「ひひひ」
「それ目的なの?」
「悪いか」
「いえ…正直でいいと思うよ」
「お前、そういうとこだぞ」
ソロが静かに言った。
「今回は警戒される、前回のようにはいかない」
ヴィオも頷く。
「あなたはもう無名じゃない」
俺は少しだけ息を呑んだ。
無名じゃない、まだ慣れない言葉だった。
「でも」
ヴィオは続ける。
「それでも、勝ちに行くなら手伝う」
ポポが拳を鳴らす。
「作戦会議ネ」
ビアンカが笑う。
「装備も調整しましょう」
ターニャさんが目を輝かせる。
「告知文は私が見るわ」
ヴィオが静かに言う。
「ロッキー」
「はい」
「前回は知らずに出た」
「はい」
「今回は理解して出るのよ」
俺はゆっくり頷いた。
前回はただ早くブロンズになりたかった。
今回は違う。
Aster Crownのために
自分がもっと上へ行くために
みんなに少しでも恩返しするために
「勝ちたいです」
俺がそう言うと、Jr.は満足そうに笑った。
「よし」
ポポが大きな手で俺の背中を叩く。
「今月のメレーも荒れるネ」
ターニャさんが端末を構える。
「投稿するわよ、ロッキー」
「えっ、今?」
「今」
俺は困りながらも少し笑った。
そして言われるままにxNestを開いた。
《今月のメレーにも参加します。前回よりちゃんと頑張ります》
投稿して数秒。
通知がまた、勢いよく増え始めた。
「…うわ、きた」
Jr.が笑う。
「始まったな」
ヴィオは少しだけ口元を緩めた。
「今度は、ちゃんと見られる側ね」
俺は端末とみんなの顔を交互に見ながら、少しだけ緊張して、でもそれ以上にわくわくしていた。




