第十五話 ギルドハウス
それから数日後、ロッキーの端末にターニャから連絡が入った。
《物件、契約できたわ》
《今日の19時にwildfoxのガレージに集合ね》
それだけだったが、ロッキーはしばらく画面を見つめた。
「…ほんとにギルドハウスできるんだ」
指定された時間にwildfoxのガレージへ行くと、すでに全員が集まっていた。
ターニャは資料を広げながら、満足そうに笑っている。
「かなりおまけしてくれたわ」
Jr.が資料を覗き込む。
「割ると1人あたりいくらだ」
その言葉に、ロッキーがびくっと肩を跳ねさせた。
「あの…すみません、俺お金全然持ってなくて…」
言いながら、声がどんどん小さくなる。
「メレーの賞金も、宿代とかご飯とかで…その…」
Jr.が顔を上げた。
「誰がお前からも取るっつった」
「え?」
「初期費用は俺らで出す。お前は生活整えろ」
「でも」
「元は6人で計画立ててたんだ。予算も6人で組んでる」
ポポが笑う。
「ロッキーはまず、この暮らしに慣れることネ」
ビアンカも頷く。
「それと装備もね、今のままじゃ心配だもの」
ターニャがにこにこしながら言う。
「将来的に稼げるようになったら、少しずつ入れてくれたらいいわ」
ロッキーは困ったように全員を見る。
「でも…」
バイオレットが静かに言った。
「仲間に投資するのは、無駄じゃないわ」
ロッキーは言葉を詰まらせる。
ソロが短く続けた。
「返す方法は金だけじゃない」
Jr.が工具箱にもたれながら言う。
「依頼で働け、強くなれ、変な依頼に騙されるな、まずはそれでいい」
「…はい」
ロッキーは少し俯いて、それから顔を上げた。
「ありがとうございます!俺頑張ります」
ポポが大きな手でロッキーの背中を叩く。
「その意気ネ!」
「痛っ」
Jr.は資料を見ながら、にやりと笑った。
「さて、問題は部屋割りだな」
ターニャが即座に言う。
「10部屋あるわよ」
ビアンカが手を上げる。
「私は日当たりのいい部屋がいい」
ポポも続く。
「俺は広い部屋ネ」
Jr.が眉をひそめる。
「ガレージに一番近い部屋は俺が使う」
「いいわね、ロッキーは?」
「…俺は余ったところでいいです」
全員がロッキーを見た。
Jr.がため息をつく。
「お前なぁ」
ビアンカが笑った。
「余ったところじゃなくて、ちゃんと自分の部屋を選びなさい」
ターニャも頷く。
「あなたの居場所になるんだから」
バイオレットが言う。
「あなたの部屋よ」
ロッキーは少しだけ目を丸くした。
「…俺の、部屋」
その響きを確かめるように呟く。
山の家でも、街の安宿でもない。
自分のために用意された仲間と暮らすための部屋。
ロッキーは小さく笑った。
「じゃあ…庭が見える部屋がいいです」
ターニャが嬉しそうに資料へ書き込む。
「決まりね」
Jr.が腕を組んだ。
「Aster Crown、いよいよ形になってきたな」
ロッキーはまだ少し信じられない顔で、資料の上の建物図を見ていた。




