第十六話 装備
「…てことで」
ビアンカがぱん、と手を叩いた。
「話もまとまったし、ロッキーの装備でも見に行きましょう」
「装備?」
「そう、ブロンズランカーだしこれからギルドに入るんだから、もう少し舐められない格好をしないと」
「見た目は大事だぞ、弱そうに見えるやつはそれだけで狙われる」
ソロが頷きながら言う。
「そうなんですか」
「そうだ」
ビアンカはにこにこと笑う。
「それに、実はメレーであなたに賭けて稼がせてもらったのよ」
「俺に?」
「結構儲かったヨ」
「大穴でオッズが良かった」
「ええ、だからこれはお礼も兼ねて」
ポポが豪快に頷く。
「ロッキーは細いからネ、もっと守れる装備がいいヨ、重装備きっと似合うネ」
「いや、俺あんまり重いと動けなくて…」
ターニャが端末で店を検索しながら言う。
「せっかく可愛い顔してるんだから、映える装備にしましょう、配信映りも大事よ」
「映える…?」
ソロが静かに言った。
「忍び装束もいい、森育ちなら気配を消す戦い方と相性がいい」
「なんで全員方向性違ぇんだよ」
Jr.が呆れる。
ロックは困ったように笑った。
「えっと、俺今の装備でも別に…」
その瞬間、6人の視線が一斉にロックへ向いた。
「ダメよ」
「ダメネ」
「ダメだ」
「ダメね」
「ダメだな」
「ダメ」
「えぇ……」
ーーーーーーーーーー
そのままロックは半ば連行されるように装備店へ連れて行かれた。
店に入るなり、ビアンカは目を輝かせる。
「まずは軽装ね、ロッキーは動きが綺麗だから体の線を邪魔しない方がいいわ」
「戦う服で体の線って必要なんですか」
「大事よ」
ポポは巨大な胸当てを持ってきた。
「これならサイクロプスに殴られても平気ネ」
そう言って被せてきたが、ポポが手を離した瞬間にバランスが崩れそうになる
「…お、おもすぎて動けません」
ターニャは白と金の刺繍が入った派手な上着を持ってくる。
「これ、すごく映えるわ」
「高そう…」
「高いわよ」
「…戻してください」
ソロは無言で黒い布を広げた。
「これなら夜でも目立たない」
「顔まで隠すんですか?」
「忍ぶからな」
「俺、忍びじゃないです」
Jr.は素材を見ながらぶつぶつ言う。
「軽くて丈夫なやつだな、変に飾るより防刃と耐熱は入れとけ、あと靴、サイズがあってねぇだろ」
「靴まで?」
「足が死んだら終わりだぞ」
ビアンカが頷いた。
「そこはJr.に賛成ね、靴はちゃんと選びましょう」
ロッキーはいつの間にか採寸され、上着を着せられ、革手袋をはめられ、マントを合わせられていた。
「何回着替えればいいんですか…」
「納得するまで」
「誰が?」
「私たちが」
「俺じゃないんだ…」
ロッキーは完全に着せ替え人形だった。
ーーーーーーーーーー
「重装備は却下ネ?」
「却下だろ、こいつの身軽さが死ぬ」
「でも防御は必要ヨ」
「だから急所だけ守る形にするの」
「この金刺繍は?」
「目立ちすぎだ、venusじゃねぇんだぞ」
「けどロッキーは映えた方がいいわ」
「忍び装束は?」
「それはもう諦めろ」
「趣味の押し付けは良くないわよ」
「お前が言うな」
6人がわあわあと言い合う中、ロッキーは試着室の前で暗い青色のマントを抱えて立っていた。
メレー優勝記念でもらったマント。
それだけは手放したくなかった。
バイオレットがそれに気づく。
「そのマントは使いたいの?」
「はい、せっかく貰ったので」
「ならそれに合わせればいい」
ビアンカが手を打った。
「決まりね」
最終的に選ばれたのは、暗い青を基調にした軽装だった。
動きを邪魔しない革胸当て
肩と腕には薄い魔導繊維製の防具
森でも街でも使える丈夫で軽いブーツ
ベルトには祖父のナイフを差せる留め具
そして、メレーのマント
派手すぎず、地味すぎず。
山育ちの青年らしさと、ランカーとしての格が両方残っていた。
「…どうですか?」
ロッキーが少し照れたように尋ねる。
ビアンカが満足げに頷いた。
「いいわ〜、すごく似合ってる」
ポポも腕を組む。
「軽そうだけど、悪くないネ」
ターニャは端末を構えた。
「写真撮っていい?」
「えっ」
「記録よ、記録」
ソロが真面目に言う。
「忍びではないが、悪くない」
Jr.はロックの靴を確認してから言った。
「これで少しはマシだな」
「ありがとうございます」
「褒めてねぇ」
「でも、選んでくれたから」
ロックが笑うと、Jr.は少しだけ視線を逸らした。
「…礼はビアンカに言え」
ビアンカがにやりと笑った。
「Jr.も結構真剣に選んでたけど?」
「うるせぇ」
その様子を見て、ポポが笑う。
「もう仲良しネ」
「どこがだ!」
ロッキーは新しい装備の袖をつまんだ。
「俺、こんないい装備初めてです」
少しだけ、声が柔らかくなる。
「大事にします」
その言葉に、6人が一瞬だけ静かになった。
バイオレットがロックを見る。
「似合ってる」
「…ありがとうございます」
ロッキーは嬉しそうに笑った。




